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中学受験

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中学受験

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ページ名 中学受験  (発達障害のニュース、  )
「発達特性」がある子に中学受験は可能なのか 専門家が考える「公立」OR「私立」の選び方〈AERA〉
中学受験は親が従来の価値観から脱却できるか否かも大事(istock)
発達に特性をもつ子やグレーゾーンと思われる子をもつご家庭で、中学受験を希望する方が増えています。
わが子に合った居場所選びはどのように考えたらよいでしょうか。
『AERA with Kids夏号』では算数教育家・中学受験専門カウンセラーの安浪京子先生、元公立小学校の校長先生(田上さん・仮名)、発達障害の専門家(木村さん・仮名)をお招きして鼎談をしました。ここではその一部をご紹介します。
*     *  *  *
安浪 近年、「席に座っていられず公立小での勉強にもついていけない。
だから公立中学に進ませるよりは面倒見のよい私立中学に入れたい」など、発達の特性からくる相談内容が増えてきています。
中学受験の場合は勉強量も多いですし、内容もハイレベルなので、小学校の勉強についていけていない子だと、そもそも中学受験はむずかしいといった現実問題があるんですね。
発達特性をもつ子の親御さんに、どのようにアドバイスしていけばよいのかと悩みます。
木村 私の相談室にも、公立で適応できなかったので違う居場所を探して私立へ、という親子がたくさんいます。
ただ発達に特性をもつ子の場合、「公立に適応できなかったから」というマイナスから出発して私立を選択すると、入学してもうまくいかないケースが多いのは事実です。
私立をやめて地元の公立に戻ったとしても、その後不登校になってしまう子たちも少なくありません。
田上 親御さん方が「公立中学はどうなの?」と思うのは、公立小に嫌な思いをもっているからですよね。
学校は集団活動ですから、「みんなで、みんなが、みんなを」になりやすい。
僕自身は、これはともすると危ない発想だと思っているのですが、親御さんの中にも「みんなで、みんなが、みんなを」の目線があって、どこかでみんなと同じでなくてはいけないと思っているのかもしれない。
この枠組みから抜け出せていない保護者は多いのかもしれませんね。
安浪 一口に発達障害といっても、子どもによってさまざまなケースがありそうですね。
木村 子どもたちがそもそも抱えている困り感には、発達の“障害”に由来するものと、発達の“停滞”に由来するものの二つがあります。
注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群(ASD)、学習障害(LD)の子たちは、発達の“障害”に由来するものですね。
一方の発達の“停滞”は、乳幼児期に体をしっかり動かしてこなかったことで、姿勢維持ができない、鉛筆をもっていないほうの手が下がりっぱなしになるなど、脳と体の連動がうまくいっていないケースです。
こうした発達停滞組の存在が指摘されてきていて、「停滞由来」の子たちまで含めて、発達障害が増えているといわれているんです。
安浪 そうなんですか!
木村 「障害由来」と「停滞由来」ではリカバリーの仕方も違ってきます。
「障害由来」の子たちは、それぞれの特性に合わせて電子ツールを使ったり、聴覚や視覚を使ったり、教える手だてがいろいろあるのですが、「停滞由来」の子たちはそれでは対応できないんです。
基礎工事からやり直してあげないといけません。
安浪 発達の停滞と発達障害は対応の方法が違うということですか?
木村 私が言っている発達の停滞は、発達障害とは別枠です。
小さいころの外遊びや運動体験の不足で身体から入る脳への刺激が少なく、左右の脳の連動がうまくいかなくなっている子たちです。
左の脳で言葉を捉えて、右の脳で映像にするといったことができにくくなっているということですね。
左右の脳の連動をつくるベースは、幼児期にどれだけ体を動かしたかなのですが、そこが足りていないと、外からの情報をきちっと捉える体になっていきません。
その状態で小学校の記号・数字・言葉の学びの世界に入ったとき、体を通じて理解するといったことが難しいんです。
すると小学3年生ぐらいからパターン学習と暗記学習にシフトしていってしまい、考えることがどんどん苦手になっていくんですね。
安浪 抽象概念が入ってくると、そこでついていけなくなってしまう。
木村 ひとつの事柄に二つ以上の意味をつけることが不得手になる。
すべて1対1の対応となり、言葉の裏の意味を読むのが苦手になってしまう。
その傾向がASDの特性と捉えられてしまうことがあるんです。
ところが生育歴をきちんと追っていくと、じつは停滞であるケースも少なくない。
体の発達から始まって、4歳ぐらいから子どもは記号・数字・言葉の世界に入っていきます。
そこでの身体経験の積み上げがなく、勉強や日常生活動作がうまくできていない子も増えてきているんです。
安浪 だから体の感覚をつけていく基礎工事からやり直してあげないといけないわけですね。
田上 木村先生が言った基礎工事というのは、すなわち体の使い方を教えるということです。
体を使うトレーニングをしていると身体性が上がり、学習面も少しずつ向上して、勉強についていけるようになることが少なくないんです。
「姿勢を正そうね」「字を書くときは手を添えよう」と声をかけるだけでも、落ち着いて学習に取り組めるようになっていきます。
安浪 先ほど木村先生が、私立に入学してもうまくいかなくて、その後不登校になる子たちもいるとおっしゃっていました。
そうなると「公立中も心配、でも私立に行って不登校になるかも。
じゃあ、どこに行かせればいいの?」と親はなると思うんです。 田上 2016年に「教育機会確保法」という法律ができて、就学機会の確保ということが保障されました。
もうすでに学校だけが学びの場ではないということになっていて、フリースクールも教育委員会と連携すれば出席扱いになります。
ということは、極端かもしれないけれど、公立中学に籍だけ置いて、フリースクールに行くという選択も可能なんです。
N中・N高みたいなオンラインによる通信制の学びの場もできている。
今回のコロナ対応で、オンライン学習も一気に進む可能性があります。
グレーゾーンの子たちが、それによってイキイキしてくるかもしれない。
この先は学校という“箱”にこだわる必要はまったくなくなっていくと思います。
木村 公立か私立かの選択でいっても、10年前と比べ、発達障害の子の家で私立志望は徐々に減っているというのが現場の実感です。
なぜなら公立校のほうが発達障害の支援ということでは手だてがありますから。
教師の意識も変わってきています。
「公立がうまくいかないから私立に」より、「公立のほうが多様性を見てくれるからいい」と考える保護者が増えてきているのが実際なんです。
安浪 そうなんですね!
木村 加えて、この4月から学習指導要領が新しくなりました。
これまでは「望ましい人間関係を形成する」ということで、「仲よく助け合う」「協力し合う」「支え合う」など、発達の特性がある子たちには苦手な人間関係のあり方が目標とされていました。 
それが新しい学習指導要領では、望ましい人間関係が消えて、「互いのよさや可能性を発揮しながら」に変わっています。
多様な他者との協働とか合意形成をする力、自己実現の態度といったものが重視されるようになっている。
現場での指導も「みんなと同じように」から「一人一人の強みをどう生かすか」に今後は大きくシフトしていくことになります。
つまり公立の学校文化が変わっていくということですね。
田上 公立も今、少しずつ変わろうとしているんですね。
小規模特認校というフリースクールの公立版のようなところもできていて、多様性に対応できる学びの場が出てきています。
「みんな」でやってきた学校文化が、これからはスタートもゴールも変わって、学びのスピードも学びの方法も変わっていく可能性があるということですから、その子にとって最適な学びは何かになると、箱選びだけじゃないということになってくる。
「公立がダメなら私立」と、二者択一で考えなくてよいということになっていくわけです。
木村 重要なのは学びのサイクルが回っているかどうか。
ですから箱=学校をどこにするかではなく、学びのサイクルをどう回すかを考えてあげることが大切だと思うのです。
どの箱で学ぶかは手段であって、見なければいけないのは、学びのサイクルが回っていて、子どもの成長が保障されているか。
その視点で考えると、今はたくさんの方法が出てきているんですよ。
安浪 ちなみに、私立に行ってうまくいっているケースはあるのですか?
田上 公立小の校長をしていたとき、ギフテッドタイプのとても優秀な子で成功した子はいました。
その子は小学校4年生くらいから自分の特性がわかり始めていましたね。
学校の勉強がつまらないと言いだして不適応になりかけたのですが、「君はギフテッドでこれだけの能力があるのだから」と言い聞かせたところ、家でも自分からいろいろな課題をやりだしたようです。
最終的に私立の難関校に行き、今はマスコミに出るくらい、ある分野で活躍しています。 木村 私立に行ってうまくやれる子とやれない子がいますよね。
田上 そうなんです。
特別選考で私立に入ったけれど、やはり厳しくて途中からN中に変わった子もいます。
木村 私立に行ってうまくいっている子は、オンライン教材を自分で選べるなど、自分の特性を自分でわかっている子たちなんです。
要は自分で選択ができる。そうした子たちはおそらく、どこに行っても大丈夫だと思います。
反対に「みんなはどうしているのか」でやっている子は、ツールをどう変えてもうまくやっていけず、ついていけなくなります。
それを考えると、年齢や発達に応じて、自分のことを自分で考えていく力をつけてやることが大切ですよね。
自分の特性がどういうもので、どうすればリカバリーできるのかという方法を自分事にしてあげないといけない。
セルフマネジメントと呼んでいますが、それができる力を低学年から少しずつ身につけさせてあげることで、中学受験に関しても、高学年になったときに自分はどうしたいのかを自分の言葉で言えるようになるだろうと思っています。
  〔2020年6/19(金) AERA dot.(取材・文=八木沢由香)〕

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ページ名 中学受験  (発達障害のニュース、  )
発達障害のある子の中学受験 「発達特性」がある子に中学受験は可能なのか 専門家が考える「公立」OR「私立」の選び方〈AERA〉
中学受験は親が従来の価値観から脱却できるか否かも大事(istock)
発達に特性をもつ子やグレーゾーンと思われる子をもつご家庭で、中学受験を希望する方が増えています。
わが子に合った居場所選びはどのように考えたらよいでしょうか。
『AERA with Kids夏号』では算数教育家・中学受験専門カウンセラーの安浪京子先生、元公立小学校の校長先生(田上さん・仮名)、発達障害の専門家(木村さん・仮名)をお招きして鼎談をしました。ここではその一部をご紹介します。
*      *  *  *
安浪 近年、「席に座っていられず公立小での勉強にもついていけない。
だから公立中学に進ませるよりは面倒見のよい私立中学に入れたい」など、発達の特性からくる相談内容が増えてきています。
中学受験の場合は勉強量も多いですし、内容もハイレベルなので、小学校の勉強についていけていない子だと、そもそも中学受験はむずかしいといった現実問題があるんですね。
発達特性をもつ子の親御さんに、どのようにアドバイスしていけばよいのかと悩みます。
木村 私の相談室にも、公立で適応できなかったので違う居場所を探して私立へ、という親子がたくさんいます。
ただ発達に特性をもつ子の場合、「公立に適応できなかったから」というマイナスから出発して私立を選択すると、入学してもうまくいかないケースが多いのは事実です。
私立をやめて地元の公立に戻ったとしても、その後不登校になってしまう子たちも少なくありません。
田上 親御さん方が「公立中学はどうなの?」と思うのは、公立小に嫌な思いをもっているからですよね。
学校は集団活動ですから、「みんなで、みんなが、みんなを」になりやすい。
僕自身は、これはともすると危ない発想だと思っているのですが、親御さんの中にも「みんなで、みんなが、みんなを」の目線があって、どこかでみんなと同じでなくてはいけないと思っているのかもしれない。
この枠組みから抜け出せていない保護者は多いのかもしれませんね。
安浪 一口に発達障害といっても、子どもによってさまざまなケースがありそうですね。
木村 子どもたちがそもそも抱えている困り感には、発達の“障害”に由来するものと、発達の“停滞”に由来するものの二つがあります。
注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群(ASD)、学習障害(LD)の子たちは、発達の“障害”に由来するものですね。
一方の発達の“停滞”は、乳幼児期に体をしっかり動かしてこなかったことで、姿勢維持ができない、鉛筆をもっていないほうの手が下がりっぱなしになるなど、脳と体の連動がうまくいっていないケースです。
こうした発達停滞組の存在が指摘されてきていて、「停滞由来」の子たちまで含めて、発達障害が増えているといわれているんです。
安浪 そうなんですか!
木村 「障害由来」と「停滞由来」ではリカバリーの仕方も違ってきます。
「障害由来」の子たちは、それぞれの特性に合わせて電子ツールを使ったり、聴覚や視覚を使ったり、教える手だてがいろいろあるのですが、「停滞由来」の子たちはそれでは対応できないんです。
基礎工事からやり直してあげないといけません。
安浪 発達の停滞と発達障害は対応の方法が違うということですか?
木村 私が言っている発達の停滞は、発達障害とは別枠です。
小さいころの外遊びや運動体験の不足で身体から入る脳への刺激が少なく、左右の脳の連動がうまくいかなくなっている子たちです。
左の脳で言葉を捉えて、右の脳で映像にするといったことができにくくなっているということですね。
左右の脳の連動をつくるベースは、幼児期にどれだけ体を動かしたかなのですが、そこが足りていないと、外からの情報をきちっと捉える体になっていきません。
その状態で小学校の記号・数字・言葉の学びの世界に入ったとき、体を通じて理解するといったことが難しいんです。
すると小学3年生ぐらいからパターン学習と暗記学習にシフトしていってしまい、考えることがどんどん苦手になっていくんですね。
安浪 抽象概念が入ってくると、そこでついていけなくなってしまう。
木村 ひとつの事柄に二つ以上の意味をつけることが不得手になる。すべて1対1の対応となり、言葉の裏の意味を読むのが苦手になってしまう。
その傾向がASDの特性と捉えられてしまうことがあるんです。
ところが生育歴をきちんと追っていくと、じつは停滞であるケースも少なくない。
体の発達から始まって、4歳ぐらいから子どもは記号・数字・言葉の世界に入っていきます。
そこでの身体経験の積み上げがなく、勉強や日常生活動作がうまくできていない子も増えてきているんです。
安浪 だから体の感覚をつけていく基礎工事からやり直してあげないといけないわけですね。
田上 木村先生が言った基礎工事というのは、すなわち体の使い方を教えるということです。
体を使うトレーニングをしていると身体性が上がり、学習面も少しずつ向上して、勉強についていけるようになることが少なくないんです。
「姿勢を正そうね」「字を書くときは手を添えよう」と声をかけるだけでも、落ち着いて学習に取り組めるようになっていきます。
安浪 先ほど木村先生が、私立に入学してもうまくいかなくて、その後不登校になる子たちもいるとおっしゃっていました。
そうなると「公立中も心配、でも私立に行って不登校になるかも。じゃあ、どこに行かせればいいの?」と親はなると思うんです。
田上 2016年に「教育機会確保法」という法律ができて、就学機会の確保ということが保障されました。
もうすでに学校だけが学びの場ではないということになっていて、フリースクールも教育委員会と連携すれば出席扱いになります。
ということは、極端かもしれないけれど、公立中学に籍だけ置いて、フリースクールに行くという選択も可能なんです。
N中・N高みたいなオンラインによる通信制の学びの場もできている。
今回のコロナ対応で、オンライン学習も一気に進む可能性があります。
グレーゾーンの子たちが、それによってイキイキしてくるかもしれない。
この先は学校という“箱”にこだわる必要はまったくなくなっていくと思います。
木村 公立か私立かの選択でいっても、10年前と比べ、発達障害の子の家で私立志望は徐々に減っているというのが現場の実感です。
なぜなら公立校のほうが発達障害の支援ということでは手だてがありますから。
教師の意識も変わってきています。
「公立がうまくいかないから私立に」より、「公立のほうが多様性を見てくれるからいい」と考える保護者が増えてきているのが実際なんです。
安浪 そうなんですね!
木村 加えて、この4月から学習指導要領が新しくなりました。
これまでは「望ましい人間関係を形成する」ということで、「仲よく助け合う」「協力し合う」「支え合う」など、発達の特性がある子たちには苦手な人間関係のあり方が目標とされていました。 
それが新しい学習指導要領では、望ましい人間関係が消えて、「互いのよさや可能性を発揮しながら」に変わっています。
多様な他者との協働とか合意形成をする力、自己実現の態度といったものが重視されるようになっている。
現場での指導も「みんなと同じように」から「一人一人の強みをどう生かすか」に今後は大きくシフトしていくことになります。
つまり公立の学校文化が変わっていくということですね。
田上 公立も今、少しずつ変わろうとしているんですね。
小規模特認校というフリースクールの公立版のようなところもできていて、多様性に対応できる学びの場が出てきています。
「みんな」でやってきた学校文化が、これからはスタートもゴールも変わって、学びのスピードも学びの方法も変わっていく可能性があるということですから、その子にとって最適な学びは何かになると、箱選びだけじゃないということになってくる。
「公立がダメなら私立」と、二者択一で考えなくてよいということになっていくわけです。
木村 重要なのは学びのサイクルが回っているかどうか。
ですから箱=学校をどこにするかではなく、学びのサイクルをどう回すかを考えてあげることが大切だと思うのです。
どの箱で学ぶかは手段であって、見なければいけないのは、学びのサイクルが回っていて、子どもの成長が保障されているか。
その視点で考えると、今はたくさんの方法が出てきているんですよ。
安浪 ちなみに、私立に行ってうまくいっているケースはあるのですか?
田上 公立小の校長をしていたとき、ギフテッドタイプのとても優秀な子で成功した子はいました。
その子は小学校4年生くらいから自分の特性がわかり始めていましたね。
学校の勉強がつまらないと言いだして不適応になりかけたのですが、「君はギフテッドでこれだけの能力があるのだから」と言い聞かせたところ、家でも自分からいろいろな課題をやりだしたようです。
最終的に私立の難関校に行き、今はマスコミに出るくらい、ある分野で活躍しています。
木村 私立に行ってうまくやれる子とやれない子がいますよね。
田上 そうなんです。特別選考で私立に入ったけれど、やはり厳しくて途中からN中に変わった子もいます。
木村 私立に行ってうまくいっている子は、オンライン教材を自分で選べるなど、自分の特性を自分でわかっている子たちなんです。
要は自分で選択ができる。そうした子たちはおそらく、どこに行っても大丈夫だと思います。
反対に「みんなはどうしているのか」でやっている子は、ツールをどう変えてもうまくやっていけず、ついていけなくなります。
それを考えると、年齢や発達に応じて、自分のことを自分で考えていく力をつけてやることが大切ですよね。
自分の特性がどういうもので、どうすればリカバリーできるのかという方法を自分事にしてあげないといけない。
セルフマネジメントと呼んでいますが、それができる力を低学年から少しずつ身につけさせてあげることで、中学受験に関しても、高学年になったときに自分はどうしたいのかを自分の言葉で言えるようになるだろうと思っています。(取材・文=八木沢由香)
〔2020年6/19(金) AERA dot.〕

