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Teacher Aide

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2019年1月26日 (土) 08:53時点におけるMatsu4585 (トーク | 投稿記録)による版
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「政治家になったら?」 教員志望者に突きつけられた言葉――大学では教わらない? 教員の過酷な労働実態
学校の長時間労働を目の当たりにして、教員を目指してきた学生の一部が、その夢を断とうとしている。
1月4日に公開した現役学生たちの声(拙稿「教師への夢をあきらめた学生たち」)が、大きな反響をよんだ。
じつは学生が教職を断念するのは、けっして学校の働き方だけに理由があるわけではない。
教員志望の学生を育てるはずの大学という場が、学生の迷いや不安に応え切れていないのだ。
教員養成系大学の学生は、いま大学という場で何を感じているのか。その思いに迫りたい。
<教育大生のリアルを語る座談会>
•参加者は、あるえさん、なるみさん、まつのさん、アサミさん、まなさん
•内田:本日は、全国の国公私立の教員養成系の学部・大学院に所属していらっしゃる現役学生の皆さんにお集まりいただいています。
皆さんは、慌ただしい年末にもかかわらず、わざわざ今日時間をとってくださいました。
初対面の方がほとんどですし、ここに来るべき義務もありません。
かつ、動画に出るとなれば、心的な負担も小さくありません。
それにもかかわらず、今回この場に参加しようと思った理由は何でしょうか?
■学内では話せない だからネットそして座談会へ
•あるえ:私が通う大学では、働き方について疑問視する学生がとても少ないです。
学内で談話室みたいなところに集まってみんなで話をすることがあるんですが、働き方については、「まあなんとかなる」と、あまり疑問をもっていないようです。
そして実際に卒業して働き始めてから、「しんどい」とSNSでつぶやくといった感じです。
自分たちが行くはずの職場について、学生のうちに何も考えなくていいのかと、ずっと疑問をもっていたところに、今回の場があるということを友人から聞きまして、みんなの話を伺ってみたいと思い、参加しました。
•アサミ:私も、働き方のことをちゃんと考えている友人がほとんどいなくて、たとえば、残業代が支払われないといった制度を知らない学生がほとんどです。
それで、どうしたらいいんだろうと思って、教員の働き方について自分で調べていったんです。
そして、たくさんの記事や情報を収集するなかで、今回の企画のことを知りました。
同じ意見をもっている人たちとお話ができたら何かが生まれるかもしれないと思って、ここに来ました。
•内田:僕はいま、けっこうショックを受けていまして…。
教員養成の大学っていま、働き方改革のことで大盛り上がりしているわけではないんですね? 
とは言っても、いま2018年12月ですよ? 
5年とか10年前なら理解できるけど、改革が十分に盛り上がっているにもかかわらず? 
僕の友人が教育大で授業をもっていて、「残業代がないこととか、長時間労働のこととかを取り扱うと、学生の食いつきがとってもいい」と言っていたんですよ。
だから、てっきり教育大では活発に議論されているものと。
•まな:実際には学内にも同じような考えをもった学生はいるのでしょうが、声が出せていないのだと思います。
だから私も、ツイッターやブログでTeacher Aide(@Teacher_Aide)の皆さん[注]のことを知ったときは、「同じような考えをもっている人がいる!」って、それが嬉しかったです。
YouTubeやSNSでこの企画の様子がアップされれば、情報が拡がっていくと思って、この企画に参加しました。
•内田:なるほど、同じような意見の学生もいるだろうけど、それを共有できていない、と。
だから、さっきの僕の友人の授業は、学生さんにその共有の場を提供したわけですね。
まなさんの場合には、その共有の場が学内になかったから、ネット上で見つけて、いまここにいらっしゃるということですね。
■「政治家になればいい」と言われて…
•アサミ:私は働き方のことで話題を共有できる仲間がいないので、大学の先生に相談したことがあります。
学内に進路相談の窓口があって、そこに管理職や教育委員会を経験したような方がいらっしゃるんです。
そこで働き方について相談してみたところ、「そういうことを問題に思っているのなら、政治家になれば」って言われて。
そのことがとてもショックでした。
•内田:大学の先生に?
