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オリィ研究所

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2021年10月17日 (日) 09:18時点におけるMatsu4585 (トーク | 投稿記録)による版
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オリィ研究所

所在地 東京都港区
TEL
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ビジネスコンテストを総なめ!NTT東など企業がぞくぞく導入する「リモートワーク用分身ロボット」の凄さ
サンデー毎日×週刊エコノミストOnline
「現実社会というプラットフォーム上に居場所を確保できるようにしたい」開発者の吉藤オリィさんは語る
離れた場所にいる人が、その場にいるかのような分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」。
開発者の吉藤オリィさんは、かつて3年半の不登校も経験していた。
(聞き手=村田晋一郎・編集部)
「“分身”で外出困難な人の孤独を解消したい」
「体を動かせなくなった時、人はどうやって生きていくか。その準備を今からやっていく」
── 開発した分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」が今、企業向けのリースなどで約600台稼働しているそうですね。
吉藤 もともとは障害があって外出が困難な人や不登校の生徒向けの“孤独”を解消するために開発したロボットですが、最近はテレワークでの利用が圧倒的に多いです。
ただ、最近といっても新型コロナウイルス禍の前からテレワークの需要は伸びていました。
例えば、NTT東日本に40台を導入してもらっていますが、育児中の女性の利用が多いですね。
── どんな使われ方をしているのですか?
吉藤 自宅にこもって子育てをしているお母さんたちは、ずっと子どもの相手をするストレスのほか、人と会話をする機会も減り、孤独を感じています。
会社から離れている時間が長くなると、疎外感を感じて会社に戻れなくなって辞めてしまうことがあります。
そこでオリヒメを使って、育児休暇ではなく、自宅で1日数時間でも可能な範囲で働いてもらい、社内の会議にも参加してもらうんです。
育児中のお母さんたちも、オリヒメで会社の仲間とつながることで一体感が維持できますし、会社としても優秀な人が辞めることがなくなり、お互いに良い効果が得られています。
オリヒメは高さ23センチの据え置き型ロボット。離れた場所にいる人が、あたかもその場にいるかのように感じられる“分身”だ。
入院中の人が自分の分身として家庭に置いてもらったり、在宅勤務をする人の分身としてオフィスに置いたりし、本人は離れた場所からパソコンやスマートフォンなどで操作。
操作端末の画面にはオリヒメのカメラ映像が表示され、オリヒメ内蔵のマイクやスピーカーを通して周囲の人と会話ができる。 
ポイントはオリヒメの首や両腕が動くようになっていて、離れた場所にいる人が操作可能なこと。
操作者の感情が伝えられ、オリヒメの周囲にいる人も操作者がその場にいると感じられるから不思議だ。
もう一つの工夫は軽さで、オリヒメは重さ660グラム。
分身を連れて歩いてもらえれば、会議の席や旅行などにも離れた場所から参加することができる。
心を運ぶ“車椅子”
── オリヒメ開発の出発点は高校生の時の体験だそうですね。
吉藤 高校3年生だった2005年5月、米国で開かれた「ISEF」(国際学生科学技術フェア=半導体大手インテルが主催する高校生を対象とした科学研究の世界大会)に参加
した時、米国の高校生が「自分はこの研究に一生を捧げる」と言っていたのが格好良く見えました。
私は当時、電動車椅子を開発してはいたものの、将来の明確な目標はなく、本当は何をしたいのかを自問自答するようになりました。
── その後、どんな気付きがあったのですか。
吉藤 ISEFの後、高齢者から身近な不便を解消するものを作ってほしいという声が多く寄せられるようになりました。
高齢者の話を聞いて分かったのは、物理的に動けないという問題はあるけれど、それ以上に自分は誰からも必要とされていない、独りぼっちな気がする、離れて暮らす子どもに毎日電話するのは気が引けると感じている。
つまり、自分の居場所がなくて孤独だという感覚を多くの人が持っていたのです。
── オリヒメ開発のコンセプトは当初からあったのですか。
吉藤 最初は孤独の癒やしになるパートナーロボットを作ろうと、高校卒業後に編入した高専では人工知能(AI)の研究をしました。
