抗微生物薬適正使用
抗微生物薬適正使用
抗菌薬の適正使用、かかりつけ医の役割は? 日医の釜萢常任理事、「適切な判断を」
抗微生物薬(抗菌薬)が効かない感染症が国内外で増えていることを踏まえ、厚生科学審議会感染症部会などが「抗微生物薬適正使用の手引き」を取りまとめた。
手引きは、過不足のない適正な抗菌薬の使用を促しており、必要な場面で使用が控えられれば症状が悪化するケースもあるため注意が必要だ。
診療に携わる医師は、どのように使用の是非を判断すればいいのか。
感染症部会の委員を務め、手引きに関する審議にかかわった日本医師会の釜萢敏常任理事に、かかりつけ医の役割などを聞いた。
手引きでは、急性気道感染症のうち「かぜ」と呼ばれる症状には、抗菌薬を使用しないことを推奨。
「抗菌薬は必要ありません」と結論のみ告げるのでは、患者に不安を残すこともあり、「最初の2-3日がピークでだんだんよくなる見通し」「症状の改善が思わしくなければ再び受診を」と丁寧な説明を行い、
患者の満足度を損なわずに抗菌薬を減らすよう促している。
抗菌薬が不要と判断しても、逆に患者から処方を強く求められる場面も想定される中で、どのような対応や役割が求められるのか。
釜萢常任理事は、「外来や入院、在宅などそれぞれの場面で、あくまでも患者さんや家族の理解と同意が必要であり、日ごろからしっかりした関係を構築しているかかりつけ医の役割が大きい」としている。
また、抗菌薬がなかった時代には助からなかった命が、抗菌薬により救われていることは確かな事実であることに触れ、
「大きな恩恵に浴しているのであり、決して抗菌薬の使用が悪いというのではない。引き続き抗菌薬によって国民の健康を守らなければならない」としている。
ただ、「使用の仕方が不適切であってはいけない」とも指摘。
「不適切な使用によって薬剤耐性菌が増えてしまう可能性があり、なるべく適正な使用にもっていく必要がある」としている。
さらに、医師が抗菌薬を処方する場合、この薬が必要なのかどうかの判断について、「現状を踏まえて、もう1回見直してみましょうというのが、今回の手引きの趣旨」と説明。
最終的には患者の状態や基礎疾患によって使用の是非を判断する必要があるとし、
「個々の具体的な判断は、診察するかかりつけ医が決める。手引きをそれぞれの医療現場で利用しながら、その都度、医師がしっかりと判断すれば、抗菌薬の使用が、さらに今よりも適切になる」と期待している。
〔メディカルトリビューンウェブ 2017.04.04 新井哉・CBnews〕