•アサミ:はい、進路の先生です。
そう先生に言われちゃったので、どうしたらいいんだろうと思って、それで自分から調べ始めたんです。
そこで、内田先生や斉藤ひでみ先生の記事にたどりついたんです。
今回、座談会でお話しできるということですごく嬉しかったです。
だって、教員の勤務のことでずっと悩んでいたからそれを声に出してみたところ、そんなふうに返されてショックでしたから。
「法制度を変えたいんだったら、政治家になれば」って。
いや、私がなりたいのは、教師なんです。
その進路相談の先生には、「それはみんな黙って働いているんだから、黙っていられないんだったら政治家になったほうがいいよ」って私は言われました。
•内田:アサミさんの体験談を伺って、僕もショックです。
大学の先生に相談したところ、学校現場に入るなら文句言わずに働け、と。
それができないなら、教育界とは別のところに行きなさい、と。
目の前の学生は、先生になりたいわけでしょ。
これは、教育学者が変わらないといけないですよ、教育学者が。
僕も、一人の教育学に携わる大学教員として、アサミさんのお言葉を、重く受け止めたいと思います。
■「残業代なし」に危機感なかった
拙稿「残業代ゼロ 教員の長時間労働を生む法制度」
•内田:大学は教員の過重労働から目をそらしているように思えます。
そのような状況のなか皆さんは、給特法のこと、つまり公立校の教員においては、教職調整額という名目で月給の4%分が上乗せされていてその代わりに残業代が支払われない(拙稿「残業代ゼロ 教員の長時間労働を生む法制度」)といったことは、大学に入っていつ頃に知りましたか? 
さすがに、大学に入る前は知らなかったですよね?
•全員:入学前は知らなかったです。
•内田:そりゃそうだよね。つい数年前まで、残業代なしのことは、ほとんど話題になっていなかったですからね。
では、大学に入ってから、どのタイミングで知りましたか?
•まつの:僕の場合は、選択必修の授業のなかで、給特法の話がありました。
ただ、その受け止め方は、いまとはちがっていました。
授業のあとに友人と会話したときに、「教職調整額の4%をもらえるんだ!」と。
つまり、その分の「給料が増えるんだ」という前向きな受け止め方だったんですよ。
そういった誤解を招くような空気だったのだと思います。
•なるみ:僕も数年前、たしか学部1年生か2年生のときに受けた、選択必修の枠のなかに、教育法規関係の授業がありまして、そこで教職調整額や給特法のことなどを学びました。
•内田:その授業を受けたとき、教職調整額や給特法という言葉だけをおぼえたのでしょうか。
それとも、「残業代がもらえないんだ」という認識がちゃんとできていたのでしょうか。
•なるみ:「残業代がもらえない」という認識をしました。
ただ、法律が長時間労働の実態と乖離しているとか、この法律のままやっていくと現場はキツイ、といったような、労働の実態と照らし合わせるようなことはなかったと記憶しています。
法規として学んだ、という感じで、自分事にはなっていなかったです。
■「採用試験が終わってから知りました」
•内田:公立校の教員には残業代がない、つまり「定額働かせ放題」ということが盛んに言われるようになったのは、ここ1~2年ほどのことです。
まつのさんも、なるみさんも、その前のタイミングで給特法のことを授業で学んでいて、だからこそ、授業でもとくに疑問視されることがなかったのでしょうね。
本当は、学問は世論の先を進んでいるべきなのですが…。
•アサミ:じつは私は、採用試験が終わってから知りました。
•全員:ウォーーッ!
•アサミ:それも自分で気になって調べ始めて、内田先生の記事で「あっ、そうなんだ!」っていうふうに気がつきました。
まだ3ヶ月前のことです。
そこで今回、この企画があるということで、みんな給特法のことをどれくらい知っているんだろうと思って周りにきいてみたんですが、私以外はほとんど誰も内容を知らない様子でした。
すごいショックでした。
•まな:自分で調べたんですか?
