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「働くに働けない状態」とはどういうことか
「働くに働けない状態」とはどういうことか
２００２～０４年のころ不登校情報センターでは「発送作業」というのを年４～５回行なっていました。
定期刊行誌『ひきコミ』や新聞報道に取り上げられ、多くの人から連絡や相談がありました。
その数は１万人を超え、区市郡別に分けて名簿に整理しました。
他方では通信制高校、フリースクール等との協力も広がりました。
これらの学校の案内パンフをこの人たちに送付する取り組みが発送作業です。
発送作業は少しずつ出来たのですが、あるとき送付先対象８０００人以上、２０校程が参加する大規模な取り組みになりました（学校案内パンフは多種類あり市区郡により同封するものが異なる）。
これを１週間ほどかけて分類封入し、ＤＭにして発送業者に渡します。作業参加者は実数で２０名ぐらいです。
朝１０時に集合し、夕方の５時まで続きます。参加者の都合により参加時間は個々にズレます。
初日は順調に始まります。翌日も７割ぐらいの参加ですが、１０時には間に合わない人が出ます。
日が経つにつれ、１０時からの参加者は減るのですが、中休みをしてまた参加する人もいます。
これが「連続して定期的に作業するのが難しい人がいる」とはっきり意識したときです。
参加した時間に応じて月末にまとめて作業費を支払います。
この記録は各自が書き提出してもらうのですが、その申請の正確さ（というよりも遠慮がち）も新鮮でした。ズルはしないのです。
働く状態はその後もいろんなことがわかってきました。
バイトなどに就くと、「明日は朝からバイト」となると前日の午後５時になると居場所を退所して備える人がいました。
明後日にシフト勤務があると２日前から緊張する人もいました。
月・水・金・火・木曜日に働く「２週間で５日働く」という自分のシフト制をつくっている人もいました。
１週間という期間を決めてバイトに就くという方法を選んだ人もいます（その後は１か月以上の長い休日）。
ひきこもりを抜け出して働くというのではなく、登録会社から送られてくる仕事の案内を見て出来そうなものを選び「ひきこもりながら働く」人もいました。
朝９時から５時まで時間いっぱいではなく、自分の体調をみながら、できそうな方法を工夫しながらバイトなどに就く方法を決めていたのです。
現在もそういう人が多くいると思えます。
近年になると、（元）ひきこもりの人たちも４０代から５０代に入っています。
様子をきくとそれぞれの条件のなかで、それぞれの状態に即して働く姿を見つけています。
会社勤務ではなく自宅でできることなどの社会的条件が広がりつつあることも、少しは働きやすくなったといえるでしょう。しかし、道はなお平坦とはいえません。
それでも上に述べたことは、ある程度「働いている」という人の状態です。
なお家から出られない人がいます。なお自分の部屋からも出にくい人もいます。就労支援作業所などが広がり、そこに行くのを生活サイクルにする人もいます。
カウンセラーや医療機関に行くのが外出の中心という人もいます。
全体はわかりませんがひきこもり１６４万人、とくに２０歳以上の人には仕事に就けない、「働くに働けない」状態にいる人は多くいます。
これは状態像として私が知る印象的な部分を記述したものです。
このように「働くに働けない」状態は多様と言えます。ではそれは身体のどことどのような因果関係があるのでしょうか？
第一には脳神経系に関するのではないかと予想します（ウツ状態、不眠、摂食障害などが持病？になる人もいます）。
内分泌系の異変かもしれません。消化器系も少なからず関係すると思います（大腸症候群の人は多くいます）、血液循環系、呼吸器系かもしれません。
特定の臓器が関わるかもしれません。発達障害（発達神経症）の少なくとも一部と重なると想定します。
忘れてはならないことは、私が関わる通所者の数人が若くして亡くなりました。
本当の原因を知ることはできませんが、少なくとも数人は「働くに働けない」ことが苦になったと考えています。
私はこれらの「働くに働けない」状態と身体の異変の因果関係に系統的にふれる医学・身体科学の現場にいません。
それでも「働くに働けない」状態と乳幼児からのマルトリートメントとは身体的に何らかの因果関係がある、というのは私が接したひきこもり経験者たちの様子から確信できます。
そこを見越して社会的な対応が求められるのです。