しかし、孤独を解消できるのは結局は人との付き合いであり、AIを搭載したロボットを作って話せるようになったとしても、おそらく孤独は解消されないと考えました。
そこで、早稲田大学に進み、人とのコミュニケーションを円滑にするツールとしてのロボットの開発を進めました。
── それがオリヒメだと。
吉藤 インターネットやオンラインゲームも居場所を作るのにはいいですが、自分がそうしたプラットフォーム上にいなければ、人とはコミュニケーションが取れません。
ここに私は違和感があり、現実世界というプラットフォームに参加するためのツールを作ることが重要だと考えました。
体を物理的に運ぶことができない人が存在する以上、その人の心を運ぶ車椅子を作ろうというのが、オリヒメのもともとのコンセプトです。
“孤独”は吉藤さん自身の生い立ちとも重なる。
幼少期は工作や折り紙が得意な一方、人とのコミュニケーションが苦手で、小学5年から3年半は不登校に。
劣等感にさいなまれ、さらに人を遠ざけていく「孤独の悪循環」を経験した。
転機になったのは、中学1年で母親が申し込んだロボットコンテストへの参加。
プログラミングやものづくりの面白さに目覚め、人との関係を少しずつ築きながら孤独の悪循環から脱出していった。
ものづくりへのいちずな思いは早くから結実する。
奈良県立王寺工業高校時代には、段差を上がりやすくする電動車椅子のタイヤホイールを開発し、04年の「高校生科学技術チャレンジ」(JSEC)で最高位の文部科学大臣賞を獲得。
その世界大会であるISEFでは、日本勢で初のエンジニアリング部門3位に輝いた。
「ないなら、つくる」が吉藤さんのモットーだ。
自分だけの「研究所」
── どうやってオリヒメの開発を進めたのですか。
吉藤 07年に大学入学後、1年生のうちに興味がある研究室をすべて見て回りましたが、私が考えていることをやれる研究室がなかったので、09年に自分で研究室を作ることにしました。
それが今の会社の前身になっています。
奨学金はすべて開発費に充て、親にも借金しました。
ただ、10年7月にオリヒメが完成してからは、片っ端からビジネスコンテストに出て優勝し、その賞金を開発費に投じていけるようになりました。
── 最初は二足歩行タイプも試したそうですね。
吉藤 二足歩行タイプが売れるとは思いませんでしたが、最初のモデルは私自身の分身でもあるので、ある程度歩けるようにしたいと足を付けていました。
また、足の組み方で性格も表現できるので、その役割も期待しました。
ただ、分身のロボットと対面する周囲の人が、相手が今、どんな感情なのかを想像するほうがコミュニケーションが取りやすいと考え、足を外して据え置き型にしました。
最初は腕すら外していたんですが……。
── 腕を復活させたのは?
吉藤 一緒に開発を進めてきた番田雄太という親友が、「手を動かすことが人間を人間たらしめる」と言い、腕を復活させることにしました。
彼は4歳で交通事故に遭ってからずっと寝たきりで、手を動かすこともできませんでした。
3年前に容体が急変し亡くなってしまいましたが、彼の強い要望もあってオリヒメの腕を復活させたのは正解だったと思います。
── 顔のデザインはどう工夫したのですか。
吉藤 モチーフはいくつかありますが、分かりやすいものでは能面を意識しました。
初めは操作する人の顔をモニターに映していましたが、モニターだとオンラインのテレビ会議のような感じになってしまい、操作する人がその場にいないことが前提になります。
その人がそこにいると感じられることが重要で、周りの人の想像力を引き出せるように現在のような顔にしました。
── オリヒメの操作では、同意を示す「大きくうなずく」や、否定を表す「首を横に振る」のほか、相手の会話に「片手でツッコミをいれる」など12種類のジェスチャーが設定されています。
ただ、怒るなど負の感情を表すジェスチャーはありませんね。
吉藤 負の感情は周りの人が想像するようになっています。
我々は怒る時にはあまり手を動かさないので、オリヒメも手を動かさないほうが、真剣味が伝わります。
また、オリヒメを使うと意外と怒る気になりません。
オリヒメ越しだと、感情的にならないという利点があるので、怖い人にはオリヒメを使ってもらったほうがいいかもしれません(笑)。 ◇「オリヒメD」を実験
吉藤さんの通称「オリィ」は、折り紙が得意なことから大学時代に付いたニックネーム。
大学時代に一人で立ち上げた研究室の名前が、そのまま現在の社名「オリィ研究所」にもなっている。
オリヒメには「オリィ」に「離れていても会いたい人に会えるように」という意味を加えた。
18年には高さ120センチの自走式ロボット「OriHime-D(オリヒメD)」を開発し、小売店などの接客業務での活用を探っている。
── オリヒメDを開発した狙いは?