中学受験を考えたら? 最初の準備と学校の選びかた
新学期を迎え、小学生のお子さまをもつ保護者のかたの中には、我が子を中学受験させるべきかお悩みのかたもいらっしゃるかもしれません。
そこで、中学受験の準備やいちばんはじめの学校選びの際にはどんなことに気を付ければよいのか、森上教育研究所がお伝えします。
お子さまの発達に合わせて大学までの進路をイメージする
中学受験の準備を始める際に、まず考えていただきたいのは以下の2つのことです。
●お子さまの将来を具体的にイメージする
実際に受験するのはお子さまご自身とはいえ、中学受験では保護者のかたの考え方によって学校を選ぶ基準も変わってくるかと思います。
そのため、保護者のかたがお子さまのキャリアについてどう思い描いているのか、イメージがあるとよいですね。
たとえば、ご両親が慶應大学出身ならお子さまも慶應大学にという傾向が強くなるかと思いますし、お子さまには4年制大学に進学にしてほしいけれど家計のことを考えると私立中学校は難しいというご家庭は、公立の中高一貫校にチャレンジしてみる……というようなだいたいのイメージで構いません。
●お子さまの発達がどれくらいなのかを知る
お子さまが小学3年生になると、中学受験をするかしないか本格的に悩み始めるご家庭が多いようです。
中学受験するかしないか決める際は、4年生の成績を目安にすることをおすすめしています。
中学受験を考えている場合、各塾で行っている国語のテストの結果を参考にするとわかりやすいです。
これは本人の能力というよりは発達段階の話で、出来がよければ<早生(わせ)>タイプということ。
おそらく意欲もあるでしょうから、中学受験に向かって走り出しても大丈夫。
反対に、あまり出来がよくなかったという<晩稲(おくて)>タイプのお子さまの場合は、無理強いをすると勉強嫌いになってしまう可能性もあるため、まずは学ぶことが好きになる工夫をしてあげられるとよいですね。
どちらでもなく中間というお子さまは本格的に中学受験の勉強を始めてもよいですし、幅広い選択ができるタイプです。
ただ、現在では塾に通い始めると、周りのお子さまがそうであるように必ずそのまま中学受験するという方向になるため、保護者のかたは少し慎重に考えたほうがよいでしょう。
実際に「通う身」になって学校を選ぶ
次に、学校選びをする際にはもちろん偏差値や倍率も重要ですが、学校生活を送るお子さま自身の「通う身」になって選ぶこともとても大切です。
たとえば、通学時間。どのくらい通学に時間がかかるのか、長い距離の場合はお子さんが苦なく通えるのか、ラッシュアワーはどのくらい混むのか、それとも下り方向の電車なのか、通学路に危険がないかは、実際に行ってみないとわかりません。また、中学受験のために引っ越しができるのかどうかも大きな要素になるでしょう。
学校は、いわば<近隣商圏>のため、自宅の近くにあることが普通です。平均的には45分以内の時間を目安に通われるご家庭が多いようです。
また、体育の時間がどのくらいあるのかも調べておきたいところです。クラブ活動で毎日運動する場合はよいのですが、体の発育に重要な時期である中学生時代は、勉強だけでなく体を動かすことも大切です。
「中学受験をする」と決めたら、保護者のかたは焦りからお子さまに無理を強要しがちです。小学生という人生の初期の段階から勉強や学校が嫌いにならないよう、我が子のキャラクターに合わせた準備を進められるとよいですね。
プロフィール 森上展安
※この記事は「ベネッセ教育情報サイト」で過去に公開されたものです。
〔2020年4/27(月) ベネッセ 教育情報サイト〕

【中学受験】受験校や進学校をどう選ぶか?-入試問題で相性を確認する
首都圏の中学受験が佳境だ。
筆者のところにも受験生達から様々な声が届きはじめているが、そのなかで気になるのが「問題」の印象についてだ。
思考力入試や適性検査型入試など、特殊な入試が増加する中、一般入試の問題にも新傾向のものが混ざりはじめている。
入試問題から分かることについて考えてみたい。
相性を「問題」で確認する
学校に足を運んで、場や人ととの相性を確認することは何よりも大事である。
しかし、実際にその「先生」が担当するのかは分からないし、どんなクラスメイトと同窓になるかも分からない。
面接を実施せず、ペーパーテストで合否を決める多くの学校において、どんな人格の生徒が入学してくるかは運である。
もちろん、たった一度の面接で本質を見抜けるわけでもないので、面接があったとしてもよっぽど言動が個性的でない限り、
偏差値で測れる学力が似通っていることくらいしか想定できない。
ある有名進学校に通わせる保護者は、「まさか、いじめとかそういうことがあると思っていなかった。
本人もショックを受けている」という。
「担任の先生と全く合わなかった」という理由で不登校になった生徒も少なくない。
理由は様々あれど、不登校になる生徒は公立でも私立でも、また偏差値にも関係なく存在する。
そして最も多い理由が「人間関係をうまく構築できない」「授業が面白くない」「学校の思想やスタイルに合わない」という三つである。
そういう意味でも、私は入試問題との相性を確認することをお勧めしている。
問題が面白いと思えるかどうかは、その学校の学びのスタイルとの相性を判断する基準になる。
面白くない問題を必死に解けるようにトレーニングして合格したところで、その面白くない問題を出題する先生達の授業を6年間受けることになる。
一方、面白いと思う問題であれば、当然解けるようになりたいという前向きなモチベーションで学べるし、探究的にアップデートしている実感があるため、
合格に届かなくても充実した受験経験として成長のプロセスにしていくことができる。
学校の混乱は問題に出る
改革期の今こそ、その思想や混乱は問題に表れる。
もしテーマや言葉遣い、問いの内容に違和感を覚えたなら、それは学校に対する違和感だとも言って良い。
問題が混乱している学校は、筆者が知る限り職員室や授業も混乱している傾向がある。
実際、2月1日に受験してみて「がっかりした」という意見も耳にした。
説明会で先生が言っていたような学びを目指しているのであれば、「こんな問題出すはずがない」というのだ。
私も問題を見て、なるほどその通りだなと思った。
思考力を大事にしていると言っているのに、内実はテーマに関連した「算数」の問題と、知識を問う問題が大半だった。
その生徒は問題への違和感が学校への違和感に直結して、すぐに第一志望を変更し、無事に3日で入試を終えた。
直前までネットで出願ができる学校が増えたことは、判断力のある受験生や家庭にとってはかなりのメリットだと言える。
多様化が進む学校ごとの入試に対応する統一模擬試験は現実的に不可能である。
だから、偏差値などに左右されず、相性のいい出題をする学校に出会って、
それに向けて学習することで自分に合った学びができると考える。
受験生には、ぜひ、多くの学校の問題に触れて欲しい。
もちろん、本番の入試での出題が今現状の学校を表している。
迷っている受験生は、受験した感覚を、本気で問題に取り組んだときの感覚を大事に、進学先を選んで欲しいと思う。
矢萩邦彦 実践教育ジャーナリスト/知窓学舎・スタディオアフタモード代表
〔2020年2/4(火) 矢萩邦彦 実践教育ジャーナリスト/知窓学舎・スタディオアフタモード代表〕

【中学受験】途中で断念すべきか?-最後まで受け続けるメリットと考え方
「前半(2月1日・2日・3日)とうまくいかず、精神的に参っている。もう受験は断念した方がよいでしょうか?」
毎年この時期になると、こんな相談が寄せられる。
今回は、このような状況の受験生と保護者に伝えたいことをまとめてみようと思う。
受験生は受験しながら成長している
第一志望の学校が複数日程ある場合は、最後まで受け続けて欲しい。
これには幾つかの理由がある。まず第一に、受験生は日々成長しているということ。
特に、本番ギリギリまで現実感が湧かず「本気」になれなかったような受験生はなおさらだ。
このような受験生は、本番になってはじめて本気で問題と対峙したと考えられる。
模擬テストは所詮「本番」ではない。いくら「本番のつもりで臨みなさい」と言ったところで、心のどこかで「これは本番ではない」と思っている。
模擬テストが活用できる生徒は、そもそも競争や順位が好きだったり、点数や偏差値が上がることで喜びを感じ、下がれば悔しくて燃えるようなタイプなので、模擬テストであっても本気になれる。
しかし、そうでない受験生は、本番まで真に本気にはなれない。
つまり、ようやく本気で受験や問題と向き合い、そこから学びながら急激に成長がはじまったところなのだ。
試験にも慣れて全体が見え、緊張もしなくなってくる。
だから、最後まで受け続けることでだんだん実力を付けながら発揮できるようになってくる。
筆者の教え子は、いわゆる大手塾が合わないという生徒が多いからかも知れないが、取り立ててこのタイプが多い。
相性や問われていることが分かってくる
第二に、全日程似た傾向の問題を出す学校が多いということが挙げられる。
思考力型やAL型などの特殊入試ではなく、2科4科どちらかの受験の場合、数字を変えただけや、同じテーマ、同じ問題形式などの出題をする学校は多い。
これは、先日の記事(『【中学受験】受験校や進学校をどう選ぶか?-入試問題で相性を確認する』)にも書いたとおり、入試問題は学校の思想を反映しているからということが大きいが、受け続けてくれる受験生が有利になるような配慮でもある。
学校側としても、自分の学校を志望している生徒に入学して欲しいというのは本音である。
「住めば都」「蒔かれた場所で咲く」とはいうものの、やはり「志望校ではなかったけれどこの学校しか合格しなかったから入学した」という生徒が学校に合わずに問題になるケースは少なくない。
以前は、中堅校の教師から「難関校の滑り止めで入学してくる生徒の方が成績が良いから大学進学実績に繋がる」と言う話も聞かれたが、私立であっても不登校が問題になる昨今、受け続ける生徒が入試の中で成長して合格を勝ち取って欲しいという学校側の思いもまた本音であろう。
後半の方が合格しやすい学校もある
第三に、これは中学受験の構造的な問題だが、複数日程を準備している学校は、偏差値や倍率とは関係なく後半に受験した生徒が入学することが多い。
これは、1日に午前午後で2校受験できるようになった影響も大きいが、1日・2日であっても第一志望は別の学校であるケースが増えたためだ。
当然、第一志望の学校に合格していた場合には入学手続きを取らない。
そのため前半で合格した生徒のうち実際に入学する生徒の割合は後半の受験生よりも少なくなる。
以上のような理由で、私は「後半ほどチャンスは広がる」と言うことを受験生達には伝えている。
しかし、偏差値だけを見て、後半ほどキツくなると指導している講師も数多見てきた。
だから、1日・2日が勝負だというわけだ。精神的に参ってしまえば当然実力は発揮できずにキツくなるが、それこそ講師も保護者も一丸となって支えて欲しい。
最も大事なのはそういう受験生こそ「今、まさに成長している」ということに気づくことだ。
本人が成長していることが一番の財産だと感じることができる大人が増えることで、中学受験はもっと健全に、可能性に満ちた経験にできるだろう。
まだ頑張っている受験生と保護者にエールを送りたい。
(矢萩邦彦/知窓学舎・教養の未来研究所)
矢萩邦彦 実践教育ジャーナリスト/知窓学舎・スタディオアフタモード代表
1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場でパラレルキャリア×プレイングマネージャとしてのキャリアを積み、一つの専門分野では得にくい視点と技術の越境統合を探究するアルスコンビネーター。
一万五千人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした学習塾『知窓学舎』を運営。
代表取締役を務める株式会社スタディオアフタモードではメディア事業に従事、主宰する教養の未来研究所では教養・キャリア・編集・遊び・学び研究を軸に、研修・コンサルティング・監修顧問を手がける。
近著に『先生、この「問題」教えられますか?』(洋泉社)
●ご依頼等はこちらまで:yahagi(at)aftermode.com
〔2020年2/5(水) 矢萩邦彦 実践教育ジャーナリスト/知窓学舎・スタディオアフタモード代表〕

中学受験はなぜ親子を「狂気」にまで追い込むのか、その構造的理由
子供に包丁を突き付ける親
「中学受験のときは両親が私の椅子の後ろに立っててね、背中に包丁を突き付けられながら勉強したんだよー」
開成・灘ら名門男子校教師の提言「くそばばあ」と言われたらこう答えよ
大学時代、名門中高大一貫校に通うお嬢様女子大生から実際に聞かされた言葉だ。
あんまり明るく言うものだから、私たちはみんな冗談だと思い、「怖っ」と笑い飛ばした。
その場にいたのは、私も含め公立校育ちの地方出身者ばかり。
塾通いをしたこともなければ身近に中学受験をする友達すらおらず、そこまで受験に入れ込む親というものを、リアルな存在として想像することができなかったのである。
2016年8月、中学受験を控えた小学生の息子を父親が包丁で刺し殺した事件の一報を耳にしたとき、真っ先に思い出したのが、冒頭に挙げた知人の話だった。
中学受験生に包丁を突き付ける親は、実在していたのだ。
かつては遠い世界のお話でしかなかった中学受験は、4人に1人が私立中学に進学する東京都で小学6年生の親をやっている身には、身近な話題となった。
包丁こそ飛び出さないものの、中学受験後に離婚だとか、難関校を目指している子がクラスメイトの志望校をバカにしてひと悶着だとか、まあまあ穏やかではない話を耳にする。
Twitterを見れば、受験塾から日曜特訓代を含めてひと月に30万円以上引き落とされたという悲鳴のようなツイートが何千もリツイートされている。
授業料がそこまで高額になるのは、中学受験をする小学6年生は日曜日ですら長時間拘束されていることを意味する。
そうまでして、という言葉が口をついて出そうになるのは、私が無知なせいもあるのだろう。
多くの親子が多大なリソースを割いて熱中するからには、それだけの理由があるはずなのだ。

