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友田明美

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友田明美さん

(フロントランナー)小児神経科医・友田明美さん
  暴力や暴言で脳は変形する
大学内外での活動を評価され、2017年度の福井大学学長賞を受賞した。
「出過ぎた杭は打たれない、となったのはここ4~5年でしょうか」と笑う=福井県永平寺町の福井大学病院

暴力や暴言など親の不適切なかかわりは子どもの脳を傷つける――。
虐待と「傷つく脳」の関係を研究する日本の第一人者だ。
(フロントランナー)友田明美さん 「親が変われば子どもも変わります」
昨年出版した新書の発行部数は10刷5万1千部を超え、女性週刊誌やテレビ番組に引っ張りだこ。
週末は全国各地を講演に歩く。いまや虐待問題について語る「伝道師」とも言える存在だ。
虐待と最初にかかわったのは、鹿児島市立病院で研修医をしていた31年前。
救急救命センターで当直をしていた夜に、3歳の男の子が運ばれてきた。
頭蓋内出血で瀕死の状態だった。体じゅうにたばこをおしつけられたやけど跡があった。3日後、息を引き取った。
親がこんなひどいことをするのか。恐怖と怒り、そして、命を救えなかったことに医師として無力感を抱いた。
当初は、虐待の問題に積極的に向き合う気持ちはなかった。
結婚して親となり、医師の仕事をつづけながらの2人の娘の子育ては大変だった。
娘は何をしても泣き続けたり、言うことを聞かなかったり……。愛していてもかわいいと思えないこともあった。
仕事を終えた後、一緒に帰宅した小学1年の長女が家の鍵を道の側溝に落とした。
疲れ果てていた。反射的に「ダメじゃないの!」と大きな声を上げ、長女の頭を小突いた。
その夜、長女の寝顔を見ながら反省したが、親としての自分が問われる日々だった。
転機は2003年。最先端の脳科学の研究をしようと米国に留学、虐待が脳に与える影響についての研究に携わった。
虐待の体験のある人とない人の脳を比べると、暴力や暴言、家庭内暴力の目撃など大人の不適切なかかわりによって子どもの脳が変形するという衝撃的な結果が出た。
以来、虐待のもたらす重大な結果を伝えると同時に、虐待を防ぎ、その影響を最小限にするのが、自分の使命だと思い定める。
いまは福井大学子どものこころの発達研究センター教授として研究をつづけながら、全国から訪ねてくる親子を診療する。
じっくりと話を聞き、子どもだけでなく、ときに親の治療もする。
「臨床で診ていると、親も一生懸命なんです。良かれと思って空回りをしている。
子育てでストレスのない親はいない。親がもつ子育ての困難感をとらないといけない」と力説する。
「いまは子どもを守るだけでは済みません。親を支援しなくては。同時に、どんなことがあっても体罰は絶対にダメだという認識を社会で共有する必要があります」
自ら迷い、悩んだ子育ての体験と科学的な研究に裏打ちされた言葉を、社会に、親たちに、届けている。

―米国での研究について教えてください。
約2千人の一般市民や学生から、1人に3日かけて体験を聞き取り、子ども時代に「性的虐待を受け、ほかの虐待は受けていない」「親からの暴言だけを経験した」などのグループを抽出。彼らの脳をMRI(磁気共鳴断層撮影)を使って調べ、虐待を受けていない人たちと比べました。
―どんな結果が出たのでしょうか。
厳しい体罰を受けた人は学びや記憶にかかわる「前頭前野」が委縮し、感情や思考をコントロールし、行動抑制力にかかわる部分も小さくなっていました。
暴言を受けた人はコミュニケーションのカギを握る「聴覚野」が変形していました。
言葉の暴力は身体的な暴力より脳へのダメージがはるかに大きいこともわかりました。
家庭内暴力(DV)を目撃した人と性的虐待を受けた人もそれぞれ「視覚野」が縮小していました。
見たくない情景の詳細を見ないですむようにと適応が行われていると考えられます。
正しい理解から
―生物として生き残るための適応でしょうか。
人間の脳は生まれたときは300gですが、さまざまな体験をして成熟していきます。
その大切な時期に、強いストレスがかかると、苦しみを回避しようとするかのように脳が変形していきます。
その脳の傷によって、後に暴力的になったり、感情を制御できなかったりするのです。
薬物依存やうつなどにもなりやすくなります。
―どうすればいいのでしょうか。
言葉の暴力や体罰などのマルトリートメント(不適切なかかわり)は、子どもの脳を傷つけるということを理解してください。
「マルトリートメント」という言葉を使うのは、「虐待」というと「それほどひどくない」とひとごとになるからです。
不適切なかかわりがない親は皆無でしょう。
子どものためと思っていても行為が不適切であればマルトリートメントです。
暴力はもちろん、「こんなこともできないの?」「産まなきゃよかった」などとおとしめたり、侮辱したりする言葉、ほかの子どもやきょうだいとの比較もマルトリートメントです。
スマホを与えっぱなしにしたり、自分がスマホを見て子どもをほったらかしにしたりするのもマルトリートメント。
ながら育児はそのときはよくても、脳が変形し後でしっぺ返しがきます。
親の思い通りに子どもを動かそうとするのも不適切です。
「親」という字が「木の上に立ってみる」と書くように、親は子どもにルールを教えながらも、手や口を出さずに見守るというのが一番です。
イライラしたときは、何かを言う前にトイレに行って3、4回深呼吸をする。
しかるときも、1分以内で、ポイントを絞ってしかることが大切です。
関係の再構築
―傷ついた脳は傷ついたままなのでしょうか。
回復します。でも、トラウマ治療のほか、安定した環境や愛着の再形成が必要です。
虐待やマルトリートメントは関係性の病理ですから、子どもと親あるいは養親との愛着関係を再構築しなければなりません。
いまは核家族化し、「孤育て」になっています。社会が子育てを支援することが必要です。
ほかの人の力を借りることも大切ですし、みなさんはぜひ、おせっかいをしてください。予防にも回復にも必要です。
―診察では「自分の子育ても失敗の連続だった」と話されるそうですね。
母親から虐待を受けた小学生を離婚後に引き取ったものの、包丁を持ち出すなどの問題行動があって困り果てて診察に来られたお父さんがいます。
「お父さん、大変やったね」と声をかけると、一筋の涙を流されました。
短期間、お子さんには薬を出しましたが、ずいぶん落ち着き、親子関係もよくなったと感謝の手紙を下さいました。
―私もお父さんと話しました。「『脳がケガをしている』と教えてもらい、脳への褒美として褒めるということを心がけている」とおっしゃっていました。
「友田さんは救世主だ」とも。
お父さんには安心感を提供できたのですね。
親が変われば子どもも変わります。親子に笑顔が戻ると、私自身の自信になり、やりがいを感じます。
―研究や講演で超多忙ですが、エネルギーはどこから出てくるのですか。
もともとおっちょこちょいで、突っ走るタイプ。チャレンジが好きです。
やって後悔するより、やらない後悔の方が大きいと思っています。
米国への留学も最初は貯金を切り崩してでした。「雑草魂」をもっているというのかしら。
私は薬学部の受験に失敗、1浪して医学部に進みました。その挫折が私の人生を支えています。
人生無駄なことは何もありません。
〔2018年5月26日 朝日新聞 文・大久保真紀、写真・水野義則〕

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