吉藤 オリヒメDもオリヒメと同様、離れた場所にいる人が操作するロボットです。
学校に行けない人や働くことができない人たちからすれば、学校や職場は憧れ。
働いて誰かの役に立ちたい、誰かに喜んでもらえる自分でありたいと思っています。
オリヒメはそういう人たちのためのツールであって、完全に自動で動くロボットではありません。
── 現在は完全に自動で動くAI搭載のロボットが簡単な接客もできるようになっています。
吉藤 ロボットが優秀になって人間より低コストで仕事をこなすようになると、経営者にとっては人件費を削減できていいのかもしれません。
また、我々が合理的なことしかやりたくなくて、すべてを自動で済ませたいのならば、自動販売機や無人のコンビニでもいいでしょう。
しかし、人間にとってはコミュニケーションが欠かせないものであり、オリヒメで人が接客する需要は必ずあると思っています。
── オリヒメDは今後どのような展開を考えていますか。
吉藤 今はカフェで接客させるイベントを開催するなど、いろいろな実験をしています。
オリヒメDはあくまで研究機であり、販売目的ではありません。
実験を通して、接客業務に最適な機能は何かなどを検証している段階です。
その人が必要とされる人間になるために、頑張りたい人が頑張れるためのツールを作りたい。
重要なことは、本人が社会に参加しているという実感を得ることです。
── 少子高齢化が進んでいますが、オリヒメが広く使われるようになれば、高齢者も社会参加を続けられますね。
吉藤 現在の日本は健康寿命(心身ともに自立し、健康的に生活できる年齢)が73歳前後で、平均寿命は80代前半。
つまり、高齢者は治ることのない体と付き合いながら、10年は生きていかなければいけない。
そして体を動かすことができなくなった時、人と会わなくなると気力も低下し、自分を頼る人を失った時に生きがいがなくなっていきます。
私は孤独がうつや認知症の原因になると思っています。
不登校で引きこもっていた中学生当時の私ですら、孤独によって体が弱くなり、意味もなく徘徊(はいかい)することもありました。
もう同じ経験はしたくありません。
外出困難になった高齢者は我々の先輩であり、我々も30年後、40年後にそうした状況に直面します。
その時にどうやって生きていくかの準備を、今から先輩たちと一緒にやっていきたいと思います。
(本誌初出 「ないなら、つくる」=吉藤オリィ・ロボットコミュニケーター/820 20201208)
●プロフィール●
吉藤オリィ(よしふじおりぃ、本名:吉藤健太朗)
1987年生まれ、奈良県出身。小学校5年生から3年半、不登校を経験。
県立王寺工業高校時代に電動車椅子の新機構の発明に関わり、2004年高校生科学技術チャレンジ(JSEC)で文部科学大臣賞、翌05年のインテル国際学生科学技術フェア(ISEF)でエンジニアリング部門3位。
高専を経て早稲田大学創造理工学部へ進学し、10年に分身ロボット「OriHime」を開発。
12年に株式会社オリィ研究所を設立。16年に同大学を退学。
〔2020年12/17(木) サンデー毎日×週刊エコノミストOnline〕 

なぜ渋谷には「車椅子の人」がいないのか? 分身ロボット開発者が突きつける「孤独」という名の社会病理
外出困難な人たちが遠隔でカフェの店員に
難病や重度障害で外出困難な人たちが自身の代わりとなるロボットを遠隔操作し、店員として働くカフェがあります。
しかも場所は、渋谷のスクランブル交差点の目の前。一体どんなカフェなのでしょうか。
【調査結果】これが現実。日本の「孤独死」の実情
カフェの名前は「分身ロボットカフェDAWN Ver.β(ドーン・バージョン・ベータ)」。
2020年1月16日(木)から1月24日(金)までの期間限定で、スクランブル交差点の目の前にある渋谷「QFRONT」(渋谷区宇田川町)7階のブック&カフェ「WIRED TOKYO 1999」内でオープンしています。
オリィ研究所(港区芝)が開発を手掛ける分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」が、カフェのサービススタッフとして実際に働く試み。
