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Center:2010年8月ー「ハーフタイム就労制」の提唱と積極的な可能性

提供: 不登校ウィキ・WikiFutoko | 不登校情報センター
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目次

「ハーフタイム就労制」の提唱と積極的な可能性

『ひきコミ』2010年8月号に掲載、一部表現を変えてウェブサイトに掲載
 

まえがき

5月29日に相談を受けた内容を紹介しているブログ「相談事例」の記事です。
   「〔質問〕
  数年間の引きこもり、その後の無業者生活、医療機関への通院を経て、1年以上前から、週2日・1日3時間のバイトを始めました。いまは同じ職場で週3日・1日5時間のバイトに増えました。職場でも、家族からも、もっと働く時間を増やすように求められています。しかし、これ以上にすると仕事は続けられず、元の働けない引きこもり生活に戻りそうな気がします。月収で6万円程度なので暮らしてはいけないのでが…。
〔お答え〕
①仕事時間は、その感覚があるうちは増やさない方がいいでしょう。35歳前後(個人差は大)になれば、感覚が違ってくるかもしれません。自分なりに働く時間を増やすのが“気にならない”ようになったら自然に増やせる人が多くなります。
 ②いろんな事情・条件から一人暮らしの自活をしなくてはならないときは、かかりつけの医師に事情を話し就業の困難を診断書にしてもらい、障害者福祉の支援を求めたいです。
 ③実際には週3日働いていますので「就業困難」は、ある意味で矛盾しています。しかしいまの状態が働く限度という意味では事実です。フルタイムでは働くのと全然働けないの間にある制度上の隙間だと思います。完全に働けない状態には制度はあるけれども、中途に働けないには制度がないのです。福祉・就業の行政的対応を求める取り組みが必要です」。 この回答は、引きこもり経験者の困難を以前よりも理解してきた結果いえることです。今回はこれについて考えます。

(1)作業現場における困難の表われ

そこに入る前に、これまでどのように関わり、理解してきたのかの概略を紹介しておきます。
 不登校情報センターは、引きこもり経験者が集まり対人関係をつくる場としてのフリ―スペースを設けてきました。やがてそのなかから、何らかの作業に取り組む機会をつくり、ワークスペースと呼ぶようにしてきました。私はこの中で彼ら彼女らとともにいくつかの作業をともに経験したことになります。引きこもり経験のある人たちのその働きぶり、とくに社会に入るのにためらいを感じる、自信のなさを示す理由のいくつかをわかってきたように思います。
 もちろん、個人差やある作業への向き不向きがありますから、全員を同じように見るのは避けなくてはなりません。特徴的なことはいろいろな面にあるのですが、その一つを紹介しましょう。
 『ひきコミ』第32号(2006年5月号)の「引きこもりからの仕事おこし(その1)」のなかに次のように書いています。
 http://www.futoko.co.jp/isota^essei/hikikomori_jiritu_1_0605.htm
 「私の見るところでは、(引きこもり経験者たちの)この生産性は、①仕事の速度の遅さ、②休憩時間の多さによって低くなるのですが、最大の要因は③自分で臨機応変の判断を避けることによってより重大な影響を受けるのです。ただ全員が平均してそうなるわけでもなく、個人差は相当に開きがあります。」
 この3点が大きな要素になっていることは確かですが、いまはさらに関連することとして次のように言ってもいいでしょう。  まず①に関連して、その遅さは完璧さを求める(頭の中での)点検作業による傾向の人もいます。実際の動作や作業の手順の悪さに関係する人もいます。
 ③は、自分で責任が取れないために自己判断を避けることと、臨機応変の2つが組み合わされたものです。臨機応変な対処が相当に苦手な人がいます。
 ④作業をする自分の周囲の環境を確保しようとして、他の人とは隔離された空間や個室を求める傾向の人もいます。自分の分担する作業範囲が明確でないと困惑し、作業範囲が不明確なまま2人以上の共同作業がかなり苦手な人がいます。その場その場でやり取りするのが難しく、これは臨機応変が苦手であるのと同じです。
 それらはかなりの場面において不便なことですが、ものによっては、やりようによっては合理的な背景があります。 作業ペースは個人単位で異なり、相手のテンポを尊重するタイプが多い引きこもり経験者には、最も作業速度の遅い人に合わせることにつながりやすいのです。 また作業の進め方の個人的な手順を尊重もしたいし、尊重もされたいという心情が働くように思います。
 以上を、作業の現場における直接的な状況とすれば、冒頭に紹介した相談例は、作業(仕事)の中期的な状況における困難を示しています。次はその問題です。

