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Center:2011年3月ー現実肯定による社会参加に向かう

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目次

現実肯定による社会参加に向かう

―ワークスペースの可能性―
〔『ひきコミ』第88号=2011年3月号に掲載〕

2月12日の講演相談会「30代以上の引きこもりの支援方法」では、「不登校情報センターはどういうところなのか」を改めて問われる場になりました。
その場では体験者にとりワークスペースになるのが不登校情報センターと答えました。
ここでは「ワークスペースとは何か」を考え、上の問いかけや最近の事情をヒントに今後の方向を考えました。
ワークスペースをシンプルに表現すれば「医療機関と就業支援機関の中間にある、当事者の対人関係づくりを中心に取り組む場」の一つです。
それだけであれば「フリースペース」と同じですから、フリースペースの一種といえます。
ワークスペースというのはフリースペースに相当程度のワーク、作業が含まれている状態のものでしょう。
しかし、不登校情報センターのワークスペースには以上のことだけでは語れない多くの可能性があります。
ワークスペース一般を考える材料は私にはありません。
不登校情報センターを語ることは他のフリースペース、居場所、ワークスペース、あるいは地域若者サポートステーションなどでも重なる事情はあるものと予測します。

〔1〕当事者を理解する場としてのスペース

不登校情報センターの設立1年後の1996年8月に生まれたのが通信生・大検生の会であり、それが初めての当事者の会です。
それ以降いろいろな変化があり、それらについては何度か書きましたので省きます。
それらの当事者が集まる場をスペースと表します。
スペースでは当事者間の関わりから友人関係づくりがあり、その過程では人の中に平静でいられない状況や対人恐怖の背景を考える機会が多くありました。
スペースにおいて作業を行うことも事態を理解するうえで重要です。
本人や家族が語ること(意識している・理解している・言葉にできる)以上に事態がわかります。
仕事に有益な知識や技術の修得すること以上に動作や手順・段取りという社会性に関係する部分を知ることができます。
スペースにおいては社会参加や就業支援に関しても何らかの取り組みをしましたが、中心にはなりませんでした。
その理由は後で見ることにします。
創作活動に注目し、将来の生活希望を調査する中でその重みを理解し、やがて創作展になったことは、まだ準備以前の状況ですが今後役立つときがくるでしょう。
また訪問活動も重要です。
自宅を訪れることはその当事者が生活する環境を丸ごと見聞きすることになります。
スペースや相談室で見るのとは違い、はるかに奥行きが見えます。
時期は必ずしも並行してはいませんが使用する言葉を「就業支援」⇒「社会参加」⇒「社会の一員として生きる」のように変えてきました。
もっとも言葉づかいはそれほど厳密には意識して使い分けてはいません。

〔2〕当事者支援の3つの視点

いくつかの取り組みを通して、支援方法を当事者に対する視点から見ると次の3方向になります。
〔A〕引きこもり経験者にとって就業のためには何が必要なのか=社会適応の視点。
〔B〕引きこもり経験者が求めている中心要求は何か=対人関係づくりの視点。
〔C〕引きこもり経験者はどのような状況にあるのか=現実を肯定する視点。
この最後の視点を意識したことが「30代以上の引きこもりの支援方法」に結びつくのです。

「社会適応の視点」による取り組みの代表例が1998年ころの「人材養成バンク」でしょう。
いまから振り返れば「あなたは就業・社会参加するには~が足りない。だからそれを身につければ就業に結びつく」という取り組みです。
極端な言い方をすれば当事者の現実を否定的に見ることから始まる支援策です。
人間の成長・発達を図る支援において果たしてそれで上手くいくものか、私にはそういう素朴な疑問は残ります。

