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Center:2007年1月ーいじめの相談から考えたこと

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目次

いじめの相談から考えたこと

〔『ひきコミ』第40号=2007年1月号に掲載〕

愛知県の大河内祥晴さんと木村茂司さんのよびかけにより「いじめ電話相談ネットワーク」をつくり、いじめの相談を受けることになりました。
2006年11月中旬のことです。
新聞報道されたこともあり「いじめ」に関するかなり多くの相談を受けました。

12月に入ったところで、いじめに関してある雑誌の取材申し込みがありました。
相談事例から話そうと考え、3つの実例をピックアップして取材に応じることになりました。
まずその実例を示しましょう。
プライベートな事情がありますから、少し変形したところもあります。
マスコミ報道のいじめ自殺ほどではない、より日常的ないじめの実情とはこういうものです。

(ケース:1)

上級生からの金銭要求から不登校に(小4男子Aくんの母から)
上級生の小6男子からお金を請求され、小4男子の子どもが学校に行けなくなっています。
どうすればいいでしょうかという内容です。

その小6男子は数人の子どもからなるグループをひきつれ、遊び仲間を作っています。
その中に小4の子どもAくんが入っています。
コンビニに行って、一人100円程度の菓子類を買ってもらうようなことが数回あったようです。

母が不在のとき、その小6男子が自宅を訪ねてきました。
小6男子と同級の姉がいて、その姉に「今までの分と利息を入れて3000円を返してほしい」と告げて帰ったというのです。
小6男子には、もしかしたら正当な感覚があったかもしれませんが、「利息」というのが気になります。

母親は、Aくんに確かめてみました。
何回かコンビニに一緒に行き、小6の男子が買ったものをもらったことがあります。
お金も何回かは返したこともあるようですが、全部は支払っていないので、どれくらいもらったことになるのかは分からないのです。
自分の方からこれを買ってほしいと頼んだことはないと言います。

Aくんに確かめたところで、母は小6男子の母親に電話しました。
小6の子どもから聞いたことを話したのです。
数日したら小6男子が訪ねてきて、「話はなかったことにします」と言って帰ったのです。

それで一件落着とするのも変だったのですが、小4の子どもが学校に行かなくなりました。
母は姉の学級担任(小6男子の学級担任)に会い、これまでの出来事を話しました。
「なかったことにしてほしい」というようなことでなく、子ども同士の正常な関係ではなく、それが不登校の原因になっているのではないかという主旨です。

担任は、小4男子Aくんに関係しているので自分の一存ではできない、小4の担任と話すといって、それっきりになりました。
Aくんの担任から連絡があり、市(政令市)教育委員会の適応指導教室を紹介され、Aくんはそこに通うようになりました。

その適応指導教室の基本は学校復帰が中心になっています。
学校からはどうするのか不明のまま適応指導教室を紹介され、適応指導教室では学校復帰のための働きかけが中心になっているのです。
Aくんはいずれにしても学校に行きたがりません。

不登校の子どもへの対処のしかたとして、学校(担任)も適応指導教室も、まさにお役所的な感じがします。

◎電話のやり取りとコメント
Aくんに関係する教師と父母が一緒に問題を考えていくいい機会になるのですが、学校(教師)はオープンではなく、この問題をAくんの母親にあずけることになっています。
母親にはやりづらい仕事です。
校長や教頭レベルの人が出てオープンに話し合う場として生かせるのですが、もしかしたら校長にはこの事態は伝わっていないのかもしれません。

小6の娘と小6男子との関係は特に問題はありません(同じクラスにいるのですが、実態として接触はほとんどない)。

中心問題は、Aくんをどう支えるのかという点になります。
母親はいまの中ぶらりんの状態のなかでは、フリースクールを探すか家庭教師をつける方法を考えています。
私も学校復帰を急がせることはなく、対人関係をつづける条件を確保したいところなので、母親のこの方向には反対ではありません。

