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なかむらまゆこ詩集

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目次

なかむらまゆこ詩集

あき

ひとりは寂しいからと、

あきは床にぺったり耳つける


隣にはぼくがいるけれど、
あきはひとりだと言う


あきの不審な行動は、いつものことで
もう、その行動に
いちいち反応するひとはいない


しばらく、頭をなでてやってから
ぼくはあきと同じように床にべったりと耳をつけた

頬が、ひんやりと心地いい


つめたくなった耳に、音が届く


冷蔵庫の、じーっという音


階下のへやの、テレビのぼやけた音


階段をのぼる、とっとっと、という音


そこにはいろいろな音が溢れていた


あきは自分がひとりきりだと言う

誰もあたしを見ようとしないから
あたしは一人なの、と


ぼくは頭をなでてやる


明日もきっと、あきは音の中
寂しさを紛らわすのだろう


そしてそんなあきを、
また誰もが見えないふりをするのだろう


コップ

かなしい がひとつ

今日もまた私のもとへやって来た
私はそっぽを向いて
目を合わせないようにするのだけれど

ふたつ目の かなしい

みっつ目の かなしい が
また私のもとへやって来る

泣くことだけは避けたいと

誰かに見られるのは嫌だと
我慢 するのだけれど

かなしい を受け止めていたコップは

もういっぱいで
あと一滴で零れ落ちそう

だから

どうか どうか…、と

あたし、今日もまた窓辺で神にお願いした

空にいるかなんて知らないけれど

今日もまた お願いした



真夜中の蝶

開かれた掌から ひとつ
命が零れ落ちた


「ふたつめからはね
大したことじゃなくなるんだ
数を追うごとに何も感じなくなる」


君はそう言って

落ちたチョウの羽の縁
ゆびでなぞった


月光に映しだされる横顔が
かなしいと思うのは気のせいですか


労わるように羽に触れていると思うのは
私の気のせいなのでしょうか


君は 
まるでかなしさを誤魔化しているよう



テレビでは今日もアナウンサーが
淡々と数を口にする


昨日の君の横顔思い出し
ちょっとだけ鼻の頭がつんとした


君は、今日もかなしさを誤魔化して
生きてゆくのでしょうか


言葉の墓標

言葉は死んだよ

昨日 午後の光の中

消えてった


想いを内に秘めたまま

ひとつめの

呼吸とともに消えた


生まれた言葉は死んでゆく

音に できずに

僕が殺した


君に

あげたかった言葉も死んだ

ひとつめの

呼吸とともに


かけてあげたかった言葉

同情と見なされるのが怖くて

自分で 殺した


カラダの中に

いくつもの墓標がある


生まれては 音にならずに

死んでいった 言葉の墓標


僕の中には

墓標が溢れかえっている


ためいき

ずっと痛かったのは

母のためいき


私はそれを聞くと
うつむきたくなって
けれどうつむくと、怒られそうで
ずっと母のワンピースの模様
見ていた


ためいきは
目を逸らすことへの罪悪感と
怒られる前から目尻に溜まってしまった涙への
羞恥心を募らせる


私は母のためいきを聞くたびに
惨めな気持ちになった


それは大人になった今も
変わらない


怖かったのは怒られることよりも
呆れられることだったのかもしれない


小さな頃のことを思い出し
私は小さくためいきをついた


リビングでは娘がこわばった表情で
私のスカートのすそをずっと見ている


彼女もまた、ためいきに対し
私の小さい頃のような感情を
抱いているのだろうか


少し、申し訳ない気持ちになった


黒い羊

白  白  白  白い羊の群れの中

ぼくだけが黒い羊

色が黒いわけじゃない

だけど群れの中 たまに自分が

異質な存在に感じてならない


どこかが違う 馴染めない

押し寄せる孤独感

笑って あわせて 誤魔化して

僕が黒い羊だって

気づかれないようにする


だけどある日気が付いた
あの子もあの人も黒い羊

ぼくと同じ黒い羊


見渡せば

黒  黒  黒  黒い羊の群れ


最初から白い羊なんか存在

しなかったのかもしれない


だけど黒い羊は今日も

白い羊のふりをする


白い衣を被って 白い羊のふりをする


残像

右目

     に     飛び
                 込んだ
光      と
           影。
  残像と
      なって
           焼き  つい

                 て
もう  私
    から  離れ
             ない。
  もう  放して
       なんか  やらな

               い。
ココに 閉じ
        込めた   アナタ
                   の
     影。
私の         目に
  焼きついた       アナタ

               の
     ・・・・影。
ココにあるのは

         アナタの


          影


小さな独裁者

びぃだま

ベランダの手すりに乗せて

ひとつ ひとつ

あの子は指で弾いて

墜落死させる


ぼくはいつだって見てみぬふりで

パリンッていうか細い泣き声が

聞こえてくるのを

目を伏せてやり過ごすことしか

できないでいる


砕いて   粉々になって

 気にもかけてもらえなくなって

そのうち

 見なかったことなんかにされちゃう

びぃだまたち・・・


“ねぇ、面白いでしょ?”って

ぼくを試すような目で笑う君を

拒絶したら

ぼくのことも

指で弾きますか?


やっぱり君はぼくのことも



笑 い な が ら 指 で 弾 く の で す か ?


真夜中の排水溝

風呂場の排水溝

不規則な動きで円を描きながら

一本、一本吸い込まれてゆく


私の黒髪


何時間でも見ていたわ

それを咎める人なんて

何処にもいなかったから


赤い色を

加えて見たくなったのは

毛を抜き飽きた午前三時


いびきをかく貴方を切り裂いて

フードプロセッサーにかけて

ココに流してしまおうかしら


そしたら貴方


わたしの目を楽しませてくださいます?

この退屈な日常に

少しでも色を加えてくださいます?

右回りで

わたしのためにあの中に堕ちてよ


咎める人なんて
              疑う人なんて
   誰もいないわ
              誰もいないわ
骨まで
      砕いて
          流して  あ  げ る

朝になったら


朝になったら


貴方はもう此処にはいない

証拠は何ひとつ残らない


ただ一つ残念なのは

自分ひとりじゃ

あの中に堕ちれないこと

わたしも堕ちたいのに

一人では


堕ちれない。


わからない感情

何やら悲しかったのを憶えています

たぶん

私、涙を流してしまったのでしょうね


その涙を偽善というなら

それもいいでしょう


ただ

言いようの無い感情が涙腺を弛緩し


    雫 が

    一 粒


落下したのです


何が悲しいのかは

説明ができません

それは自分でもわからない

不思議な感情でした


ただ貴方を悲しいと思いました

それだけが

私が正確に把握していること


貴方の言葉が

この胸を突き刺し

私の中をかき乱したのです

それは

決して私に向けられたものではなかったけれど

私は涙を流し

貴方を守りたいとも

抱きしめたいとも思わずに

ただ

そばにいたいと思いました


これを

偽善というのならそれもいいでしょう


わたしはたぶん

貴方に同情して涙を流したのではなく

貴方の中を垣間見て


涙を流したのです


それは貴方の中の

1%にも満たない部分なのかもしれません

ですが

それは確かに

訴えかけていたのです

痛いぐらいに


偽善と言うならそれもいいでしょう


偽善と言うならそれもいいでしょう


偽善と言うならそれもいいでしょう


ただ


貴方は

あの時確かに

私の心を掴んだのです。

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