(2)中・長期的期間に表われる困難

 作業の中期的期間に表われる困難として、冒頭紹介した相談者の例は必ずしも特例ではありません。いくつかのバリエーションがあります。週4 日、5日に就労日をふやした後、しばらくして仕事をやめた人は少なくありません。
私の①の回答はその事例を参考にしています。以前の私の見方は、これはまだ慣れないためであり、徐々に週5日就労に向かうものと考えていました。しかし、何人かの実例を聞くにしたがい、そうとばかりはいえないのがはっきりしてきました。ワークスペースで偶然に出た話ですが「2日続けて来るとかなりしんどい」という人がいます。また週3日と週2日の仕事を交互に繰り返し通算すると2週間で5日就労している人もいます。
 これ らの引きこもりから就業になった実例をみるにつけ、週2~3日がその人の“限界”といえる一群を想定すべきではないかと――それは週5、6日に向かう途中 経過ではなくて、その人なりの到達状況という意味で――確信するようになりました。私はこれを「ハーフタイム就労制」と仮称することにしま す。
 フルタイム就労に対する言葉で、パートタイム就労に似ていますが少し違います。パートタイム就労は、フルタイム 就労が心身の条件としては可能であるのに、他の事情によりパ-トタイムにしているか・されている人です。「ハーフタイム就労制」は、フルタイム就労が本人 の心身状況においてもともと困難であることに基づくものです。
 もちろんこれは問題の大きさに比べて実例がそれほど多くはないので、
 ① 引きこもりの就業支援をしている団体からの多くの報告を待ちたいと思いますし、
 ② 週当たりの就業時間を10~25時間に仮設定して事例を評価し、精度を高めるかランク付けを取り入れる、
 ③ 公式の調査・研究により裏付けをとる、
 などの事態のより的確な調査と判断を必要とするでしょう。それにしてもこのような引きこもり経験者は確かある割合でいるはずです。

 さらに同一事業所に長期的就労(半年以上とします)が困難な人がいます。これにはおそらく2つのタイプがあり、その1つは数か月間のフルタイム就労のあと退職をする、または初めから期限を区切ってフルタイム就業する方法です。もう一つは、パートタイム就労・ハーフタイム就労により数か月のアルバイト等を繰り返すタイプです。
 後者の事情はさらに複雑で全体をうまくは説明できません。事情の要素としては、個人的な対人関係 の深化に不安感がある、もともとその仕事への関わり方が試行的である(仕事探し的)、就労対象を探し求めている過程にある(自分探し的)、ほかにより重要 な人生的な目標がある……などが複雑に組み合わさっているのでしょう。このうち引きこもり経験者によく表われるのは「個人的な対人関係の深化に不安感があ る」ことです。これも引きこもりと社会的自立の中間段階にある状態といえます。