母親には「事態を日付順に記録しておいた方がいい」と伝えたところ「記録はしています」 と答えました。
これは証拠に準じたものになるでしょう。
そこで「これまでの事態を、その記録をもっていって、校長に話していく方法があります。
多くは期待できないかもしれませんが、中ぶらりん状態を改善する可能性は出るかもしれません。
できれば父親も一緒に行けたら、いいですね」と話しました。

この方向での打開策が正攻法ですが、学校(校長)にその意志があるのかどうか…。
ここが学校の対応力が下がっている点です。

(ケース:2)

クラス内での孤立 (中3女子の母親)
クラスのなかで孤立しています。
いじめる側の中心は2人の同級生ですが、子どもの気持ちはクラス全体から孤立し、全部から攻撃されてきたようです。
2人の同級生からは、ほとんどが言葉による攻撃で「クズ」「ブス」「ノロマ」…などです。

母親が担任に話したところ、よく話をきいてくれたといいます。
以前に父親参観があったときに、父親もよく話をきいてくれる先生だという印象をもったようです。
母親が担任に話したあと、2回ほどクラスで話し合いの機会がもたれました。
いじめる中心の2人は、クラスのなかで「もうしません」と話したといいます。

母親は、いじめている側の子どもの1人の家を訪ねて、その母親と話してみました。
担任からは一通りの話はきいているようで「子どもには注意して、人のいやがることは言わないように言いきかせている」と話してくれました。

母親には担任教師が、自分の子どもよりも、いじめた側の2人に関心がいっているように思えます。
母親の気持ちはいまひとつおさまらないようです。
相手の母親から「ごめんなさい」という謝りの言葉がなかったこと、担任の関心が相手の子どもにいっていることのためではないでしょうか。

◎電話でのやりとりとコメント
学校(担任)の対応はかなりいいように思えます。

自分の子ども(いじめられている中3女子)の日常を、母親として干渉の度が過ぎない程度に関心を持って見ていく必要があります。
今回の問題は、いじめられた子どもの外側に主な原因がありますが、母親の言葉のなかに、自分の子どもの状態を表す言葉が少なかったのが気になります。

担任は、いじめた側の2人を「弱い立場の子ども」として指導の中心においています。
電話をくれた母親の話からはわかりませんが、担任にはそれなりの判断根拠があるように思えます。

電話をしてきた母親に「お母さん、勝つことが目的ではなく、勝ちすぎてはいけませんよ」という意味の話をしたところ、
母親からは「私の父からもそういうことはよく言われます」という返事がありました。

母親同士が仲よくなっていく機会になれば、関係する人たち全部にとって事態はとてもよい状態になる気がします。

(ケース:3)

仲間はずしから不登校 (高1女子の母) 親しい5人グループのなかで一人仲間はずしになったのが5月の連休明けからです。
中高6年制の学校でこの4月に高校に進級したところですが、グループは中学校時代からのものです。

仲間はずしのきっかけは体型のことらしい。
やせているのを、グループの仲間からダイエットのしすぎであるとか、スタイルにこだわっているとか言われたのがイヤになったようです。
それを言った人に批判的な気持ちになって、その仲間とのつきあいを少し距離をおいた関係にしました。

連休明けから仲間に戻ろうとしたところ、「もういいよ」というような形で排除されました。
それとともに学校に行くのが重苦しくなったようで、だんだんと休む日が多くなりました。

夏休みの途中からは2学期になったら学校に行くと言っていました。
しかし9月に入って1日登校しただけで、ばったり行かなくなりました。

11月に入ったら、学校(担任)から
「このままでは出席日数が不足し、教科の履修ができず単位がとれません。進級できなくなる」という連絡が来ています。
どうすれば学校に行くようになるのでしょうか。

◎電話でのやりとりとコメント
学校の対応は進級の条件をつくるために、登校を促すことが中心になってくるでしょう。
出席日数が絶対的に不足すると、留年、退学、転校をすすめてくる可能性もあります。
それにこたえて、子どもを学校へ行くようにするのは勧められません。

