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求人募集における即戦力が示す意味

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求人募集における即戦力が示す意味

どこかのセンター機能をもつ所から組織的に呼びかけたわけではないでしょうが、企業側の求人募集に即戦力を謳(うた)われることが強くなりました。1980年代のことだと思います。
それは実態として企業社会が新入社員を社会人として養成する責任から撤退した非公式宣言でした。
非公式であるだけにその責任回避をとくに問われることもなく、他方では社会のすみずみまで浸透していきました。
その影響の大きさに徐々に気づき始めて、そういうことばは廃れつつもありますが、一部では根強く続いています。

以それでは前はどうだったのでしょうか。よくわからないので身近な例で話すしかないです。
私が20歳前後の50年以上も前のことです。
アメリカ人など西欧文化圏の人が、自分は何ができるのかを主張するのを見て日本人とはかなり違うと思いました。
私からすればその程度のことかと思うことを「○○が得意」「△△ができる」と売り込んでいます。
日本人には職業上の能力で「~ができる」というのは抵抗感がある言い方です。
こういうのが必ずしもいいとは思えませんが、長い慣習の中で広がってきたものでしょう。
この後、資格制度が広がってきました。これも80年代からでしょう。
資格をもつことは十分条件ではないにしても、それなりに学んできた経歴を示すものになりました。
「~ができる」と強調しなくても外から証明してくれるのです。
たとえば私は高校卒業後、大学病院で医療事務をしていました。
特別の訓練機関・期間はなく、担当係に配属された日からそれは始まりました。
医療費計算はかなり細かいもので扱うには慣れが必要です。
初めは、金額計算が単純な初診者の受付担当です。これを1年間経験しました。
その間に医療費の構成内容を先輩から見よう見まねで学びます。
これというテキストはありません。代わりにあるのは政府発行の医療費基準と薬価基準でした。
いまでは医療事務は専門学校等に訓練コースがあり、民間の資格制度もできました。それらを経験して即戦力として就業に向かいます。
こういうことは医療事務に限らずいろいろな分野に広がっているようです。
全部とはいえませんが、その分野の仕事に入るための知識や技術を学ぶ職業訓練の機会がつくられてきたのです。
旧来の仕事に就くコースが、先輩等からの見よう見まねによる経験によるものに比べると進んだ面はあります。
他方で旧来の方法に含まれている社会人に育つ過程が失われているともいえます。
即戦力募集の広がりはこの先輩から学んでいくという成長期間を失わせる役割をしているのです。
働く職場における社会人、職業人の養成内容が組み込まれていたともいえるのです。
即戦力の求人方法は、その過大な機能は反省すべき時期にきています。
それに代わる社会人として育つコースは追求されてきているはずですが自己責任をまとっているように思います。
旧来にあったコースの単純な復活ではなく、職業訓練と社会人として育てる過程の両方が、大事にされなくてはならないことです。
そしてまたこうも思います。
現在のプログラム化された技術者、職人となる資格取得の期間は、社会力を身につけるための時間稼ぎを与えているかもしれません。
若い世代が、大人になれない、なかなか社会に入る力がついていかないことを知るにつけて、その背後にこのような需要が隠れていると考えるのです。

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