夫に見下された妻の怒り

「君達が合格できたのは、父親の『経済力』そして、母親の『狂気』」
カリスマ塾講師のこんな言葉から始まるのが、架空の中堅受験塾「桜花ゼミナール」を舞台にした青年マンガ『二月の勝者-絶対合格の教室-』(『ビッグコミックスピリッツ』2018年1月より連載中)である。
ほらきた、狂気。おかしな教育ママと家庭に無関心なエリート父、受験マシーンに仕立てられた鼻持ちならない子供というステレオタイプな家庭像を即座に想像する。
読み進めれば、この予断はすぐに裏切られる。
桜花ゼミナールの生徒、そしてその親の多くは、身近にいてもおかしくないほどごく普通のありふれた人々だ。
特に生々しいのが、第2巻に登場する武田勇人の両親の描写である。
下位のRクラスに属する勇人は、学童代わりに塾に放り込まれただけの普通の男の子だ。
勉強よりもゲームが好きで、成績もふるわない。
母の香織は勤続20年の優秀な美容部員だが、育児中というハンデと学歴(高卒)のため、店長にはなれずヒラのまま。
仕事のできない大卒店長のミスのしりぬぐいを押し付けられる理不尽な日々を、心に蓋をしてやり過ごしている。
勉強に乗り気じゃない息子に塾を続けさせているのは、学歴のないつらさを、誰よりも実感しているからだ。
土日も仕事である彼女は塾の面談の出席を夫に頼むが、夫はスマホゲームをしながら「俺は絶対に仕事抜けらんないから」「お前の仕事みたいに代わりがきくワケじゃないからさ」と取り合わない。
夫の暴言にいら立ちながらも、彼女は「ぶつかるより飲み込んだほうがラク」と感情を押し殺し、笑顔で耐える。
優秀であるにもかかわらず、学歴と家事育児負担のために職場では低い地位に押しとどめられ、家庭では職場での地位の低さゆえに夫に見下されて家事育児を押し付けられる。
香織は現代日本の「女性活用」を象徴する存在だ。
息子に春期講習を受けさせたいと相談した香織は、例によってゲームから目を離さない夫に「いいカモ」「資本主義のドレイ」とバカにされ、ついに怒りを爆発させる。
何がいいカモだ
あんたこそ
画面のキャラに課金してんじゃねーよ。
(略)
子どもに「課金」して、クソ強いキャラに育てよーとして何が悪い。
勇人にどんな敵でもラスボスでも倒せるクソつええ武器持たせたいんだよ。
そのためなら、課金ゲー上等!! 
香織を見くびってきた夫の言動にイライラしてきた読者としては、マンガ表現の巧みさもあって、よく言った!  とスタンディングオベーションしたくなるシーンだ。
しかし字面だけ眺めれば、どうかしている発言なのは否めない。
母親の「狂気」を他人事として眺めるはずが、すっかりこちらが「狂気」に飲み込まれてしまっていることに気づく。
「個人」より「みんな」が尊ばれる世界
子供描写も、また巧みだ。下位クラスを「底辺」と見下す前田花恋は、鼻持ちならない中学受験生というステレオタイプそのものに見える。
彼女は最上位のΩクラスに在籍し、女子校トップの名門・桜蔭中学を目指している。
彼女がエリート塾への転塾を考えていることを知ったカリスマ塾講師の黒木は、プライベートの姿で偶然彼女と出くわしたふりをして説得にかかる(2巻)。
がんばりすぎを心配するそぶりを見せる黒木に「みんなと同じこと言わないで!」と食ってかかる花恋。
黒木は動じずに、「『みんな』ああ、そうだよね ほんとに」と受け止める。
なんで「勉強ができる」って特技は
「リレー選手になれた」とか
「合唱コンクールでピアノ弾いた」とかと同じ感じで
褒めてもらえないんだろうね? 「クラスで一番足が速い」子を
「みんな」が褒めるテンションで
「クラスで一番頭がいい」子も褒めてくれればいいのに。
(中略)
「昼休みに真っ先に校庭に出てドッジボールをする子」のように。
「私を褒めて」「私を見て」って思うよね? 
黒木の言葉に、ポロポロ泣き出す花恋。勉強が好きで闘争心の塊である花恋は、教えられる前に解法を自分で編み出してしまうために学校の先生に疎まれ、クラスメートからも「頭いいアピール」「こないだもテストで満点って自慢してた」と陰口をたたかれてきたのだ。
下位クラスを見下していたのは、彼らのほうが愛されることを知っている彼女の精いっぱいの強がりだった。
学校は「個人」より「みんな」が尊ばれる世界だ。「みんな」と同じであること、「みんな」のためにがんばること、「みんな」で団結すること。その空気の中では、自分のためだけにがんばる子は異物となる。
「勉強できることが当たり前に褒められる世界」「『できる』ことを本音で話しても全然平気な場所」である桜花ゼミナールは、自分が自分でいられる唯一の居場所だったと、改めて花恋は気づく。
「花恋は女王様でしょ。少なくとも俺にとっては。そして桜花にとっても」と畳みかけて花恋を「オトす」黒木は、のちにこのやりとりを「今までもよく使ってきた手口」「赤子の手をひねるように簡単でした」とエリート塾の元同僚に語る。色恋営業さながらだ。
凡人でも希望を叶えられる
サッカー少年である三浦佑星が入塾したのも、黒木の言葉が決め手だった。
「解こうと粘ったのがよくわかる答案です」「スポーツか何か――長い期間、取り組んできたものがあるのでしょう」「粘って頑張った経験のある子は、受験でも強いですよ」(1巻)。 息子にサッカー選手になる夢を託していた父親は、黒木とのリフティング勝負中、失敗した息子を怖い顔でにらみつける「結果がすべて」というタイプだ。
特別な才能の持ち主ではないがまじめな佑星にとって、黒木は努力する過程を認めてくれた初めての大人だったのだろう。
「子どものうちは子どもらしく、思い切り体を動かしたり、チームワークを学んだり…」と渋る父親をよそに、佑星は中学受験を決意する。
父親も黒木の言葉で、かなわぬ夢を息子に期待し続けるフラストレーションから解放され、凡人でも希望をかなえやすい中学受験を応援することになる。
学校的な道徳を一切信じない
窓から電車を眺めてばかりで授業に身の入らなかった加藤匠は、黒木から全国鉄道模型コンテスト常連の鉄道研究会のある高偏差値男子校を勧められ、中学受験への意欲を燃やし始める(1巻)。集団主義的な公立中学の部活には、オタクがのびのびと好きなことを追求できる部活があまりないことを逆手に取ったのだ。
小学校での人間関係がうまくいかずに不登校になった柴田まるみは、自由な校風で知られる女子学院の塾OGから、いじめがなく、人と違っていることがかっこいいとされる学校だと聞かされ、同校にあこがれを抱くようになる(4巻)。
しかし女子御三家の一つで偏差値70である女子学院は、偏差値50のまるみには高嶺の花だ。
思い切って希望を黒木に打ち明けると、黒木は否定するどころか、海外ではユニークであることは最上級の誉め言葉なのだとまるみの志望校変更を肯定した。
「個性を尊重するいい学校です」「柴田さんにとても合うと思います。頑張ってください」。
黒木が笑顔なのにはわけがある。無理目の希望を持たせることで、系列の個人指導塾に囲い込み、「重課金」コースに誘導するつもりなのだ。
生徒を「金脈」、親を「スポンサー」、塾講師を「サービス業」だと言い切る塾講師としての黒木には、徹底的に「心」がない。
香織が爆発したのも、香織が春期講習のお金を出したがらない夫に押し負かされそうなことを見抜いた黒木の差し金で、塾の女性講師が彼女との面談で夫への怒りを引き出した結果だった。
黒木は「子供は子供らしく」だとか「母は無私の愛情で子供に尽くすもの」だとかいった学校的な道徳を一切信じていない。
親も子供もそれぞれに承認欲求を抱えた一個人にすぎないことを知っているからこそ、彼らが欲している言葉を的確に発し、金を引き出すことができる。
しかし彼らは黒木の心無さゆえに、エンパワーされもするのである。
内申書という「心の監獄」
塾の中では常にクールな黒木が珍しく嫌悪をあらわにするのは、公立中学の内申書の話題になったときだ(4巻)。
少なからぬ親が私立中学受験を選択する理由の一つに、内申書への不安がある。
公立中学から高校受験をする場合は内申書の点数が重要となるが、いじめで不登校経験のある子供や個性の強い子供には、内申書は不利にはたらく可能性があるからだ。
言い換えれば、公立中学の内申書のおかげで中学受験塾は潤っている側面がある。
そのため「先生の目を見ると熱意が伝わる」「欠席は7日以内」「積極的に質問」「部活動で活躍(チームプレイ必要系が良し)」「生徒会活動も精力的にこなせるリーダータイプ」等と内申書で5を取るために必要なことを列挙する女性講師に、黒木は拍手する。
親の不安をあおるのも、塾講師の仕事のうちなのだ。
黒木は高校受験について聞かれて「大っ嫌いです」と即答する。
だって同じ学力の子が並んでたら、
より「先生に好かれる生徒」のほうが有利なんですよ? かたや「中学受験」
「本番のテストで点数をクリアさえすれば合格できる」
明解で気持ちいいですね。
私は中学受験が大好きです。
公立中学における内申書制度を「心の監獄」と表現する日本文学研究者の石原千秋氏も、まったく同じ理由で息子に中学受験させたことを、著書『秘伝 中学入試国語読解法』の中で語っている。
競争が避けられないものなら、それは学校の外で受験という形であった方がいいと、僕は考えている。
僕が塾を否定しようと思わないのもそのためだ。内申書は論外にしても、ほんとうは学校は学業成績だけ付けたほうがよほどさっぱりするのだ。
ところが、近代の国家のイデオロギー装置としての学校は内面も管理する。公立学校はそれが仕事でさえある。
だとすれば、そこから逃れようとする人たちにとって、私立の中高一貫校は大切な存在なのだ。
公立中学でありながら服装・頭髪指導などを撤廃したことで話題を集めた千代田区立麹町中学校の工藤勇一校長もまた、「忍耐」「礼節」「協力」といった内面を重視する日本の教育に否定的な立場をとる。
発達に特性のある子供が排除されやすくなるというのが、その理由だ(『麹町中学校の型破り校長 非常識な教え』)。
親子を狂気に走らせるもの
『二月の勝者』は、中学受験を無邪気に礼賛するマンガではない(包丁が飛び出してもおかしくない教育虐待家庭も登場するし、災害時の避難も成績優秀者を優先するというエリート塾の講師の言葉にゾッとする人も少なくないだろう)。
だが本作が浮き彫りにするのは、「狂気」と呼べるレベルにまで子供や親を追い詰める外側の世界のおかしさだ。
それは優秀な女性をスポイルする組織であり、学歴社会であり、なにより子供の「心」を査定する「近代の国家のイデオロギー装置としての学校」である。
「心」無い黒木のやり方は、「心」を縛る公教育の陰画だ。
テクニックは教えても内面までは踏み込まない受験塾という空間で、子供たちはそれぞれに内発的な動機を見出し、自律的に勉強に取り組むようになる。
受験塾になんとなく否定的な感情を抱いていた筆者のような読み手は、そんな子供たちの姿を見て、ラスボスは子供の心を型にはめこむ教育そのものであると思い至るのである。
日本の近代教育は、仁義忠孝を知育よりも優先すべきとする「教学聖旨」(明治12年)以来、一貫して知育偏重を戒め、徳育重視の方針を打ち出してきた。
「国や郷土を愛する態度」まで評価する道徳の教科化で、内面を一律に管理する風潮はますます強まる一方だ。
国家の制度は一朝一夕には変わらない。
であれば、個を否定し「権威に従順な明るい良い子」を求める公教育になじめない子供たちが全力で逃げ出そうとするのも、親が子供の受験にのめりこむのも、理解できるのである。
それにしても、黒木はなぜそこまでして普通の親子から金をむしり取ろうとするのか。その理由の一端をのぞかせるシーンがある。
私服姿の黒木が、風俗街にひっそり通い、水商売と思しき女性らの子供の勉強をボランティアでみているらしい描写だ(4巻)。
引きこもりの子供の家を訪問する描写もたびたび登場する。
黒木が本当に救おうとしているのは、公教育から見捨てられた彼らなのかもしれない。
比較的恵まれた都市部の子供たちは、私立中学受験によっていびつな公教育から脱出できる。では、そうでない子供たちは? 
おそらくその答えは、今後の展開で明らかになるのだろう。 〔2020年1/17(金) 現代ビジネス 堀越英美〕

中学受験を終えた少年を襲った「想定外の地獄」
細身で柔和な印象の田代さんだが、大学に入るまでの数年間、悶絶するような心の苦しみの中にいた
また受験の季節が近づいてきた。少子化といわれる中、ここ数年、首都圏の中学受験に挑む児童の数は増加傾向となっている。
専門家の話によれば、今年度の受験者数もどうやら増えそうとのこと。
こうなると、23区内の場合、受験にまったく関係がないという家族のほうが珍しいのではないだろうか。
中学受験をするかしないかの議論はさておき、中学受験をすると決めたからには知っておきたい“リアル”がある。
この連載では受験を通して見えてくる、親と子の姿を追う。
■中学受験を決めたのは母親の望みからだった
今年、大手企業から内定をもらった千葉県在住の田代賢雄さん(仮名、大学4年生)。
大学の門の前で待っていてくれた彼は「わざわざ雨の中いらしていただきありがとうございます」と丁寧な口調で出迎えてくれた。
細身で柔和な印象の彼だが、大学に入るまでの数年間、悶絶するような心の苦しみの中にいた。きっかけは、中学受験。
すべての人がこうしたケースに当てはまるとは言わないが、彼のたどった道のりは傾聴に値する。
田代少年が中学受験を決めたのは母親の律子さんの望みからだった。
近くの公立小学校に通っていた田代少年は、学校の成績は優秀そのもの。
テストではつねに100点を取り、勉強で困ったことはなかったという。
そんな賢さを伸ばそうとしたのだろうか、母親の律子さんは小学3年生の賢雄君を塾の見学に連れていった。
「賢雄、うちは中学受験をすることにしたから、中学受験のための塾に入ろうか」。それが入塾のきっかけだった。
中学受験とはどういうことなのか……当時の賢雄君はよくわからないまま、母親の言うとおり、塾の見学に行くことにした。
それもそのはず、賢雄君の住むエリアは中学受験をする子どものほうが少なかったため、周りの友だちが中学受験を話題にすることもなかったのだ。
「母親から言われたのは“中学受験をしておけば、みんながする高校受験はしなくてよくなるから楽だよ”ということだけでした。
自分にはとくに意思はなくて、親がそう言うのならばそうなのだろうなと、とくに疑問も持たずに入塾しました」。
入ったのは栄光ゼミナール。
いくつかの塾を見学し、家からの近さと授業時間の短さが気に入り、ここにした。
はじめは週に2回ほど。学校の宿題と塾の宿題の両方をこなす生活も、それほど苦労することなくこなしていた。
だがほかの子どもたち同様に4年生になると状況は変わったという。
塾の授業についていくのがつらくなりはじめた。
そうなると、宿題もなかなか終わらない。
おまけに、塾で前の席になった女の子からはやたらとちょっかいを出されるようになり、ますます授業に集中できなくなってしまったのだ。
母親には女の子のことは話さず「塾の授業についていけないから塾を替えたい」とだけ伝えることに。
母親の律子さんは息子の意見を尊重し、すぐに新しい塾を見つけてくれた。
塾の5年生クラスが始まるタイミングで個人経営の塾へと転塾、前の塾に比べて距離は遠く電車で6駅、そこから徒歩で10分という道のりだが、すでに高学年に入った賢雄君にはそれほど苦にはならなかった。問題は成績だ。
「小学校のテストだけはよくできていたのですが、それは井の中の蛙というか……学内での成績がよくても、模試の偏差値は50にいくかいかないかというところでした。
模試では結果が出せなかったんです」
好きでやっていたはずの勉強がこの頃からだんだんと嫌いになりだしていく。
賢雄君の場合、模試で結果が出なくても、学校での成績はそのまま好成績をキープ。
だからこそ、親は「この子の成績に見合う外の学校へ」と思っていたのかもしれない。
首都圏には受験をして入る中学は山のように存在する。
母・律子さんの志望校選びを見ていても”何がなんでも偏差値の高い学校に!”というような「教育虐待」的な雰囲気はまったくと言っていいほど感じない。
また、模試の成績が振るわなくともそれほど強く叱ることもないようだった。
■流れに任せて決めた志望校
一方、賢雄君の気持ちはと言えば、受験をすることを受け入れてはいるものの、まだどこかひとごとに近い感覚。
母親と共に行った説明会でもとくにこれといった希望はなく、流れに任せて偏差値的にも見合っていた塾長が勧める学校を第一志望校に据え、受験を進めることにした。
この中学には大学受験でいうところの“専願者”向けの入試があった。
合格した場合、必ず入学することを条件にしている入試だ。
賢雄くんはこの入試を利用して無事に合格。このとき、面白いことが起こる。
「普通は合格発表まで合否はわからないと思うんですが、通っていた塾の塾長とそこの学校の先生がとても親しかったようで、合格発表の前に塾経由で合格を知らされたんです」。
事前に合否を聞けるほどの強いパイプを持つということは、賢雄君が通っていた塾は、それだけ多くの児童をその中学に送り込んできたということだろう。
塾の講師も人間だ。好きな学校があるのもわかる。講師によってはやたら同じ学校を勧める人間もいる。
それはその人の好みの問題。勧めることをやめろということはできない。
親は講師の言葉を鵜呑みにせずに、本当にわが子にとっての最善校か、確かめる必要があるだろう。
その後の賢雄君の状態を聞き、強くそう思わされた。
入学したのは自宅から1時間半はかかるという共学校。
入りの偏差値の割には出口の大学合格実績がいいことで有名な学校だ。
だが、そこにはからくりがある。何もしなくてこれだけの合格実績に結び付くことはない。
強制的にたくさん勉強させることで生徒の成績を伸ばしていくタイプの学校だった。
朝8時10分から夕方6時まで、1日8時間授業の日が週に3日はあったという。おまけに部活動も全員参加。
「部活は週に2日だけでしたが、授業時間内の2コマ分が当てられているため、必然的に全員参加になるんです。
だから結局ほとんどの日が8時間授業です」
片道1時間半の通学に、これだけの授業、当然ながら宿題もある。
「高校受験がないから楽なのよ」と言われて挑んだ中学受験だったのだが、気がつけば地元の中学に上がった周りの友達よりも苦労をしているように思えた。
「みんなが遊んでいたときも、僕はずっと勉強をしてきたのに、なぜ自分だけこんなに勉強をしなくてはならないのか……」
言葉にできない気持ちだけが賢雄君の奥深く、まるで根雪のように蓄積された。
入学から1カ月が過ぎた頃のこと、風邪をひき学校を休んでしまった賢雄君はここから坂道を転がるようにいろいろな事態が起こり出す。
入学した学校は出席率をとても大事にする学校だった。
校長先生の話の後には必ずクラスごとの出席率が発表されていたという。
賢雄君は自分のクラスの出席率が下がっていることがわかると、なぜか「自分のせいだ」と思いつめるように。
友達から気に入らないあだ名をつけられたのはその頃だった。
「キノコ頭」。同級生が何気なく髪型を茶化してつけてきたこの呼び名が賢雄君はどうしても許せなかった。
「やめてよ」といっても呼び続ける級友に、思わず手が出てしまった。
■いじめ、そして体が悲鳴を上げ…
その日を境に小さないじめがはじまった。
ロッカーにしまっておいた運動靴が外に放り出されたり、財布からお札が抜き取られることもあったと言う。
「学校に行きたくない」という気持ちは強くなり、週に1日は学校を休むように。
担任を含む関係生徒との話し合いの末、いじめの件は落ち着いたのだが、賢雄くんの中に蓄積された“根雪”が解けることはなかった。
「なぜ、僕はこんなに頑張らなくてはいけないのか……」
満員電車に揺られて学校へ行き、8コマの授業をこなし、また1時間半かけて帰宅する。自宅に着く頃にはすでに夜8時前。
ご飯を食べてお風呂に入り寝るだけのサイクル。
気持ちとの因果関係はわからないが、追い討ちをかけるように今度は賢雄君の体が悲鳴を上げた。過敏性腸症候群。
便がゆるくなりやすくなり、1時間半の通学がつらい状態になったのだ。
「せっかく入った学校なのだから」と、母親の律子さんは懸命にフォローした。
とにかく、学校に着けば何とかなる。電車での通学が難しいのならば、車で送っていってやろう。
そうすれば、車の中で休んでいることができる。
毎日片道2時間の道のりを車で送迎、2年生の1学期はこうして何とかやり過ごした。
だが、賢雄くんの心と体調が整うことはなく、2年生の2学期からは公立に転校、賢雄君の中の“根雪”はそこからまた冷たさを増していき、登校2、3日で不登校となってしまった。
「今までの時間は何だったんだ。何のために塾に通い、人よりも勉強してきたんだ……」
賢雄君の頭の中にぐるぐると現れるのは「何のために……」という思いだった。
引きこもりとなった賢雄君は昼夜が逆転。
はじめは家族のいる時間にリビングに下りることもあったのだが、そのうちにほとんど顔を合わせなくなった。
そんな中、2歳違いの妹も中学受験をすることに。
これが賢雄君の反抗期だったのか、自分でも驚くほどの憤りの気持ちが湧き起こったのだという。
「妹にも僕みたいな思いをさせるのか!」
怒りを両親にぶちまける日々。
だが、妹本人は「私、ここの学校に行きたい」と志望校を早々に決め、受験を難なくクリアして、希望する学校に通い出したのだ。
「なんだ、僕だけか、こんな気持ちになるのはと、だんだんと自分が情けなくなって、さらに引きこもってしまったんです」
夜な夜な冷蔵庫の中身を全部リビングにぶちまけるなど、賢雄君は今の彼からは想像もできないような傍若無人な態度をとっていた。
「周り全部が嫉妬の対象でした。
小学生のとき、周りの子と同じように普通に地元の中学に上がらせてくれていたら、こんなことにはならなかったんだとか、中学受験してしまったばっかりにという気持ちが残ってしまっていたんです」
■「中2の京都を取り戻したい」
だが、そんな引きこもり生活から脱却したのはとことん自分の気持ちと向き合った賢雄君自身の内側からの声だった。
「中3の4月だったかな。修学旅行で京都に行くことになっていて、なんかここを目標にしようと思ったんです。
実は私立中学に通っていた頃に中2の夏休みに修学旅行があったのですが、不登校になってしまって行けなかったんです。
そのときも行き先は今回と同じ京都。
なんか、そのときの“京都”を取り戻したいって思ったんですよ。理由はわからないんですが」
1年近く引きこもっていた賢雄君は目標が持てたことをきっかけに保健室登校を始め、徐々に外に出られるように回復した。
クラスには入れなかったものの、独学で高校受験の準備を進め、偏差値40ちょっとの県内の高校へ進学、高校には何とか通い、1浪を経て都内の大学に進学した。
「同じように中学受験をした妹はきちんと学校にも通えていました。
僕の場合はおそらく、自分で選んだという気持ちがなかったことが原因だったのかもしれません。
自分で責任を負う気持ちがどうしても生まれませんでしたから」
そんな賢雄さんにこれから中学受験に挑もうとする親子に伝えたいことを聞いてみた。
「母親が2時間もかけて車で送迎してくれたことは本当に頭が下がるのですが、僕の場合は中学受験をすると決めたのも親だったし、学校を決めるのも親でした。
僕には意見がなかった。きちんと自分の意思を持って入学できていたのなら、違った歩みになったのではと。
子どもが意見を言わないのは同意ではなくて、自分のようにただわからないだけということもあります。
これから中学受験をしようとされている親子さんたちに伝えることがあるとすれば、意思を持って受験に挑んでほしいということでしょうか」
雪解けを迎えた賢雄くんは、自ら選んだ大学に進み、自ら選んだ会社を受け、内定を勝ち取り、立派な大人へと成長していた。
〔2019年11/13(水) 東洋経済オンライン 宮本さおり :ライター〕

