カスタム検索(不登校情報センターの全サイト内から検索)

 
Clip to Evernote  Twitterボタン  AtomFeed  このエントリーをはてなブックマークに追加  


社会的な職種の変化と非正規雇用拡大

提供: 不登校ウィキ・WikiFutoko | 不登校情報センター
移動: 案内, 検索
Icon-path.jpg メインページ > 松田武己 > ひきこもりパラドクス > 社会的な職種の変化と非正規雇用拡大

社会的な職種の変化と非正規雇用拡大

「2040年代には、現在の職業の半分近くがなくなっている」と発表されたのは2010年ころです。
主に社会の変化、とりわけ各方面の技術的基礎である機械・装置・用具などが発達することによるものです。
「ありえない」という予感よりも「それ以上かもしれない」と予感がするほどあり、世の変化のスピードの速さを示しています。
この職業あるいは職種の変化はある1日や1年で突然に変化するわけではありません。すでに始まっており、いまはその変化の途上です。
PCの登場と普及により、多くの職種は変化しています。
事務職の内容は扱うPCソフトによって職の内容が変わりつつあります。一般事務職という大量いた従事者はきわめて少なくなりつつあります。
この職業と職種の変化の進行のなかで、とくに若い世代の職選びや職業意識にも変化がみられます。
それはこれからもさらに変わっていくのでしょう。
この若い世代に広がる「働き方の意識の変化」が、従来の終身雇用制が崩れていく時代に表われたのは、偶然ではなく、直接的・間接的な結びつきがあると考えなくてはならないでしょう。
フリーターが登場し、登録・派遣型社員という非正規雇用制度が広がったのは、そういう背景から考えれば了解できることともいえます。
しかし、そうはいってもこういう場合は支配的位置にある者の都合によってそれが公認の制度として設計されていくことはこれまでくり返されてきた論理が予想されることです。
非正規社員は、職場・働き先の変更をくり返さざるをえません。
「転職をくり返す若者」「就職3年後には3割が離職」などが、やや否定的に伝えられる事態には、このような社会の変化、それを公的な制度として確定したこの国の支配的な人たちによる作意が埋め込められています。
それを無視して若い世代を非難がましく言うことはできないでしょう。
この流れを社会的な圧力と感じ、あるいは「社会に適応できない」と見られる人たちが、この社会との関係に距離をとる―ひきこもる、あるいは従来の仕事スタイルから離れる新しい方法を探すのは、むしろ自然な動きとみなしていいでしょう。

公平を期すためには、この社会の動きを前向きに受けとめた人たちにも目を向ける必要はあります。
リクルートワークス研究所の調査を引用して、福島創太『ゆとり世代はなぜ転職をくり返すのか?』(ちくま新書.2017)では次のように指摘します。
《実は、転職者が増加しているのは非正規雇用者ばかりではない。そして、非正規雇用者になる可能性が高いとされる非大卒者ばかりでもない。
リクルートワークス研究所が実施しているワーキングパーソン調査では、2000年の調査にて「退職経験をもつ」と答えた者は全体の50.2%だったが、2012年の調査では61.8%となっている。
20代、大卒の正社員の回答に限定しても、15.3%(2000年調査)から21.4%(2012年調査)と増加傾向がうかがえる。
次に転職意向にも目を向けると、「転職するつもりはない」という回答者は、全体で59.6%(2000年調査)から51.7%(2012年調査)に減少している。
20代、大卒の正社員の回答に限定しても、48.6%(2000年調査)から43.2%(2012年調査)になっている。
2000年以降、大卒で、現在正社員として働く労働者のなかでも、転職を経験した者、そして転職意向を持つ者が徐々に増加しているのである。
また、大卒者、大学院卒者は、一度転職するとその後の転職サイクルが早くなることも指摘されている(浦坂2008)。
一度転職を経験した大卒、大学院卒の労働者は、同じ会社で長く働き続けないキャリアを歩んでいく確率が高いのである。
これまで長い間、日本の労働者は一つの会社で長期間就労することを前提としていたことを考えると、この変化は注目に値するだろう。》(26-27p)

このような転職をくり返す状態は、職業と職種が大きく変わる時代には生まれて当然でもあるのですが、制度が押し隠してきた問題を表面に出します。
1つはその当人がリスクを負うだけではないことです。それは社会全体にもリスクになります。
福島さんは、前向きに転職をくり返す個人が負うリスクをこう書いています。
《労働者個人に起こる大きな変化としては、キャリア形成の担い手が、会社から個人へとかわるということが挙げられる。
就職した企業でキャリアを形成し続けるのとは異なり、転職者は自らの意志決定でキャリアを形成していく必要がある。
大卒、大学院卒の場合、一度転職したらその後の転職サイクルがはやくなるという研究を紹介したが、転職を繰り返しながらキャリアを形成していくのであればなおさら、キャリア形成の主体と責任は明確にその個人に帰属していくだろう。
転職がうまくいくかどうかはその人自身にかかっている。そして転職がうまくいかなければ職は保証されない。
こうした観点から、新卒で入社した会社で働き続ける労働者よりも、転職者の方がキャリアを安定的に形成していく難易度は高いといえるだろう。》(30p)

次にそれが社会全体に影響するリスクとは何かをこう書かれています。
《もし、若者のキャリアが転職によって不安定なものとなるとしたら、彼らにとって重大な問題であるばかりでなく、社会的不安や社会的損失の引き金になると考えられる。
例えば太田聰一(そういち)(2010)は、若年失業者の増加が、
①日本の人的資本レベル(人材が身につけている知識や技能のレベル)の長期低迷、
②貧困の連鎖の可能性、
③若年労働市場の悪化による少年犯罪発生率上昇の可能性、
④自殺者増加のリスク、
⑤年金制度維持の困難化、
⑥晩婚化および少子化の促進といった、様々な問題を引き起こす可能性を指摘している。
このうちのいくつかが既にその兆候を見せはじめていることは、お分かりの通りだろう。》(35p)

私は福島さんの論旨に沿ってこの転職の部分を説明しているわけではありません。
福島さんはもっと多くの点に言及しています。他の点はその本を読んでいただくのがよかろうと思います。
これらの転職をくり返す若い世代は、30代以下では日本の就業者の半数に達しようとしています。
その多くの人には、守られるべき生活基盤の拠り所が希薄になり、実際には「ない」という人も少なからずいます。
家族(血縁)関係がとぎれ、地域の結びつきがこれといって「ない」状態は、職場がぐらつくことにより社会において頼るべき「居場所がなくなる」のです。
孤立・孤独の問題の発生には、この職場の不安定性が、その全部の要因をしめるわけではありませんが、少なからず関係するのです。
                                   

個人用ツール
名前空間
変種
操作
案内
地域
不登校情報センター
イベント情報
学校・教育団体
相談・支援・公共機関
学校・支援団体の解説
情報・広告の掲載
体験者・当事者
ショップ
タグの索引
仕事ガイド
ページの説明と構造
ツールボックス