ＳＥＥＤきょうと

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ＳＥＥＤきょうと

摂食障害、広がる患者支援　京都のＮＰＯ、発足5年
摂食障害の当事者たちが集う「きょうとプティパ」の室内。ＳＥＥＤきょうとの支援活動は広がっているが、社会の理解や公的な支援の拡大が課題となっている（京都市南区）
拒食症や過食症などの「摂食障害」に苦しむ患者を支援するＮＰＯ法人「ＳＥＥＤきょうと」（京都市南区）が今年、発足5年を迎えた。
家族対象の教室開催や、当事者が集う施設の開設など活動が根を張りつつある。
一方で、病気の理解が広まらず、医療も含めた公的な支援体制は貧弱だ。
発足から関わる医師の水原祐起理事（38）は「摂食障害が社会で正しく理解されているとはいえない」と語る。
食べられなかったり吐いたりする、患者自身にはどうしようもない症状が病気とみてもらえない上、やせている方が望ましいという社会通念も影響しているという。
「不整脈や感染症、自殺などで死亡率は5％におよび、精神疾患で最も高い。
もっと多いとみられる潜在的な患者を治療につなげることも課題」（水原理事）とされる。
だが、医療体制は不十分だ。
治療は精神科や心療内科などの医師が担当するが、栄養失調など身体的な合併症の治療が必要な場合も多く、大規模病院に患者が集中。
十分な治療を受けられないケースも多い。
ＳＥＥＤきょうとは、京都府立医科大付属病院や京都大付属病院の医師を中心に発足した。
活動の柱の一つが、家族を対象にした教室だ。
患者に一番近く負担も大きい家族をサポートし、病気や治療を正しく理解する狙いで発足当初から始まった。
これまで計約220人が参加し、修了者による家族会「らくの会」も4年前にできた。
会代表を務める女性（56）＝下京区＝は「同じ悩みを持つ親同士で励まし合い、学び合うことが大きな救いになった」と感謝する。
当事者の会「きょうとプティパ」の活動も行う。
作業や語り合いで交流する取り組みを2013年に始め、常設の施設「ＳＥＥＤテラス」を南区に開設した。
週5回開き、1日平均4、5人がアクセサリーや雑貨づくり、読書などで自由に過ごす。高校生から病気に苦しむ女性（50）は「親にも友達にも言えずにいた悩みを語り合える」。
30代の女性利用者は「ここにいると『自分も生きていていいんだ』と思える」と話す。
一方で課題は山積している。
施設の賃料などの経費は、日本財団の助成や自治体の自殺対策といった単年度ごとの補助金に頼る状態が続く。
資金確保には、行政の継続支援が得られる「就労支援Ｂ型」や「生活訓練」などへの施設形態への移行が有効だが、患者が利用できる期間が限られていたり、通所する必要がある。
摂食障害は回復までに「5、6年かかる」（水原理事）とされる上、体調が不安定になりがちで通所が難しい場合もあり、障害の特性から公的な支援制度の枠に収まらず、安定した運営が難しい。
ＳＥＥＤきょうとでは、女優の遠野なぎこさんら摂食障害を経験した著名人を招いて講演会なども行い、病気への理解を広く訴えている。
水原理事は「治療につなげられるよう社会で広く支援の輪を広げる必要がある」と説く。
(2016/9/10　京都新聞)