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社会参加に必要な修練期間

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社会参加に必要な修練期間

中世以後のこれらの家内労働が家事として残ってきた歴史を振り返ると、その基本は家族内の女性の労働や分担の仕方でした。
それらが専業・専門化し家族外に社会的分業として広がりました。
それにつれて男性が加わる職業になりました。
家内労働の一部が専業化し、社会的分業として独立するのは、その労働が、その生産とサービスが自然な“社会実験”を経て、社会にとっての有用性を示してきたのです。
それは技術的・社会的な一種の飛躍でもあるので、必ずしも成功するわけではありません。
多くのいろいろな人の試みがあり、あるものは成功し、あるものは失敗します。
現在の分業化している社会状況は歴史的な検証を得た結果です。
他のことも実験はあちこちでさまざまに試みられているはずです。
これには各種の技術的な進歩による肉体の力に頼る重労働からの解放、インターネットにより情報社会の進行が関係していることは確かです。
男女平等とかジェンダー平等が進む社会的な基礎はここにもあると評価できるはずです。

家族構成員の減少に続いて自営的な家業が少なくなっています。
家族が受け継ぐ資産が不動産や技術から株式・預金に移っていることも「家」を存続させる役割を低くし、家業を存続する意義を引き下げています。
何しろ相続する固定資産に欠けます。
生産単位としての自営的な家業が減り、家族構成員は給与生活者になってきました。
農業以外でも都市域ではさまざまな自営業がありますが、家族構成員が少ないと従来の家を続ける意味も減少します。
借屋住まいで自宅がない、土地・作業場などの固定資産がないと「家」の存続を図る意味が減少しているのです。
第1次産業(農林・畜産・漁業など)では、自営的な家業は残りやすかったはずですが、若い世代の第1次産業進出が増えない限り、回復には困難が多いでしょう。

家族内労働が減少する動きを別の面から見ることもできます。
子ども時代から家業を見聞きし、遊びや手伝いとして関わった過程を通して身に付けた仕事は減少しました。
子どもの家事手伝いが電気器具のボタン1つを押すだけの時代です。
これは極端な例ですが、現代は子どもが手伝える家事はきわめて減少しています。
家族内の仕事の縮小、地域共同体的な結びつきの縮小の中で、社会に入る以前の若者の社会経験の場面が転換しています
(一方的になくなったとは言えないはずです)。
私は漁師町の出身であり、同級生の数人は中学卒業とともに家業の、あるいはよく知っている漁船の乗組員として働き始めました。
彼らの多くは中学卒業の15歳にしてすでに数年以上の漁師の見習い期間を重ねていました。
少なくとも1960年代まではこういうことは多かったのです。
同じ家業とはいえ『ひきこもり国語辞典』のなかの次の場合と何かが違います。
〇 アパート経営:「アパート経営が家業なのでそれを引き継ぐつもりです。
親は就職してほしいと考えていたはずですが、就職して働くのは自信がないです。
アパート経営に役立つと思われる宅建(宅地建物取引士)の資格を取りました。
自分には営業はできませんし、じぶんにはこれしかありません」

かつての封建社会の徒弟制や丁稚奉公などは、若者が社会経験を重ねる一つの準備段階と考えられます。
定式的なテキストはなく、見様見まねで身に付けていくものが多かったと思います。
それが身分的差別のベースになっていたことも事実でしょうが、社会に入る前の新しい世代に対する養成過程になっていたのです。
現在はそれに代わるシステム、子どもが成人して社会に入る過程で家族の外側に、学校やそれ以外のさまざまなところに特別の練習・訓練の場を改めて用意しなくてはなりません。
それは社会の進歩を示してもいますが以前とは異なる困難も出ます。
発生する困難には、新しい世代を尊重した状態でこの練習・訓練期間を潜り抜けなくてはなりません。
その環境条件は勝手にできません。
これという条件ができないまま、学校を終えたら働くことになっている社会に戸惑う人は多いのです。
環境条件が整わないうちは、いやな経験や苦しいこともいろいろあります。多くの人はそれを潜り抜けます。
逆に「新入社員の3割が3年以内に辞める」事情はこれが関係しています。
このような大きな変化の時代においては、相当に多数の人が戸惑い、困難を抱える事態が生まれるとしても当然ではないでしょうか。
社会の自然な変動に加えて、人為的・政策的に就職難につながる要件も導入されました。
新しい世代は、そういう事態に直面する以前に、ときには幼少時からその時代の雰囲気や変化を察知する特別な嗅覚を持っているかのようです。
大人世代が発する窮屈さや息苦しさを社会の難しさと感じるのです。
「大人になりたくない」という子どもの感覚にはそういうものさえあります。
親の行為としての子どもへの虐待は意図的なものだけではなく、緩やかなハラスメントや、さらには親や大人がよかれとしたことにさえ、子どもには抵抗を感じるものもあります。
ひきこもりとはこのような変動の時代に、不器用であるか、逆に器用すぎてうまく社会に関われない新しい世代の姿とみられます。

次にその実例を『ひきこもり国語辞典』の中から抜き出しましょう。
ただこの部分はこの論説全体のプロローグとして紹介するのがいいと思います。
項目を改めるとして、今回はここまでにします。

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