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岡山に夜間中学校をつくる会

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2019年3月3日 (日) 19:56時点におけるMatsu4585 (トーク | 投稿記録)による版
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岡山に夜間中学校をつくる会

所在地 岡山県岡山市
TEL
FAX

「オレ働こうと思っても、字が読めん」ある教え子の嘆きから始まった「自主夜間中学」
「おはよう…いや、こんばんは、ですね」
だいぶ日も傾いた、土曜日の夕方6時。岡山駅前の雑踏を縫いながら、国際交流センターにやってくる人たちからは、そんな挨拶が聞こえます。
かばんの中には、鉛筆とノート。これからここで、「自主夜間中学」の授業が始まるのです。(黒部麻子)
10代から80代までの「生徒」たち。
さまざまな事情でじゅうぶんな義務教育を受けられなかった人たちが、この「自主夜間中学」で毎月2回、漢字の読み書きや計算、英語などを学んでいます。
運営するのは「岡山に夜間中学校をつくる会」。「年齢や国籍を問わず、すべての人に学びの場を提供したい」との思いで、現役の学校教員や元教員、民間企業に勤める人、主婦、大学生などが集まり、ボランティアで運営しています。
代表を務める城之内庸仁(しろのうち・のぶひと)さん(42歳)は、現職の中学校教諭です。
岡山市内の中学校で英語を教える傍ら、夜や休日の時間を使って、自主夜間中学をつくりあげてきました。
生徒のニーズに合わせた個人指導
ここでの授業のスタイルは、マンツーマンの個人指導。漢字を覚えたい、計算ができるようになりたい、基礎的な日本語会話を学びたいなど、生徒それぞれのニーズとペースに合わせて勉強を進めます。
授業料は無料です。
しかも、小中学校の教科書や参考書、ドリルなどの教材はすべて、寄付やスタッフから集めた会費で購入しています。
「2017年に会を設立してから手弁当でやりくりしてきましたが、人数が増えるに従って教室を増やすなど、資金が必要になってきました。
そこで昨年(2018年)の夏に、クラウドファンディングで支援を募りました。
夜間中学でクラウドファンディングを利用するのは新しい試みでしたが、期間内にNHKの『ハートネットTV』で取り上げていただいたこともあり、目標額を大きく上回る、140万8000円のご支援をいただきました」(城之内さん)
10月には、船で離島に渡り、1泊2日の研修合宿も実施。
ここでは、普段の授業ではカバーできない実技教科を中心にカリキュラムを組み、ピザ作り(家庭科)や星空観察(理科)などを楽しみました。
さまざまな事情で通う夜間学校の生徒たち
夜間中学の試みは、義務教育制度ができた1947年に始まりました。
戦後まもない混乱期、学校に行けない子どもたちが多く、公立中学校の2部授業という形で、夜間学級が発足しました。
貧困を抱える子どもたちだけでなく、中国などからの引揚者、在日コリアンなども多く学んでいました。
小学校さえ卒業していない15歳以上の「未就学者」は、現在でも、全国に12万人以上いることがわかっています(2010年国勢調査)。
また、現在では、不登校経験者やニューカマーの外国籍の人なども多く通っています。
「形式卒業者」といって、不登校で学校に通っていなかったけれど形式的に卒業資格を取得した人たちも、2015年から夜間中学に通えるようになりました。
城之内さんの作った「自主夜間中学」では、2019年2月現在で、生徒の登録は70名を超えています。
皆さまざまな事情で義務教育をきちんと受けられなかった人たちです。
「80代のMさんは、瀬戸内海の離島に生まれ、小学校卒業後から家計を支えるために島を出て、ずっと働き詰めで生きてきました。30代のI君は小児糖尿病を患い、小3からほとんど学校に行っていませんでした。電車やバスに乗っても『運賃』という字が読めない。行き先の漢字が読めない。そうした苦しさを抱えながら、誰にも言えずに生きてきた人たちです。外国人技能実習生や、不登校の現役中学生も通ってきています」(城之内さん)
多様性のある環境だからこそ学べることは多い
このように、さまざまな生徒が通う「自主夜間中学」。だからこそ学べることは多いと城之内さんは指摘します。
「同年代の生徒しかいない中学校と違って、夜間中学は異年齢の集団です。
