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Center:2010年2月ー親がしてほしいことと子どもがしたいこと

提供: 不登校ウィキ・WikiFutoko | 不登校情報センター
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目次

親がしてほしいことと子どもがしたいこと

子ども(当事者)のしたいことを伸ばす――不登校情報センターの経験から

〔2010年2月21日執筆〕

まえがき

 引きこもりの相談にこられる家族のなかには「たいしたことは望んでいない。何でもいいから働き、自立して欲しいだけです」という人は少なくありません。親の自然な気持ちからのことばですが、引きこもりになっている子ども(当事者)にとっては高い絶壁に登る課題を突き付けられた気分で「全然わかっていない、こりゃダメだ」と落ち込み、こういう会話が続くと、親と顔を会わすのを避けるようになります。

 今回のテーマ「親のしてほしいこと・子どものしたいこと」のギャップはここに関係します。親のしてほしいことはわかっているとして、子どもは何がしたいのか、そこがわかりづらいです。何しろ当事者自身が何をしたいのかわからないことが多いのです。

 当事者が既にやっていることのなかに「やりたいこと」は潜んでいます。それをどう引き出していくのか、不登校情報センターの失敗まじりの取り組み、試行錯誤を語りますので、みなさん自らが何かをつかみとっていただくよう期待して話します。

〔1〕情報センター設立の目的

 不登校情報センターにおける引きこもり経験のある人たちの社会参加に向かう方法は、ほかの自立支援・就業支援団体の方法とは違うかもしれません。しかし、重なるところも少しはあります。

 不登校情報センターは就業支援のためにつくられた組織ではありません。設立目的は、不登校を支援する団体の情報を調べ、お知らせすることでした。それが(不登校に加えて)引きこもりを支援する団体情報の入手と情報提供になり、さらに発達障害がこれに加わっているのです。支援団体というよりも支援団体の情報を提供する団体が不登校情報センターなのです。

15年前に設立したのですが、私はその前にある出版社で『こみゆんと』という不登校当事者が参加する雑誌を編集・発行しており、不登校情報センターができて間もなく1人、2人の当事者が便りを寄せてきました。

彼らに声をかけて最初は通信生・大検生の会という集まりを始めました。設立の2年後ぐらいには数十人が登録の会員になりました。都合が悪いとか、あまり気乗りがしないために参加しないと理由をいっていましたが家から出られない人も多かったのです。この会を始めるときの私の目的は、交流、学習、情報交換の3つでした。学習というのは通信制高校や大検の学習を考えたものですが、とりかかった人はいません。いつも会って話しをする集まりです。

そのうち集まって話ができる、交流する関係から友だちらしい人ができること自体に不登校状態から抜け出すカギがあると思うようになりました。それは彼ら彼女らの状態だけではなく情報集めをしている支援団体の報告などからもいろいろに発表されていました。 私は情報集めをしながら当事者が自立の過程を歩むのを支援する状態になったのです。そういう人間関係ができるようになった人にはバイトや就職活動をする人が生まれました。だいたい1997年から1999年ころです。その人間関係とは当事者間の横の関係です。これは意図して始めたことではありません。そうなってしまった感じです。

また会員にはなったけれども集まりには出席しない人も少なくありません。要するに引きこもり状態の人が初めからかなりいたのです。会報に自己紹介コーナーを設けたところ、参加していない人も交えて文通を始めるようになりました。会報のいちばん注目される記事が自己紹介コーナーになっていたのかもしれません。2000年の夏に会報を文通目的の冊子にし『ひきコミ』と名づけました。

〔2〕情報センターを働けるように要望

知り合いの編集者が手作りの『ひきコミ』を見て、市販の雑誌にすることになりました。創刊は2000年11月のことです。いろんな新聞などに紹介され不登校、引きこもりなどの当事者・家族からの問い合わせが入り、当事者がさらに集まるようになりました。こうしてフリースペースといわれるものが広がり、継続し定着していきました。

初めは話し合いの会でしたが、パソコンをする人たち、カウンセラーさんがボランティアで来る ようになってグループワーク、読書会なども始まりました。数人で一緒に外出や食事をすることもありました。高校への進路相談会というイベントをするとかな りの人が手伝いに参加しました。元気になってバイトをする、就職活動をする人もどんどん出てきました。仕事をやめて舞い戻ってくる人もいました。これらの 動き全体を私が十分に把握していたわけではありません。