分身ロボットカフェを使った取り組み自体は、これまで日本財団ビル(港区赤坂)や「3×3 Lab Future」(千代田区大手町)など、クローズドな条件で実験的に行われてきました。
今回は渋谷スクランブル交差点の目の前にあるカフェで、より大勢の人たちや渋谷の若者に開かれた格好となっています。
1月16日(木)に行われたプレス向け体験会では、オリィ研究所の共同創設者 代表取締役所長、吉藤オリィさんが開催意図を説明。
自身も体が弱く3年半の不登校を経験し、“孤独の解消”の必要性を強く感じてきたといいます。
テクノロジーによって孤独の要因となる「移動」「対話」「役割」の障害を取り除くことを目指し、「OriHime」の開発を進めてきました。
飲み物を配膳する「OriHime-D」。おぼんにたくさんの飲み物が乗っていても安定感がある。会話も楽しめる。(画像:秋山悠紀)
「身体至上主義」が孤独を助長する
吉藤さんは、現在のあらゆるサービスやお店などは人間の体が元気に動くことを前提に作られている「身体至上主義」だと指摘します。
しかし、外出困難は心身の障害のみならず、高齢化や物理的な距離感など、さまざまな事情によって起こります。
「自分たちが寝たきりになったとき、どのように孤独にならずに生きて行けばいいか。
乙武さんやれいわ新選組の木村英子参院議員など、障害者の希望の星は増えてきましたが、誰もが彼らのようになれるわけではありません。
今、『パイロット』として働いてくれている人たちは、寝たきりの患者ではなく寝たきりの先輩として、生き方や働き方のモデルを見せています」(吉藤さん)
吉藤さんが「パイロット」と呼ぶのは、「OriHime」を操作する人たちのこと。
主に筋萎縮性側索硬化症(ALS)や脊髄性筋萎縮症(SMA)、血液がん、呼吸障害、といったさまざまな事情で外出困難な人たちです。
「分身ロボットカフェDAWN Ver.β」は、各テーブルに配置された手のひらサイズの分身ロボット「OriHime」が注文を受けて、店舗に送信。
人間のスタッフが用意した飲み物や食べ物を全長約120cmの「OriHime-D」が各テーブルまで配膳します。
手や首の動き、移動も自分たちで操作しているそう。
ロボットにはカメラ、マイク、スピーカーが搭載されており、客側はパイロットの声のみが聞けますが、パイロットには客側の様子が見えるようになっています。
また目が見えなくても指先だけで簡単に操作できたり、目しか動かなくても視線入力で文字を入力して読み上げられたりと、簡素化と自動化を実現したテクノロジーを使用。
どんな人でも働くことができるだけでなく、客側もしっかりとサービスを享受できます。
実際に分身ロボットカフェを体験
実際に席に着いて体験することに。
筆者たちのテーブル担当は、日常レベルの生活に著しい制限がある筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)を患う「あかねちゃん」です。
自己紹介と注文を受けた後は、自由にあかねちゃんとおしゃべりできます。
あかねちゃんは秋田市の自宅にいながら、電動ベッドを起こした状態でパソコンの画面を使って操作しているそう。
大学卒業後、すぐに病気が発症したため働いたことがないので、働けてとてもうれしいと言います。
病気のことや秋田の食べ物のこと、「OriHime」を使ってパイロットたちと遠隔サッカーをしたことなどを気軽に話してくれました。
高知県のみかん農家から「みかんの収穫ではひとりで孤独だから」ということで、話し相手として呼ばれたこともあるんだとか。
あかねちゃんと話していてまず驚くのが、そのクリアな音声。実際にそこにいるかのようです。
また隣にある画面にはあかねちゃんが随時写真を表示しながら話してくれるので、リアルタイムに同じ時間を共有している実感も強く感じました。
また最後に、筆者だけがひとりテーブルに残った際には「静かにコーヒーを楽しまれたいなら、私は黙っていますので」と気遣ってくれました。
「あれ、本来あかねちゃんを気遣い、手を差し伸べるべきなのは筆者では……?