義務教育未修了者、形式卒業者、外国人、障がい者など、抱えている事情もさまざま。
そうした異質集団の中で自分を出せるという子もいます。
それに何より、夜間中学の生徒さんは皆、厳しい人生の中でも、生きることを諦めなかった人たちです。
そうした人から学べることはとても多いんです」
ある不登校の中学生は、「自主夜間中学」で80代のMさんと出会い、貧しかった頃の話を聞くようになりました。
次第に前向きになることができた中学生は、保健室登校ができるようになったそうです。
こうした生徒間の交流による変化は、全国の夜間中学で起きているといいます。
「金子みすゞの『みんなちがって、みんないい』という詩がありますが、夜間中学では、言葉ではなく実感として、それがわかる。そんな良さもあるんですよ」
自主夜間中学の教壇に立つ城之内庸仁さん
教え子の言葉で決意
そんな「自主夜間中学」ですが、城之内さんが立ち上げようと決意したのには、あるきっかけがあったといいます。
それはかつての教え子の言葉でした。
「先生、オレ働こうと思っても、字が読めんし計算もできん」
中学3年間、不登校のまま卒業していった生徒の言葉でした。
「履歴書が書けなければ、応募もできません。
そんな苦しい状況にある子に、自分は何ができるだろうと胸が詰まりました…」
こうした思いから、城之内さんは2017年4月に「岡山に夜間中学校をつくる会」を設立。
チラシをまいて、教室を借り、月2回の授業をスタートします。
しかし、生徒はなかなかやってきませんでした。教室でひとりポツンと待ち続ける日々が続きます。
「もうこれまでかと思ったこともありました。でも、『しんどい人はどこにでも必ずいる。たったひとりでも続けなさい』という、他県で長年自主夜間中学を支えてこられた先輩の言葉をバネに、なんとか踏ん張りました。
現在では、生徒さん・スタッフ合わせて100名以上の人たちが来てくださっています。
このような場があると、発信し続けることの大切さを感じています」
「特別なことをやっているわけではない」
2016年に「教育機会確保法」が成立し、翌年に文部科学省が出した基本指針には、「各都道府県に少なくとも1校の夜間中学の設置を目指す」という方針が掲げられました。
しかし現在、公立の夜間中学校は8都府県に31校のみで、岡山県にもありません(19年4月に千葉県と埼玉県で各1校が開校予定)。
こうした中、城之内さんたちは、県内に公立夜間中学を設置することをめざしつつ、「自主夜間中学」の充実を図っています。
公立・自主、どちらもあることが理想だと話します。
「公立の夜間中学では、中学校の卒業資格が取れます。
それに、体育祭や修学旅行などの行事もできるし、給食を出せるところもあります。
でも、修業年限の問題もある。
週5日で3年間通い続けられるかといえば、仕事との関係や体力面で難しい人も多いでしょう。
自主であれば、『まずは計算だけでも身につけたい』『土曜日なら通えます』といった多様なニーズに応じられる。
また、学習指導要領に縛られないので、自由度の高いカリキュラムを組むことができるんです」
城之内さんは、朝7時から夜9~10時頃まで勤務先の学校で働いています。
そして残った時間を使って、夜間中学の運営や関係先との連絡などに奮闘しています。
昨年1年足らずの間で、20キロも痩せてしまったそうです。
「『どうしてそこまでできるの?』とか、『過去に何か壮絶な経験があったから、今そんなに頑張ってるんじゃないか』とか、いろいろと聞かれますが、残念ながら大したエピソードはありません(笑)。
ただ、僕は高校時代、進学校の雰囲気が合わなくて、しょっちゅうひとりで河原に行って本を読んでいました。
教員になる前は、建設現場で働いていた時期もあります。そういうことも関係しているのかもしれません。
でもね、僕は特別なことをやってるつもりはない。自分の目の前の、身近なところで、できる範囲のことをやっているだけですよ」
学びたいという切実な想いをもった人がいつでも門戸を叩けるように、明かりを灯し続けていたい。
城之内さんはそう願いながら、きょうも教壇に立っています。 (著者プロフィール)黒部麻子(くろべ・あさこ)
1981年東京都生まれ。大学を5年かけてなんとか卒業したのち、出版社勤務。
2012年に岡山県に移住し、フリーランスに。
趣味は野草茶づくり、保存食づくり。狩猟採集生活が理想。女子プロレスと新書が好き。
〔2019年2/7(木) DANRO〕