中学受験、親の仕事は環境と生活を整え応援すること
中学受験において、親の役割は子どもに情報を与えて考えさせ、応援することだとコーチングのプロは話します。
具体的にやるべきことは?
近年注目されているのが、わが子に過剰な期待と負担をかけ、結果として子どもの心を傷付けてしまう、いわゆる「教育虐待」です。
この連載では、子どもを思う、よい親だからこそしてしまう恐れのある「教育虐待」について、マンガを通して考えていきます。
コーチングの専門家である菅原裕子さん(ハートフルコミュニケーション代表理事)の解説と併せてお読みください。
●エピソードvol.9 子を信じて任せるのは部下育てと同じ
教育虐待が起こる原因の1つは、子どもに良い人生を送ってほしいという思いです。
親の愛情からとはいえ、それで子どもが苦しんでいたり、将来弊害が出たら、それは虐待になってしまいます。
そういった点で、子育てと職場の後輩育ては似ています。
部下に良い仕事をさせてあげたい、成果を出させてあげたいと思い、よかれとやっていることが、ハラスメントになることもあるのです。
子どもにしろ、職場の後輩にしろ、本人に任せ、親(上司)は応援に徹することが、上手な子育て(部下育て)の秘訣です。
ここで気を付けたいのは、「応援」は、「褒める」とは違うこと。
ひたすら褒められて伸びていく気質の子もわずかにはいますが、多くの子どもは、親がそばについて褒めて、褒めていると、褒め言葉が呪縛となり「もう、これ以上できない」と言えなくなってしまいます。
そして、いよいよ「褒め(=親の期待)」を受け止めきれなくなると、「もう、親を喜ばせることはできない」という気持ちになり、家庭内で暴力を振るったり、不登校になったり、塾帰りに夜の街をさまよったりするようになるのです。
それでは、「褒め」とは異なる「応援」とはどのようなことを指すのでしょうか。(菅原さん)
受験が可能な環境なら情報を与えるのがフェア。後は子に考えさせて
受験を例に取って説明しましょう。
経済的、地理的に受験が可能で、親も受験をさせてもいいかなと思う場合、小学校の3年生くらいまでに、「あなたには中学受験という選択肢があるよ」ということを伝えるのが、子どもにとってフェアなことです。
その際には、地元の公立中学、わざわざ電車に乗っていく私立中学、それぞれのメリット・デメリットを伝えます。
私立中に行く場合は、試験があり、そのために、塾に行って勉強をしなければならないことも伝え、本人に考える時間を与えます。
マンガの家庭のように、実際の学校を見せるのも良い方法ですね。
その結果、私立中に行きたいと本人が言い、その理由が親も納得することであれば、親は、受験勉強の態勢を整えましょう。
塾や家庭教師、個別指導等、勉強をする環境づくりです。塾選びは非常に大切です。
勉強漬けになり過ぎず、子どもの気質に合った塾を選びましょう。実際の勉強は塾に任せましょう。
親が勉強の内容に関わると欲が出て、ヒートアップしてしまうからです。
ただし、子どもが伸び伸びと、楽しんで勉強しているかは常にチェックしてあげてください。
受験勉強を進める中で、子どもは困難にもぶつかります。
時には目の前の課題から逃げだしたくなり、葛藤するときもあります。
そのときに親が「宿題はやったのか?」と介入してくると、子どもは親にも対応しなければならず、自分の中の葛藤にじっくり立ち向かうことができなくなってしまいます。
親は子どもが悩んでいるな、と思ったときも見て、待っていてあげてください。
そして、子どもがやっと、動き始めたときに「あ、やっているね」と一声かけてあげるだけ、これだけでよいのです。
待って、待って、それでも動き始めないことも時にはあります。それは、子どもの責任です。
子どもの気質から、わが子はどこまでひとりでできるかを推測し、ひたすら待って、助けが必要なところで、初めて手を差し伸べる(分からないところを一緒に考えるなど)。
それが、応援上手な親の子育て法です。
ちなみに子育てでそれができたら、部下育ては楽勝ですよ。(菅原さん)
菅原裕子(すがはら ゆうこ) NPO法人ハートフルコミュニケーション代表理事
(有)ワイズコミュニケーション代表取締役。
人材開発コンサルタントとして企業の人材育成に携わる一方、その経験と自身の子育て経験から、子どもが自分らしく生きることを援助するためのプログラム<ハートフルコミュニケーション>を開発。
『子どもの心のコーチング』(PHP文庫)、『コーチングの技術』(講談社現代新書)など著書多数。
https://www.heartful-com.org/
〔2019年10/18(金) 日経DUAL 取材・マンガ/オオスキトモコ〕

中学受験を経験すると、「お金を稼ぐ力」が身につくワケ
富裕層の家庭の多くが、子どもの将来を想い、中学受験をさせています。
しかし、子どもがお金に困らない生活を送るためには、ただ闇雲に勉強させるのではなく、「北極星(=将来のビジョン)」を見据えて教育をする必要があります。
そこで本連載では、公認会計士林總事務所・林總氏の著書『年収1000万円「稼げる子」の育て方』(文響社)より一部を抜粋し、学歴だけにとらわれずに、令和時代を生きぬく子どもの育て方を解説します。
「マネープレッシャーのない暮らし」のための中学受験
◆中学受験をさせるべきか
本連載では、わが家の経験してきた受験や学校選びのコツ、学歴と収入の関係などについてお話ししていきます。
わが家では4人の子ども全員に中学受験をさせました。最初から受験をさせようと決めていたわけではありません。
私は地方の県立高校の出身ですし、妻も公立でしたから、中学受験にいまひとつなじみがありませんでした。
しかし、長男と同い年の姪っ子が小学校受験を経験し、はじめて「そういう道もあるのか」と意識し始めたのです。
そこで、
(1)マネープレッシャーのない暮らしができる
(2)好きな仕事ができる
(3)教養が身についている
という北極星をかなえる3つの条件に立ち返り、「中学受験はこの北極星を達成するために必要か」を考えてみました。
人より少し多くお金を稼ぐためには、挑戦して一歩先を行く知識や技術を身につけなければ達成できません。
となると、合否はさておき、受験のための勉強は決してマイナスにはならないと感じました。
そこで、中学受験にチャレンジさせてみることにしたのです。
◆塾は試験業界のプロ
こうして息子たちの中学受験生活がスタートしました。
長男は小学4年の終わり、次男は小学4年のはじめ、三男、四男は小学5年から、中学受験塾に通わせ始めました。
中学受験には試験業界というものがあり、入試対策のノウハウを持っているプロがいます。
塾に行かずに自宅学習や通信教育で、というやり方もありますが、私はおすすめしません。
試験は人がつくるものですから、攻略法が必ずあります。試験業界のプロである塾に任せるのがいちばんです。
何年にもわたる受験ノウハウが蓄積されているのですから、それを利用しない手はありません。
もちろん費用はかかりますが、自己流で取り組むより何倍も効率的です。
塾に通うべきといっても、私の経験から言うと、受けるのは基本のコースだけでじゅうぶんです。
受験直前の6年生になると、志望校別の対策講座や夏期・冬期講習とは別におこなわれる科目ごとの特別講座など、やたらとオプション講座が多くなります。
長男のときは、事情がわからなかったので塾からすすめられるままに受講していたのですが、出費がかなりの額になったにもかかわらず、明確な効果は見られませんでした。
オプション講座とはいえ、生徒集めのノルマが課せられている先生から「受講しないと、ほかの生徒さんより遅れてしまいますよ」とやんわりと言われたりして、断りにくくなってしまうこともあるかもしれません。
しかし、成果が得られないことにお金を出すのは、ムダ以外の何ものでもありません。
中学受験の「価値」をどこに見出すか?
◆中学受験の価値
子どもたちを通わせていた塾は入塾テストがありますが、成績上位の子に限らず受け入れてくれる、間口の広い大手中学受験塾です。
御三家と呼ばれるいわゆる難関校のカリキュラムだけを用意しているような、成績上級者のみをターゲットにしている塾は避けました。
その理由は、わが家では中学受験の価値を「受験勉強」そのものに置いていたからです。
小学校中学年から高学年にかけて、集中的に「稼ぐ力の土台となる読み・書き・そろばんの力を徹底的に強化できること」が、中学受験の大きなメリットです。
御三家の試験問題は、男子、女子ともに、難解な大学受験レベルの力が必要とされる、難易度はそこまで高くないが大量の問題をテクニックと要領で解く力を要求される、複数の分野を結びつける教養がないと解けないなど、ひと癖もふた癖もあるものばかり。
とても普通の子どもに歯が立つものではありません。
こうした応用力を試す試験への合格を目指す「御三家用カリキュラム」には、その前提として「読み・書き・そろばん」の力が必須です。
こうした基礎学力がなく御三家を狙っても失敗は明らかです。
わが家はまず、基礎学力をつけさせることに全力を注ぎました。
そこで親としての成果の定義は、
●国語でよく出題される作品を本で読む
●漢字を覚える
●計算力がアップする
●日本の歴史に詳しくなる
●星の名前を正確に覚える
といった基礎の強化であり、いつもと同じ風景のはずなのに、その裏側にある物事の成り立ちが見えてきて、次々と新しい世界が広がっていくことに重点を置きました。
問題は受験に失敗したときです。そのときのショックがあとあとまで尾を引いてしまう例は、決して少なくありません。
公立に行くのがつらくて不登校になったり、落ちた自分を恥じて学歴コンプレックスを持ってしまったりする子どもを、これまでたくさん見てきました。
受験はいわば「試験の攻略に成功した人」が勝ち抜く世界であって、決して頭のよさや人格が優れていることではありません。いわんやお金を稼げることなどとは、関係ありません。もっと言えば、勉強ができる、できないというのは、あくまで相対的なものです。
失敗したとき必要以上にショックを受けないためにも、結果ではなく、学ぶことの重要さを、ふだんから子どもに話すことが何より大切だと思います。
成果をきちんと定義して臨めば、中学受験にデメリットは一切なく、むしろメリットしかありません。
これは妻も同様の意見で、メリットとして、
●目標を達成することの大切さを知ったこと
●父親が忙しいなか、受験に関心を持って関与したこと
のふたつをあげていました。デメリットは特にないそうです。結果的に4人それぞれが異なる中高一貫校に入学しましたが、それぞれ特色がありました。
長男は駒場東邦で6年間をすごしました。個人的な感想になりますが、この学校は子どもだけでなく親も大切にするすばらしい学校でした。
次男は、淑徳。仏教校だったのでそこで覚えたお経はいまだに暗唱できるほどです。
やさしい性格の次男にはぴったりの学校でした。
交換留学制度があり、高校時代は1年間アメリカへ留学しました。
三男は巣鴨に入りました。
ここは夜通し大菩薩峠を歩く行事があるなど、男子校らしいスパルタ教育が特徴的で、規律を重んじる一本筋の通った校風でした。
最近人気がなくなってきたと知って、残念でなりません。
四男は筑波大学附属です。ここはガツガツ勉強する学校ではなく、塾も行かずに東大に受かるといった地頭のよい子が集まっていました。
こう振り返ってみても、中高一貫校は校風も教育内容も個性的でバラエティに富んでいます。
受験勉強で基礎力を身につけるという成果を得ながら、特色ある環境のなかで向上心あふれる仲間に出会うことができる。
それが、「中学受験の価値」だと私は思っています。
◆アベレージの意識が上がる
「お祭り効果」が期待できるから、というのも中学受験をさせた理由のひとつです。
勉強ができる子、人間的にも尊敬できる子、志が高い子が大勢いる環境に子どもを放り込むと、みんなで一緒にワイワイやっているうちに、おのずと周りに引き上げられ、スムーズに、「人間性」「教養」「仕事」にまつわる「カースト」を上げていくことができるのです。
長男は駒場東邦に行ったからこそ医者になれたと思っています。それは、まさに「お祭り効果」です。
長男は生物クラスを選びましたが、実にクラスの40人中30人が医者になりました。
現役で国立の医学部に入ってしまうような子がゴロゴロいたのです。
かといって成績に一喜一憂して蹴落としあうようなギスギスした雰囲気は一切なく、人間性も優れた子が多いのも特徴的でした。
淑徳はほかの3校と比べれば学力で劣るものの、次男のクラスからは早稲田、慶応、上智に複数名が現役で合格しました。
巣鴨も3割ほどが医者になる環境でしたし、筑附も授業を受けているだけで家ではまったく勉強しないのに東大に合格してしまう子がたくさんいました。
また、レベルの高い中高一貫校に通う子どもたちは、精神的にも早熟で、中学生のうちから「弁護士になる」「医者になる」と、将来の目標が明確なこともめずらしくありません。
わが家の子どもたちは、必ずしもトップ集団にはいませんでしたが、周りに刺激され、切磋琢磨しあうなかで、次第に志が磨かれていきました。
子どもに稼ぐ力を身につけてほしいなら、口うるさく親がいろいろ言うよりも、
「目標を持って努力するのが当たり前」
「人を思いやるのが当たり前」
という環境を与えてあげるのがいちばんなのです。
林 總 公認会計士林總事務所 公認会計士/明治大学特任教授
〔2019年9/10(火) 幻冬舎ゴールドオンライン〕

中学受験vs.高校受験「失うもの」が大きいのはどっち?――2018下半期BEST5
2018年下半期(7月~12月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。
ライフ部門の第5位は、こちら!(初公開日 2018年11月21日)。