ただ人材養成バンクが上手くいかなかったのはそれが主な原因とはいえません。
90年代末は早い時期の取り組みでした。
実力不足であり不手際な面が多かったと思います。
人材養成バンクの方法は引きこもり経験者などを事業者に紹介し、働くなかでその事業者に成長を手伝ってもらう式のものです。
それでは上手くいくはずはないのです。
しかしそれを上手く運ぶには必要な条件が多く、私には手におえないものでした。
取り組む時間、必要な人材、必要な材料と資金など全てがありません。
そのうえ支援方法が現在以上にわからなかった、とらえられていなかったのです。
実力不足とはそういうことです。

就業支援に取り組んでいる団体・機関の様子を聞くと、いまなお苦心しているように感じられます。
その理由は私が直面したことと同じではないでしょう。
しかし私が「人材養成バンク」方式に手を加えて何かをしてもいい結果はとても予測できません。
彼ら彼女らに“荒業”を求める気持ちがするのです。
そのこと以上に実感を持ったのは、事業者に預ける方法自体がお門違いということです。
引きこもりには何が必要なのか。
確かに対人関係が中心になるけれども、その状態像、すなわち種類または現われ方、それらの理由と背景、成長・変化の過程や時間、取り組みの手順などを私自身がもっと深く、もっと多様に、もっと具体的に生きた人間との接触のなかで知る必要がありました。
10年以上が経過した現在ははるかに事態を了解していると思いますが、それでもまだ端緒なのです。
いまなお私が探求していく課題です。
人材養成バンクの経験から私が学んだことは、私の手元で、私がその渦の中にいて引きこもりを理解する場をつくる必要性でした。
そこで彼ら彼女らの実情を知り、人との関係の取り方の実際を知り、成長と停滞の過程を知っていくことでした。
〔B〕項目の引きこもり経験者が求めている中心要求=対人関係づくりに向かったのはそのためです。
それらは〔C〕項目の視点に気づいた今日でも重要な実践的な要素です。
ですから対人関係づくりはこれからも折りに触れてみていくことになります。

〔3〕「30代以上の引きこもりの支援方法」の位置

この経過の中で引きこもり経験者の実情から出発する社会参加の方法に気付き、今回の提案になりました。
言い換えるならば、引きこもりの人の現実を肯定的に考えていく視点からの取り組みをさらに深化させようと試みるのです。
ようやくたどり着いた今回の「当事者の実情に根ざした支援方法」は、基本中の基本を踏まえているという思いがあります。
それは対人関係をつくるのが当事者の要望であり、それが当事者の現状から始める支援と考えていたことをさらに一歩押しすすめる視点です。
しかしまたいくつかの未解明部分があり、不安もあります。

(1)その一つはこの基本中の基本を踏まえたものが、30歳という青年期を終えつつある人間の発達過程にどこまで通用するのかわからない面があるからです。
私にはそれが試されずみの実践的な方法とされた例を見聞きしたことはありません。
私の直面する引きこもり支援は、人間の成長発達期の課題になりますが、相手は子どもではないのです。
子ども的な部分はいろいろに現われていますが、基本的には子どもとはいえません。
そこにどの程度の有効性が現われるかは未知数です。
そういうタイプの〝乗りこえてきた〟人の体験を集約してみる価値があります。

(2)もう一つはっきりしないことがあります。
私が引きこもりの現実というとき、「今現にしていること」に目を向けます。
いつもゲームをしている、テレビを見ているだけ、ネットを検索している、時間をかけて掃除や洗濯をしている、生け花や書き 物など趣味らしいことをしている、とにかく何にもならないことばかり…という家族の声から事態を理解し、その事態を肯定的にとらえようとしています。
引きこもり体験者自らもそれらを「時間つぶし」「何の役にも立たないこと」「必要なことをしないで無駄なことをしている」などと表現しています。
そこに踏み込んでいく方法です。
はたしてそれらは無駄なことでしょうか。
そうでないと思うのですが、それならそれで彼ら彼女らがしていることの意味を示さなければなりません。
それへの回答は実例によらなくてはならず、個別的で多様でありながら、しかも稀な例や特殊な条件によるものでは説得力を持ちません。
だから暗中模索のなかで実践に乗り出し、何らかの手がかりを得ようとするのが今回の方針です。
これが公平に見たときの第2の未知の問題です。