学校に行けなくなった直接の原因は仲間はずしによるものですが、もっと大きな要因も感じられます。
仲間はずしをやめるようにといっても、それは他の生徒に頼んで回るようなものでもありません。

学校(担任)は、進級や学習面のことは見ているけれども、クラス内の人間関係とか生徒のコミュニケーションの力ということには目を向けている感じがしません。
母親の働きかけでそれを変えていくのは、いまの状況では困難です。

そういう学校、学級に子どもを戻そうとするのは、子どもを追い込むことになりかねません。
学校には、子ども同士の人間関係を学び合える機会にしてほしいのですが、親の働きかけでそうなる条件は乏しいでしょう。

基本的なことは、不登校になった子どもに必要な成長をとげさせることのように思います。
子どもにとって不登校はこれまでのペースではダメなので、いったん立ち止まったところだと思います。
しかし数か月が経っていますから、いまは人間関係を断った感じですし、このままだと引きこもり状態にすすんでいくでしょう。
必要な成長をとげるには、人間関係が必要です。

子どもさんをいろんな面で認めていき、気持ちをラクにしていくことが親のできる最初のところです。
その次には、小さかったころの子どもとのつながりを回復したり、少し年長の人に来てもらう、
外出の機会(少し遠出の買い物や散歩など)を工夫するなどし、子どもに提案してみて下さい。
子どもの気持ちを大切にし、押し付けにならないことです。

親は育て直しをするつもりで、不登校や退学を受けとめることです。
決して遅くはありませ ん。
むしろ高1ぐらいで対人関係の力量不足を補う必要を感じ、そこに目を向けた対応をすれば、その子らしい成長の基礎を築くことは比較的ラクにできることです。
転校や再入学は子どもが何かを言い出すのを待ってからでも十分です。

いじめは人間尊重を学ぶ機会にできる

不登校やいじめに関する相談は全部少しずつ違います。百人いれば百様です。
不登校情報センターは名称に不登校がありますので、不登校に関する相談が多いのですが、いじめと不登校はかなり結びついています。
今回の例も3人のうち2人は不登校になっています。

相談をしてくる親には不登校は見えていても、いじめを受けている、いじめをしていることは知らないこともあります。
学校に関する転校や中退者の受け入れ先のところから相談は始まることが多いのです。
私は不登校の背景に、いじめやネグレクトの影響があるかもしれないと考えつつ、その全体を考えています。

また対人関係がうまくいかないという場合でも、人間関係をよくすれば登校できるようになるという発想は表面的です。
人間関係がうまくいかない、友人ができないのは、その子どもの感情や感覚や思いを自然に表現できないでいる、抑制的に生きている、自分を閉ざすことで自己を防衛していると考えた方がいいことも多いのです。
それらの条件から心を開放していくところに、根本的な打開策があります。

ところでいじめとは、子ども世界において、他の人を尊重するのを実際に学ぶ機会になるものです。
民主主義を子どものところでの学ぶ方法になります。
いじめはあってはならないから「なかったことにする」というのは、この重要な機会を失います。
それだけでなく、人の心を傷つけ、人間的な成長を阻み(性格の偏りを生んだり、自己防衛の壁を厚くすることで社会に心を開き成長するのを中断させることもある)、ときにはその時点で生命を失わせるほどのものです。

そういう重い内容をいじめの一つひとつは持っています。
それを隠すのではなく、かといっていじめる側を攻めたてる材料にするものでもありません。
人を尊重するとはどういうことかを学ぶ機会にできることなのです。

これがうまくいかないのは、学校教育が知育偏重になり、人間を尊重する、対人関係を身に付ける、社会性を伸ばすという面をおろそかにしてきた結果でもあります。
その背景には、学校に進学や受験中心の要望をしてきた父母、国民の責任もあると思います。
いじめ問題はそこまで目を向けさせる内容をもっています。

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