•アサミ:自分で調べて、「あっ、そうなんだ」ってわかっただけで、私が受けた範囲の授業では、触れられていないと思います。
•まな:私も知らなかったです。
•内田:どれだけ長時間働いても残業代が支払われないことは、もっとも気にすべきことの一つのはずです。
そのことが、授業や友人の間で話題にのぼることもなく、教育実習の場で気づくこともなく、自分で調べてみて初めて知る。
大学でしっかりと学生さんに伝えるべきだと、改めてその思いを強くしました。
■「日本を変えたい」
座談会の様子 ※スタッフによる撮影
•内田:今回の対談で僕は、2つの大きな収穫がありました。
第一に、教育学者がもっと教員の働き方の現状を直視すべきと、気づけたことです。
第二に、教育学者が十分に責務をはたしていないなかで、現役の学生さんたちが危機意識をもって自分たちで問題を調べて、いまこうして集まってくださっているということです。
そこで最後に、第二の点に関連して、この座談会の記録に目をとおしてくださっている読者や視聴者の方に向けて、メッセージをお願いします。
この皆さんのなかで、もっとも学年の若いまなさんに、未来を語っていただきましょう。
•まな:あの…、この動画を見た学生や先生たちが、学校のなかの違和感について、匿名でもいいからSNSなどで発信していけば、同じように考えている人たちがきっと集まってくるはずです。
それが最初は小さい集まりだとしても、それがだんだんと大きくなっていくでしょうし、この企画もその第一歩だと思っています。
私、すみません、でかいこと言っちゃうんですけど…、日本を変えたいって思ってるんですよ。
•全員:おぉーーーっ。
•まな:私だけじゃなくて、世を変えたい人はいるはずだから、その人の小さい意見がだんだんと大きくなっていって、日本をもっとよくしていくかもしれない。
勇気をもって、そして言葉遣いを考えて。
•内田:教員の働き方改革がこうやっていま現役の大学生にまで拡がってきたのも、もともとは職員室で共有できない話題を、先生たちがSNS上で共有するようになったことから始まっています。
まなさんも、まさにSNSをとおして、この場につながってきましたからね。
今日は長時間にわたって、皆さんの率直な意見を伝えてくださり、本当にありがとうございました。
必ず今回の企画を、大学と学校現場とそして日本を変えていくことにつなげていきたいと思います。
今後もぜひいろいろとご意見をいただけるとうれしいです。
今日は本当にありがとうございました。
<学者は変われるか?>
■教育大生が声をあげたということ
さて私は、1月4日の記事に合わせて公開した座談会のYouTube動画(本記事下部参照)や本記事に用いている写真では、学生の顔にぼかしをかけた。
動画の音声にも変更を加えた。
この対応は、私から学生にお願いしたことである。
教職に就く学生はもちろんのこと、教職を断念した学生も今後どのようなかたちで教育界に携わっていくかはわからない。
とりあえずは身バレしないようにということである。
だがじつは参加者のうち何人かの学生は、自分の顔や声をそのまま出して意見を言いたかったということを、ここに明記しておきたい。
世の中にちゃんと自分の顔と声で責任をもって、意見を発信したいということであった。
どう考えても、座談会に参加することはリスクとコストだらけだ。
身バレの危険性がある。会場までの交通費も必要だ。
座談会当日はもちろん、その後の動画や文字起こしの内容確認にも、時間がとられる。
それでも学生は、来てくれた。この若者の気概を、私たちはしっかりと受け止めなければならない。
■学者の責任
今回の座談会をとおして私は、大学に籍を置く教育学者の責任を痛感した。
まずもって、少なくとも座談会に参加した学生は、大学内で教員の働き方について議論することが難しいと感じている。
だから、SNSをはじめとするネット空間に助けを求め、この座談会にたどりついたのであった。
学生の話を聴きながら、私はまさに学校現場もまた同じ状況であったことを思い起こした。
部活動改革は、ツイッターを舞台にして拡大していった。
「部活動を指導してこそ一人前」という教師観が学校に根づいているため、「部活動がしんどい」というつぶやきは、職員室空間では語られず、匿名性の高いツイッター空間で語られたのであった(拙稿「ツイッターが生み出した部活動改革」)。
ここでいう「職員室空間」を、そのまま「教育学」に置き換えればよい。
現時点で教育学者は、教職を目指す学生の悩みや不安に向き合えているとは、言いがたい。
■無邪気な理想論
私自身も、長らく教育学に携わってきたなかで、教員の過重負担やその背後にある法制度(給特法等)のことにはほとんど気を遣ってこなかった。
