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眠れないとひきこもりの関係

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眠れないとひきこもりの関係

*会報『ひきこもり周辺たより』2022年10月号

前号では「過敏性腸症候群IBS」とひきこもりの関係について書きました。それは食=消化器系とひきこもりの関係の一端を書いただけのものです。
食については摂食障害という精神面の別の問題もあります。それはまたの機会にしましょう。
今号では、睡眠(眠れない)とひきこもりの関係を書きます。

睡眠に関係してひきこもり経験者から聞いてきたことを列挙してみます。
① まずは不眠状態です。
なかなか眠れない、眠れても1~2時間で目覚め、それをくり返すのでぐっすりと眠った感じがしない。眠れなくて夜明け近くになってやっと眠りにつき、しかも2~3時間で目覚める…など。
② 悪夢をよく見る。何かに追いつめられた気持ちになって目が覚める。不安が高じてガバっと起きてしまうこともある。眠るのが怖いと思うこともある。
③ ときどき眠れる日があるけれども、そういうときは逆にずーっと眠くて必要な予定があるのに起きられない。
起きてもすっきりしていないし、眠気のつづいている状態になる。
④ 睡眠薬、睡眠導入剤を服用している。
それがないと眠れないが、それを服用しても眠れないときがある。
クスリに頼って眠りについても本当の眠りを得たような気がしない。
また薬の影響によりからだが震える、勝手に動く状態になる人もいます。これはアカシジアという作用です。
これらは薬の副作用、薬による二次的な問題の発生と考えられます。
⑤ 睡眠薬の代わりにお酒に頼る人もいます。
とくに睡眠薬とお酒を併用する人もいて、これはかなり危険です。
医師からは強く警告、禁止されることです。
同じ一人がこのようないくつかの状態になる人もいますが、ここに紹介したのは十人ほどの睡眠に関係する悩みを並べてみたものです。

ひきこもり経験者数人において、睡眠にかかわって次の状態もよくあります。
はじめに表れるのはうつ気分です。その次に過食がきます。そして不眠です。
この3つの状態が順番に表われるのかと思いましたが、必ずしもそうではなくて、ほぼ同時であったり、どれか(特に「食べたい」という気持ちが迫ってきたり、気持ちの落ち込みがひどいなど)の症状が強くなることもあります。
うつ状態、過食、不眠は3点セットで表われる感じがします。
このうちどこから手をつけるかはそれぞれでしょうが、この3つはどこかでつながっています。

ここで紹介することは不眠状態を改善する方法です。
私は医師ではないので、医学的方法によりぐっすりと眠れる方法を提示しません。
医師にとっても不眠治療は大へんだと思うので、私などが出る幕はありません。
私が確信できるのは、睡眠の問題とは脳の問題であることです。
人間の成長期(子ども時代)において睡眠とは脳神経系の成長に関係します。
成人にとって睡眠とは脳神経系の活動の維持、補修、回復、すなわちメンテナンスの問題だと思えることです。
安らかなぐっすりの睡眠が得られないのは、日常生活の不安定さ・不安感が関係します(身体に原因がある場合はその治療によります)。
寝不足の翌日は、活動も不活発になります。いつも寝不足である、睡眠が安定しない生活がつづくことは、この不活発状態が日常化していることです。
そして自分が不活発の状態にあることを気づくことも忘れ、自分は行動性の少ない人間と自己判断している人さえいます。
ひきこもりとはそれが対人関係の不活発さ、行動の不活発さの結果であるということでもあります。
寝不足と睡眠の乱れは日常生活に大きな影響を表わします。
睡眠が脳のメンテナンスに関係しているとすれば、究極的にはそれは脳神経系の働きの不活発さによるものと考えられます。
ひきこもりの原因は、家族関係、人間関係などの周囲の環境、社会環境あるいはそれをめぐる時代環境の変化という大問題があります。
それと自分の性格、気質などにつながります。
ここは子ども時代の不適切な養育と脳の変形による子どもの対応を私はとらえていますし、大まかに“過剰な躾(しつけ)”の影響があるとみてきました。
個別の様子にはいろいろなことが関係します。
それらのなかには睡眠不足を生み出す要因になっていることもあります。

これらの周囲の環境から各自の改善方法を考え、実行するようにお勧めしたいのです。
① よく言われるのは生活リズムの改善、規則的な日常生活を確立することです。
ひきこもりにとって生活リズムを確立するのはかなりハードルの高いことです。
毎日のスケジュールを自分で組み立てて生活リズムを確立するというのは、至難のわざであり、崩れやすいことは大部分の人の例ではないでしょうか。
これまでと同じ家族の中にいて、個人的努力で自分の生活リズムを確立するのは、あんがいと難しいのです。
家族と一緒の生活から離れられない人もいるでしょうが、そういうなかでも自活(食事、部屋の片づけ、買い物、運動など)を心がけるのも一つの方法です。
人間は一人では生きられないのを実感するのはこういう話を聞くときです。
② 寄宿制の施設・学校に入ることで、それを実現した人がいます。
特殊な例ですが事件を起こして、数か月の収監生活で改善(!)した人もいます。
定期的な仕事(アルバイトであれパート勤務であれ、仕事内容にかかわらず)があることは、この日常生活にリズムをつくります。
これらは他力本願の方法ともいえますが、それよりも人間は社会的な生き物である証拠と考えたいところです。
③ 家族と離れて一人暮らしを実現した人がいます。
家族内の不正常な状態から抜け出すことで主体的な生活をめざしたわけです。
この人のばあいは家族の中で出来ている生活スタイルから離れたのはいいのですが、自分なりの生活リズムを確立する中心ができないままです。
その結果、不眠状態になっています。
一定の課題作業のある生活なくしては、自動的に生活リズムができるのではありません。
呼吸、歩行、咀嚼―これは人間が生きるための最も基本的なリズム運動であり、これを意識してできることから始めるのがよいと思います。
これは一人暮らしの人に限定して考えられたものではないですが、生活リズムを確立する手掛かりになるはずです。
朝のランニング、犬の散歩、食事作り担当、習い事参加、趣味のサークルへの参加、ボランティア参加、植物を育てる、野菜作りなどは私が聞いたことのある定期的な活動です。日光を浴びる、人と関わる、自分を表現する…のが基本的なリズム運動に加わっています。
④ ある程度の運動ができる人に勧めるのは、からだを使う肉体労働に就くことです。
机に座る事務作業ではない、対人サービス的な業務でもありません。
事務作業や対人サービス的業務は、精神的に疲れていてもからだが疲れていなくてよく眠れないという人がいます(気疲れという精神的な疲れでもよく眠れる人はいます)。
重い荷物を運ぶ、農作業を手伝う、土木作業…などです。
肉体労働をすればからだが疲れてしまい、否応なくぐっすりと眠れます。
これを一定期間(3日とか1週間)つづけるのもお勧めの方法です。
その肉体労働への従事が終わった後の生活を予定して、リズムのある生活を始めなくては元の不眠状態に戻ります。
軽度であっても日常的に決まりきった動きを考えておくことは欠かせないのです。

これに類することは何もしないで、「薬が効かなかった。医師は頼りにならない」「何もできないでため息ばっかりが出る」といってくる人もいます。
おそらく医師の中にもこの手の話を聞いて、どうしたものかと考える人もいるでしょう。
私も打つ手なし、言うこともなし…となります。
何度も続くと、「せめて話の聞き手になるしかない」と思い直すのですが、気休め以上の効果はないですね。
どんな生活目標を持てるのかは、本人にしかわからないし、誰かが代わってそれを受け持つことはできないのです。

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