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ひきこもりの心と体・生活状態と改善方向

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ひきこもりの心と体・生活状態と改善方向 [覚え書き]

会報『ひきこもり居場所だより』2022年12月号
ひきこもり自体は、病気ではありませんが、一人ひとりをみると心と体に、言い換えますと身体状態・精神状態および生活状態(とくに負担になる生活状態)が表われます。
そのいずれの状態もひきこもりに限らず多くの人にもありますが、ひきこもりであるからその表われ方に特徴があるのかもしれません。
私が関わったひきこもり(および準ひきこもり)の人たちから聞いたこと、見てきたことを覚え書きにします。
何よりもひきこもりであること自体が、その生活状態でもあるといえます。
これを含めて以下のことは当事者にとっては知りたくない、避けたい、隠したいと思うこともあるでしょう。
また逆に自分のいろいろな状態を知り、相対化して理解していく手がかりにもなるでしょう。
私が対応し受けとめていく対人関係や生活面とは違う面のおおまかな指針にもなります。
医学的な診断によるものではなく関わって知り得た印象です。
まず人としての三大生存本能にかかわる部分、生物として当たり前のところです。
食欲(消化器系)は、2つのところが目立ちます。
1つは過敏性腸症候群です。
下痢(男性に多いという)、便秘(女性に多いという)です。
この男女差はそれほど絶対的なものではなく、両方が交互に表われる人もいます。
過敏性腸症候群は一般人も15%程度はいるといわれます。
もう一つは摂食障害です。
消化器系の症状よりも精神科的な色あいが強いものです。
私の聞く範囲では、過食傾向の人が多く、ほかに拒食や、嘔吐、人前で食べられないなどにも表われます。
ストレスを受けた際の感情抑制に関係すると思います。
睡眠——これはとくに脳神経系の状態と考えられます。
眠れないというのは非常に重大な影響があり、行動や意欲など生活のいろいろな面に表われます。
不眠の表われ方も多様であり、寝つきがとりわけ悪い、1~2時間の短時間睡眠しかできないし、それをくり返す、悪夢をよく見て起こされる…などです。
逆に過眠状態になることもあり、不眠でありながら過眠にもなりやすい、という人も珍しくはありません。
性欲は、意欲や行動などの根源にも関わります。
大きくは2つの面で特徴的な表われ方をします。
若年期には、男女とも一部ですが性衝動が強く表われる人がいます。
多くの人は若年期から性衝動が抑制的、あるいは感じることがなく封印されていると思える人もいます。
男女差はかなりあると思いますが、一般にいわれる男女差が、ひきこもりにおいてはより強く表われると私には理解できます。
もう一つの面は、ひきこもりの人は成人になる時期が遅くなることと関係しています。
この数十年間に多くの日本人が大人になるのに30歳前後までかかるようになったのと重なります。
生物としての進化があるのかもしれません。
子どもから男性、女性への発達が遅くなる、または男性化、女性化を回避するとでもいえる状態が見られることです。
その先には中性化指向として表われる人もいます。
このことは先天的なLGBTsとは区別して考えられますが、外観的には十分に区別できないこともあります。
以上は三大本能との関わりです。
ひきこもりになる要因と関係すること、年齢や社会生活の経験によって表面化する身体・精神・生活状態もあります。
わかりやすいのは学齢期における不登校(および高校中退)です。
ひきこもりの先行状態であり、早期発見にできることもあります。
原因といえる乳幼児期のマルトリートメント(不適切な養育)やハラスメント、虐待による直接的・間接的な結果と考えられるものもあります。
子ども期の愛着の欠如は多くの人に影響し、表われ方も多様です。
乳幼児期の依存経験が少ないのと関係していると考えます。
発達障害はいくつかに分かれますが、基本的には後天的ではなく先天的な要因によります。
しかし生後の環境条件により、発達障害に近い状態と見られることもあり、なかなか区別がつきません。
多くは愛着障害またはその後遺症状かもしれません。
どういう状態でも人として尊重されるスタンスが必要とされるのです。
うつ病・うつ状態——子ども期には活発な行動で表われることもありますが、多くは気分の落ち込みや、「死にたい」に類する言葉が出ます。
うつは成人期になると双極性障害と表われるみたいです。
うつと関係すると思うのは、怒りの表われ方です。