  •   *  *

漫画『ドラゴン桜』の主人公・桜木建二さんが「小学校・中学校受験は子どもの将来を不幸にする」と直言しているというので、記事を拝読してみた。
●【直言】小学校・中学校受験は子どもの将来を不幸にする
https://newspicks.com/news/3443663/body/
小学校・中学校受験について書かれているのは最初だけ。
後半3/4の内容は育児書によくある話で、大筋異論はない。
小学校受験について私は疎いので、論じない。
しかし中学受験の是非については、考察が不十分な部分が見られた。
中学受験で子どもが不幸になる?
桜木さんは「小学校受験と中学校受験は、子どもの将来を楽にはしない。
むしろ、不幸にする可能性が大きい」と断言する。
その根拠に、偉大なる発達心理学者ジャン・ピアジェ(1896-1980)が1936年に発表した「思考の発達段階」の理論を挙げる。
0~2歳を「感覚運動期」、2~7歳を「前操作期」、7~11歳を「具体的操作期」、11歳~成人を「形式的操作期」と呼んで区別する考え方だ。
桜木さんの説明をそのまま借りれば、「具体的操作期(論理的思考段階)」とは「自分が具体的に理解できる範囲のものに関して、論理的に思考したり推理したりが可能」な時期だ。
それに対して、「形式的操作期(抽象的思考段階)」とは「抽象概念や知識がわかり始める。
例えば、『生きる』『幸せ』などがわかり始める。
算数から数学になり、xやyなど抽象的な数式も扱える」時期。
その通りだ。そのうえで桜木さんは、次のように論理を展開する。
(1)中学入試問題を小学生にやらせることは発達心理学の観点から無理がある
 ↓
(2)子どもに苦手意識を与え、自信を奪い、勉強嫌いになる可能性が高い
 ↓
(3)中学校受験は失うものが多い
発達心理学的に中学入試は無謀なのか? 
桜木さんは記事の中で、具体的操作期から形式的操作期への移行を「12歳」(日本語版Wikipediaにはたしかに「12歳」とあるが英語版では「11歳」となっている)とし、形式的操作を求める中学入試問題は小学生には早すぎるという。
しかし、中学入試の算数が、抽象的なxやyを使った「方程式」を使わずとも「つるかめ算」で答えにたどり着けるようにしてあるのは、まだ具体的操作のほうが得意な小学生でも解けるようにという配慮にほかならない。
理科の入試問題に、化学式のような抽象的なものが出てくるわけでもない。
基本的に中学入試問題は、子どもらしく試行錯誤する力を試しているのであって、形式的操作期を先取りした思考力を試しているのではない。
桜木さんはその点を誤解しているのではないだろうか。
そもそもピアジェの理論は教育関係者には常識で、小学校の学習指導要領はもちろん、塾の教材もそれを意識してつくられている。
一般的には、具体的操作期から形式的操作期への移行は「11歳ごろ」と解釈されており、小学校高学年で割合や確率の概念を扱うのもそれに符合する。
たしかに形式的操作期に移行している子供のほうが有利な面は多いので、ゆっくり発達する子は無理して中学受験勉強をしなくていいと私も思う。
だが、11歳ですでに形式的操作期に移行している多くの子どもたちが中学受験で十分に力を発揮するのは、不自然なことではない。
第一志望不合格は「失敗」ではない
桜木さんの記事の中には「受験に失敗」という表現も何気なく使われているが、何をもって「失敗」としているのだろうか。
「第一志望に合格できなければ中学受験は失敗だ」とか「偏差値60以上の学校に受からなければ中学受験をする意味がない」などと考える親はときどきいる。
桜木さんもそう考えているのだとすれば、中学受験生の親には“向いていない”。
そのような親が子どもに中学受験をさせると、合格というゴールばかりに目が向いてしまい、ありのままの子どもが見えなくなる。
子どもに過度な負荷を与え、子どもを潰してしまいかねない。
私に言わせれば、それこそが「中学受験の失敗」であり、第一志望に不合格になることは、失敗でも何でもない。
親の「考え方」で子どもは傷つく
12歳の子どもが、自分の道を切り開くために努力して、仮に100%望んだとおりにはならなかったとしても、その子なりの努力の結果を親が100%認めてやることができれば、子どもは自分の道を堂々と歩むことができる。
それが、ありのままの子どもを認めるということ。
そうすれば、その中学受験は大成功だ。
合否という結果だけで受験の成功・失敗を判断してしまう「考え方」が子どもを潰すのであって、中学受験そのものが子どもを不幸にするわけではない。
親がそのような「考え方」であれば、仮に中学受験を回避したとしても、高校受験や大学受験で子どもが親の望み通りの結果を出せなかったときに、結局いくつになっても子どもは傷つく。
遅咲きの子どもであれば12歳で“勝負”するよりも15歳で“勝負”するほうが「最終的に少しでも進学実績の良い高校に行ける可能性で有利」という損得勘定もあるかもしれない。
その判断を否定はしないが、だとすればその前に、進学実績の良い高校に入れたいと思うのはなぜかを、よく考えてみるべきだろう。
高校受験が子どもたちから奪うもの
逆に、世間体にとらわれず、わが子の頑張りを100%認めて誇らしく思える親なら、発達がゆっくりな子どもでも、中学受験をさせてもいいと私は思う。
現在、私立中学の募集定員総数は中学受験生総数とほぼイコールで、“どこかには入れる”。
そこで得られる中高一貫という環境そのものに、学校の “偏差値的レベル”にかかわらず、思春期の子どもにとっての大きな意味がある。
それが、中学受験をすることで得られるものであり、高校受験が子どもから奪うものである。
再びピアジェによれば、14~15歳で「形式的操作の組織化の時期」に入り、いよいよ「哲学」ができるようになる。だからこそ反抗期も現れる。
この時期には、たくさんの冒険をして、たくさんのひとに出会い、たくさんの失敗をして、たくさんぼーっとすることが大切だ。
それらの経験を通して、世の中を知り、自己洞察を深め、子どもは大人になっていく。
紙と鉛筆だけで受験勉強ばかりしている場合ではない。
欧米先進国のほとんどでは高校受験がない
つまり、反抗期と高校受験の両立は難しい。
多くの子どもはなんとかその状況を乗り切るが、中には両立がうまくいかない子もいる。
潜在能力は高いのに反抗期ゆえに力が発揮できなかったり、逆に受験勉強に追われてこの時期に学ぶべき人生の基本をおろそかにしてしまったり。
欧米先進国のほとんどでは、高校受験がない。
ハリー・ポッターは、日本でいうところの中高一貫校に相当する学校に通っている。
まさに少年が大人になっていくための冒険の舞台である。
その代わりイギリスのエリート層は、小学校高学年で猛勉強する。
ちなみに2017年に漫画化されベストセラーとなった『君たちはどう生きるか』の主人公で14歳のコペル君も、戦前に中学受験をして、いまでいうところの中高一貫校に相当する環境で、高校受験にわずらわされることもなく、ときには不登校になったりしながら、じっくりと「哲学」することができたのだ。
この大切な時期の大半を高校受験勉強に費やしてしまうことのリスクを、桜木さんは、中学受験のリスクと対比していない。
これが「ピアジェ理論を前提に、中学受験の是非について述べよ」という小論文課題なら、大幅減点だろう。
たかだか中学受験で人生が決まるわけがない
だからといって私は絶対的に中学受験を推奨するわけではない。
地域の教育文化、親の教育観、家庭の事情によって、それぞれに判断すればいいことであって、教育における選択に「正解」などない。
ましてや、たかが中学受験をするのしないので、人生の幸せ・不幸せなど決まるわけがない。
桜木さんもそんなことは百も承知で、編集部が煽っただけだとは思うが。
教育における選択では、「何を選択したか」よりも「なぜそれを選択するのかを説明できること」、そして「選択したあとにそれを良い選択にする努力を怠らないこと」が大事である。
その意味で、拙著『 受験と進学の新常識 』は、親として、親子の選択の意味を言語化し、自信をもって子どもを応援できるようになる一助となるはずだ。
また、中学受験のリスクを少しでも減らす方法は12月10日発売予定の新刊『 中学受験「必笑法」 』にまとめてある。
〔2019年1/8(火) おおたとしまさ文春オンライン〕

「第一志望の学校に合格はたった3割」にひるまないためには
中学受験に関する数字を森上教育研究所の高橋真実さん(タカさん)と森上展安さん(モリさん)に解説いただく本連載。
埼玉や千葉、関西圏などではすでに入試がスタートしています。
東京・神奈川の入試解禁日までは10日を切りました。
今まさに親子で一丸となり、第一志望を目指してラストスパートをかけていることでしょう。
この時期だからこそ考えたい「第一志望校」が示す意味とは?
今回の中学受験に関する数字…30%
志望順位を決めるのは偏差値だけ?
<タカの目>(高橋真実)
中学受験をする子どもたちの中で、第一志望の学校に合格・進学する割合はおよそ30%と言われています。
ひと口に第一志望校と言っても、「チャレンジ」として少し背伸びして憧れの学校を目指す受験生もいれば、確実に合格できそうな「安全圏」を狙う受験生もいます。
最近は以前ほどチャレンジしなくなっているという話も聞きます。
志望順位を決める主な基準は偏差値でしょう。
しかし、それだけで決まるわけではありません。
2つの学校に合格して、「英語教育が魅力的だから」と、あえて低い偏差値の方の学校に進学を決めたお子さんもいます。
のんびり屋さんの女の子なので、その性格に最も適した学校をと、合格した中から偏差値が低めの学校を選択したという話も聞きます。
反対に、親の思いを優先した結果、お子さんの性格と校風が合わず、高校受験をし直したという話を聞いたこともあります。
偏差値だけにとらわれず、学校の教育内容、校風など、様々な要素を考慮し、お子さんとの“相性”を考えた上で志望校を選び、優先順位を考えることが大切です。
いざ受験が始まっても揺れ動く思い
志望順位は受験期間中でも変わることがあります。
これは、ある男の子(A 君)のお母さんからうかがった話です。
  A君は受験直前にインフルエンザに罹り、すべての志望校を保健室または別室で受験しました。
2つめの受験校であるB校での受験が終わったあとのこと。
保健室から出てくると、そこには教頭先生が立っていました。
教頭先生はにっこり笑ってA君の額に手をあて「大丈夫だったか?熱はもうそんなにないみたいだね。」と話しかけたそうです。
A君親子は当初志望順位が下だったB校に行きたいと思ったそうです。
それは、教頭先生の対応に、どんなことがあっても、この学校なら安心していられると思えたからでした。
A君はB校に見事合格。他の学校にも合格しましたが、迷うことなくB校に入学しました。
多感な時期、そして子どもが人として大きく成長する6年間を過ごす学校としてどこを選択すべきか。親子の思いは揺れます。
さて、中高一貫校卒業間近のわが娘。6年前、彼女も第一志望はあえなく敗退しました。
娘は、中学入学当初は微妙な感情を抱いていましたが、しっかりと受け止めてくださる先生、互いに信頼し認めあえる友だちに囲まれ、笑顔溢れる6年間を過ごすことができました。
首都圏の入試がいよいよスタートしました。
1人でも多くの受験生が第一志望に行けますように、たとえそうではなくても、ご縁のあった学校で笑顔の6年間が送れますように。
毎年この時期、そう祈らずにいられません。
確認しておきたい真水実倍率とは?
<モリの目>(森上展安)
タカの目さんのエピソードに出てくる温かい教頭さんと多くの方が出会えるとよいですね。
モリの目としても学校の安全は校長並びに管理職の最大の責務と思いますから、その点をゆるがせにしないことを優先されたケースを取り上げていただいてとても良いと思います。
実際、校舎の中や教室などが乱雑でゴミが散らかっている学校に行かせた結果、偏差値が高くとも担任が親身になって相談にのってくれず、不登校が長引いたケースがありました。
目が行き届かないことはとても深刻な結果につながりかねません。
さて、今回の数値は第一志望率ですね。もう少し言うと、第一志望者の合格率というもの。
タカの目さん、とても良い所に目をつけましたね。
なぜかというとそうやって合格率をみると、一見高そうなハードルもそうでもない印象になりますから、受験を前にしてひるむことはない、という気構えが出来ます。
少し具体例を出していきます。
たとえば最難関と言われる男子難関校でこれをみていきましょう。
まずは開成です。開成の昨春の実倍率は、3.02倍でした。
これは全受験生に対する合格者数の割合です。
でも受験生全員が第一志望というわけではありませんね。
筑波大学付属駒場もいるでしょうし、西の灘が本命ということもあります。
開成に合格すれば開成に進学するのだという割合を仮に「第一志望率」としますと、これは水増し率に注目すると一応の比率が出ます。
水増し率とは文字通り入学定員を100としたときどのくらい多めに合格を出すか、という割合です。
1割増しにするか2割増しにするか、その割増率は裏をかえせばそれだけ他校に逃げる割合ですから、仮にそれが1割増なら、第一志望率は合格者の9割ということになります。
この第一志望率をもとに、実倍率を算出すると本当に開成なら開成に合格したら進学する受験生だけの倍率が出ます。
これを仮に単なる実倍率といわず真水合格率というとすると、開成の18年入試では、募集定員300名に対し388人の合格者を出したので1.29の水増し率となります。
従って真水合格率は、細かな計算は省きますが、2.8倍になります。
もっとも例年補欠繰上げが相当数でますから、それはなしでの正規合格者の真水合格率ということです。
同様に、開成の17年入試は、2.65倍になって2倍半ばに近かったのです。
そうした真水合格率を2月1日の難関男子校について示してみます。(図1参照)
※数字は倍率を表す
※小数点第3位以下を四捨五入して算出
※出典:森上教育研究所
いかがですか。駒場東邦は2倍を切り、海城は2倍前半。
武蔵、芝、早稲田高等学院、慶應普通部は3倍前後…最難関に次ぐこれらの学校で、3割の合格率と言ってよいと思います。
女子難関校はどうでしょう(図2参照)
やはり、男子以上に5割を超えている学校が多くなりますね。
最も共学校となると大変厳しくなってきます。やはりいくつか揚げてみます(図3参照)。
この通り共学校は厳しく3割を大きく下回っています。17年の広尾学園ともなると公立一貫校並の倍率です。
さてほんの少しですが、真水合格率をみてみましたが、難関校でも男女別学校では5割台が案外あることに気が付かれたことと思います。
またさすがに共学校は3割台が多いことも。
もちろんこれは昨年、一昨年の入試でしたが、男女別学校は例年と同じ比率になるところが多い様子です。
入試本番に向け受験校のこれまでの真水合格率をチェックしておきましょう。
〔2019年1/23(水) 森上教育研究所MONEY PLUS〕

中学受験「直前に志望校変更はアリなのか」入試問題との相性と新型入試について考える
今年も中学受験まであとわずかになった。毎年12月以降に多く寄せられる相談に「志望校はこのままで良いのか」というものがある。
「ここまでやってきたのだから……」「一度決めたら最後までやり切りなさい」と勢いで受験本番まで行ってしまう家庭が多いが、それは「受験校変更」の面倒を無意識で避け、思考停止してしまってはいないだろうか。
最後にもう一度立ち止まって考えたい重要な分岐点であると筆者は考える。
●そもそもなぜその志望校になったのか振り返る
日本の従来型受験における志望校選びで特に目につくのが、学校の「入口」を重要視していることだ。
入口とは学校名や偏差値のことである。
大事なのは当然「過程」(カリキュラム・指導法・教員・行事等)や「出口」(卒業後の進路・どのように成長したか)であるのは間違いないのだが、それらは精査することなくイメージで判断してしまっている場合がほとんどで、入口よりも重視している受験生や家庭は少ない。
第一志望は「校風」や「立地」で選んでいる、という保護者は多いが、似た校風で似た立地の学校を紹介しても、偏差値が逆転しない限り意見が変わることは少ない。
ブランドとしての「学校名」や数値化された「偏差値」などわかりやすいものを判断基準にしてしまうのはある程度仕方がないが、教育とはそもそも見えにくいことを扱う持続的な営みであり、物質的な製品を売買するのとはだいぶ意味合いが違う。
何よりも大事なのは場や人、そして方法との「相性」である。
「出口」に関しては、進学先の大学名だけは重視される傾向が依然として根強いが、見るべきはその多様性ではないか。
個性を活かして、伸ばしてくれる学校であれば、多様な学校、多様な学部への進学があるはずで、同じ偏差値帯の大学や学部に実績がまとまっているとしたら、それは学校側の意図であると考えられる。
もちろん、中高一貫なら6年間過ごす学び舎であるから価値観が似通ってくることは不思議ではないが、偏った情報に日常的に触れていることで、可能性を狭めてしまうリスクもある。
もちろん、その学校の理念や営みに直接触れた上で受験生本人も保護者も納得して志望しているのであれば理想的だが、違和感があるのであれば受験前にクリアーにしておいた方が直前期の勉強にも当然、身が入る。
●直前の悩みは「不安」だから
受験直前期に悩んでしまうのは、多くの場合、このままでは「不安」だからだ。
不安原因の多くは、「やる気がない」か「やっているのに成果が出ない」のどちらかである。
では、なぜやる気がないかといえば、やっても成果が出ない、そもそもやり方が分からない、その学校に本当に行きたいのか分からない、分からないからストレス、遊びたい欲求が大きく上回っている、といったところだ。
一方、やっているのに成果が出ない場合、塾や講師、教材や方法との相性の問題もあるが、見落としがちなのが中学受験という構造自体との相性が悪い場合と、発達段階が受験に追いついていない場合だ。
受験自体との相性や発達段階が原因の場合、一般的な中学受験をすることはあまりお勧めできない。
もし、それでも中学受験をしなければならない事情があるのであれば、入試に合わせるのではなく、自分に合った入試を実施しているような学校を受験するという選択もある。
●入試問題はラブレターである
これは、一般的な2科4科の入試を実施する学校にも言えることだが、「相性が良い問題」と「相性が悪い問題」が存在する。
中学受験の場合、受験生の発達段階や日本語能力にもばらつきがあるため、まったく同じことを聞いている問題でも「問い方」が変わっただけでも正答率がだいぶ変わってくる。
国語に限らず、単純に問題文の指示語や修飾語を増やして長くするだけでも、得手不得手が分かれる。
また、大手塾の模擬テストなどは、より多くの学校に対応できるように画一的な問題を作る傾向があるが、入試の多様化が進む現状の中学入試には対応できていない部分も目立ってきている。
つまり、模擬テストの形式と相性が悪い受験生でも、実力を発揮できるような入試問題も存在する。
特に「適性検査型」や「思考力型」と呼ばれる新しいタイプの入試であれば、なおさら模擬テストで図ることは難しい。
夏以降、多くの塾では過去問演習が始まるが、色々な学校の過去問題を解く中で、「楽しい」「解きやすい」「なぜそれを問われているのか意味が分かる」という印象を持つ問題があるならば、その学校は自分に合った問題を出題する先生達がいる環境だということだ。
そういう学校を志望した方が進学後にメリットが大きい。
'●多様化する学校と入試問題
「21世紀型」と呼ばれる教育を取り入れている学校では、アドミッションポリシーが明確になりつつある。
これは、新しい教育法を取り入れてうまく授業を構築するために必要なことで、構造上の結果でもある。
例えば、話し合いや議論が嫌い、あるいは苦手な生徒に対して、活発な議論などの動的なアクティブラーニングを強いるのは難しいし、そもそもその生徒にとってその学習法は逆効果になってしまう可能性がある。
その力を伸ばして欲しいという要望もあるだろうが、まだ変革黎明期である現在、そこまで余力のある学校は多くはないだろう。
もちろん、情熱を持って生徒に関わる教員はどの学校にもいるが、情熱があって相性の良い教員と出会えるかどうかは入学するまで分からない。
であれば、自分の得意とするところや性質が、学校が求めている生徒像に合っている学校に行った方が、幸せな学校生活を送ることができるだろう。
そういう意味でも、思考力入試や適性検査型入試、アクティブラーニング入試などの問題形式が合っているならば、この時期からでもそういう入試を実施している学校の受験を考えるのもよいだろう。
倍率が高く対策がし辛いため、多くの塾や予備校では勧められないが、それは塾側の都合である。
そもそも「性質」や「特技」などに目を向けている入試なので、無理矢理対策する必要はない。
無理矢理合わせるのでは、相性の合わない学校を目指して努力することになりかねない。
実際、私立の中高でも不登校の生徒は年々増加している。
●直前まで相性の良い学校を探す
筆者は幼児教育から社会人教育まで幅広く関わっているが、いつ「やる気」がでて、それがうまく機能しだすかは個人差が大きい。
それぞれの個性と発達のスピードに合った環境が望ましいが、横並びの受験勉強に合わせてしまっている受験生が多い。
特に中学受験生の場合は成長のばらつきが大きいにもかかわらず、「中学受験は人生で一度のチャンス」と言われると、合わせないと乗り遅れてしまうような気になってしまう。
中学受験勉強自体は学校の勉強とは違う内容や方法も多く、相性が良い生徒にとっては学びや経験として意味のあるものだが、成長よりも偏差値や合否で判断することは、発達段階に合わせなければ逆効果になってしまう恐れもある。
学校に合わせるのではなく、合っている学校を探すという発想であれば、準備や対策が間に合わないというプレッシャーに押しつぶされることもない。
可能な限り、直前まで相性の良い学校を探すべきだと筆者は考える。
文科省が進める2020年の新学習指導要領や大学入試改革は、従来型の教育では「生きる力」を身につけられないのではないか、という問題定義から始まった。
まずは大人が自分たちの経験してきた学びについて批判的に考え、時代の動きや個性や多様性に目を向ける必要がある。
激動の時代に、1人でも多くの受験生が進学先で豊かな学びを経験できることを願う。
〔2019年1/10(木) 矢萩邦彦 実践教育ジャーナリスト/知窓学舎・スタディオアフタモード代表〕

