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「大検」が「高卒認定」に変わったことの意味

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「大検」が「高卒認定」に変わったことの意味

(出典『不登校・引きこもり・ニート支援団体ガイド』 Part2のまえがき、子どもの未来社、2005年)
学校・支援団体の解説構造の「学校関連」

2005年に大検(大学入学資格検定)が、高卒認定(高校卒業程度認定)に変わりました。
ここ十年前後続いてきた高校教育対応の教育制度の改革は、一つの頂点を迎えたようです。
この十年余りの高校教育対応の教育制度は、実態面でも法令面でも大きな変化を遂げました。

(1)大検受験生の増大と大検を年1回から年2回実施にしたこと。
大検を“受けやすいものにしたこと。
その大検が高卒認定に変わったこと。

(2)通信制高校との技能連携制度を生かす技能連携校が、従来の企業内学園に代わって生まれたこと。
専修学校高等課程(高等専修学校)にも通信制高校との技能連携制度が普及したこと。

(3)通信制高校サポート校が多数生まれたこと。

(4)技能連携校と通信制高校サポート校とともに、通信制高校自体も増大したこと。
特に複数の都道府県にまたがる広域通信制高校が増えていること。

(5)定時制高校が減少し、定時制高校生が否応なく減少させられていること。

(6)不登校生や高校中退生を受け入れるため、全日制高校のなかに山村留学型(寮施設を含む)が誕生したこと。

(7)不登校生や高校中退生を受け入れやすい昼間定時制高校(全日制高校の規制を緩和した形に見える)、登校日数が比較的多いが全日制ほどではない、“通学的”通信制高校が現れたこと。

(8)海外の高校教育制度をいろいろな形で活用したり、連携したりする国際高校や海外留学を生かす学校群が誕生したこと。

(9)高校卒業に必要な必修単位数が徐々に減少し、現在74単位にまでなったこと。
単位認定の履修科目のなかに、従来の概念を超えた仕組みが取り入れられていること。
たとえば、音楽・芸能系、職業体験やボランティア活動を科目履修とする高校が生まれていること。

このほかにも、高校教育レベルで実にさまざまな変化が起きてきました。
これらの背景には、生徒減と社会の変化、とりわけ不登校の子や高校中退生が大量に生まれ、それに対応してきたことがあります。
これら一連の変化のなかで大検が高卒認定に変わったことを、「ここ十年前後の変化の頂点」と書きました。
変化はこれで終わったわけでなく、高卒認定制度が、次の本格的な変化の始めになると予測されるからです。
その変化は、高校教育の中枢を占める全日制高校に及ぶと思われます。
これまではいわば高校教育の主に周辺で起きたことですが、これからは中心部に変化が移っていくのではないでしょうか。

高校といえば、これまではほぼ自動的に全日制高校を指していました(今日では必ずしもそうではないとしても)。
高校には普通科と職業科、進学校と底辺校(教育困難校)など、義務教育(小学校・中学校)に比べてもともと多様なものがありました。
生徒減のなかで魅力ある高校をつくり、中学生に「進学したい高校」をアピールするため、個性ある活動をすすめ、多様化はそれぞれの高校の側から促進されてきました。
しかし、これまでの高校の多様化はまだ助走レベルだったと思います。
その本格化の鍵となるのが、高校卒業程度認定試験です。

高校教師も含めて多くの人は、この大検から高卒認定への変化の本質をまだ理解していないように思います。
それは、大検という「資格」を、高卒という「学歴」に変えたということにはとどまらないのです。
変化の本質の中心は、高卒認定試験が全日制高校生にも開かれている、というところにあります。
その利用のしかたにより、全日制高校は変わらざるを得なくなります。
たとえば、生徒の在学中に早々に高卒認定資格を取るようにし、あとはめざす大学受験指導にする進学校―高校の文字通りの予備校化です。
あるいは、大学受験指導ではなく、学業以外の活動に目を向ける方向も考えられます。
会話中心の外国語教育、芸術活動、パソコンのハード面ソフト面の専門的な技術取得などを特色とするところも出てくるように思います。
その活用内容を一律に否定的にも、肯定的にも見られない状態が出てくる可能性が感じられます。

高校は、高校進学率が90%を超えたあたりから、実質的には義務教育に近い状況になりました。
法令的にではなく、社会生活上のいろいろな場面で、高校卒業の学歴が必要となったのです。
そういう状況になるとともに、高校教育は多様化の速度を速めました。
それは“エリート”的な高校教育が崩れることの反対側の様相です。
当時の文部省は、ほとんど全部の生徒に高校(または高校卒業同等)の資格が取得できる環境条件を保障することを求めながら、
他方では高校教育自体のレベルを維持することも求められたのです。
大検受験を定時制高校生や通信制高校生に認めながら、全日制高校には認めないという制度上の矛盾した対処はここに由来します。


この二つの要請圧力を、この矛盾した仕組みでなんとかやりくりしてきたのが、この十年間の事態でした。
この縛りを解いたのが、高校卒業認定資格です。
それは一面では、独自の後期中等教育の機関である高校教育の従来のあり方を脅かします。
それは、すでにいろいろな場面で崩れている高校教育の存続のしかたを追認する面ももっています。

しかし、他面では、新しい時代の要請に対応しようとする面もあります。
芸術・芸能を正規の教科として取り入れる。
野球やサッカーの(プロ)選手の養成機関になっていることも事実上認める。
日本国内だけでなく、海外留学が日常化している時代にその影響を取り込んでいく。
英語をはじめとするさまざまな外国語、特に会話の修得ができるようにする。
パソコンなどの通信技術、映像・音響技術の専門的レベルの内容を取り入れていく。
そういう時代的要請に応えていく制度を用意しつつあるようにも見えます。

この転換はあまり世を騒がすことなく、比較的ひっそりと行われました。
この意味するところは年を経るにしたがって、徐々に浸透していくように思います。
生徒(子ども)の側にとって否定的になる動きに対しては、異議を申し立てていくのが、教育制度を改善し、教育内容を高めるためにも必要となるでしょう。

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