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カタリバ

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2020年6月26日 (金) 16:03時点におけるMatsu4585 (トーク | 投稿記録)による版
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カタリバ

学習の遅れに焦り、夏休みは短縮、子どもに疲労も? NPOカタリバ今村久美さん 今こそゆるい居場所を
学校再開でも焦らないで
学校が再開されてもなお、新型コロナウイルス感染の影響は続きます。
早くも、「子どもたちが疲れている」という声も聞こえてきます。
誕生して約20年になる教育関連の認定NPO法人「カタリバ」を運営し、安心安全な子どもたちの「第三の居場所」を作り続ける今村久美さん(40)は「今は、“教育の遅れ”以上に大事なことがある」と話します。
(写真は、「カタリバごはん」サービスでお弁当を渡す今村さん。
今年6月から就学援助等の支援を受ける高校生以下のいる世帯に、家族分を月2回提供している)
話を伺った人 今村久美さん 認定NPO法人「カタリバ」代表
今村久美さん(いまむら・くみ)1979年生まれ。
慶應義塾大学卒。2001年にNPOカタリバを設立。高校生のためのキャリア学習プログラム「カタリ場」を開始。
2011年の東日本大震災以降は子どもたちに学びの場と居場所を提供するなど、社会の変化に応じてさまざまな教育活動に取り組む。
ハタチ基金代表理事。地域・教育魅力化プラットフォーム共同代表。中央教育審議会委員。
家庭内学習を継続する「積極的不登校」の兆しも
カタリバは東日本大震災の後、被災地で子どもたちの支援として放課後学校「コラボ・スクール」を始めた。
写真は、宮城県女川町の「女川向学館」で活動したときの今村久美さん=カタリバ提供
――東日本大震災の折、今村さんは宮城県女川町の避難所に寝泊まりして子どもの様子を見て回り、地元の人と深く交わりながら放課後支援施設の開設にこぎ着けました。
そうした経験と比べて、コロナ禍の支援の難しさは、どんなところにありますか。
東北に支援に入ったときは、たくさんの方が身を寄せ合って避難所で生活していました。
仕事も家も失った人が多数いらして。今思えば、それぞれの家族がはらむリスクを発見しやすいという側面はあったんですね。
例えば、避難所で怒鳴り散らしているお母さんがいたら、つらい顔をしているお子さんに隣のお家の人が、おいでって声をかけたり。
学習の支援が欲しいと思う子がいれば、また別の人がそばで見てあげたり。
コロナ禍でも、多くの人が仕事をなくしたり、仕事に影響を受けたりしたわけですが、緊急事態宣言下の自粛生活においては、もう、基本はみんなが家にいなきゃいけない。
集う所での支援はNGだと。そこが大きく違う点でした。
――オンライン上の学びと居場所を届ける「カタリバオンライン」を3月4日から開いて、今も続けています。
小中学校の全国一斉休校開始の2日後と、初動が早かったですね。 毎日オンライン上でたくさんのプログラムが開催され、好きなプログラムにウェブ会議システムのZoomを使って参加できます。
最初は数百人ぐらいが全国から集まり、そのうち登録する小中高の子どもたちが1800人にも上りました。 毎日決まった時間に「朝の会」と「夕方の会」を開きました。学校に行かないことで乱れがちな生活習慣を整えられたらと思って。
オンラインによる学習会のほか、クラブ活動とか、文化祭とか、盛りだくさん。
世界中からボランティアの方々が集まってくれて、子どもたちを主体にした活動を展開してきました。
親御さんが働きに出ざるをえない家庭もあり、日中一人で過ごすお子さんが、「ランチ会」で画面に自分の昼ごはんを見せ合いながら食べているシーンも見られました。
保護者会も開いて親御さんとも話しました。3月の頃はまだ、週末は開催していなかったんですが、「うちの子は普段、学校がつまらなくて行きたくないと言って登校をしぶっていたのに、ここに参加してからは日曜日になると『月曜日が楽しみ~』と言い出して、びっくりしました!」なんていう声もありました。
「カタリバオンライン」は、子どもたちが安全に参加できる場として開きました。
「東日本大震災のときのように、今回も多くの家族が仕事をなくしてしまうんじゃないか」と真っ先に思ったからです。
仕事や収入面で問題が起きると、大人の余裕がなくなり、家族との関係がギクシャクしてくる。
もともと家族との関係がつらい子たちこそ、大変なことがいろいろ起きてしまうんじゃないかって。
