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Center:(13)「いまいるところが出発点」

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2011年7月17日 (日) 10:58時点におけるMatsu4585 (トーク | 投稿記録)による版
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(13)「いまいるところが出発点」                          私は「自分を受け入れる」と近い意味内容の言葉として、「いまいるところが出発点」ということがあります。 これは私が20代の初めに経験したことと関係しています。大学時代に先輩や同僚にあたる人がガンになりました。両方とも女性で、恋人や夫になる人がいました。私はそのときは、漠然とではありましたが、「早く病気が治って、再び通常の生活に戻る」ことを期待していました。 この気持ち自体は人間として否定すべき要素はないと思います。しかしその恋人や夫となる人(ともに私の先輩にあたる)は、「治ったときが始まりではない、いまのガンと闘っているときが彼女と私たちの出発点だ」という主旨のことを話していたのです。私はその言葉の力強さと現実性に、目を瞠かれた思いをしました。 たとえ、いま自分が地獄の縁に立っているとしても、自分はそこからすすんでいくのです。そこ以外に出発点を求めてもそれは架空のものでしかありません。 自分が引きこもりである、不登校である、あるいは自律神経失調症である、人格障害である、統合失調症である・・というときはどうでしょうか。 私は医師ではありませんから、医学上の診断をつけることはありません。なかには医療機関(医師)から、診断名をつけられている人もいます。私は、それらに関係なく、私にできることをする、――すなわち対人関係の改善に役立つ場(居場所や当事者の会)をつくる、仕事の場(収入につながる場)をつくる、というのはその意味です。 これらの医学上の診断名のある、なしに関わらず私は私の対応できる枠内で受け入れようと考えています。引きこもりや不登校についても同様な気持ちで受け入れようと考えています。 私の気持ちとは別に、たとえば自分が引きこもりであるのを受け入れようとしない人がいます。人格障害と診断されたことを受け入れない人がいます。私は、それらを本人が受け入れようが、受け入れまいがかまわない気持ちでいるのですから、私がその両方の人を受け入れるのに、さしあたっての障害はありません。 しかし、この受け入れた人たち自身はその場でいろいろな修練をします。修業という人もいます。苦痛になる人もいます。その内容はさまざまで、多くは、別のところで述べた、対人関係上のコミュニケーションのいろんな面に関わっています。 そのなかで私は「いまいるところが出発点」というのを強く感じることがあるのです。「自分は引きこもりとは違う」と強く主張する人がいます。その種類もいろいろです。対人恐怖です。集団恐怖です。社会不適応です。醜面恐怖という別の症状というか精神状態を示すことばで、より適切にそれを表わそうという人もいます。 外出はできるのですが、たんに人とのコミュニケーションがとれないだけです。就職すると人とのペースがあわないので一緒に働けないだけです。家族とは話しているし、一緒に買い物にも出ますので引きこもりではありません・・などなどです。 私は、これら全部を(△△恐怖という人から「~だけです」という状態の人まで全部)、引きこもりとその周辺事情の人とみています。その一人ひとりが、自分の状態に目を外さずに見てほしい。「いまいるところが出発点である」として、一歩ずつ前に進んでほしいのです。 そのとき、自分の「いまいるところ」から目を外してほしくはないのです。遂に、医師から診断されるのを嫌がる人もいます。外からのレッテル張りを回避するのは一つの自由意志です。それを避けるのは、別の社会的事情が関係しています。特に精神病、精神疾患であることによる社会的不利益を無視することはできません。 しかし、そのレッテル張り、あるいは他人による精神状態の分析を回避しえたとしても、自分で自分のいるところを明らかにしないことには、自分で前へ進んでいくことが困難です。自分の感覚で、自分の現実をしっかりと見て、そこから一歩一歩前へ進んでほしいのです。それでなければ、病名や診断名や、レッテル張りや精神分析を回避しても、じたばたするだけで前進は難しくなります。自分なりに真実の自分を評価する勇気がほしいと思います。 診断名を回避するのに一生懸命、引きこもりでないことを立証するのに一生懸命であっても、では自分の問題は何かと問われたとき、自分の中に答えがないのであれば「いまいるところ」が行方不明にすぎないのです。「たんに・・だけ」とはいったい何なのか、それは性格なのか趣味なのか・・。そうならばそれでおし通せばいいだけのことですから。

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