いや、このお店ではお客さんと店員なのだし、そもそも私たちは障害の有無は関係なく人間としてフラットな関係だ。
どちらも店員になり得るし、どちらもお客さんになり得る……」
と、自分の価値観や考えが揺らいでいくのがわかりました。
単なる飲食サービスとしてではなく、パイロットとの出会いによって新しい知見やコミュニケーションを得られる価値がそこにはありました。
なお、パイロットとは連絡先交換も自由なんだとか。
お互いの出会いを推奨し、そこから新たな仕事やプロジェクトなどへ花開いてほしいという願いがあるためだそうです。
なぜ、渋谷の街には車椅子の人がいないのか
吉藤さんに渋谷という場所を選んだ理由について改めて話を聞くと、「必要性の可視化のため」と話してくれました。
「渋谷で、車椅子の人やALS患者って見ませんよね。そうすると、渋谷によく行く人は『そんな人たちはこの世にいない』と思います。
だって見たことがないから。でも渋谷のような街でパイロットと出会えば、その存在を知り、当事者意識が芽生えるかもしれません。
障害や孤独、社会参加について考え、何が必要なのかを考えるきっかけになるかもしれません。
そしてパイロットたちが『遠隔操作ではなく、実際に渋谷に行きたい!』とどんどん集まれば、必然的にバリアフリーの必要性が高まり、渋谷の街がもっとバリアフリー化していくかもしれないですよね」(吉藤さん)
実際にパイロットからは、「渋谷のカフェで働けるなんておしゃれでうれしい」という声も多いと言います。
あかねちゃんもカメラから店内を眺め、「このカフェも行き交う人もおしゃれだから、テンションが上がります」と言っていました。
街の持つブランド力がパイロットたちの働くモチベーションにつながっていることを見ても、渋谷でこうした取り組みが行われることはとても大きな意義があるでしょう。
「分身ロボットカフェDAWN Ver.β」への参加は予約制。
空きがある場合には、当日入場も受け付けているそうです。
この機会にぜひ、訪れてみてはいかがでしょうか。
〔2020年1/20(月) アーバン ライフ メトロ 秋山悠紀(ライター)〕


障害者が分身ロボ使い接客、オリィ研の実験で見えたこと
ヒト型のロボットが、飲み物や料理をテーブルまで運んだり、利用客と会話をしたりする
遠隔にいる人とコミュニケーションを取れる分身ロボットを開発するオリィ研究所(東京・港)が、その分身ロボットを使って接客するカフェを1月16~24日までの期間限定で東京・渋谷で開いた。
難病や重度障害で外出が困難な人でも社会参加できる場を提供するのが目的だ。
【関連画像】テーブル上には小型のコミュニケーションロボットを配置
飲食大手のカフェ・カンパニー(東京・渋谷)がJR渋谷駅前に持つカフェ「WIRED TOKYO 1999」内で実施した。
店舗の一角を分身ロボットが働くゾーンとし、移動や旋回ができるヒト型ロボットが、テーブルまで飲み物や料理を運んだり、利用客と会話をしたりする。
テーブル上にも小型のコミュニケーションロボットを置いてあり、利用客は会話を楽しめる。
SNS(交流サイト)などで話題になったこともあり、事前予約で満席。整理券を配って対応した日もあった。
分身ロボットを操作したり、利用者とコミュニケーションを取ったりするのは、「パイロット」と呼ばれる人たちだ。
そのほとんどは事故や神経難病などで療養生活を余儀なくされている。
SNSなどを通じて参加を呼びかけ、応募があった人にアンケートを行い、より「情熱」を持った人をパイロットに選んだという。
パイロットは原則パソコンを使ってロボットを操縦する。障害の度合いに応じて視線入力のツールなども利用できるようにした。
オリィ研究所では2018年から分身ロボットカフェのテスト運用を何度か実施してきたが、今回は約30人のパイロットがシフトを組んで参加した。
海外から参加したパイロットもいる。