【特集】「もう一度、学びたい…」岡山初の自主夜間中学校 期待される新たな役割
戦後の混乱や貧困で義務教育を受けられなかった人たちのために、1940年代後半から設置された夜間中学校。
近年「学び直しの場」として新たな役割が期待されています。
そんな夜間中学校には「公立」と民間が運営する「自主」の2つのタイプがあります。
岡山県では初めてとなる「自主」夜間中学校が去年12月から授業をスタートし、多くの生徒を受け入れています。

岡山に夜間中学校をつくる会/代表 城之内庸仁さん
自主夜間中学 立ち上げのきっかけは…
岡山自主夜間中学の授業は月に2回、夜6時から始まります。
上は80代から下は10代まで。年齢も国籍も事情も様々ですが、およそ20人が「学び直しの場」を求めて集まっています。
学校を立ち上げたのは、岡山で中学校教師を務める城之内庸仁さんです。
(岡山に夜間中学校をつくる会/代表 城之内庸仁さん)
「担任を持っていた子が不登校で、何年か経ったときに彼が私を訪ねてきて『仕事をしようと思うんだけど、なかなかうまくいかない』と。『どうしたの?』と聞くと『字が読みにくかったり計算も上手にできない。勉強しなおしたいけど、そういう場所がない』ということを言ってきたときに、学びたくても学ぶ場所がない、それがひいては生活そのものに影響している方々を見ていると、このままではだめだと」
夜間中学校は、戦後の混乱や貧困で義務教育を受けられなかった人のために地方自治体などが設置しました。
およそ70年に及ぶ歴史の中で、岡山に夜間中学校ができたのは初めてです。
槇本早栄子さん(82) 夜間中学校に通うそれぞれの人生
かつて学校に通えず、学びを必要としていた世代はもうすっかり年を重ねました。
槇本早栄子さん(82)は、家の手伝いや農作業に追われ、満足に勉強できませんでした。
(生徒/槇本早栄子さん(82))
「農地の広いところへ手伝いにいったり、そんなことをして…算数はしばらく休んでいたら分からなくなった。自分の得意な科目だったのに分からなくなった。つまずいたのがきっかけで、落ちこぼれていった気がします。私は中で一番年寄りですけど、いくつになっても学びたいという気持ちは捨てたくない」
若くして料理人の世界に飛び込んだ丸山良雄さん(74)は、退職後、もう一度「読み書き」を習いたいとやってきました。
(生徒/丸山良雄さん(74))
「字が書けないし、漢字が読めないし、恥ずかしいということばかり頭にあって…あまりバカすぎたら入れないんじゃないかと思ってね。字は読めない書けない、75歳のおじいちゃんが来ても教えてくださるんかと思ってな。丁寧に教えてくださるんで、うれしくてかなわんです。もっと早くあればよかったと思います。今の目標は、堂々と人様に手紙を書けるようになりたいです」
新たな役割…「形式卒業者」の学び直しの場
多い時には、公立の夜間中学校が全国に80校以上ありましたが、時代の変化とともにその数は減少。
しかし今、「学び直しの場」として、新たな役割を期待されています。
不登校の中学生や、十分な義務教育を受けないまま卒業した「形式卒業者」の増加を受け、2016年、文部科学省が全国に夜間中学校の設置を進めるという方針を示しました。
小児糖尿病を患い、不登校だった井上健司さん(33)。
中学卒業後に、土木関係の仕事につきましたが、病気のため離職。今は人工透析を続けながら、再就職をめざしています。
(生徒/井上健司さん(33))
「パソコンとかできるようになって、デスクワークの仕事がしたいので、頑張ろうと思いました。卒業だけもらっても、勉強分からないじゃないですか、全然できないから。出ても教えてくれる人っていないじゃないですか。だから一人で悩んで考えて…苦しむという感じ。こういうところが岡山にできたら、いろんな人が知って来てくれたら、助かるだろうなって」

