お答え:いちばん必要な成長の条件をそろえるー木村茂司
いちばん必要な成長の条件をそろえる
〔質問42〕休みがちな娘に寮のある高校を勧める
高校2年の女子の母親から。
子どもは中学校時代から、対人関係が苦手でした。
高校に進学し、2年になりました。
先生はそれなりに対処してくれていますが、生徒集団の中にいられません。
もう限界といって休み始めました。
親戚の人からは甘やかしているといわれますが、母親としては無理やり行かせるのはよくない状態に見えます。
比較的近いところにある寮のある学校を探し、転校したいと思います。
どうでしょうか。
〔お答え42〕いちばん必要な成長の条件をそろえる
学校に行かないのは怠け、甘えであるという理解が根強く残っています。これはまったくの間違いです。学校に行くことができるのに行かないのが怠け、甘えです。そういう人は学校に行かないと損はするし、不利になることはわかっています。学校に行ってわがままや身勝手をするタイプです。
「行かない」のではなく、「行けない」のが不登校です。
その理由はさまざまなことがあります。精神的にまいっているか、発達障がいなどによるものです。さまざまなことには、いじめ、学力、家庭内、地域などからのプレッシャーです。
親は子どもに必ず期待するものですが、その期待が子どもにあっているかどうか。親の世間的な、また個人的なものなら、考え直してみることも必要です。
Ⅹ子さんは成績優秀の優等生でした。中学のときから成績優秀であり、地元で有名な進学校に入りました。Ⅹ子さんの兄も同じ高校でした。両親もいい高校、いい大学でした。親類の人たちも国立大学などのいい大学ばかりでした。 Ⅹ子さんがこの高校に合格したとき、親類みんなで祝賀会をホテルでしました。 しかし、Ⅹ子さんはその進学校に行けなくなってしまいました。母親は困りはて、親類からは責められるようになりました。 そこで、母親が相談に来ました。対応策は急いで心療内科に行き、身体症状の診断をしてもらうことです。そして高校に相談していちばん低い成績になっても認めてもらいたいと申し出ます。 心療内科では、精神的に疲れているという診断が出て、高校に提出し、宿題や補習授業が免除されました。保健室にいることも認められました。 家では勉強をあまりしなくてもいいことにし、テレビを見たり、ピアノを弾いたり、楽しくすごすようにしました。 寮のある高校に転校するのはきついので、その高校を休みながらも卒業しました。休みがちであっても低い成績ながらも卒業できるレベルの単位は取れていました。 卒業後は親類などのプレッシャーを避けたほうがいいので、大学は家から離れることにしました。都会の女子だけの学生寮に入りました。のびのびとした大学生活を送りました。 Ⅹ子さんに必要なことは、いい成績を継続することではなく自分のペースで成長できることでした。そのために必要な周囲の環境をどうつくるのか、親と教育相談者がⅩ子さんの状態と希望を確認しながらその数年を切り抜けてきたのです。彼女は自分に合った進路を考えられるようになりました。