パイロットには時給1100円の報酬を支払うというが、パイロットの参加の動機はもちろん報酬ではない。
「障害年金をもらっていても、何もしないのがつらい、社会参加して人の役に立ちたいと考えている人は思った以上にいる。
そういう人たちに働く機会を提供できれば」とオリィ研究所の吉藤健太朗CEO(最高経営責任者)は言う。
オリィ研究所はコミュニケーション用の分身ロボットを事業化するスタートアップとして注目されてきた。
自らも体調不良などで不登校を経験したという吉藤氏が、入院中の患者でも学校に行けるようになればと開発した高さ23cmのコミュニケーション用の小型ロボット「OriHime(オリヒメ)」を事業化するために、2012年に設立した。
OriHimeは遠隔コミュニケーションのツールだが、遠隔操作で肉体労働もできるツールとして高さ120cmのOriHime-Dを開発した。
これらの分身ロボットが働く場として考えついたのが分身ロボットカフェだ。
「分身ロボットは重度障害者でも社会進出できるツールとしてマスコミにも度々取り上げられてきたが、それを社会実装できなければ意味がない。
障害者が自分でもできそうだと思える働き方は何だろうと考えた結果、カフェにすることにした」と吉藤氏。
「カフェだと、ただ働くだけでなく、出会いの場になるというのも大きかった。
カフェのウエーター、ウエートレスというよりも、スナックの店員に近いかもしれない」(吉藤氏)。
実際、カフェの利用者はロボットのパイロットとコミュニケーションを行うことを目的に来店するため、どのテーブルでも会話が弾んでいる様子だった。
これまでのテスト運用に参加したパイロットの中には、カフェの利用者に自分を売り込んで、別のお店で接客のテレワークに就いた人もいるという。
また、外国人の接客をしたいと、パイロット同士で自発的に英語の勉強会を開くといった動きもある。
今のところ分身ロボットカフェは実験的な取り組みのため、企業の協賛金とクラウドファンディングで集めた1000万円の資金で運営している。
オリィ研究所では20年度にもカフェの常設化を実現させたい考えで、将来的には経営の自立化が課題になる。
障害者が社会参加できる場を提供できるか。同社の取り組みに注目していきたい。
〔2020年1/29(水) 日経ビジネス 橋本宗明〕

カタツムリの研究から始まった、孤独を救う「分身ロボット」誕生秘話 #30UNDER30
オリィ研究所の共同創業者・結城明姫は、「世界を変える30歳未満」として日本を代表するビジョンや才能の持ち主を30人選出する「30 UNDER 30 JAPAN 2019」のサイエンス部門で選出された。
結城が共同創業者でCOOを務めるオリィ研究所は、人類から「孤独」をなくすことを目的としている。
孤独をなくす? どうやって? 誰しもそう思うだろう。
結城が「孤独」という問題に取り組む理由に迫ってみよう。
オリィ研究所が開発したのは分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」である。
メディアでも度々紹介されているからご存知の方も少なくないはず。
結城が、会議室の机に置いた小型のOriHimeを見ながら、こんな話をする。
「利用者は、OriHimeを遠隔操作するときの感覚を、『憑依する』『パイロットとして中に入る』と形容してくれます」
「憑依する」感覚になるのは、深い没入感が得られるからで、能面のような顔にヒントがある。
まず、OriHimeの仕組みはこうだ。
OriHimeは「分身」型のロボットである。
例えば、あなたが病院に入院していると考えてみてほしい。
見えるのは窓の外の風景のみ。車椅子で院内を移動することはできるが、自由自在に動くことはできない。
そこで、「分身」であるOriHimeを「行きたい場所」に置いてもらう。