2人の兄妹と母 不登校の中学、高校生の姿も…
現在、全国で13万人を超える、不登校の小中学生。
岡山自主夜間中学にも、中学生や高校生の姿があります。取材を行った日は、2人の兄妹とお母さんが、やってきました。
(母親)「娘が不登校気味なのと、上の子も勉強の基礎をやり直したいということで。話しやすい雰囲気でもあったし、とても穏やかにできてよかったと思います」
(岡山に夜間中学校をつくる会/代表 城之内庸仁さん)
「本当にうれしいですね。それぞれがいろんな事情を抱えて、学びたくても学べなかった。でもここに来たら勉強できたんだという、こういう場があるというのはすごく大切なんだと毎回感じます」
公立夜間中学校設置への動き
岡山自主夜間中学の学びを支えているのは、会社員や学生などによるボランティアスタッフ。
生徒が増える喜びを感じる一方で、場所の確保や運営費など、継続への課題を抱えていることから、公立夜間中学校の設置を望んでいます。
実は、公立夜間中学校の設置に向けた動きが、全国的に進みつつあります。
岡山でも県の教育委員会が中心となって、ニーズ調査を行いました。
(岡山県教委 義務教育課/石本康一郎 課長)
「県内に1カ所設置するというよりも、社会教育施設などを活用しながら、広く県内で学び直しの機会を提供することが適切ではないかという結論に達しました」
岡山県教委では、今後も検討を進めるとしながらも、すぐに公立夜間中学校を設置する状況にはないという結果にとどまりました。
(岡山に夜間中学校をつくる会/代表 城之内庸仁さん)
「自主夜間中学校、できるかぎり回数を増やしたいんですけど、資金の問題やスタッフの問題でなかなか難しいんですね。しかし公立夜間中学校になっていくと、月曜日から金曜日まで、そして給食を出すこともできる。そういうことを考えると、やはり公立夜間中学校は各県に1校、必要だと私は思っています」
「もう一度、学びたい」
岡山自主夜間中学はそう望む人たちをいつまでも待ち続けています。
〔2018年4/21(土)KSB瀬戸内海放送〕

「自主夜間中学」岡山に誕生 学び直し支える場、月2回授業
城之内教諭(右)の指導を受けながらローマ字を書く井上さん(中央)=昨年12月16日、岡山国際交流センター
さまざまな事情で義務教育を修了できなかったり、学び直しを希望したりする人たちを対象に、ボランティアが自主運営する岡山県内初の「自主夜間中学校」が岡山市に誕生した。
月2回授業があり、中学教諭らがローマ字や漢字の読み書き、数学などを無償で教える。
公立夜間中の必要性を検討している県教委も運営状況に注目している。
「初めて自分で書けた」。初授業があった昨年12月16日夜、岡山国際交流センター(岡山市北区奉還町)で井上健司さん(33)=同市中区=が晴れやかな表情を見せた。
同市立中英語教諭の城之内庸仁さん(41)の指導を受け、名前のローマ字をなぞった。
小児糖尿病で体調を崩しがちだった井上さんは、小学3年から不登校になり、中学校もほとんど通わないまま卒業証書だけ受け取った。
土木作業などで働いていたが、人工透析が必要になり、離職した。
「ローマ字を覚えてパソコンが使えるようになれば、また仕事ができるかもしれない。漢字も勉強したい」と望む。
この日は1年半余り不登校状態の岡山市立中2年女子(14)も机を並べ、一緒に学んだ。
自主夜間中の代表を務める城之内教諭は、自分の教え子にも井上さんのような「形式卒業者」がいることに心を痛めてきた。
東京電力福島第1原発事故の被災地支援ボランティアに通ううち、福島市にある自主夜間中を知り「岡山にも学び直したい人がいるはず」と思った。
不登校経験のあるフリーライター女性(38)=倉敷市=ら3人に講師として協力してもらい、開校にこぎ着けた。
自主夜間中では中学卒業資格を得ることはできず、城之内教諭らも公立夜間中を補完する活動と考えている。
公立夜間中は8都府県に31校あるが、岡山県にはない。
昨年2月、教育機会確保法が施行され、文部科学省は未設置の道県に対し、それぞれ少なくとも1校は開設するよう求めている。
岡山県教委は昨年、夜間中について説明するちらしを公民館や図書館などで配り、学習希望を調査した。
23件の問い合わせがあり、うち5件は「中学段階の勉強を教えてもらえる場がない」など、学び直しを望む内容だったという。
来年春、公立夜間中を新設すると表明した埼玉県川口市では、1985年から続く自主夜間中の活動が背景にあり、岡山県教委も「公民館講座や自主夜間中との連携を検討し、学び直しの場を提供できるよう取り組みたい」(義務教育課)とする。
自主夜間中について、文科省は岡山以外に全国25講座の活動を把握している。
城之内教諭は岡山に公立夜間中ができたとしても自主夜間中を続けるつもりだ。
「3年の年限を超えて学びたい、土日に通いたいという人もいるだろう。いつでも誰でも学べる場が必要ではないか」と話す。
自主夜間中は当面、岡山国際交流センターで毎月第2・4土曜の午後6時~9時に開く。次回は13日。
〔2018/1/9(火) 山陽新聞〕

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