お金・死・性を教える私立が子供を伸ばす
中学受験の本番が迫ってきた。親はどんな学校を選べばいいのか。
受験カウンセラーの鳥居りんこ氏は「合格実績だけで学校を選ぶとミスマッチになりやすい。『宣伝フレーズ』を鵜呑みにせず、慎重に学校を選ぶ必要がある。キーワードは『真の教養』だ」と話す。
どういうことなのか――。
■数年経つと“死語”のように消える中高一貫校のキャッチフレーズ
暮れも押し迫り、中学受験の本番が間近に迫ってきた。
受験生のいる各家庭では最終的な志望校選定の時期を迎えたことになる。
その際、保護者は今一度、“わが家の教育方針”とは何かということを再確認するといい。すなわち、親として「中高時代に、わが子にどんな力をつけてもらいたいか」を明確にするということだ。
筆者の友人に中高一貫校の取材経験が豊富な女性ライターがいる。彼女はこう言った。
「中高を取材していると、先生方のコメントにも流行があることがわかります。ちょっと前までは『リーダーの育成』。同じ方向性で少し盛った表現だと『国際社会で活躍する真のリーダー』。そして、今のはやりは『解のない社会を生き抜く力』。これを全部盛りこんだ表現にすると『ITによる変革が激しい時代にあって、探求により深い思考力、表現力、プレゼン能力を身につけ、道具としての英語力を身につけ、異文化を理解し、コミュニケーション能力を育む』という感じでしょうか」
筆者も中高一貫校への取材経験が長いが、全くその通りと言わざるを得ない。
学校説明会、あるいはパンフレット、ホームページという手段を使って、学校情報を発信する場合には“キャッチコピー”が必要となるのだろう。
その文言自体にはさほど違和感を抱かないが、問題はそれが「流行」してしまうことだ。
ある学校がそのキャッチコピーで集客(受験者数増加)に成功したと見るや、同じような文言があふれることになる。
「キャリア教育」「アクティブラーニング」「グローバル」「国際教育」「ITC」「サイエンス」「理数教育」……。
数年経つと“死語”のように消えて行く運命のものも数多い。
■受験者数を増やすため有名大学合格実績目標を掲げる
昨年と今年では全く違う事を堂々と言う学校の先生もいる。
その見事な朝令暮改ぶりには面食らうというよりも、先生方も少子化の中、「生き残りに大変なんだな」という感想を持ってしまうのだった。
少し前の時代は「お約束」を掲げる学校も多く、例えば「G-MARCH100」など、6年後の大学合格実績目標を前面に打ち出す学校も多かった。
中高一貫校にとっては、「出口」となる生徒の進学先の大学の知名度にはこだわりたいのだろう。
それが、「入口」である受験の人気度や偏差値にも直結する。
もし親がわが子の最終学歴を難関大学にさせたいと願うなら、学校よりも予備校のように受験対策に特化している場所にわが子を置いたほうが結果は出るかもしれないが、それを実行する親は案外少ない。
なぜか。親の多くは学校に対して、最終学歴を得るためだけではない“効能”を期待していることの現れではないかと筆者は考えている。
■2019年以降のキャッチコピーは「真の教養」
また、前出の知人ライターは今後、2019年以降の私立中高一貫校が掲げるキャッチコピーの流行予測として、この言葉を挙げている。
それは、「真の教養」だ。
「完全版の文言としては『永遠の命題である哲学、科学、文学、芸術について、世界の教養人と伍して語れる真の教養』。これがくると思います」
これについても筆者は完全に同意だ。いかにも言いそうなフレーズである。
先行き不透明な時代の今、「大学受験スキル&養成力」だけではなく、わが子に中高一貫校で得てほしい力、つまり「わが子に中高時代で付けてもらいたい力」を下記に挙げたい。
1 共感力
筆者は不登校や成績不振といった問題を抱える子を持つ親の相談も受けているが、そうした生徒は圧倒的に中2が多い。
中2は鬼門なのだ。思春期ど真ん中のこの年齢は「自分がいて、他人がいる」ということが理解しきれず、友人や部活の先輩・後輩などとの摩擦を繰り返しがちだ。
自分の主張が簡単には通らなくなることに気付き、他人が自分とは異なる意見を主張することに戸惑い、合わせるべきか否かで悩む。
おまけに他人からどう思われるかが気になりだすので、自我と迎合のはざまで悶えることになるのだ。
この時期を通過することによって、自分がいて、他人がいる、ゆえにそれぞれがいろいろな考え方を持つという「みんな違って、みんな良い」的思考法ができるようになり、さらには、人はひとりで生きているわけではないことに気が付くのである。
この実感を級友、先輩後輩、恩師といった人間関係の中で得ていくことは彼らの今後の人生において大きな財産となるだろう。
2 出来事の本質を見抜く力
「出来事」は、流れゆくものと普遍的なものにわかれる。
また、「物事」には、まやかしか真実か、あるいはどちらのカテゴリーにも属さないものも含まれる。
それらを見抜く力を養うことで、自分の“核”となり得るベースを作ることができる。
すなわちそれは「生きる力」を育むことになる。
3 自分の頭で考え、それを自分の言葉で表現する力
他人の言動に振り回され、迎合することをよしとするのではなく、しっかりと自分の頭で考え、それをきちんと言葉で表明できることが「自律の一歩」だろう。
この自律=“意志”という“快感”を得ることが、人生を楽しくするコツであるはずだ。
4 楽しむ力
「自分が好きだから、これをやる! 」という意識、あるいは「好きなこと」を「好き」と言える勇気・確信を持てれば、人生は輝き出す。
学校生活のあらゆる学びと経験はわが子の幅を広げるに役立つので、そこに「好き」が加われば無敵である。
さらに、それに対して、「好き」を超えて「心弾む」、ときめく感情を持てたならば、「青春」は長く続いていくことだろう。
人生は楽しもうとする人が楽しめるのである。
■お金・性・死の教育をする私立が子供を伸ばす
それでは、上記の4つの力を踏まえ、筆者がこれから中高一貫校で本格的に取り組んでほしいと思う「未来の教科」を紹介したい。
それは以下の3つだ。
1 お金の教育
日本人は「金(マネー)」に関することを口にすることをはばかる傾向がある。
大学で専門的な勉学に励んだ人もお金に関するノウハウを学んだことがなかった人が大半ではないだろうか。
しかし、これは全員が学んでおいたほうが良いことであるはずだ。
金利、為替、株、投資、保険、相続、給与システム、各種社会制度、あるいは家計管理、さらにはもっと踏み込んだ「お金儲けの方法」「働くとは何ぞや」「お金の価値」といったことを基本的教養として理解させておくことは、生きていくことにおいて、かなり重要なことになると思う。
2 性の教育
現在の保健体育の授業の内容では不十分だ。
もっと踏み込んで、学習していく必要があると筆者は考えている。
男女関係のトラブルやリスクだけでなく、男女の脳(思考法)の違い、ジェンダー教育などを通し、誰もが自身の尊厳を傷つけられないようにするための学びである。
3 人生の四季教育
大半の家庭が核家族で、しかも病院で死ぬケースが多い現在では、人が死にゆく姿を目にすることは稀である。
大多数の日本人にとって「死」は遠い存在だ。
だからこそ、若いうちに、人は生まれてから、どのように成長し、どうやって老いていくのかを学ぶことで得るものもまた大きいように感じる。
人間を含めた生物の致死率は100%。
この当然すぎることを改めて、学習することにより、「今をどう生きるか? 」の連続が「人生」なのだという気付きを与えられるのではないか。
それにより、自身の人生はもちろん、他人の人生についても尊重できる人になれる。
以上、期待を込めて3つの「新科目」を予想してみたが、いかがだろうか。
今後の中高一貫校は、こうした「真の教養」の獲得を目指す方向に舵を切るのではないだろうか。
もちろん、上記は筆者の私見である。
中学受験を目の前にする保護者さんは今一度、わが子に付けさせたい力を、偏差値とは別の角度で吟味することをお勧めしたい。
くれぐれも各学校が打ち出すキャッチコピーに安易に流されず、学校の本質を見抜いたうえで、わが子の特性・個性に本当に合った、「ミスマッチのない学校選び」をすること。
それが親と子の幸せな未来につながるはずだ。
エッセイスト、教育・子育てアドバイザー、受験カウンセラー、介護アドバイザー 鳥居 りんこ 写真=iStock.com
〔2018年12/24(月) プレジデントオンライン〕

中学受験vs.高校受験「失うもの」が大きいのはどっち?
漫画『ドラゴン桜』の主人公・桜木建二さんが「小学校・中学校受験は子どもの将来を不幸にする」と直言しているというので、記事を拝読してみた。
●【直言】小学校・中学校受験は子どもの将来を不幸にする
https://newspicks.com/news/3443663/body/
小学校・中学校受験について書かれているのは最初だけ。後半3/4の内容は育児書によくある話で、大筋異論はない。
小学校受験について私は疎いので、論じない。
しかし中学受験の是非については、考察が不十分な部分が見られた。
中学受験で子どもが不幸になる?
桜木さんは「小学校受験と中学校受験は、子どもの将来を楽にはしない。むしろ、不幸にする可能性が大きい」と断言する。
その根拠に、偉大なる発達心理学者ジャン・ピアジェ(1896-1980)が1936年に発表した「思考の発達段階」の理論を挙げる。
0~2歳を「感覚運動期」、2~7歳を「前操作期」、7~11歳を「具体的操作期」、11歳~成人を「形式的操作期」と呼んで区別する考え方だ。
桜木さんの説明をそのまま借りれば、「具体的操作期(論理的思考段階)」とは「自分が具体的に理解できる範囲のものに関して、論理的に思考したり推理したりが可能」な時期だ。
それに対して、「形式的操作期(抽象的思考段階)」とは「抽象概念や知識がわかり始める。
例えば、『生きる』『幸せ』などがわかり始める。
算数から数学になり、xやyなど抽象的な数式も扱える」時期。その通りだ。
そのうえで桜木さんは、次のように論理を展開する。
(1)中学入試問題を小学生にやらせることは発達心理学の観点から無理がある
 ↓
(2)子どもに苦手意識を与え、自信を奪い、勉強嫌いになる可能性が高い
 ↓
(3)中学校受験は失うものが多い
発達心理学的に中学入試は無謀なのか?
桜木さんは記事の中で、具体的操作期から形式的操作期への移行を「12歳」(日本語版Wikipediaにはたしかに「12歳」とあるが英語版では「11歳」となっている)とし、形式的操作を求める中学入試問題は小学生には早すぎるという。
しかし、中学入試の算数が、抽象的なxやyを使った「方程式」を使わずとも「つるかめ算」で答えにたどり着けるようにしてあるのは、まだ具体的操作のほうが得意な小学生でも解けるようにという配慮にほかならない。
理科の入試問題に、化学式のような抽象的なものが出てくるわけでもない。
基本的に中学入試問題は、子どもらしく試行錯誤する力を試しているのであって、形式的操作期を先取りした思考力を試しているのではない。
桜木さんはその点を誤解しているのではないだろうか。
そもそもピアジェの理論は教育関係者には常識で、小学校の学習指導要領はもちろん、塾の教材もそれを意識してつくられている。
一般的には、具体的操作期から形式的操作期への移行は「11歳ごろ」と解釈されており、小学校高学年で割合や確率の概念を扱うのもそれに符合する。
たしかに形式的操作期に移行している子供のほうが有利な面は多いので、ゆっくり発達する子は無理して中学受験勉強をしなくていいと私も思う。
だが、11歳ですでに形式的操作期に移行している多くの子どもたちが中学受験で十分に力を発揮するのは、不自然なことではない。
第一志望不合格は「失敗」ではない
桜木さんの記事の中には「受験に失敗」という表現も何気なく使われているが、何をもって「失敗」としているのだろうか。
「第一志望に合格できなければ中学受験は失敗だ」とか「偏差値60以上の学校に受からなければ中学受験をする意味がない」などと考える親はときどきいる。
桜木さんもそう考えているのだとすれば、中学受験生の親には“向いていない”。
そのような親が子どもに中学受験をさせると、合格というゴールばかりに目が向いてしまい、ありのままの子どもが見えなくなる。
子どもに過度な負荷を与え、子どもを潰してしまいかねない。
私に言わせれば、それこそが「中学受験の失敗」であり、第一志望に不合格になることは、失敗でも何でもない。
親の「考え方」で子どもは傷つく
12歳の子どもが、自分の道を切り開くために努力して、仮に100%望んだとおりにはならなかったとしても、その子なりの努力の結果を親が100%認めてやることができれば、子どもは自分の道を堂々と歩むことができる。
それが、ありのままの子どもを認めるということ。そうすれば、その中学受験は大成功だ。
合否という結果だけで受験の成功・失敗を判断してしまう「考え方」が子どもを潰すのであって、中学受験そのものが子どもを不幸にするわけではない。
親がそのような「考え方」であれば、仮に中学受験を回避したとしても、高校受験や大学受験で子どもが親の望み通りの結果を出せなかったときに、結局いくつになっても子どもは傷つく。
遅咲きの子どもであれば12歳で“勝負”するよりも15歳で“勝負”するほうが「最終的に少しでも進学実績の良い高校に行ける可能性で有利」という損得勘定もあるかもしれない。
その判断を否定はしないが、だとすればその前に、進学実績の良い高校に入れたいと思うのはなぜかを、よく考えてみるべきだろう。
高校受験が子どもたちから奪うもの
逆に、世間体にとらわれず、わが子の頑張りを100%認めて誇らしく思える親なら、発達がゆっくりな子どもでも、中学受験をさせてもいいと私は思う。
現在、私立中学の募集定員総数は中学受験生総数とほぼイコールで、“どこかには入れる”。
そこで得られる中高一貫という環境そのものに、学校の “偏差値的レベル”にかかわらず、思春期の子どもにとっての大きな意味がある。
それが、中学受験をすることで得られるものであり、高校受験が子どもから奪うものである。
再びピアジェによれば、14~15歳で「形式的操作の組織化の時期」に入り、いよいよ「哲学」ができるようになる。
だからこそ反抗期も現れる。
この時期には、たくさんの冒険をして、たくさんのひとに出会い、たくさんの失敗をして、たくさんぼーっとすることが大切だ。
それらの経験を通して、世の中を知り、自己洞察を深め、子どもは大人になっていく。
紙と鉛筆だけで受験勉強ばかりしている場合ではない。
欧米先進国のほとんどでは高校受験がない
つまり、反抗期と高校受験の両立は難しい。
多くの子どもはなんとかその状況を乗り切るが、中には両立がうまくいかない子もいる。
潜在能力は高いのに反抗期ゆえに力が発揮できなかったり、逆に受験勉強に追われてこの時期に学ぶべき人生の基本をおろそかにしてしまったり。
欧米先進国のほとんどでは、高校受験がない。
ハリー・ポッターは、日本でいうところの中高一貫校に相当する学校に通っている。
まさに少年が大人になっていくための冒険の舞台である。
その代わりイギリスのエリート層は、小学校高学年で猛勉強する。
ちなみに2017年に漫画化されベストセラーとなった『君たちはどう生きるか』の主人公で14歳のコペル君も、戦前に中学受験をして、いまでいうところの中高一貫校に相当する環境で、高校受験にわずらわされることもなく、ときには不登校になったりしながら、じっくりと「哲学」することができたのだ。
この大切な時期の大半を高校受験勉強に費やしてしまうことのリスクを、桜木さんは、中学受験のリスクと対比していない。
これが「ピアジェ理論を前提に、中学受験の是非について述べよ」という小論文課題なら、大幅減点だろう。
たかだか中学受験で人生が決まるわけがない
だからといって私は絶対的に中学受験を推奨するわけではない。
地域の教育文化、親の教育観、家庭の事情によって、それぞれに判断すればいいことであって、教育における選択に「正解」などない。
ましてや、たかが中学受験をするのしないので、人生の幸せ・不幸せなど決まるわけがない。
桜木さんもそんなことは百も承知で、編集部が煽っただけだとは思うが。
教育における選択では、「何を選択したか」よりも「なぜそれを選択するのかを説明できること」、そして「選択したあとにそれを良い選択にする努力を怠らないこと」が大事である。
その意味で、拙著『 受験と進学の新常識 』は、親として、親子の選択の意味を言語化し、自信をもって子どもを応援できるようになる一助となるはずだ。
また、中学受験のリスクを少しでも減らす方法は12月10日発売予定の新刊『 中学受験「必笑法」 』にまとめてある。
〔2018年11/21(水) おおたとしまさ 文春オンライン〕

