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社会的治療とその条件づくりを自治体に求める

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社会的治療とその条件づくりを自治体に求める

〔会報『ひきこもり居場所だより』2019年5月号〕
『週刊女性』に記事を書いているフリーライタ―の亀山早苗さんの取材を受けました。
ごちゃごちゃしている頭の中を整理するつもり取材を受けることにしました。
取材を受けるよりは話す機会にしてもらったのです。1時間半になりました。
「どういうことからひきこもりにかかわり始めましたか?」というのが最初の質問でした。
これに答えた話が前半になりますが、省略します。
取材の後半に、そのごちゃごちゃしている内容を整理するつもりで話しました。
全部を話すとなるとその部分だけで3時間は超えそうな気がしたので、頭のなかは整理できましたが言葉にしなかったことは多くあります。
今回はその話さなかった部分をカバーしながらまとめました。

国や自治体が取り組んできた“ひきこもり対応策”は成功していません。
それは「対人関係づくり(社会性)+職業上の知識・技能獲得 ⇒就業」というコースに“ひきこもり状態の人”を乗せようとする対応が中心になっているためだと思います。
このコースに乗れる人・乗る人はいます。
しかし、少数であり、ひきこもりの本流ともいうべき多数はその外側にいます。
だからこの対応策は大きくは成功しないのです。
もっとも、このコースが完全にダメとは思いません。性急すぎるのです。
もう1つこれとは別の形での社会復帰の実例があります。
仕事おこしや家業の引継ぎになるでしょうが、最後のあたりで少し触れる程度にします。
この別の形であっても楽な状態ではない、としておきます。

社会的な治療をめざす場としての居場所活動
さて亀山さんには言葉にしなかった部分が多いのですが、それを含めてここで大筋をまとめました。
国や自治体だけではなく、支援団体もこの「対人関係づくり(社会性)+職業上の知識・技能獲得 ⇒就業」コースを採用しています。
支援団体ではこのコースをゆっくりと、非常にゆっくりとたどらなくてはならないことを活動の経験を通して理解してきました。
その結果、私が勧める居場所重視の支援方法に近づきつつあるかもしれません。
それでも今回の私の考える“ひきこもり対応策”と比べてみれば、必要な条件はかなり違っていると考えられないでしょうか。
支援・対応が「非常にゆっくりとたどる」点です。
これは当事者の会、居場所を運営すればそこに来ている人たちが示してくれます。
私が取り組んだ不登校情報センターの居場所的な取り組みの中で教えてもらったことです。
はじめた当初は私には居場所という意識もありませんでした。
ひきこもり経験者同士を会わせようと意図したのです。
それが時間とともに複数人を会わせて話し合える場、意見交流する場に進んだのです。
あえていえば自然発生的にそうなったのです。
性急に進んでも空振りになる経験は、20年以上も前に私がひきこもりを理解する過程で生じたことです。
ですから私にはそういう状態を経験すること自体を批難がましく言う気にはなれませんし、その資格もないのです。
「対人関係づくり(社会性)+職業上の知識・技能獲得 ⇒就業」の取り組みでは、この状態の途中で、準備した課題・テーマが入ってきます。
そういうプログラムが用意されているのですが、性急すぎると感じるのはここです。
取り組める人はいますが少数です。
一律に近い課題にするのが早すぎます。

当事者の集まる居場所の役割は重要です。
ここでの当事者の経験・体験がそれまでの人生で得られなかったことを穴埋めしていきます。
子ども時代なら1年で出来たことを数年かけて獲得します(個人差はあります)。
その獲得物はそれまでの各自の持ち分に重なります。
ある部分は人並み以上であり(非常に高いと思う場合もあります)、別のある部分は人並みにほど遠い状態です。
個人差が大きく、かなりバランスの悪い状態の人もいます(これはある程度は私自身のことでもあり、人間とはそういうものです)。
進む変化は本人の心身の状態や意識に強く左右されます。
この進み方には想像を超える時間が必要です。
支援者を含めこの時間を要するところを理解しているつもりでも、理解がたりないことが多いのです。
私の場合は準備するプログラムがなっていないとみられていたと思います。確かにその通りです。
しかも全員がそれぞれの求める形の社会参加になるとはかぎりません。
それは約束されていないのです。そこを含めて対応しなくてはなりません。
この点は医学・医療の発展や福祉制度の充実を待たなくてはなりません
(医学・医療については次号で素人目ながらいくつかのことにふれたいと思います)。
居場所での対人関係は、各自の体験交流、社会の動きの意見交換、趣味・得意分野の交流、一定の作業などがあります。
これらの対人関係の場に来られるようになることが、その人の到達目標と考えられるのです。
会話に参加できないというだけでなく、声が出せない、席に落ち着いて座っておれないところからスタートになる人もいます。
変化が少ない人でも、そこに落ち着いていられるようになれば最初の達成になると私は理解しています。
その期間の途中である人は仕事探しに向かい、ある人は勉強や技能獲得に向かい、ある人は社会への絶望を感じ、再びひきこもり状態に戻ります。
不登校情報センターを居場所として利用していた人たちの特徴的な状態を大まかに分けるとこのようになるかもしれません。
これらは居場所によって様子がすごく違います。
しかし居場所は本格的な職業上の技術や知識を系統的に学ぶところではありません。
自然に成長・発展してそういう場になることもあると思います。
そこの点で居場所の良し悪しは判断できないでしょう(居場所以上にならないことも大事なのです)。
どちらであっても現状では“ひきこもり対応”における居場所の役割は大きいのです。
この役割を “社会的な治療の場”と位置付けてみることができます。
というよりはそういう認識が求められていると思えるのです。
社会的な治療は、自然治療や医学的な治療(医療・診療)と並ぶ第3の人間の心身回復の方法です。
自然治癒力があるように社会的治癒力もある――私の活動を総括するとこれは1つの結論です。
しかし社会的治癒力を確保する場は、本人も支援者も行政担当者も意識していません。
居場所の役割が軽く見られ、認められず、行政面で空白になっているのはその表われに過ぎないのです。
そうはいいなが徐々に必要性が認められているのがこの数年の様子です。