学校の教室、あるいは旅行者が外国に行く時に小型のOriHimeをリュックに入れて持っていってもいい。
OriHimeにはカメラとマイク、スピーカーが搭載されており、インターネットと接続することで、離れた場所にいる人とコミュニケーションができる。
憑依の感覚について、結城はこう言う。
「タブレットのような平面のモニターだと、他の場所を繋ぐための『窓』として受け取られます。
そのため、平面モニターに操作者の顔を映すロボットでは、操作者自身が人の輪に入っていくことが難しかったんです。
でも三次元の顔があって物体が目の前で動いていると、周りの人が触ったり気軽に声をかけたり、その場にいるような感覚でコミュニケーションができる。
現段階ではいまの形が最も人の輪に入りやすく、憑依する感覚を実現してくれます」
つまり、「コミュニケーションの距離感」を、能面のような顔のロボットにすることで縮めることができたのだ。学校の教室を見回しながら、友人が近寄ってきて、表情を近くで見ることができ、あたかも「その場にいる」ような感覚を体験できる。
「身近」を生み出すロボット
左下に映るロボットが「OriHime」
通信技術の発達で、国境を超えた伝達は簡単になったが、「その場にいるような感覚」をもたらしたのは画期的だろう。
「身近」をつくりだしたのだ。
OriHimeはもともとは病気や身体障害、高齢などが要因で移動制約を抱える人々の「分身」として開発された。
サイズや形態は用途によって異なり、リモートワークやテレワークに最適化された机におけるほどの小型サイズから約1mほどのものまである。
現在、月額レンタル制で展開されている。
しかし、なぜ若い結城が「分身」で「孤独」の解決を目指したのか?
実はその背景に、彼女自身の挫折がある。
“ソクラテスの問答”を仕掛ける父親
結城は数々の科学コンテストの賞を総なめした「天才少女」だった。
小学生の頃に取り組んだのが、カタツムリの研究だ。
「とにかく可愛くて」と見た目から好きになったカタツムリを観察しているとき、ピーマンを与えたときに糞が緑色になることへ疑問を抱いた。
物理学の教授だった母親は「じゃあ一緒に実験しようか」と、科学的実験の初歩を教えた。
「科学コンテストで賞をもらって褒められる成功体験を味わってから、調べることや観察自体が好きになりましたね」
さらに現在の結城を形成した要素として、両親の存在は欠かせない。
思考の癖に関しては宗教哲学者だった父親の影響が大きいという。
「物心がついたときからそうでした」と苦笑いしながら結城は振り返る。
「『今日は砂遊びをしたい』と言うと『なんで?』と必ず聞かれました。
『お友達と遊んで楽しかったから』と答えると『なんで?』と、ソクラテスの問答のように、本質に辿りつくまで詰められるんです。
でも研究とは『なんで?』を解き明かすことの連続。
いつしか研究への抵抗感がなくなって、楽しいと感じるようになりました」
あらゆるものが彼女の研究対象となった。
海辺に落ちているガラス片の色を落ちている場所ごとに比較したり、庭に突然生えたタンポポの奇形を観察したり。
小学校、中学校に進学後も、好奇心は尽きるどころか研究はより本格化した。
病を機に「もうひとつの体」を求めるように
なかでも結城が強い関心を持ったのは、水だ。
蛇口から流れる水の中に空気の柱が見えることに疑問を抱き、高校1年生から流体力学の研究を始める。
その結果を発表した「高校生科学技術チャンレジ(JSEC)」で文部科学大臣賞を受賞。
さらにJSEC入賞者の中から選抜された結城は、アメリカで開催される世界最大級の科学コンテスト「インテル国際学生科学技術フェア(ISEF)」の出場資格を得た。
心待ちにしていたISEF参加だったが、出場は叶わなかった。突如、結核を患ったからだ。
結城は入院と療養で約半年もの間、家から外に出られなくなった。
ISEFに行けないことは悔しかったが、それ以上に辛かったのが孤独だった。