そうするとオンラインリテラシーの高い子なんかが、SNSなどを通じていろんなところに人間関係を求めてしまって、リスクのあるつながりを持つかもしれないと不安がよぎりました。
――その後はどのような声を聞きますか。
一斉休校解除が見えてきた5月20日から22日に、カタリバオンラインを利用する保護者へのアンケート(回答者219人)を行ったところ、「学校が始まっても継続してカタリバオンラインを利用したい」と答えた人が84.6%にも上ったんです。
家族が抱える悩みの大きなところは、経済と精神面の問題。
利用者の20.5%が「コロナの影響で収入が減り経済的な不安がある」と答え、23.7%が「コロナの影響で家族が疲弊している」と回答しています。
さらに、こんな声もありました。
「学校が始まっても、集団感染が怖い」
「長期休暇で、子どもが『毎日行かなくてもいい』という経験をしてしまった」
「オンラインでも学びが続けられるなら、うちの子にはそれを選択させたい」
今でも感染の不安が消えたわけではありません。
今後は、家庭内学習を継続する形で親子が「あえて行かない」選択をする「積極的不登校」というのも増えていく可能性はあると感じています。
「学習の遅れ」という言葉の苦しさ
休校中と学校再開後の取り組みについて語る今村久美さん=上野創撮影
――学校が再開しても、また違った悩みが出てきているのですね。
学校が平常モードに戻っていく中で私が心配しているのは、子どもたちがものすごく疲れてきているんじゃないかなということです。
実際に、親御さんから「子どもが疲れている」という声を聞いています。
首都圏にお住まいのあるお母さんから伺ったのですが、緊急事態宣言がいよいよ明けそうだということになって、5月の半ばから一気にダーッと宿題が出たとのこと。
しばらくは「3密」回避のために、分散登校からスタートしている学校も多いですし、「学校でフォローできない分は、しばらくは家庭で対応して」というのは仕方ありません。
ただ、それにしても、半端じゃない量の宿題だったと。
再開したものの、学校生活に余白がなくなってしまった。
せっかく学校に戻れても、楽しみにしていた社会科見学も、林間学校も、遠足もみんな中止になってしまったと嘆く子どももいます。
それに、都内のある学校では、少し長めの20分休憩がカットされ、トイレ休憩オンリーになってしまったとのこと。
学校が楽しみな場所である前に、ひたすら勉強をさせられる場所になっているなんて、子どもたちにはつらすぎますよね。
一方で、学校の先生たちも悩んでいます。周りからのプレッシャーというのが大きく二つあって、一つは「学習の遅れを取り戻せるか」。
先生が焦るのは、保護者の求めに応じるから、という側面もあるのかもしれません。
保護者は100人いたら100人とも違うことを言いますが、現場はどうしても、声が大きい方に合わせるということになりがちです。
「学習の遅れ」という言葉が学校現場を苦しめている可能性は否めません。
もちろん、受験生が切実なのはわかりますから、個別に丁寧な議論を進める必要があるでしょう。
「とにかく今年の遅れは、今年のうちに取り戻そう」みたいな勢いばかりの学校だと、子どもたちがあっぷあっぷになっちゃう。
私なんかは、「学校は楽しいところである」という大前提に戻すことが今、一番優先すべきことなんじゃないかと思うんです。
焦り、悩む教師 「3密パトロール」も
中央教育審議会初等中等教育分科会に今村久美さんらが提出した資料の一部
――ものすごく感染を怖がる保護者と、比較的気にしていない保護者と、温度差はありますよね。
一方で、社会も集団感染ということに手厳しい。
はい。先ほどお話しした、先生方の二つのプレッシャーのもう一つが、「とにかく、うちの学校からコロナ感染者を出してはいけない」ということなんです。
教師が「3密パトロール隊」みたいになっているという話も耳にしました。
休み時間に子どもが集まっていると、先生が駆けつけてピピピピーみたいな。
実際には笛までは鳴らさないですが、そのぐらい現場が神経質になっている証拠でしょう。
学校再開後すぐに、北九州の小学校でクラスターが発生したというニュースが流れたときも、SNSなどを通じていろいろ騒がれていて。
先生方も子どもたちも、相当心に傷を負ったのではと心配していました。
「たとえ誰かがコロナになったとしても、たたかない」っていう約束を、何とかみんなでできないものでしょうか。
そもそも日本の教育システムには、コロナ以前から変えていかなければならない課題が山積みでした。
一斉授業による詰め込み教育もそう。オンライン教育の普及の遅れもそう。
後で振り返ったら、「コロナの時期は大変だったけれど、あの経験を経たからこそ、この環境をつかめたね」という未来につなげていかないとって思うんです。