怒りを抑えて落ち込むことが多いですが、逆に怒りを抑えきれない人もいます。
リストカットなど自傷行動や摂食障害もここに関係するのですが、短くは説明できません。
ひきこもりに関わる体と心の状態はこのように多様であり、両極端に傾きやすく、また長く続く間に表われ方のどこかが変化していきます。
これらのひきこもりが生まれる背景も表われ方も多様であり、先天的な本人の気質・体質と後天的な環境が複合しています。
後天的な関係では不登校やひきこもりが社会問題になるほどに増えた1980年代以降の事情があります。
1970年代初めに日本が高度経済成長を達成した後に高度経済社会・情報社会に向かったこと、社会情勢の大きな変化が関係します。
これまで人生で重視されていた価値が世代間で大きく変わり、個人を中心とする社会に移行しているのです。
私はこれを世代間ギャップととらえますが、その振れ幅はとても大きく、否定的に表われるのが親世代からの虐待やハラスメントになることです。
この点はここでは省きます。
問題は、当事者として今もなお何らかの問題を抱えている、あるいは後遺症状に苦しむ人はどうすべきかでしょう。
「いろいろ自分はやってきたけれども、あとは何をすべきかわからない」という人がいます。
本当はそこに改善方法はありません。
「ありのままの自分」に生活するのがいいわけですが、この言葉はシンプルでわかりやすい割には素通りされていきます。
「ありのままの自分」とは、自分の本音の感覚、本心に沿ってということですが、いつのまにか本音や本心がわからなくなっています。
相手に悪く思われたくない、その場の雰囲気に合わせる、社会の約束事(表立ったものも暗黙のものも)を優先する、そういう生き方をしてきたことです。
親世代はそれを子どもに伝えてきました。
子どもはそれを守ろうとしましたが、子どもの生活する世界はこれまでとは違っているのです。
そこに世代間ギャップが生まれています。
ここを養育や身体科学の面から見たのがマルトリートメント(不適切な養育)です。
子どもは親から躾(しつけ)という教え込みに対応してきたのですが、抑制を超えて虐待のレベルにあった人です。
推測では1970年前後に生まれた人から顕著に増加しました。
私がひきこもりに関して取り組みを始めた90年代と関係します。
関わったひきこもり経験者のほとんどは1970年以降に生まれた人たちです。
これで十分な論証とは思いませんが、一つの論拠になるでしょう。
不適切な養育に対して、児童精神科医の友田明美さんは子どもは脳を変形させて(ある部分を委縮させるなどして)対応したと実証しました。
その数年後、10年後、20年後の姿、状態がひきこもりの身体・精神・生活状態です。
しかし、それでも少なからずの人が、その後ひきこもり状態から抜け出して社会の一員として生活しています。
そうなったのは本人の気質・体質、マルトリートメントの様態や程度・期間、その後の環境条件の変化や当事者が取り組んだ努力の組み合わせによると思います。
私はひきこもりの人たちに居場所を設けて、そこでいろいろな試みを推奨しました。
その環境条件、取り組み内容などがそれぞれの程度において役立ったと思います。
当事者にとっては外出先になり、コミュニケーションの機会になり、対人関係の実際を経験し、自分なりの表現・意志表示を重ねてきた、ということでしょう。
医学・身体科学面からの説明では友田先生は、脳は20代の後半までは成長するといいます。
とくに脳は可塑性が特別に強いと思います。
脳のある部分の働きが十分でないときは、他の部分が肩代わりをします。
この肩代わり機能ができるには時間がかかり、どう過ごすのかが関係しますし、個人差もあります。
居場所の取り組みはこれを促進します。
外出は太陽光を浴びる機会、運動する、好きなこと・出来ることに手を付ける…いろいろな動きが関係します。
そのなかでも人との関係は特別です。
親しい人との出会い(ストレスを感じる人とは距離をおく)、親密な関係になる人との出会いは大きな役割を持つと考えられます。
その親密な関係がときには依存的な関係になるとしても重要です。
子ども時代に欠けていたものを補充するからではないかと感じます。
ひきこもり状態からは抜け出すことができます。
それは自分の本音・本心を大事にし、できることを重ねることの先にあります。
時間はかかるでしょうが、その道に向かって可能なところから歩み始めてほしいものです。
自分の状態を見直し、理解し、現在の生活と行動の参考にしていただきたいです。

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