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Center:2006年5月ー父親の一言が象徴する大きな要素

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父親の一言が象徴する大きな要素

ある女性が夏用の洋服を買いにいくと行って出かけようとしたところ、「奇抜なものはダメだよ。着ていても人の中で目立たないものにしなさい」と父親から言われました。 

父親は60代後半、女性は20代後半です。
何気ない日常に思えます。
この会話の中には、父親の価値観があり、それはおそらく、古きよき日本の、他人に配慮的で自分は控え目を美徳とする思いが込められているように思います。

おそらく、というよりもほぼ完全に、この女性は父親からそういう言葉をかけられなくても、自分の好みとして奇抜なものは選ばないでしょう。
着ているものはいつも淡い色のもので、その女性に初めてあった人から「着ているものと、ヘアスタイルと、言葉づかいから」お嬢さん的ですね、といわれたことがあるくらいです。

父親(そして母親)の考え方や好みがどれだけのものであるかはわかりませんが、彼女のなかには、それらは色濃く定着し、もはや自分自身のものになっています。

ですから、「父から言われなくても、どんな洋服を選んだのかは結局は同じだったんです。でも父から言われた分が余分でしたね」となるわけです。

こういう傾向は彼女の幼少のころから、いろいろな場面で生じていました。
両親の価値観、好みや傾向は、言葉としても両親の日常の振る舞いを通して子どもに伝えられます。
文化的傾向の伝承は、このように両親から子どもに伝えられるのです。

しかしその伝承の流れを妨げる要素が人の生活のなかにはあります。
1つは両親以外の人の関わりです。
この影響は、閉鎖的な親子関係に刺激的な風を送り込む役割を果たします。
それは必要な外風であって、どう受け止めるのかは子ども側の受け入れ気分に左右されます。

もう1つは子どもの反抗(および反抗期)です。
これもまた自然な成長の証であって、そのときに両親の好みや考え方に反発し、批判的に見える条件がやってきます。

文化の世代間への伝達は、このような嵐を通して、より強く伝えられるわけです。
もしこのような子ども側の条件がなければ、文化伝達は生彩を欠いた、もぬけの要素の受け流しになり、いずれは消滅してしまうでしょう。

この女性にかけられた父の出がけの一言――それで全部を表すというのではありませんが、――ともかく、それは象徴的です。
このような両親からの一言は、既に不要であった。
なぜなら、彼女自身の選択が父の心配するようなものではなかった。

むしろ不当であった。
なぜなら、彼女は自分のことに関して自分で決めていい一人の女性であった。

介入的で圧力的であった。
なぜなら、「ファッションというのは自分の個性を表現する直接的な方法じゃないですか。それをこういう形で押しつけてくるんですよ」。

少し破壊的であった。
なぜなら、彼女はずっと表現に関して"自分の殻を破るような"冒険のチャンスを妨げられ、それは単に表現だけのことでなく、生活のいろいろな場面に及んでいた。

それは、両親への反抗・抵抗を根こそぎ奪いさったことの氷山の一角を示している。
なぜなら、彼女は中学生から高校生の時期に、父母への反抗を、ときには暴力的な方法によって抑え込まれていた。

結果は重大な影響もあった。
なぜなら、彼女は、古きよき控え目な性格の人間として成長してきたが、周囲の元気な人たちの間では、自己主張しない、自分の考えをもたない人間として軽んじられてきた。

もちろん、これらの全部を両親の言動のせいにするわけにはいかないでしょう。
彼女の生来のものもあったでしょうし、周囲の他の人たち、友人関係や学校の教師などの影響もあったわけですから。
そういういろいろな要素があるなかで、しかし現実の彼女には終始、両親の言動は、20代後半のいまになってもやや威圧的に作用しているという意味でとりわけ重大なのです。

彼女が自分を表現できない、自分の考え方をうまく他者に伝えられないというとき、単に考え方がないのではなくて、伝達方法(コミュニケーション)能力の問題も関わってきます。
彼女を見て感じることは、この伝達コミュニケーション能力は、それ自身の欠如というのではないのです。
他者への安心感がない、他者の反応が気になってできなくなってしまっているように思えるのです。

父親および両親の抑圧的な仕方による文化的伝達(考え方や好みの子どもへの伝承)は、私にはとても深く、広範にわたっているように思います。
父親からの買い物に出かけるときにかけられた日常的な会話の一言は、まさに氷山の一角を示すことばでもあります。

 

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