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不登校は家族内の不正常を表面化させる

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不登校は家族内の不正常を表面化させる

―『こみゆんと』を読み直す(3)
「わが子の不登校は家族の大きな問題になったけれども、それは家族全体のゆがみを表面化させ、それを根本からただしていくことになった」
―こういう主旨の言葉が私を不登校・ひきこもりへの関心を引き寄せ、それを継続させていた。それは90年代のことからであった。
それを改めて確かめたのですが、それが強い思いとして続いていたかといえば必ずしもそうではありません。
家族制度が大きな変動期に差し掛かっているとわかった最近になって再度とらえ直しているというのがより正確ではないかと思います。
そういう私の理解のなかで、この思いもときどき思い返されていました。
2010年『不登校・いじめ その背景とアドバイス』(平岩幹男・専門編集、中山書店)のなかで、私(執筆名は五十田猛)は「不登校の予後」の部分を分担執筆しました。
小児科医療者向けの「小児科臨床ピクシス」全20巻の1冊です。予後というのは「その症状や状態の経過や結末に関わる医学的な見通し」を指す用語です。
私は「不登校の予後」を予後良好、予後不良および不登校状態の継続の3つに分けて、それぞれ説明しました。予後良好では次の2種類を例示しました。
《予後良好なものには、以下のような例がある。
①「不登校を経験したのは、自分にとり必要なことだった。今の自分があるのは不登校を経験したからだ」と不登校経験を肯定的に受け止めているもの。
② 家族からの言葉で「子どもが不登校になったことが家族の不正常な関係を気づかせ、結局はよかった」というもの。》(p31)
① の点は、医療者向けでなければ、本人が登校するようになった。フリースクール等に行くようになった。高校生であれば定時制や通信制高校に転校した。
このあたりも不登校問題の“解決”であり、不登校になった本人が動けるようになったものです。
しかしその個人的な“解決”は社会全体の方向に同化する傾向であり、一部が教育制度とか学校改革に、フリースクール等の成長につながったのです。
「不登校の予後」の3つに分けた他の2つには、「予後不良」としての精神的障害領域になる人だけではなく、不登校状態を続く人も入ります。
予後良好②で示した「子どもが不登校になったことが家族の不正常な関係を気づかせ、結局はよかった」は、家族の不正常な状態を改善したばあいの特別の例になります。
家族構成員の関係の改善になり、新しい家族制度の方向性を表わしています。これは家族制度の歴史的な変化にも対応する動きです。
これは20世紀末に始まる家族制度の大変化の方向が、男女関係、ジェンダー平等に進むと説明できる1つの証拠です。
子どもの不登校やひきこもりが問題を表面化する契機になっていると言えます。2010年の時点ではここまでは考えていませんでした。
〔2025年07月10日〕

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