(3) しかし、さらに問題がありそうです。
「自分でしていること」を肯定する・否定する以前に本当に何にもしていない人がいるかもしれません。
私はその「本当に何にもしていない状態」にも、意味があると思っています。
しかし、その意味をどこまで了解できるレベルで説明できるのか、必ずしも自信はありません。
これが第3の問題です。

〔4〕アンケート回答に見る状況

まずは 上記の(2)の未知数にあたる「たいしたことはやっていない」を肯定する要素を見つけ、見方を変える作業が必要です。
簡易なアンケート用紙をつくったのはそれを掘り当てるためです。
アンケートへの回答は、すでにわかったものは発表しました。
これからも回答が届くでしょう。
総合評価はその状況を見定めてからにします。
さて「スカウトとは企画です」というのをある芸能プロダクションの人が話していました。
目の前にいる人を見て、その人をタレント候補として採用するかどうかの基準は、その人をタレントとして売り出せる企画が思い浮かぶかどうかであるというのです。
言い換えると入学試験のように点数基準があってタレントとして採用する・しないを判断するのとは違います。

これを今回のアンケートの回答に照らしてみればこうなります。
回答者のそれぞれの状況に合う返事(ある種の企画)がどの程度できるのかが私に試されるのです。
一度の回答では到達しなくても繰り返すなかで何かに届くかもしれません。
もちろん全部の回答に可能な企画ができるとは思いませんが、まずこれが始められることです。
ささやかですが1か月間に生じたことを列記してみます。

(1)アンケートへの 回答が9通ありました。
40人ぐらいに送っての9通の回答ですから引きこもり経験者の回答としてはかなり多いと思います。
ほかに電話や家族から返事をもらう形もありました。
その結果、その人たちに即した返事をしました。
全てが企画的な返事になったわけではありません。

(2)個人ブログを6名が設定しました。
呼びかけた人数の割合のなかではかなり高いと思います。
まだ立ち上げてはいませんが、そのつもりでいる人が3名以上はいます。
うち1人はこれまでの創作を見直し、発表できるようにしてからという主旨です。
(3)通所できないけれども文書入力、校正をできるという人がいます。
(4)「自分の経験を生かした取り組みをしたい」、というよりむしろ「自分の経験をいかして取り組みにできないか」(両者の微妙な違いがわかりますか?)という人が2名以上はいます。
後に見る「ネット相談室」はその一つの企画です。
(5)パソコンの初歩を習い始めた人が今年に入り3名増えました。
アンケート回答とのつながりは明瞭ではありませんが、影響はしています。
人数はこれまでとの比較では多いです。
いま確認できるのはこのようなものです。
水面に浮上しているのはブログ設定ですが、水面下にも動きを感じています。
引きこもりの現実を肯定していく取り組みに、私はわずかながら明るさを感じているのは(それは将来的に何かができると明瞭になったのとは違いますが)、これらによるものです。
ささやかに見えるでしょうが、この種の取り組みとしては決して過大評価ではないでしょう。

〔5〕現状肯定できる別口の相談例

2月12日の集会の後、30代後半の10年余の引きこもりを越えてこれからというBさんがやってきました。
彼の話は明瞭です。
以下はその記録の抜粋です。
「物づくりをしながら田舎で暮らす――最近になってようやく何とか動き出せるようになりました。
一般の会社で働くようなものではなく、物づくりをしたい、それで働くようになりたいというのです。
引きこもりの就業支援では、面接の仕方、履歴書の書き方、あいさつの仕方…など会社に採用されるための訓練をしています。
それは本当の自分ではなく、相手に受け入れてもらうために装った自分です。
人物本位でその人のしたいことを伸ばすというのではないのです。
それが本当の支援なのでしょうか。
引きこもっていた期間に小説を書きました。
いろんなことを考え、読み(村上春樹と河合隼雄)、自分がしたいことは、〝手づくりの工芸品(蔓細工・竹細工・草木染めなど)制作であり、野菜などの農業もしながら田舎で弟子入りか、住み込みをしながら、1から学びたい〟 というものでした」。