(3)引きこもりと自立の中間にいる人の目標

私は6月29日付けのブログ「ウィキペ・ディア不登校情報センター」に、『ひきこもり評価・支援に関するガイドライン』(厚生労働省ホームページ)から次の文を引用しておきました。
 http://www.ncgmkohnodai.go.jp/pdf/jidouseishin/22ncgm_hikikomori.pdf
 (『ひきコミ』2010年8月号に掲載、一部表現を変えてウェブサイトに掲載)
 「1)ひきこもりと社会的自立の中間的なタイプへの対処  ……実際の就労へどうしても踏み出せないという、ひきこもりでも社会的自立でもない群が一定程度現われるはずです。そのため、この中間的・過渡的な集団での支援を延々と続ける必要も出てきます。さらには、この中間的・過渡的な集団に参加する段階に至らないまま、個人的支援にだけ参加できるような、あるいはまったくそれも拒んで家庭にとどまるようなひきこもり状態を続ける群も必ずや存在することでしょう。
 2)一貫した包括的な支援体制とネットワークの構築  …このような息の長い支援を地道に提供し、状況の変 化に適切に対応できる柔軟でしなやかな支援の体制を維持し続けるためには、今後は継続的に一貫した支援を提供できる体制づくりが必要となるでしょ う」。

 これは厚生労働省の準公式見解とすべきものです。そこで指摘されている引きこもりと社 会的自立の「中間的・過渡的な集団での支援」に、具体的にはこれという方法は言及されていません。「柔軟でしなやかな支援」という言葉があるのですが、 「週2~3日」または「週10~25時間」の就労を目的とする「ハーフタイム就労制」がこの言葉に適合するのではないでしょうか。それは社会的自立以前で はありますが、本人なりの努力を認め、奨励するものになるからです。

(4)生活保護受給者に就労機会を開く可能性

また私は同じ「ウィキペ・ディア不登校情報センター」の7月26日に生活保護制度に関連して次の点を指摘しました。
 「国民は最低限度の文化的生活を営む憲法上の権利があり、生活保護はそれに基づく制度です。ですから他に生活手段がないときは、家族・親戚等の状態に関わらず(物理的・心理的な抑圧感なく)生活保護の受給を求めていいし、私も受給を勧めます。
 しかし、場合によっては否定的に思うこともあります。各人の能力の発揮を鈍らせ、倫理的崩壊(モラルハザード)を招くことがあるからです。生活保護を受けた後も、心身の状態をよく評価したうえで、本人の可能な取り組みを奨励する要素を組み込んで欲しいと考えます」。
 週 2~3日の就労では、生活を続けるだけの収入を得ることは一般的には困難です。それがすぐに生活保護に直結するとは思いませんが、何らかの仕組みにより社 会福祉制度と「ハーフタイム就労制」を組み合わせる方式に現実味が出てくるのではないかと思います。
 これにより心身 状態によりフルタイムの就労が難しい引きこもり経験者に、現実的な目標設定と(おそらくは)社会的な了解を得られやすい、少なくともそれに接近する条件が 生まれるのではないかと考えるのです。それはまた、すでに生活保護を受けていて就労意欲をもちながら、適切な就労機会に恵まれない人に、可能な就労機会を 開くのではないかとも思えるのです。

(5)「ハーフタイム就労制」の位置

 私はここに、引きこもり経験者の就労における「ハーフタイム就労制」を提唱しました。誤解して欲しくないのは、引きこもり経験者は自動的にこの「ハーフタイム就労制」に向かうといっているのではありません。事実としてフルタイム就労に当たる就職や派遣型の社員やアルバイトや家業(手伝い)になっている人は少なからずいます。
 その他にもいろいろな社会参加の方法はありうるはずです。不登校情報センターはそのうち「創作活動」によって社会参加の道を開こうと取り組んでもいるつもりです。
 ここに「ハーフタイム就労制」を提唱するのは、それに該当する人が引きこもり経験者のなかに現実に存在し、彼ら彼女らはその状態を理解されず、意欲や努力の“不足”を追求されているからです。そのような追い込まれ状態は再引きこもりのきった毛になりかねません。中間的状態は政府機関に準ずる場面でも抽象的には予測されており、そこに支援現場にいる立場から現実的な提示になると考えました。

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