当時も就職難の時代でしたが、それでもバイトや就職に取り組 む情報交換をかなりしていました。30歳前後の会という10名余りのグループが月2回くらい集まっていたのですが、集まって話しているだけでは何も生まれ ないというので、情報センターで内職を始めて欲しい、さらに「不登校情報センターを働ける場にして欲しい」といい始めました。このなかには30代後半から 40代の人もいて、就職がもはや現実感のある目的にできなかった事情が関係します。2002年の夏ころです。

不登校 情報センターは自立支援とか就業支援のために設立したわけではないのですが、このあたりから徐々に就業支援のスペースの様相を示し始めました。ここが他の 就業支援団体とは違う経歴ですし、また今日のテーマである「親のやらせたいこと」に対応することを意識しないで「子どものやりたいこと」に関心を絞って続 けてきた背景があります。

この「不登校情報センターを働ける場にして欲しい」という要望にどのように応えてきたの か。結論を言えばたいしたことはしていません。本を集めて「あゆみ書店」というのを始めました。いまから振り返ると書店としては成り立たず居場所の模様づ くりになったのです。「喫茶いいな」という喫茶コーナーも同じです。想定していた内職はほとんどしていません。2週間毎の広告雑誌と月刊の地域新聞の配布 が定期的のものですが、配布参加者は多くはなく「イザというときは自分一人で出来る範囲」を上限に広げていきました。ほかには印刷物のセット作業、DM用 の袋詰め作業、私が編集する情報本のデータ整理の手伝いなどがあります。これらの仕事、業務にあたるものには出来高による作業費を支払う仕組みにしまし た。

これらは不登校情報センターとして、仕事として請負い、参加者に呼びかけ、それにこたえられる人が作業をしたも のです。関心を持たない人はその場に来ていても作業には参加しません。この当事者の選択ができるのが不登校情報センターを仕事場にするときには可能でし た。こちらが提案することと当事者がしたいことにギャップがあったら、当事者は参加しないだけです。大きな障害にはなりません。この点は大事ですが、多く の親はある程度いやなこと、気が乗らなくても向かっていくだけのものを当事者に求め、それがギャップにならざるをえません。

2008 年春に、情報センターに関わった人110人ぐらいがどういう進展をしているのかを思い浮かべながら表にして見ました(別表)。関わった期間、来所の頻度、 状態はみんな違いますが、おおよそ7割近くの人がバイト、派遣・登録社員、就職、業務請負い、家業手伝いなどの形で社会との接点と持っています。他にも職 業訓練所、介護資格や会計の勉強を始める、障害者福祉施設に行く、障害者手帳の取得、一人暮らしの開始*、生活保護を受ける…などそれぞれの姿で動き始め ます。私はこの方面の知識をこういう人に教えてもらったものです。〔*男女差、横の関係〕

〔3〕情報センターのウェブサイトづくり

2000 年ごろから世の中は急速にインターネット社会になりました。私が仕事にしていた支援団体の情報本づくりに出版社が乗り気でなくなりました。インターネット への対応は遅れていたのですが2004年になって、支援団体の情報提供を情報本からネットの切り替えるように迫られたと判断しました。

すでにパソコンのサークルみたいなものはありましたし、個人としてパソコンの知識と技術のある人もいました。彼らに呼びかけ、支援団体を情報提供するウェブサイトを立ち上げました。2003年から2004年にかけて、中古パソコンをもらい受け、デジタル印刷機の寄付、助成金の受け取りなど、いまから振り返ると実にタイミングよく設備や資金の提供がありました。

しかし、いちばんの要素はパソコン好きな当事者が出番を待って いたかのように、それぞれの仕方でこれに関わったことです。当事者がやりたいことの1つです。こういう世の中の変化は引きこもっていても確かに伝わってい るのです。2004年11月ころにベースになるウェブサイトができました。

この作業にも出来高での支払いをすることにしたのですが、その運転資金に見合う収入源がありません。そこで「パソコンを収入源にする」方策を考えました。当初はそれがなくいま以上に苦心をしました。

私は活動の一部として引きこもりの人への訪問をしているのですが、2007年春ころ引きこもっていた1人が情報センターに来ることになりました。訪問サポートとしていたものを居場所サポートに発展させようとしたのです。その人を支える意味を含めてウェブサイト制作のチームをつくることにしました。

それまでウェブサイトの各部分を1人で担当していました。誰かが長期に来なくなるとそのサイトが更新されない、動かない事態がよくありました。同じページを複数の人が担当し、この状態を改善するとともにパソコンを通して対人関係のより困難な人の対人関係づくりを図ったのです。これがチームの意味です。もちろんサイトの全てがチームになっているのではありません。中心部分にチームがあり、どこかの部分が更新できなくなってもこのチームにできるシステムができました。この形ができたことでパソコンを教えあうこととウェブサイト制作は安定的になりました。