受験までに最低300万が必要
中学受験を経験した筆者が思う「中学受験の低年齢化」 
小1から塾に通うと受験までに最低300万が必要です。
身近になる中学受験
2017年に芦田愛菜さんが中学受験をし「偏差値70以上」の学校に合格したことや、中学受験のドラマもありました。
中学進学の選択に「私立校への進学」が入り、地域によってはクラスメイトの半分以上が中学受験をします。
中学受験が身近な進路選択のひとつになっています。
中学受験をするにあたり「専門塾に入塾するいいタイミングは、小3の冬」といわれていましたが、最近では「低年齢化」が進んでいます。
その実態と知っておきたいことを紹介します。
中学受験を経験した筆者が思う「中学受験の低年齢化」 小1から塾に通うと受験までに最低300万が必要です。
中学受験専門塾への入塾タイミングの早期化 塾での新学期は、新学年前の2~3月としていています。 その理由は、
・ 新学年の先取り授業
・ 優秀な生徒の囲い込み
・ 小5までに小学校で習うことを終了する
小5の最後もしくは小6で、中学受験でしか出さない「特殊問題」や志望校に合わせた指導を行うのも、中学受験指導の特徴です。
中学受験情報サイトの独自調査によると、小学3年生の2月から通塾をスタートさせている家庭の比率は23.3%です。
どの学年にも入らない「その他」に5.7%という結果が出ています。
さらに細かく学年調査を加えると、「小学1年生以下」が0.6%という結果が出て、中学受験準備の年齢の低年齢化が幼稚園・保育園生におよんでいることになります。
入塾するための塾の存在
中学受験専門塾に入るためには、「入室テスト(入塾テスト)」に合格しないと通えません。
勉強のクセづけとして、プリント式学習や通信教育をしてから、専門塾へ入塾している子どもさんが一般的です。
有名中学受験専門塾に入りたいけれど、入れないというお子さん向けの「入塾対策塾」まで存在します。 お子さんが、希望の塾に入ってからも、家庭教師がわりにと併用する方が多く、料金設定は塾によって異なります。
ある対策塾の料金【最低コース(90分コースで月4回)を半年ほど利用、月謝約2万円】
入会金:2万円
半年間の授業料:12万円
中学受験を経験した筆者が思う「中学受験の低年齢化」 小1から塾に通うと受験までに最低300万が必要です。
年長からの中学受験
「年長コース」も開設した大手有名塾
最近、幼稚園・保育園のうちから、中学受験を考えるご家庭をターゲットとした「年長コース」を開設した中学受験専門塾があります。
小学校入学前には、「小学校入学準備コース」と切り替えを行います。 「年長コース」ですることは、知育教育で行われる「日本語かるた」「地図の暗記」などに簡単な英会話を足して授業を行います。
小さなお子さんに「勉強の楽しさ」を体で覚えてもらって、小学校入学前に「読み書き」、「簡単な計算」、「英会話」を教えます。
「年長コース」や「入学前準備コース」をもつ大手塾
入会金:2万円
授業料:基本コースと英語コースで毎月3万円
(教材費などの負担は塾で異なります)
約1年間に入ったとすると、入会金を含めて38万円です。
特別イベントなどが入ると、最低40万円は必要です。
小1から中学受験準備
「中学受験専門塾といえばここだ」という塾の例を紹介します。
授業料はおおよその金額としてみてください。
小1からの入塾での初期費用:入室金:3万円と授業料2か月分
(関東圏は4教科受講を基本としています。関西圏は社会をのぞけます)
授業料(月額4教科)
1年生:1万7000円
2年生:1万8300円
3年生:2万200円
4年生:3万9300円
5年生:5万700円
6年生:5万8300円
(テキスト代や教材費などを含みます)
3年生以降から、長期休暇中の特別講習会が多く入り、超難関クラスに5年生から編入すると、月謝が値上がります。
小1からの通学で、授業料のみを合計してみると、合計約244万円かかります。
この金額に、交通費や特別特訓会やテストの料金が加算されると、志望先次第では300万円は最低用意する必要があります。
■習い事について
教育系雑誌でもよく言われるのが「習い事は1人3つまで」です。
塾通いの回数が増えて、塾代に対して習い事の費用も増え、貯金している教育費や、家計にも負担が大きくなります。
学年と成績次第では、カットしなければいけない部分はあります。
受験のために1年間だけ転居
都心部で小6時のみ校区変更として転居する家庭があります。
通塾しやすい場所や、中学受験率が高い小学校で過ごしたいという理由から、小6の時のみ引越しをして受験終了後戻るという考えです。
子どもの受験のためなら、賃貸料が20万円以上になっても構わないという家庭があり、不動産屋でも「受験に有利な校区」というリストを持っていると言われています。
わが家の中学受験
筆者自体、子どもと中学受験に挑戦し、志望校に通っています。
小中規模の塾に小4の5月から通いました。
学校のクラスで中学受験に挑戦する子どもは数名でした。
入塾前に、プリント式学習に通い、スイミングに通っていました。
■合格までの費用
国・算・理で受講し、特別講習会などを受講し約80万円でした。 プリント式学習中は転塾後、スイミングは受験1か月前にやめさせました。
生まれた時から、児童手当をずっとためて、家計からの余剰金を教育費や習い事に回せる「子ども費」を設定して、別に貯蓄していたということから、受験に関する費用は賄えていました。
■今の学費
中学は所得制限で、支援金が受けられない代わりに、投資信託や金利がよかった時期に入れた定期預金で救われています。
中学受験は、塾代やその後の学資問題を解決する必要はありますが、低年齢で始めることに、リスクはあります。 中学受験をゴールとして考えない
中学受験を経験された方の話や、記録ブログを読んでいると、悲しい話もあります。
「中学受験で志望校に合格したけれど、厳しい授業内容についていけず、学校がつらい場になる」
中学受験がゴールと考え、周りからの期待や叱咤激励が強かった子ほど、不登校になるケースや、最悪は「自主退学」をする子もいます。
中学受験は「準備期間が長ければいい結果が生まれる」、「短ければいい」などの結果がはっきり出ない世界です。
小6の夏から専門塾に入っても合格している子も意外と多いです。
小4から受験対策をしても、かなりストレスが溜まったというのが、筆者の感想です。
多くの受験情報が紹介されますが、ご両親ともに冷静な判断をする必要があると感じます。
子どもが生まれた時点で、教育費の貯蓄はスタートして、進路について、ある程度の道筋を立てておく必要はあります。
教育費の使い方は、「中学受験がゴール」と考えるのではなく、大学卒業までを見据え、お子さんが「将来やってみたい夢」を聞いて、ご両親が冷静な判断のもとで、中学受験に挑戦してください。
  〔2018年11/20(火) マネーの達人(執筆者:笹倉 奈緒美)〕

超難関中学が望んでいるのは「伸び切ったゴム」のようなガリ勉君ではない
6年生まで野球・バイオリンを続けながら難関国立中学に合格した親子の体験記「小学生生活を犠牲にしない中学受験」(WAVE出版)から、中学受験を目指す親子が救われ、励まされる考え方をご紹介。わが子をつまらない優等生にしたくない両親必読の「常識」とは?
「君のような子に来てほしい」
息子が5年生の頃、とある超難関校の学校説明会に行ったときのことです。
私の大学の同期の中でもこの学校出身の人は変わった人が多かったので、「ちょっと変わった世界なのかな」と、正直偏見を持っていました。
でも説明会に参加してみると、意外なことに大学受験の話はほとんど出ませんでした。
むしろ勉強だけじゃない、時代を超えてもぶれない教育理念の下、「こういう人間を育てたい」という先生の熱意が伝わってきて、とても共感を覚えました。
説明会が終わった後にいくつかのグループに分かれて校舎の見学をしたのですが、引率の先生と話したとき、息子が野球をやっていて塾に行っていない話をしたら、満面の笑みで息子と握手をしてくれました。
「中学に入って伸びるのは、君のような子だ。本当はうちも、塾に行って勉強ばかりしている伸び切ったゴムのようなガリ勉君じゃなくて、君のような子に来てほしいんだ。
ところで、成績はうちのレベルに届いているの?」
「いや、全然」
「ガハハ。まあ、がんばって!」
と、こんな具合です。
超難関中学も健全な小学生生活を過ごした子を望んでいるのです。
子どもと一緒に学校説明会に行こう
前の項にもあるように、私の中学受験への印象は学校説明会に参加してガラリと変わりました。
中学受験を検討している方は、塾やママ友から余計なことを聞いてしまう前に、しかもできるだけ早い段階で、自分自身で学校説明会に足を運ぶことをオススメします。
学校説明会は、子どもがまだ小さくても、親として参加できる学校がほとんどだと思います。
子どもの成績をチェックすることはないので、どんなに難関校だろうと遠慮はいりません。
また参加したからといって、受験しなければならないこともありません。
中学受験と高校受験の選択で迷っているのなら、高校の学校説明会に行ってみるのも一つの手でしょう。
どの学校がいいかは、受験する本人やその家庭に合うか合わないかによって決まります。
したがってその評価はどうしても主観的になってしまうので、誰かから聞いた情報を信じるのではなく、親であるあなた自身が確かめるのが一番です。
そして子どもが6年生になって志望校が絞られてきたら、今度は子どもを連れて学校説明会に参加しましょう。
願書も子どもと一緒にもらいましょう。
うちも、息子にその経験をさせたところ、目標が頭の中で具体化したのでしょうか、本人のやる気が高まっていくのを感じました。
ちなみに、この学校説明会は週末の土日に開催されることが多いのですが、6年生らしき子どもの参加が少ないのが気になりました。
参加者は大抵親だけか、4年生ぐらいまでの小さい子たちです。
受験間近の6年生が自分が受ける学校の説明会に参加することは、志望校選び、そして受験勉強のモチベーションを高める意味でとても大切です。
それより塾のテストや授業を優先するなんて、本末転倒ですよね。
学校が好きなのは社会性が育っている証拠
以前、関西の中学受験の大手進学塾が、何と平日の昼間に授業を始めたことがあったそうです。
当然ですが、小学校を休まないとその授業は受けられません。
これはさすがに大きな批判を呼び、関西の最難関私立中学が、小学校にほとんど通っていなかった受験生を不合格にしたそうです。
そしてそれ以来、その学校は出願時に小学校の調査書を提出させるようになったとのことです。
現在でも大手進学塾生の間には、6年生の3学期に入ったら小学校を休むという暗黙のルールがあるようです。
うちも家庭教師の先生に「まだ学校を休ませないのですか」と何度も聞かれました。
願書の提出は1月の初旬で、調査書には2学期までの出欠しかないため、教育産業としては学校を休んでくれたほうが稼げるということなのでしょう。
息子は学校が大好きだったので、休むことなどあり得ませんでした。
しかも3学期は文集づくりや卒業式の準備など、大切なイベントがある時期です。
子どもにとっての1カ月は大人の場合と大きく違います。
友だちと過ごす大切な時間を受験のために犠牲にするのでは、失うものが大きすぎます。
さらには塾を休ませたくないという理由で、運動会や修学旅行を欠席させる親もいるという話を聞いて、私は耳を疑いました。
運動会や修学旅行などに向けては、当日だけでなく、かなり前から先生やクラスの仲間と準備をしたり、練習をしたりするはずです。
こうした行事を経験することで、子どもは社会性を身につけるのです。
みんなと一緒に一つの目的に向かって努力する一体感、一人ひとりがみんなのために貢献し、お互いを認め合う喜び、そして何よりも楽しい思い出が豊かな心を育てるのです。
私たちが住む区には学校選択制度があって、隣の校区の小学校を選べます。
その中に、越境して中学受験をする子が集まるので有名な小学校があり、運動会や修学旅行を休む子がたくさんいると聞いて、うちでは真っ先に子どもをそこに行かせるのをやめました。
そういう学校が近くにあったおかげで、のびのび育てたいと考える家庭の子どもたちが集まる小学校に通えたことは、息子にとってラッキーでした。
聞いた話ですが、ある小学生が塾の宿題をこなすのに夜中まで勉強していて、学校では「保健室登校」状態になっていた子がいました。
その子は何とか難関中学に合格できましたが、その後不登校になってしまったそうです。
合格と引き換えに集団生活をする社会性を失ってしまった。最悪の結果だと私は思います。
「受験勉強で忙しいので、宿題はさせません」と、先生に宣言した親が息子の小学校にもいましたが、公立小学校の宿題すらこなせないような子が、厳しい試験に合格できるのでしょうか。
みんなができるように指導されている学校の宿題をきちんとやる。
宿題には、内容だけではなく、みんなが課せられた義務を一人ひとりがきちんと守るという道徳教育的な要素も含まれているはずです。
休まずに学校に通うこともそうです。
学校がせっかく育ててくれている社会性を、親がぶち壊しているという見方はできないでしょうか。
学校の勉強をバカにするのってどうなの?
反抗期の中高生が授業の内容に対する不満を口にすることは、あっても仕方がないと思います。
でも「いい大人」である親が、学校の勉強をバカにするような発言をするのはいかがなものでしょうか。
中学受験を経験して気になったのは、受験勉強の学習内容と小学校でのレベルが大きく違うからか、学校の勉強を軽視する親の言動があったことです。
確かに今の公立小学校は、できる子を伸ばす視点に欠けている面があるかもしれません。
でも子どもが人間として成長する過程で、学校で学べることはたくさんあります。
必要以上に学校を軽視する発言をするのはどうかと思います。
なぜなら、子どもは親の価値観を受け継ぐからです。
それもかなりの拡大解釈で。お母さんは算数の授業のことを言っているつもりでも、子どもは学校そのものをバカにするかもしれません。
小学校の授業をバカにする子は、中学生になっても授業を軽視する子にならないでしょうか。
中学生や高校生になって授業を聞いていないと、あっという間に置いていかれます。
授業中に寝る人は言うまでもなく、塾の宿題をしたり、別の教科の勉強をしたりした人で、勉強がよくできた人を私は見たことがありません。
逆に本当に優秀な人は、必ずどの教科の授業でも、先生の言うことをしっかり聞いていました。
人はそんな基本的なところで、差がつくのかもしれません。
高校の同窓会で恩師と話したときに、同じようなことを言っていました。
高校時代、私のクラスには今は大学教授になっている優秀な生徒がいたのですが、彼は先生が授業をしているとき、「先生、こんなに興味深いことをわかりやすく教えてくださって、ありがとうございます」と言わんばかりの表情で、集中して先生の話を聞いていたそうです。
先生は、「そんな顔をして、お前だったらこんなことを習わなくても、知っているだろう」と、心の中で突っ込んでいたそうです。
一方、先生の長い教師生活の中でも、「そんなこと、もう知っていますよ」と言っていた生徒は、大抵たいしたことはなかったそうです。
これは学ぶことに対する姿勢です。
学ぶことに貪欲な人は、決して自分の現状に満足できない。
さまざまなことを、いろんな人から学びたい。純粋にそう思っているのが態度に表れるのでしょう。
知識が増えるほど、自分がまだまだ何も知らないことを思い知る。
そういう境地に達している人は、決して傲慢にはなれないのでしょう。
試験に出ないことはやらないなんて、ケチくさい発想はないのです。
かくいう私もそんな境地には達しておらず、高校生のときは遠距離通学と部活で疲れ果て、授業中に居眠りをしたり、宿題を忘れて慌てて他の教科の授業中に内職したりということをしていたこともありました。
でもそのうちに、授業中に他の勉強をすることが、いかに非効率な時間の使い方であるかということに気づきました。
予習して授業をしっかり聞いて理解しておけば、内容はきちんと頭に残ります。
逆に授業を1回聞かないだけでも、後で取り返すのは大変です。
中学受験でも大学受験でも、求められるのは「基礎に対する深い理解」です。
先取りしている人にも授業は復習になるので、その内容が聞くに値しないことはないのです。
そもそも私には、授業が受験に役立つかどうかという損得勘定はありませんでした。
それは、授業内容や先生の話が純粋に面白いと思うことが多かったからです。
先生が話をしているときに聞かないなんて失礼だ、という罪悪感もありました。
でも、もし私の両親が学校の勉強を軽視するような発言を繰り返していたら、そういう罪の意識すら感じなかったのかもしれません。
〔2018年11/13(火) リセマム《リセマム リセマム》〕