いじめや不登校、あるいは運動中の負傷事故など、広く教育問題・教育課題とよばれる事項について、私はたとえば、ただひたすらに「先生方はまず研修で勉強してください。子どものために頑張ってください」と、言い続けてきた。
本当は、その研修に参加するため、あるいは研修で学んだことを日々の業務のなかで実行してもらうためには、教員に空き時間をつくらなければならない。
あるいは、学校に新たなリソースを投入することが必要だ。
それらのことをあわせて訴えなければ、「子どものため」という崇高な目標は、結局のところその実現可能性を失っていく。
とある現役の先生が、「毎日12時間いろんな業務に追われていて、子どものSOSを見逃しているのではないかと不安になることがある」と語っていたことを受けて、私は自分の罪の重さを強く自覚した。
崇高な目標を語りつづければ子どもは幸せになれるという考えは、あまりに無邪気だ。
■「学者は教員の勤務条件について発言すべき」
日本教育学会の会長で、日本大学教授の広田照幸氏は、先月の『教育新聞』において教育学者のあり方をこう振り返っている。
教育学者が教員に対し「こんなに教育は素晴らしいから頑張れ」と追い詰めた部分があることには、個人的には責任を感じる。
教育学者が関心を持ってきたのは、いかに何をどう教えるかという教育の在り方だった。
しかし、教員の勤務条件や生活時間がきちんと確保できないような状況が明らかになり、次々に打ち出される改革が教員を追い詰めていることがはっきりしてきた。
教室で何をどう教えるかということに教育学者は関心を持つけれど、その外側の大きな問題を解決しないと、教員がこれ以上持たなくなっているということだ。
これからは教員の勤務条件に学者が発言していくことが重要になっていくだろう。
出典:『教育新聞』電子版 2018年12月4日付
広田氏は、昨年11月下旬に設立されたばかりの「学校の働き方を考える教育学者の会」の呼びかけ人でもある。
教員の働き方改革は、実務面だけでなく、学術面においても重大な課題である。
座談会に登場したまなさんが、1月4日の記事を自分の友人に拡散してくださった。
そして、こう私に連絡をくれた――「私は昨日、全国のいろんな知人に、LINEなどを使って、今回のニュース記事を広めました。
YouTubeの動画のことも、もちろん伝えました。もっともっと見てほしいんです。
だって、教育関係の人は、もっといるはずです。広げていきましょう!!」。
【座談会の動画記録(内田良チャンネルより)】
•現役学生の生の言葉に触れたい方は、この2時間にわたっておこなわれた座談会の要約版動画(54分)をご覧いただきたい。
動画には、本記事に収まりきらなかった語りがたくさん詰まっている。
なお、本記事中の発言内容については、YouTube動画からの個別情報の削除、ならびに動画撮影後における取材の追加等の事情により、YouTube動画には入っていない言葉も記載されている。
また、動画上の発言順は、記事中の発言順と必ずしも一致しているわけではない。
•01:34~ ブラックと言われている教職について、いま感じることは?
•10:04~ 座談会で教職の問題を話し合いたいと思った理由は?
•22:04~ 教育大のなかでは、教職のブラック化についてどのような議論があるのか?
•27:24~ 給特法(残業代なしという法律)について教育大生はどう感じているのか?
•32:02~ 教育実習で、ブラックな現場だと感じたことは?
•38:52~ 学生の立場から、学校現場に伝えたいことは?
•50:02~ 【付録】学生団体Teacher Aideとの楽屋トーク
注:2018年12月1日設立。学生の立場から、学校の働き方改革を推進する。
代表はじんぺー氏(@hitsuwari5th)。
内田良 名古屋大学大学院教育発達科学研究科・准教授
学校リスク(スポーツ事故、組み体操事故、転落事故、「体罰」、自殺、2分の1成人式、教員の部活動負担・長時間労働など)の事例やデータを収集し、隠れた実態を明らかにすべく、研究をおこなっています。
また啓発活動として、教員研修等の場において直接に情報を提供しています。
専門は教育社会学。博士(教育学)。ヤフーオーサーアワード2015受賞。
消費者庁消費者安全調査委員会専門委員。著書に『ブラック部活動』(東洋館出版社)、『教育という病』(光文社新書)、『柔道事故』(河出書房新社)など。
■依頼等のご連絡はこちら:dada(at)dadala.net
〔2019年1/6(日) 内田良 名古屋大学大学院教育発達科学研究科・准教授〕

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