社会的治療の条件づくりを自治体に求める
亀山さんに話した最後は、“ひきこもり対応”において私が取り組もうとしている点です。
実際は項目を話した程度でしょうから、彼女ははじめて聞くことになるかもしれません。
内容は国と自治体への働きかけることですが、私には国への働きかけがイメージできないので、自治体を想定して考えています。
自治体の“ひきこもり対応策”は社会的治療の条件を確保することと、そういう動きを支えることなると考えます。
いくつかは試案レベルですがすでに書いています。
それらを改めて列挙するとともに、頭に浮かんでいることも書き加えました。
(1)交通費援助
ひきこもり当事者が支援団体や自治体窓口に相談に行くときの「交通費援助」です。
これは会報3月号(22号)に「居場所に通う交通費を考える=粗案提示」として書いたので詳しくは書きません。
自治体窓口と居場所を直接に結び、協力関係をつくる役割になります。
しかし、まだ余白が多いので粗案としています。
(2)高校卒業資格の取得援助
高卒認定試験の受験を学習援助から始めることです。
受験料だけではどうにもなりません。
世の中はちょっとした仕事につくにしても「高校卒業」が事実上の前提になっています。
ここを無視していては地盤整理をしないまま家を建てるような対応策です。
高校卒業がない人は(強く主張することはないかもしれませんが)このハンディを持って生きています。
自分は安全地帯にいて、車道を歩かなくてはならない人の状態を軽視・無視していては行き届いた対応策にはなりません。
高卒認定試験の受験を学習援助し始めた自治体は「ひとり親家庭」(シングルマザーが多い)への支援からでした。
この支援を高校卒業資格のない人全般に広げようとする意図です。
すでにいくつかの自治体で取り組み始めたことですが、その利用状況、対象の範囲を広げる可能性などを調べ始めたところです。
(3)個別事業者の就業前の取り組みを勧める
「求人しても人が来ない・後継者がいない」事業者に、ひきこもり経験者等を対象に見学・研修・見習いなどの機会をつくってもらう取り組みです。
いわば事業者に居場所に近いものを運営してもらう内容です。
私は昨年8月「ミドルエイジ人材養成バンク(素案)」としてこの提案をまとめ、いくつかの事業者に声をかけてみました。
上手くはいきませんが、事業者に負担になる、すぐに人が欲しいに応えられないからでしょう。
しかし、求人難・後継者難は続いています。
行政が直接に係るのではなく、間接的な支援、例えば高齢者のためのシルバー人材センターのようなものを設立して勧める趣旨です。
この素案は不十分な点があるでしょうが見直していけば有効になると考えています。
以上の(1)~(3)は、自治体から始められるものが多いと思います。
(4)以上の他に食べ物と住居を低額で確保することがテーマになりそうです。衣食住です。
これは“ひきこもり対応策”であるとともに、より広い社会福祉政策の一部になります。
食べ物については、食品ロス対策とからめ、フードバンクの力と経験を生かしながら、地域の比較的大きな食品店の協力になると予想しています。
住居については「空き家」対策とからめ、地域の不動産会社の協力を得ることが必要だと思います。

仕事おこしや家業引継ぎのコース
別コースのもう1つは起業コースと言ってもいいかもしれません。
家業を引き継ぐのもこれに準じるものと考えましょう。
起業といっても多種多様です。目標になるのは個人事業でしょう。
私が直接に知るのは、広い意味では創作活動です。
絵画系(イラスト・マンガなど)、手芸系(織物・布作品・工作小物など)、音楽系(演奏・作曲など)、文芸系(小説・エッセイ・詩作など)です。
それにパソコンに精通する人の知識や技術を生かすものがあります。
趣味を生かして仕事に結び付ける目標です。
難関であり、どのレベルをもって到達とするかの基準ははっきりしませんが、その目標にまで届いていない人が圧倒的な大部分です。
小遣い程度を稼げることはありますが、定期的でもないし安定的でもありません。
しかし、「広い意味」というのは彼ら彼女らの関心の深さというか偏りというか独特性というか、それらを肯定的に認め、生かしたことです。
これらも趣味を生かして仕事に結び付けるのが目標という点では同じです。

高年齢のひきこもりが困っていること
4年ほど前にM・Sくんが家族会の場で発表する機会がありました。
40代前後のひきこもり経験者が切実に考えていることは親や支援者が考えていることとは同じではない、どういうことかを話しました。
親や支援者が考えていることとは、主に「対人関係づくり(社会性)+職業上の知識・技能獲得 ⇒就業」のコースの乗せることです。
それに乗らない・乗れない人は何を考え何に困っているのかをM・Sくんは話したのです。
今回の私の考えるひきこもり対応策はM・Sくんの話を考え続けたことが参考になっています。
次ページに載せました。
☆参考資料「ひきこもり理解と支援の促進」学習会における当事者の報告

Category:会報『ひきこもり居場所だより』|2019年04月]]

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