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人工乳の発明と母乳哺育の後退

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人工乳の発明と母乳哺育の後退

被虐待児症候群ということばを知ったのは『母乳』(山本高治郎、岩波新書、1983)によります。
私はひきこもり経験者に囲まれた生活をし、彼ら彼女らの話をきいていくうちに、話される体験がどんどん幼児期にさかのぼっていきました。
小学生時代から小学校入学前の幼児期、そして乳児期のことではないかと思わせる話もでてきました。
はじめから乳児期の話をする人はいませんが、話を重ねるうちに乳児期を思わせる話に進んだのです。

『ひきこもり国語辞典』のなかの「払われる」ということばはその一つです。
〇払われる「いちばん古い記憶はたぶんおっぱいを飲むときに手で払われたことだと思います。
…乳幼児期からこの状況が続いてきたのではないでしょうか。…」

また、母親から幼児期の子育てについて問われることもありました。私には全くわからない世界で面くらったものです。
以前から古書店に立ち寄る習慣のあった私が『母乳』を手にしたのは、偶然ではありますが、20年以上の前に私にはそうなるだけの理由もあったわけです。
いまでは友田明美さんが提唱するマルトリートメント――これがその時代の乳幼児期の子どもの状況をよく示しています。
またそれにともなう、過敏性状態やおそらく愛着障害やHSC(ハイリーセンシティブチャイルド)もこれに関係すると思います。
『母乳』を発表した山本先生は、人工乳の発明によって多くの乳児が救われたその一方で、人工乳の普及によって、母子関係に新たな問題が生まれたことに警鐘をならしたのです。

人工栄養法の浸透と乳児死亡率の低下とが平行して起こりました。
「このことから人工栄養法の進歩が、乳児の死亡率の低下をもたらしたと解する人がいるかも知れませんが、実際には現在も人工栄養児の死亡は母乳栄養児の死亡の数倍の割合で起こっているのです。
母乳が出ないために死に至った例外的少数派の昔の乳児が現在は生存できるようになったことは事実ですが、母乳が出るにもかかわらず、あるいは母乳が出るはずであるにもかかわらず、瓶をあてがわれる子がいかに多いかという現実も同時に考慮されねばなりません」(122-123p)。

山本先生が引用する「厚生省による乳児栄養法調査(%)」によると、乳児のころ母乳中心であった状態も、子どもの成長とともに、年とともに、人工乳の割合が増大しています。
これは母乳が出る人にも表われる状態です。
母乳の役割は栄養補給だけではなく、免疫の役割があり、とくに母子関係の成立に関係する点を指しているわけです。
母乳哺育は、乳児の生存率を飛躍的に高めた反面、人類という動物に新たな試練をもち込んだともいえます。
なぜならこの人工乳の利用者と利用機会はますます拡大していくのは確実でしょう。
その穴埋めを子どもが成長するそれぞれの時期にどうにかしなくてはならない事態に直面することは避けられません。
人工乳哺育を受けた子どもの全員がそうなるわけではありません。
統計的な確率によってそれは確実に生じる事態であるともいえます。
人工乳哺育は今後とも継続し、世界各地に一層広がるでしょう。
母乳哺育を勧める動きがあったとしても、この動きを止めることはできないと予測できます。
そのぶん成長する人生のどこかでその補修をしなくてはなりません。
これは高度に知性が発達した人類という動物の宿命ではないかと思いますが、どうでしょうか。

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