3年待ちのカリスマ家庭教師・安浪京子先生に聞く最強の中学受験
中学受験を巡る家庭の悩みはさまざま。巷にあふれるキラキラした合格体験記を読むたびに「それに比べてうちの子はどうして…」と、ため息ばかりついていませんか。
少々お疲れ気味の悩み深い親御さんに向けて、予約3年待ちの超人気カリスマ家庭教師・安浪京子先生が、中学受験をハッピーに導くための秘訣を伝授してくれました。
まとめノート(女子)/最強の中学受験「普通の子」が合格する絶対ルール
首都圏の中学受験は“習い事”感覚
--中学受験にも理想と現実があると思うのですが、なかなかリアルな「現実」の部分が表に出てきません。
そうですね。勉強の体制ができている子どもの親や先生の意見は、多くの悩んでいる親御さんにとっては別次元の話です。
合格体験記を読んでも、それが我が子にそのまま当てはまるとは限らず、むしろ当てはまらないケースのほうが多いかもしれません。
特に首都圏では、中学受験をする割合が4人に1人です。
関西は今でも10人に1人くらいなので、決断した時点で「うちはほかの家庭とは違う」と覚悟を決めます。
ところが首都圏では水泳やサッカー、ピアノやバレエと同等の”習い事”感覚です。
少子化ですから、塾側も「すべてお任せください」と甘い言葉を囁いてきますし、親子とも何となく周囲の雰囲気に流されて始めてしまう。
でも中学受験はそんなに甘い世界ではないので、塾に大金を支払って3年間預けただけではゴールまで連れて行ってくれません。
一方的に大量の課題が与えられ、よほど器用な子ども以外は溺れてしまうのが普通です。
そうとは知らず、宿題がこなしきれない、テストの点数が一向に上がらない我が子に対して、親がテキストを投げる、破る、捨てるというのは決して極端な例ではないのです。
つまり、中途半端な取り組み方では、子どもも親も傷つく結果に終わることが多くなってしまうのが現実です。
--塾は「お任せください」というけれど、実体としてはお任せできない、と(苦笑)。
我が子のどこができていて、どこから理解できていないのか。
塾側がそれをきちんと把握してくれているというのは幻想です。
たとえば、丸付けの仕方からちゃんと教えてあげないといけない。
間違っている答えにはバツを付ける。
大人からすれば当たり前のことですが、本来子どもはバツをつけるのが嫌いです。
解答を見て自分の間違えを消して正しい答えを丸写しし、しれっとマルにしたりする子は非常に多い(笑)。
だからこそ私は、バツが多いノートに「いっぱい考えたね」と言って花マルをあげます。
丸つけの仕方から正しい解き直しとは何かまで丁寧に教えてあげることで初めて、成績が上がる勉強の仕方になるわけです。
子どもはどうしても自分の都合のいいように、楽なほうに流されます。
これは6年生になっても多くの子どもがやってしまうことです。
また、なぜ間違えるのか、要因を探ることも重要です。
単なるケアレスミスではなく、根本的な理解不足だったり、精神的な不安が背景にある場合もあります。
子どもに何が起きているのかを知ろうとすることが大切なのです。
共働き家庭は、うまく外の手を借りればいい
--とはいえ、共働き家庭も増え、ただでさえ忙しいのに、そのうえ子どもの勉強を見るというのはなかなか大変です。
確かに中学受験のために家庭でやるべきことは少なくありません。
だからこそ、忙しくて家庭だけでは回らない場合は、うまく外の力を借りればいいと思います。
たとえば子どもに塾でどの先生が好きかを聞き、ひとりでも信頼できる先生を見つけておくといいでしょう。
わからない問題があればその先生に質問に行くという習慣を作っておくのです。
また、親子関係が煮つまったり、子どもの成績が伸び悩むときは、親御さんも遠慮なく塾に電話してその先生に相談してみてください。
第三者のプロの視点で役立つアドバイスがもらえるはずです。
また、無料動画で配信されている授業を活用したり、私のような家庭教師を依頼するなど、とりわけ受験の“テクニック”の部分についてはプロの力を有効活用するのも手です。
すべて家庭でカバーしようと両親のどちらかが仕事を辞めたところで、今度は親が子どもを追い込みすぎて家族から笑顔が消えてしまったら元も子もないですからね。
子どもより親のプライドやブランド優先? 
--最近の親御さんを見ていて、何か気になることはありますか。
ひとりっ子が増え、核家族化で地域との横のつながりも希薄になり、両親の関心がその子だけに集中してしまい、視野が非常に狭くなっていると感じます。
「どうして思いどおりに育たないのか」「私はこんなに頑張っているのになぜ我が子はわかってくれないのか」と簡単に逆上してしまう親御さんが多いように思います。
「そもそも子育ては不条理なことの連続だ」という現実に耐えられない人が増えているのではないでしょうか。
実際にそういった親御さんには高学歴で社会的に成功をおさめている方も結構多くて、ご自身が失敗のない人生を生きてきた分、合理的にコントロールできない子育てには理解しがたいところがたくさんあるのかもしれません。
--子どもたちには変化がありますか。
共働き家庭の増加で両親ともに忙しく、なかなか子どもに目を向ける時間がない現実はよくわかります。
ただ、それによって子どもに影響が及び、子どもから親へのSOSサインが出ているのです。
たとえばゲーム依存は小学生の場合、親子関係が原因となることが多いのですが、親がそうした問題には向き合わず、とにかく中学受験で結果を出すことばかりに気持ちが向いてしまうケースが少なくありません。
子どもからのSOSは親からの愛情を求めているだけなのに、そんな子どもの“気持ち”をケアすることよりも、大人のプライドや学校のブランドを優先してしまう。
本来は勉強以前に子どもの心をほぐすことがもっとも大事なのですが、それに気づいていない、あるいはそれも塾や家庭教師で何とかしてもらえると誤解されているケースが結構多いですね。
家がストレスフルな環境になるのはNG
--親は“管理”以前に、子どもの“気持ち”に真摯に向き合う必要がある、と。
ネット社会の今、たとえば子ども部屋やリビングにカメラを付けて、職場から子どもを遠隔監視しているご家庭もあります。
子どもがおやつを食べてくつろいでいると「ちゃんとやってる?」と、いないはずの親の声が飛んでくるという(苦笑)。
これで子どもが勉強をサボらないようバッチリ管理して無事に合格できました! というサクセスストーリーが実際にあるわけです。
親の立場からすれば「我が家も続け」とばかり、すぐさまカメラを買いに走りたくなるのかもしれませんが、果たして子どもの気持ちはどうなのか。
私が子どもに聞くと「親に信頼されていないことが一番嫌」「カメラがお化けに見える」という本音を打ち明けてきます。
親の期待が大きすぎて、わからないことをわからないと言えなかったり、少しの時間でも遊びに行くのをためらったり。
「パパやママのために勉強している気がする」という子どももいます。
家がまったく気を抜けない、ストレスフルな環境になってしまっている。親と子で意識はこれほどまでに違うわけです。
--では、親子でどんなコミュニケーションを心がければよいでしょうか。
塾帰りのお子さんに「何点取れた?」ではなく、「今日はどんなことを勉強してきたの?」と聞いてあげてください。
点数は答案を見ればわかることですし、親が点数ばかり気にしていると、プレッシャーから本音を言いづらくなってしまう一方です。
何を勉強したかについて会話を続けていれば、子どもは次第にわからなかったことを具体的に説明できるようになりますし、頑張ったのに報われないといった弱音を見せることもあるでしょう。
そんなときこそ親御さんがフォローしてあげることで、親子の信頼関係が深まっていくものです。
--親のフォローとはたとえばどんなことですか。
家庭環境も違えば精神的な成熟度も異なりますから、どういうフォローが効果的かというのはご家庭によってさまざまです。
中学受験はこうあるべきという画一的な理想論にとらわれないことが重要です。
いつも忙しくて家にいないお母さんが仕事を家に持ち帰り、勉強する子どもの隣に座るようになったというだけで成績が上がるケースもあれば、お父さんが「よーい、ドン!」と競争し、わざと負けて褒めちぎることで初めてやる気になるようなケースもあります。
わが子にどんなアプローチが有効かはお子さんの成熟度や性格を考慮しつつ、コミュニケーションをとりながら色々と試してみてください。
6年生は“まとめノート”で知識や理解の定着を
ただし、今6年生の場合はそんな悠長なことも言っていられませんよね。
特に夏休み以降、模試の結果に翻弄されて不安で悶々とストレスを抱えるくらいなら、過去の模試や塾のテストで間違えた問題の“分析”をお勧めします。
重要なポイント、よくミスする考え方、覚えておくべきことを一緒に振り返り、お子さんの言葉でノートにまとめるのは、知識や理解の定着に効果的です。
--ハッピーな中学受験ができる家庭に共通する特徴はありますか。
親が子どもの話をよく聞いている家庭ですね。
そこには、子どもが物怖じせず自分の意見を言えるような雰囲気があります。
家族の会話が弾み、とても明るいんです。
一方で、子どもを待てずに親が先に結論を言ってしまったり、発言を矯正してしまうような家庭だと、完全に子どもの思考を奪ってしまいます。
あるいは両親のどちらかが中学受験に否定的な立場だと、子どもはどうしても本気になれません。
子どもの気持ちを置き去りにしたまま、最後まで力づくで子どもを引っ張って何とか合格に至るケースもありますが、入学後には伸びきったゴムになってしまい、中には無気力から不登校や退学という結果に陥ってしまうこともあります。
中学受験は「枠」にはめる作業だからこそ心に愛情を
--ハッピーな中学受験のためにこれだけは欠かせないものは何でしょう。
先ほど外注の話をしましたが、外注できないのは親御さんの愛情です。
「塾だけでは足りない。少しでも我が子に良いサービスを」と金銭的に無理をしてでも個別指導や家庭教師を頼り、それでもうまくいかずにもがき苦しんでいる親御さんはたくさんいらっしゃると思います。
確かにキレイゴトでは済まないのが中学受験です。
最難関校に悠々合格するタイプ以外の「普通の子」にとっては多くが辛い経験です。
「枠にはまらない子を無理に枠にはめなくてもいい」と謳う自由な校風の学校であっても、入試本番では枠からはみ出たら受かりません。
つまり中学受験は枠にはめる作業なのに、現実は第二次性徴期で子どもが反抗的になったりと、枠にはめるどころか親の思うとおりにはいかないことばかりです。
だからこそお子さんの気持ち、心に愛情を持って向き合ってあげてほしいのです。
繰り返しになりますが、中学受験の正解は1つだけではありません。
理想論にとらわれず我が子に向き合い、トライ&エラーの気持ちで、柔軟にやって行きましょう。そして笑顔を忘れずに。
安浪京子氏の新著書「『普通の子』が合格する絶対ルール 最強の中学受験」(大和書房)には、さまざまなタイプの子どもを想定しながら最善と思える策、それが効かなかったときの代替策がたくさん提案されており、まさにトライ&エラーの指南書。
子どものメンタルコンディションを重視した“子ども目線”が、他書にはない秀逸さである。
2018年8月10日から23日まで、リセマム読者の中から抽選で3名様に本書のプレゼント応募を受け付けている。
〔平成30(2018)年8/10(金)リセマム《リセマム 加藤紀子》〕

中学受験の“ラスボス”はお父さん? 「小6の最後になって登場して…」〈AERA〉
多くの子どもにとって避けては通れない受験勉強。小学生で経験するか、中学生で経験するか──。
それぞれに長所も短所もある(撮影/篠塚ようこ)
中学受験大手・日能研グループのみくに出版が発行する中学受験専門誌「進学レーダー」の井上修編集長と、最難関高校受験で圧倒的な合格実績を持つ進学塾「早稲田アカデミー」の酒井和寿高校受験部長。
中学受験、高校受験に精通した二人が、中学受験の長所、短所などを語り合った。
──まず、中学受験と高校受験、それぞれの位置づけについて教えてください。
井上:2018年の調査では、東京、神奈川、千葉、埼玉の中学受験率は20.1%です。特に東京の中学受験率は29.8%と高い。
中学受験が一般化した世代が親になり、ますます関心が広がっています。
もう一つの傾向としては、私立中学受験に失敗して公立中学に進む生徒の割合が、ここ20年ほどで急減しています。
日能研で見ると、かつては高校受験でリベンジするというタイプもいましたが、今は第1志望校に受からなくても、9割以上はどこかしらの私立中高一貫校に入学します。
保護者の大半は、入り口の偏差値は関係なく、6年の間にきちんと育ててくれる学校を見つけようという考え方です。
酒井:逆に、公立の中高一貫校に不合格だった場合は、高校受験でリベンジする人が増えてきています。
また、早稲田アカデミーでは中学受験を経験した生徒は全体の2割弱。
公立小学校から公立中学校に進み、初めて受験に挑む生徒が中心です。
中学受験はご家庭の経済力などを理由に誰もができるわけではありませんが、高校受験はある意味、誰もが経験する類いのものです。
──中学受験をするメリットは何でしょうか?
井上:中高一貫校に入れば高校受験の必要がなく、進路選びに時間をかけることができます。
大学が多様化し、昔のように偏差値で学校の価値が並んでいるわけではなく、教育内容などをきちんと見極める時間が必要です。
たとえば立教大学の中でも人気の経営学部は、偏差値が早慶(早稲田大学、慶應大学)レベルになるなど、今後ますます大学ではなく、学部・学科で進学先を選ぶようになる。
──時間的余裕が中だるみを生むという指摘もありますが。
井上:中高一貫校の今のトレンドは、中学3年生の過ごし方です。
中3で大学訪問に行く学校もあれば、長期間の海外研修に出かける学校もある。
大事なのは、キャリアガイダンスです。いったい自分は何がしたいのか、そのためには何を学ぶべきか。
6年間の学びを通して、学科、学部名から、最後に大学を選んでいく。中だるみはありません。
酒井:一方、高校受験組のカリキュラムは中学3年間と高校3年間に分断されます。
一般的に高校で勉強する内容のほうが圧倒的に難しい。
同じ大学を目指すにしても、6年間を見通したカリキュラムで勉強できる中高一貫校に比べ、高校受験組は高校3年間の勉強が急傾斜になります。
そのため安易に数学が必要ない私大の文系学部を選ぶなど、苦手科目を作る生徒が出てくる。
それ以前に、理科、社会を勉強しなくても受験ができる魅力的な私立高校も多く、結果として大学の進路を狭めている可能性もあります。
──早稲田大学が政治経済学部の一般入試で、21年度から数学を必須とすると発表しましたね。 井上:苦手科目を作らないという点でも、中高一貫校が有利。
国公立大学の合格実績を伸ばしている三輪田学園(千代田区)では、高校受験がない分、中学2~3年生で時間をかけて数学をやるんです。
進学校の海城(新宿区)や洗足学園(川崎市)など、高校募集を停止する私立の中高一貫校が増えていることも見逃せません。
高校入学組が入るとカリキュラムを複線化せざるを得ず、学校としては対応が難しいのでしょう。
洗足学園は海外大学合格実績の高い学校ですが、海外大学受験は大学情報も含めて中高一貫で時間をかけて力をつける必要があります。
──では、高校受験ならではのメリットはあるでしょうか?
酒井:最も大きなメリットとしては、高校受験は半分子どもで半分大人の時期にあるイベントになります。
親の影響力の大きい中学受験に比べて、ある程度自分の意思を持って進路を選べるのではないでしょうか。
──逆を言えば、それは中学受験のデメリットと言えます。
井上:親主体で受験が進む分、子どもに合わない学校を選び、最悪、不登校になるなど脱落するリスクがある。
例えば帰国子女枠での入学者は、一般入試枠の入学者より、退学や転校が多い。
帰国子女向けの入試は入学枠が別にあったり、試験も一部免除されたりします。
そうなると親は欲が出て、損得で学校を選び、結果として学校選びを間違ってしまう。
昔は偏差値順に学校を決めていれば良かったのですが、今は同じ進学校でも麻布、開成、武蔵を校風で選ぶ時代です。
小学校4年生くらいから、子どもを真ん中にして、家族で話していかないと駄目なんです。
──小学4年生からですか?
井上:主な中学受験塾の本科コースは4年生からです。
ただ、我々のなかでお父さんを「ラスボス」と呼んでいます。
最初からお父さんの姿が見える家庭はトラブルが起こりませんが、お母さん主導の場合、小6の最後になってお父さんが登場し、進路が180度変わることもあります。
酒井:高校受験の場合は、中学1年生から通塾する生徒が多いですね。
早稲田アカデミーで言えば、生徒数は最終的に中学3年で5800人程度になりますが、中1の夏の段階で約3200人。
その内、中学受験をしない小6クラスからの生徒が約1200人います。
〔2018年7/11(水)AERA dot.(構成/編集部・澤田晃宏)※AERA 2018年7月16日号より抜粋〕

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