「狭い世界に閉じ込められている感覚でした」と彼女は振り返る。
「学校に通えない、家族と旅行に行けない、会いたい人と会えない。
病室の窓からは四季の移り変わりも感じられませんでした。
精神的には元気だったので、『身体がもうひとつあったら』と強く願うようになったんです」
結核が完治した高校2年生のときにJSECへ再び出場。
グランドアワード優秀賞を受賞しISEFに参加することになった。
このときに、共同創業者である吉藤健太朗との交流が深まった。
ALS患者の存在意義を生む
07年、吉藤の発案から、人の孤独を解消するロボット『OriHime』の原型となるアイデアが生まれる。
かつて不登校の経験をもつ吉藤は、高校時代にはジャイロセンサによって傾きを感知し補正する車椅子を開発した異才だ。
不登校時代に「人との関わりによって救われた」という原体験をもつ吉藤と、闘病時に孤独を味わった経験のある結城は意気投合。
「孤独の解消」という理念に共感した。
発案から3年後の10年にOriHimeの初号機が完成。
創業メンバーはみな一般企業での勤務経験もなく、ビジネスについてはド素人。
当初はNPO化してやっていくのはどうかという議論もあった。
しかし、翌年の11年にビジネスの方向に舵を切ることを選択した。
「OriHimeのサービスを持続的に、かつより多くの方々に提供するには、組織化してビジネスとして続けていくことが必要だと考えました」
ビジネスとして持続性を持たせるために、吉藤と結城の最適な役割分担は自然と決まった。
「エンジニアというより、発明家です」という吉藤がアイデアを「発散」し、結城は現実的にどうすれば形になるかを考える。
彼女の役割は、ビジネスサイドと接点をつくる役割だ。
当初ビジネスの経験がなかった創業者たちは、経験ある新たな社員、理想に共感してくれる協力者からフィードバックを募ることにより、資金難を乗り越え、OriHimeの認知を着々と広めた。
「利用者さんの忘れられない話があるんです」と結城は言う。
あるALS(筋萎縮性側索硬化症)患者がいた。
妻と2人の小学生の娘がいるが、入院生活で家に帰ることができず、病気の進行によって体が自由に動かくなる。
家族へ迷惑をかけてばかりいると感じる彼は「生き続けるかどうか」非常に悩んでいた。
そんなときOriHimeと出会い、希望を見出したという。
「『やっぱり、父親のいない子ども達にしたくない』と強く思うようになったとおっしゃっていました。
OriHimeを家に置いて利用することで、子ども達とのおままごと遊びを一緒にできたり、勉強を教えられたりできるんだ、と嬉しそうに言ってくれて。
そして『家庭の中に、父親としての価値がちゃんと存在するんだと思えるようになった』と言ってくださいました。
本当に感動したことを覚えています」
OriHimeは孤独を解消するだけでなく、利用者の存在意義にも光を当てる。
そして今後、OriHimeをはじめとしたコミュニケーションテクノロジーを海外にも広げたいと語る。
「身体的、精神的、距離的障害の問題は人類共通の悩みです。
本人の意思と関係なく社会参加ができないために、孤独を感じている人は世界中にいます。
OriHimeは、彼ら、彼女らが“望む場”に入れるテクノロジーであり続けたいです」
ゆうき・あき◎国際基督教大学教養学部卒業。
高校時代に流体力学の研究を行い、2006年の高校生科学技術チャレンジで文部科学大臣賞、YKK特別賞をダブル受賞。
インテル国際学生科学技術フェア(ISEF)出場を目前に結核に倒れ長期入院を経験するが、翌年再出場しグランドアワード優秀賞に。
12年、吉藤健太朗、椎葉嘉文とともにオリィ研究所を設立。
〔2019年9/6(金) Forbes JAPAN Forbes JAPAN 編集部〕

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