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ひきこもり誕生を社会的背景から説明

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ひきこもり誕生を社会的背景から説明(経済学の視点)

30年に及ぶ日本経済の低迷、それは社会全体の停滞のベースでした。
この時期に私は不登校情報センターの看板を挙げ、主にひきこもりに関わってきました。
社会状況とそれが個人に影響した両面に関わったのですが、始めた当初にはそういう意識はありませんでした。
大学の経済学部に中途半端に籍を置いただけで、この30年間にその経済学の視点から深く考えることはありませんでした。
それがこの数年に両者の関係を結びつけて考えるようになりました。
時間的余裕ができたともいえますし、居場所の環境が大きく変わったことが考えられる条件になったのです。
比較的かかわったひきこもり経験者たちは40代から50代になり、おおかたの状態が見えるようになったことも理由に挙げてもいいでしょう。
とはいえ、彼ら彼女らのなかには社会に入れないでいる人がいるのも確かです。
参加とはいえ不十分のままの状態もいます。
その事情を一部は個別的に比較的近しい関係のなかで学ぼうと思っていますし、他方では社会的背景との関係で大きくとらえたいという気持ちもあります。

1945年生まれの私は、大戦後の社会復興に向かう動きのなかで子ども時代をすごしました。
60年代前後の中学・高校時代はとくに貧しい生活におかれましたが、社会の動きも私の気持ちも、自分が働けるようになればその状態から脱け出すことはできるという、かなり楽観的にすごした時期でした。
日本の高度経済成長の時期がまさにこの時代でした。
ところが1995年に不登校情報センターを開いたところで集まってきた人たちは、この高度経済成長期という大きな社会変動の波にゆれる後に生まれた人たちでした。
おそらく親世代との間に際立ったギャップを感じた人だったと思います。
集まってきた人の中心は20代であり、親世代との間にズレを強く感じる人たちだったと思います。
もちろん個人差はありますが、繊細で優しく、控え目で遠慮勝ちという性格の人たちです。
これが生来のものか、生育過程のなかで身についたのかはいろいろでしょうが、私のような楽観的な生き方ではありませんでした。
私は「来る者拒まず、去る者追わず」の姿勢で居場所を運営していたつもりでしたので、私のやり方が全員にマッチしていたとは思いません。
それぞれの人の現実を認め、その人の手さぐりに役立つことができるように取り組んできたつもりです。
うまく行ったかどうかは自分では判定できません。
主観的にはある程度接点ができた人は200人以上300人以下になります。
そのなかの数人とは、いまなお「それぞれの人が負ったマイナスの何か」を追いかけています。
中断をおいたあるタイミングで私との関わりでそれが始まることが多いように思います。それが個人的な事情を改めて学ぶ始まりになります。

その一方で社会的背景から、全体的に考えてみようとする気持ちがこの数年強くなりました。
その1つは2021年に『ひきこもり国語辞典』を発行し、個人事情を観察的現象に見る方向からの作業が一段落したことに関係します。
時間的余裕に加えて精神的余裕ができたともいえるのです。
経済社会の面、というよりも経済学の面から「ひきこもり」を見ようと考えたのです。それはまだ途中です。
参考になったのは社会学的視点からのひきこもり論が多く、必ずしも経済学的な説明ではありません。
そのなかで水野和夫『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書、2014年)で、一言ひきこもりにふれていただけでした。
ただ水野さんの理論では資本主義はいずれ「定常経済」に向かう——封建制が成熟していた江戸時代のように成長ではなく安定した経済社会に向かう——という論を展開しており、これが現状をうまく説明しているのではないかと密かに納得したのです。
現状の経済的低迷や格差などはその過程で生じるのではないかと思ったのです。
私が好感を持った広井良則『ポスト資本主義』(岩波新書)でも「定常経済」を予測しています。
経済成長の必要性を強く感じるのではなく生活の困難や失業や格差などを関連させながらもそれぞれの社会問題、あるいは政治課題として対応する——うまくいく場合もあるしそうでない場合もあるけれども重ねていく——政府の経済政策は信用できないけれども、それぞれ重ねていけばよくなる、そう考えてきたと思います。
たとえば非正規雇用制度の増大にしても、世の中が大きく変わる時代にはどこでどう働くのかを固定しなくなる制度の面があり、生活保障などの面を政策的にカバーできれば、何とかなると思っていました。
20代後半のひきこもり経験者が、急に週5日の勤務に就く負担を考えると、非正規雇用にはやりやすい面もある、そう考えることもありました。
だから社会福祉の条件などを整えれば、何とかできるのではないか——そういう感じでした。

経済社会的な背景からひきこもり誕生を説明するとどうなるのか? 
高度経済成長の後(1970年以降)、誕生した人が、ひきこもりの中心部分を占めます。
その人たちが思春期を迎える80年代に不登校を経験した人、90年代に入ってひきこもりを経験した人——個人名では入れかわることもありますが、世代としてはこれが全体像です。
ひきこもりは90年代以降の日本の経済的停滞の時期に増大しました。
高度な経済社会に到達した後の世代間のギャップがひきこもりを生むのです。
新しい世代の時代感覚に沿った経済発展と活性化によりひきこもりは減少します。
もちろん個人的事情がありますが、これが全体構造図といえるでしょう。
90年代以降の世代による社会福祉政策、身心と健康を守る政策により新しい機会をつくり、ひきこもり経験者が平穏に生活できる社会になるのです。
これがひきこもりをなくしていく基本方向になるでしょう。
すでにひきこもりを経験した人にはそれに対応するいろいろな対応手段が必要になります。
それはさまざまな社会問題、社会課題に共通することになるでしょう。

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