「パソコンを収入源に」はボランティア・当事者の団体と公共機関以外の事業所からは徐々に有料で不登校情報センターのウェブサイトを活用してもらうように頼んできました。しかし、収入はまだ不十分であり、作業費は小遣いの範囲を超えるものではありません。

この作業を通して人と関わる状態をワークスペースと考えています。しかし、アルバイトや就業を考える人は情報センターの外にそれを求める状況は変わりません。このパソコン作業に関わる範囲の外側には、フリースペースとしての利用者がいます。話し合う、食事会をする、情報センターの外で会う、カラオケに行くなど交流していますし、ワークスペースのメンバーとも一部は重なります。

〔4〕創作活動とネットショップの構想

 このワークスペースとは別の方法で当事者のやりたいことを探す取り組みもわずかですが動きになってきました。それが創作活動です。いつからそういう面に注目していったのかはよくわかりません。2001年から2003年にかけて「引きこもりの人が望む将来生活の姿」というアンケート調査をしました。

 そのなかで、彼ら彼女らのなかに、(他の社会集団に比べて)創作に関する関心が高く、それによる社会参加に関心を持つ人も多いと気づきました。この調査結果は不登校情報センターのウェブサイト「引きこもりの人が望む将来生活の姿」に掲載しています。

http://www.futoko.co.jp/chosa-hokoku/nozomu_syouraiseikatsu/nozomu_syouraiseikatsu.html

 2006年当事者の1人の遺作展*を開きました。第1回の創作展です。創作展を重ねてそのつど少しずつ進化しています。この5月に第4回創作展を開きます。これまでの到達点に基づく今度の目標は、20人以上が出展し、販売できる形の創作品がある程度そろい、ネットショップをつくり、販売できるようになることです。もちろん販売目的にしない作品の展示も行います。

 第3回まででいくぶん販売できる作品(ポストカード、 カット集、絵文集など)もできましたが販売価格よりも制作費が高いというのが実情です。ですからこれをもって社会参加の条件ができるとするには程遠いもの です。当事者の「やりたいこと」=それはすでにやっていることのなかにあります=を肯定的に評価し、他の人の目に触れさせる、まずここに意味があります。

 こういう作品を作っている当事者には、親からそれをやめて「社会的に通用すること」をするように迫られています。本人も無駄なことに時間を使っているという後ろめたさのなかにいる人もいます。創作展はここを超える機会にするのが第一です。

 では創作活動がうまくいかなかったらそれに費やした時間は無駄になるのか。そう言われてやめた人がいます。一人の例を挙げます。イラストが好きでよく描いていました。「それでは働くのに役に立たないから経理でも習ったらどうか」といわれ、イラストをやめました。取りかかった経理は関心が持てずやがて止めました。そのあと介護に手を出し、運送の倉庫作業にバイトに行き、あれこれやったあとタレントの舞台を追い始め、さらに意欲をなくして引きこもり生活に逆戻りになりました。

 全ての人がこのような過程を通るのではありません。自分に向いたもの、それで社会とつながり、生 きていく方法を発見する形を見つける方法は、いま関心をもっていることのなかにあります。いま好きなことを離れたときなぜそれに代わるものが見つかるので すか? むしろいまやっていることの延長線上にやりたいものがあると考えたほうがはるかにわかりやすく、地に足のついた進み方ができます。

 創作活動はそれで社会に通用するレベルのものができると保証されているのではありません。そのときに夢中になってやれるものがあれば、そのなかで知識や技術、人との関係、社会の中での位置や処遇を実体験しながら学んでいけます。人間として成長をするのです。それが創作を離れたときでも社会に関わる力を育てるのです。〔*創作活動と会員制〕

 しかし、ネットショップで構想していることは(現状は程遠いとしても)、創作活 動を通していくぶんでも収入を得られるようにする道です。そこにいつたどり着くのかはまだ見当がつきません。4年前に始めた道を少しずつ進んでいるところ です。それが成功する・しないにかかわらず、創作活動に取り組む意味はあると考えるのは上に述べた理由です。

それは 結局、当事者・子どものやりたいことを認め、応援し、可能ならばうまくいく条件づくりに親も参加するほうが、親のしてほしいことを当事者・子どもに求める よりも、はるかにいいのではないでしょうか。それはパソコン、創作活動に限りません。スポーツ、ゲーム、趣味などにもあてはまります。私が「しているこ と」をやめさせるよりも、誉めるように勧めるのはそのためです。                         

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