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社会的病理への対応策から卒業の時期

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社会的病理への対応策から卒業の時期

私が登校拒否(不登校)の子どもを「この子たちは社会についていけないのではない。むしろ、社会のゆがみについていけなかった、いけないのではないのか?」
「最も人間らしい感性と知性を持っている子どもたち」と書いたのは1993年のことです
(あゆみ出版『登校拒否関連団体全国リスト』のまえがき)。
当時は教育書の編集者でした。不登校の子どもたちの体験記を多く読んでいました。
子どもとの接触ではなく書いたものが接点でした。書かれたものを頼りにするのは悪くはないです。
精神科医・哲学者のK.ヤスパースは、書かれたものに頼って多くの著作をしました(臨床医でもありましたが)。
不登校情報センターを設立し、やがて若者が集まり始めたのが1996年です。書かれたものと実際の人に違いはありません。
しかし、人に接触することで得られるものとは大きく違います。
なぜなら人と接して感じる気分を言葉にすることは至難です。うまく書けることは稀であるし、書かないままのことが多くなります。
書かれたものに頼る危うさはここです。
私はアスペルガー気質を自覚しています。世評ではアスペルガー障害(最近は使わないですが)は、「周囲の人の気持ちがとらえづらい」のを特徴としています。
当事者としてはこれを認めてもいいですが、正確ではありません
。「周囲の人の気持ちに気づかないときと、逆にきわめてよくわかるときの両極に表われる」というのが実感です。
それだけに実際に経験者と接して得ることは大きかったと思います。
不登校情報センターにひきこもりの経験者が集まるようになってから、私のこの気質・性格はいろいろに作用したはずです。
必ずしも否定的に作用したばかりではないでしょうが、自分で判断するのは適当ではないのでやめます。
うまく見過ごす功もあれば、大事なことを見逃す罪もあったとしておきたいです。

気分や感情をとらえても文字にしづらいのに対して、状態や症状はそれよりはよく見えますし、わかりやすいし、書き表しやすいものです。
学校に行かない、家から出ない、働いていない…などはそれです。
そこを中心に不登校やひきこもりは「社会的な病理」を見られ、扱われ、対応がされてきました。当時もそして今もそのようにみられることが多いです。
私は2000年ごろに相当数の医療機関に対してアンケートをしました。
医療保険請求に必要なレセプト病名欄にどんな病名を入れるのかを調べたのです。
医療機関は不登校にどんな病名をつけているのか
(平岩幹男・専門編集『不登校・いじめーその背景とアドバイス』中山書店、2010、五十田猛「不登校の予後」を分担執筆)

登校拒否・登校拒否症 135 神経症 88 腹痛・胃炎 39
心身症 37 不登校・学校不適応 35 頭痛・偏頭痛 32
心因反応 27 自律神経失調症 27 思春期危機・適応障害・
人格障害・行為障害
24
過敏性腸症候群・下痢 23 抑うつ・倦怠感 21 起立性調節障害 17
食欲不振・摂食障害 17 喘息・過呼吸 13 ① 不眠・睡眠障害
②発熱
①②
各6

医療機関への問合せの返事が病名(症状)なのは当然ですが、ここから抜け出す時期です。
この分担執筆で私(このときの執筆者名は五十田猛)はこう書きました。
「子どもの成長の支援(心身の治療を含む)」は、医療職では医療から入り医療を超える対応を求められる。
それは教育も、心理も、福祉も、さらに就業支援においても、各領域の専門職に共通に求められる姿勢である」(同、p31)。
不登校もひきこもりも社会的な病理への対応を超える時期が必要になると考えていたのです。
「ひきこもりは病気ではない」という意見は初めからありました。
すべてを病理的要因がないとはいえませんが、それは派生的と考えます。
その病理自体が社会的な対応の中で低下・改善するからです。
私が不登校情報センターを設立し、支援団体等の情報収集の形で社会がひきこもりにどう対応しているのかを見てきました。
自分でも居場所を運営しその場に集まってくる当事者の様子に触れました。
今の時点で見ればこうなります。
不登校は先行していろいろな対応策がとられ、病理的要因の追求ではなく、社会の受け入れへの対応にシフトしつつあります。
対してひきこもりは後れを取っています。
今や事実上すべての自治体がひきこもりへの対応を迫られています。
ところがそのわりには成果が上がっていません。
自治体の中心は「社会的病理」への対応です。
精神科医や心理カウンセラーが参加していれば、力をこめた取り組みです。
ひきこもりへの対応が全体として遅れているのは、ここに関係します。
それは社会的病理、とくに精神的・心理的要因を治し、教える、訓練するという「治すから始まる目線」の対応です。
自治体は医療者ではないのに「医療を超える対応」に十分に向かっていません。
他方では就業に偏った支援といわれます。何かが抜けています。
社会的病理に対応するのではなく、社会化のために対応するのです。
ひきこもり当事者が集まる居場所を運営し、人と人とのつながり(コミュニケーション)の向上をすすめることが中心です。
これは定式的な方法の確立がしづらく、成果を判断する尺度が見えにくいものです。
それでも保健所の一部でひきこもりの居場所ができ、就労をすすめるサポートステーションの活動に対人経験を盛り込む例が多くなっています。
これらは当事者の内側にある潜在的な力をひき出し、伸ばしていく当事者視点の取り組みです。
社会的病理への対応から個人が社会的人間に成長する対応へのシフトの時期です。

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