――5月26日には、今村さんを含む中央教育審議会の委員の方々が初等中等教育分科会で、資料「新型コロナウイルス感染症に対応した新しい初等中等教育の在り方について【*注】」を提出されました。ここに書かれている「成り行きの未来」というのがとても暗い未来像で、こうならないといいなという感想を持ちました。 「成り行きの未来」として打ち出したのは、このまま何も対処しなければ、時間的・精神的な余白を無くした学校で置いていかれる子どもたちが続出し、人間関係のトラブル・問題行動・いじめ・不登校・退学等が増加しますよという内容でした。
それと、先ほど私が触れた「積極的不登校」についてもこの資料で言及しているんですが、この動き自体は、実は私はポジティブにとらえています。
というのも、これまで多くの子どもたちは、たまたま生まれた地域の学校に通い、たまたま配置された先生、友達の中で学ぶ環境に置かれていたわけです。
今回のコロナショックで、学校以外の環境で学ばざるをえなくなった子どもたちは、どこで何を学ぶかを選ぶことになった。
それは、今まで受動的だったとも言える学びの選択権が、子どもたちに渡ったともいえます。
その豊かさ、面白さに気づいた子どもたちが、積極的不登校を選択しようとしているという風に見えます。
だからといって、私のメッセージは決して、「もう学校はいらないよね」ではありません。
「今後、学校が果たす役割とは?というところが問われてくる」と明確にしたかったんです。
休校期間を経て、先生や学校がこれまで果たしてきた重要な仕事がわかったはず。私自身が切実に感じたのは、学校の福祉的機能の大事さです。
今から3年間ぐらいを「ウィズコロナ」期間と設定し、学びのICT環境整備も含めて、「ひとつの社会実験」として弾力的にいろいろと試してみるのが良いのではないか。
私たち委員は、この資料を通じて、「あれこれ皆で考えていきましょう」と提案したいと考えました。
「貧困の連鎖を教育で食い止めたい」
インタビューに答える今村久美さん=上野創撮影
――今後はどんな支援を展開していきますか。
今、もしかしたら子どもたちは、学校に楽しさを求めづらいかもしれない。
例えば、私たちが全国で展開してきた「カタリ場プログラム」という、学校での出張授業があるんですが、コロナ禍で全部キャンセルになってしまいました。
学校が3密になっちゃうから、その手のものって、全部なくなっているんですよね
学校再開後こそ、みんながゆるく集まれる居場所を増やしていきたいんです。
実はカタリバオンラインも、体験機会の一つなんですね。
「フェスをやろう」と呼びかけたら、「私があやとりを教えます」とか、「僕が人狼ゲーム大会を担当します」とか、子どもたちがどんどん自主企画を出してきました。
あと、今回の一つの成果は、オンラインこそ、はっちゃけられる場所にしていけるという可能性を示せたことです。
普段は不登校気味で学校ではおとなしい子どもが、ダンス部で楽しそうに踊りを披露していたシーンも見られました。
今後はリアルでも、オンラインでも、両方につながりの場を用意しておきたいと思っているところです。
一方で、ずっと気がかりだったのが、オンラインにつながれない子どもたちのこと。
ICT 環境がないと教育とつながれない世の中になるなんて、コロナ以前は想像もしていませんでした。
オンライン教育や学びのICT環境の整備という課題においては、同時に、「福祉を受けるべき子どもたちの学びをどう支えていくのか」についても、本気で取り組んでいかなければならないと考えています。
カタリバでは、パソコンとWi-Fiを無償で貸与する「キッカケプログラム『奨学PC』」というプロジェクトを実践中で、6月7日にひとまず90台のパソコンを生活困窮世帯の子どもたちに発送したところです。
私は何としても、貧困の連鎖を教育で食い止める可能性を探っていきたい。
困難を背負った子どもたちこそ、今回のコロナの経験をチャンスに変えていってほしいんです。
【*注】中央教育審議会初等中等教育分科会「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」に関わる今村久美さん、岩本悠さん、香山真一さん、神野元基さんらが取りまとめた資料。
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/content/20200526-mext_syoto02-000007440_44.pdf?fbclid=IwAR3Yq4uF_3yrBZwP7rjqatKLsg33MCPZZQmOtW4TAHc9Fz5DtZmTGqGMNDY
古川雅子 ノンフィクションライター
〔2020年6/19(金) 朝日新聞EduA〕

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