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杉山登志郎

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2021年4月16日 (金) 14:15時点におけるMatsu4585 (トーク | 投稿記録)による版
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杉山登志郎

日本の学校制度が発達障害の子を苦しめる【児童精神医学の権威が今伝えたいこと】
授業中に席を立ってしまう、集団行動ができず周囲となじめない……。
近年、こうした問題を抱える子が増えていますが、児童精神科医の第一人者として著名な杉山登志郎医師は著書『子育てで一番大切なこと』で、これは子供に原因があるのではないと説いています。
また学校生活で生じる問題は、小学生時期の発達とも深く関係している、とも。
その点についても分かりやすく解説してもらいました。
体や言葉が発達し集団行動が可能に
小学生、すなわちそれは学校生活を意味する。そこで“子供の発達と学校”について話をしたい。
学童期とは一般に6歳から12歳ごろまでである。
この時期になると、体型が幼児から学童児へ変化する。
丸みを帯びた体型から、手足が伸びて細長な体型へと変わり、それにあわせて顔も細長くなり、赤ちゃんの面影が抜けてくる。
この体つきの変化にあわせて、行動にも落ち着きが出てくる。
着席して人の話をじっと聞くことができるようになり、大人の指示や禁止にも従いやすくなる。
言葉の発達においては、5~6歳で母国語の文法的な習得はほぼ終え、言語的なコミュニケーション能力が整ってくる。
言葉によって理屈を理解し、説得することも可能となる。
数の概念や、質量不変の法則など、物事の基本的な性質も理解できてくる。
基本的生活習慣の自立や、身の回りを清潔に保つ習慣の躾も一通り完成することで、子供は社会的ルールが分かるようになる。
また、すでに一通りの病気を経験して免疫ができあがっているため、6歳頃になると病気を繰り返すことが著しく減る。
頻繁に熱を出したり、喘息の発作を起こしたりしていた子も、かなり丈夫になる。
それゆえこの時期から集団教育が可能になると言われていて、世界の多くの国で、この年齢において学校教育が開始されるのだ。
10歳頃までに脳の準備が整う
ところで、人間のすべての行動の背後にあるのは、中枢神経、つまり脳の変化である。
5~6歳から大脳の新皮質(合理的で分析的な思考や、言語機能をつかさどる)が活発に動くようになり、とくに前頭葉の機能が高まる。
前頭葉は旧皮質を抑制する機能を持つのだが、旧皮質は食欲や性欲といった本能や情緒を司るので、欲望や感情のコントロールができるようになるわけだ。
また前頭葉は人の意思や創造性、推論などの機能をつかさどるので、この年齢から精神活動がおこなわれる準備が整ってくるとされている。
また脳の神経と神経はシナプスというもので繫がれているが、シナプスの数は5歳前後をピークに減少に転じる。
これまでよく使われていたシナプスの経路はそのまま残り、使用されなかったシナプスの経路が消滅していくことが確かめられているのだ。
これは、木の枝の剪定に似ていることから、神経繊維の剪定と呼ばれており、5歳から10歳前後の小学校低学年~中学年の時に進む。
つまり学童期の脳の変化は、まずは10歳に向かって進行していくのだ。
集団行動の向上、落ち着きの向上、身辺自立の完成、言語コミュニケーションの向上、ルールの理解……。
学童期の脳にはそうした準備ができる。
そして、家族との交流が中心であった状況から、次第に家庭外の友人との交流が活発になっていく。
子供が子供同士で動き始めるわけである。こうした発達によって、学校教育がスタートできる。
しかし、もしこれが未熟な状況であれば、学校教育のような集団行動には支障が生じてしまう。
通常クラスでダメなら支援クラスに、という考えの弊害
しかし昨今は、授業中、席に座っていられない子が増えている、という話を多く聞くようになった。
原因の一つは、発達の凸凹を持つ子が昔よりもはるかに多いということがある。
しかし今の学校制度においては、子供たちは学力に合わせて適切なクラス選択ができない。
多くの親は、子供を通常クラスに入れたがるからだ。
だが、自分が理解も参加もできない授業に45分じっと座っている子供側の苦痛を想像してほしい。
実は不登校の原因も、対人関係のことより、学力と教育のミスマッチが一番多いのである。
日本の公立小学校には、通常クラスと支援クラスがある。
親は、通常クラスでダメだった時に「支援クラスに」と言うし、教師もそのように勧める。私はこの流れが良くないと考えている。
なぜなら、本来支援クラスからスタートすべき子供が通常クラスから始め、そこで上手くいかなければ、強い挫折を体験することになるからだ。
努力しても成果が挙がらないという体験を繰り返すと、子供たちは頑張ろうという意欲をのものを失ってしまう。
さらに親から「勉強しなければ支援クラスに行くことになるよ」という言い方をされているうちに、ハンディキャップを持った子供は、ハンディキャップを持つことに対して偏見を抱くようになる。
その結果、発達に凸凹を抱えて学習に困難さを抱えている本人自身が、「支援クラスに行くくらいなら死ぬ」とか「支援クラスのバカが俺と同じだと言うのか?」などと口にするようになるのだ。
『子育てで一番大切なこと』杉山登志郎著 講談社現代新書 ¥840
『発達障害の子どもたち』『発達障害のいま』などの著書を持つ児童精神科医の杉山登志郎医師が、発達障害や不登校、虐待にはあまり関心のない普通の読者が読めるようにと書いた子育て本。
編集者との対話形式で綴られているので、専門的な内容も非常に分かりやすい。
子育ての基本を、妊娠時期から乳幼児期、小学生時期と、時期別に分析。
また見逃されがちな発達障害、そして子育てにおける課題などについても解説している。
〔2019年9/8(日) webマガジン mi-mollet文/山本奈緒子 構成/山崎恵 〕

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