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要素論、数量化、法則の形式性が行き詰まっている

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要素論、数量化、法則の形式性が行き詰まっているー1の2

(2014年9月16日)
8月11日の「「メンタル相談」ページに紹介できる判断基準」をさらに追求していくつもりです。 
考えていることは医学との関係になります。
文献からの引用が多くなり、読みにくいことは受け合います。
一通りのテーマをまとめ、分割して3、4回ぐらいに分けます。
最近のニュースにiPS細胞移植による始めての手術が伝えられました。
STAP細胞の有無または有効性が疑問視される中で一服の清涼剤でしょう。
さて話題は両方とも“細胞”です。
少し前に読んだ本、40年前に発行されたものですが、これは人間科学にとっても欠かせないと思います。
竹内啓・広重徹両氏の対談です。
『転機にたつ科学 近代科学の成り立ちとゆくえ』(中公新書、1971年)によります。

ニュートン以来成長し確立していった近代科学を「要素論、数量化、法則の形式性が、近代科学の三つの特徴」(24ページ)と評価し、特に物理学、化学にそれをみています。

私が注目したいのは生物学です。
「細胞で要素論をやってゆくのが科学的方法だという考え方が定着するのが、19世紀初めですね。(78ページ)
…細胞自体、内部構造をもっているということがありますね。
…要素と言ってもいろいろ違いがあると思う…。
要素と言っても、それ以上分けられないという意味ではないので、ここで現象のレベルという考えが入ってくると思います。
つまり化学変化を捉えていく場合、その現象、変化を担う単位になるものが元素であり…あらゆる化学変化はさまざまな元素の出入りとして捉えられ、そういう出入りを通して元素は不変であるということですね」、
「元素からもう一つ先まで見ていくと、化学現象ではなくなる。
生物について言えば、細胞をこわしても化学的な過程はあるけれども、生物としては存在しなくなるという意味ですね」(79ページ)。

ここで社会関係の要素として商品が出てきます。
「『資本論』の最初に出ている、資本主義社会の富の要素形態(Elementarform)は商品であるから、資本主義社会の分析は、商品の分析から始まるという文章です。
…しかしその場合の商品は、物理学の質点や化学の元素と違って、そのなかに社会的関係を含んだ、いわば生物の細胞にたとえればいいようなものだと思います」(81ページ)。

「現代の科学は、いろいろな方面で行き詰まり、退廃的な様相が出てきている…それをもたらした一つの要因として、つねに下位へ下位へと降りてゆくことが、認識の進歩であり、高級な理解の仕方であると…」、「政治学でいろいろな国際紛争を…対立関係のモデルをつくってゆくうちに、すべての対立を抽象的に取り上げ…ゲーム理論になって、きれいな理論になる。
…どこかで枠を一歩越えたら、対立は対立でも国際政治における対立とは無関係になってしまうところを、大幅に踏み越えてしまっている。
…一見きれいな理論ができても、現実に戻ってこられなくなる」(82ページ)。

「要素はいつでもある面の抽象でしかない…力学がうまくいったのは、われわれの身のまわりにある現象は雑多というか、多様性に富んでいるけれども、そのなかから速度、加速度、質量をうまく取り出し、それを担っているものとしての質点をうまく抽象して、実際にはそんな質点はどこにも存在しないけれども、それについて理論体系をうまくつくりあげた。
…それが成功したから、何でもそうやればよろしいということで始めたのが、やはり少しまずかった…」(83ページ)。

要素論、数量化、法則の形式性で追及する現代科学の理論が空論になる、行き詰まりや退廃になっていることを例証し、転換の必要性を述べているわけです。
もう40年以上前ですが、たぶんそれ以前に出てきた意見をこの時点で総括的にまとめたのです。
8月11日のブログで柳澤桂子さんが言われた「科学は、本質的に、答えられる問題を探し出して、それに答えるだけのものである。
答えられない問題は、はじめから切り捨てているのである。
私たちは、何が切り捨てられているのかということも考えずに、あたかも、科学はすべての問いに答えられるかのような錯覚に陥りがちである」のより詳しい説明です。

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