彼の希望することの特色は、就職支援型とは異なる社会参加支援を求めていることがわかります。
他方Bさんの希望は「何でもいいから働いて欲しい」という家族や社会の要請を受け止めています。
ところが受け止めを求めている家族や社会の側にその受け皿は整っていない、少なくともそのような面があります。
「田舎では若い人がいないといっているけれども、ここに田舎で暮らしたいという人はいるのです」。
これを受け皿の不足と考えるのです(この意味するところは、自治体側の問題ではなく、大きな社会変化の行方を示唆しているのでしょう)。

彼の意見を参考に、引きこもり当事者の現実を肯定的に評価する視点から別口のアンケートBを作成しました(別紙参照)。
アンケートBをある集会で配布しました。
アンケートの回答はまだ得られていません。
その集会で私は各種の支援団体の案内書を入手しました。
また他の人が別の集会でまた別の多くの支援団体のリーフレットを持ち帰りました。
これらの案内書を整理しながら思いました。
もしかしたら社会に受け皿がないというのも違うかもしれません。
求める人にはそれが自分にとり有効な支援方法とは気付かない・理解できないのではないか。
支援団体側には目前の人にその支援方法が適合するのに気付かないのではないか。
簡単にいえば、接点はあるのに互いにすれ違っているのではないか。
多くの案内書を手にしてふとよぎったことです。
もちろんこれは仮説です。

しかし、多くの案内書とBさんを思いながら、さらに深く読み込んでみたくなります
。 Bさんが望んでいることは単純に復古的なものではなくて、時代の変革期に対応する自然現象のようなものがあるかもしれません。
一つの例をあげましょう。私は「ハーフタイム労働」(週2~3日程度の労働日)が長期の引きこもり経験者には目標になると考えています。
心身の状態はそれが限界であることを示し、何らかの医学的な症状・疾患と判断されそうです。
ところが彼ら彼女らのなかには自分が興味をもち趣味にしていることは心身状態に支障なく多くの時間を当てているのです。
この解釈を私は、人間が労(Labour)、趣(Favorite)、休(Rest)のバランスを〝趣〟に重点を増やす方向で、新たな生活スタイルを求めつつあると考えるのです。
その背景には情報手段の活用が生産性を高めている社会の実現です。
Bさんの希望や状態に基づく詮索はすでに空想の世界に入っています。
ここまでにしておきます。
これまた実践的な経過において見るしかありません。

〔6〕「ひきこもりネット相談」設立へ

2月27日、「引きこもり経験者による引きこもりネット相談」を考えるために、私を含む4名が集まりました。
細かなことは省略して、決めたことを箇条書きにします。
(1)名称を「ひきこもりネット相談」とする。
「不登校と進路ネット相談」と合体する。
(2)このネット相談室が実際に動き出すのを最優先し、相談しやすい条件にする。
「不登校と進路のネット相談室」を生かし改善する。住所、名前、相談料等を変える。
(3)ネット相談室は「不登校情報センター・相談室」で相当の説明をする。体験者の経験に即した回答、劇的な即効性を期待すべきものではない…など。
(4)相談を受ける人のプロフィールを100~150字程度で紹介する。
相談する人は回答者を指定してもいいし、指定しなくてもいい。
(5)相談事例をつくる⇒「相談の実例」から抜粋する。
(6)相談の字数は経過500字+相談事項500字以内とする(「不登校と進路のネット相談室」の基準を踏襲する)。
(7)相談メールを受け取れば「FutokoSNS」内に相談員サークルをつくり、そこに保存し回答者限定で読めるようにする。
回答する人は指名がないときは順番に行う〔自分の順番になったときに回答するのが難しい場合はパスができる〕。
(8)相談をよこした人のリスト(メールアドレスと相談回数)をつくる。
(9)相談料は、回答者を指名しないときは初回無料。
回答者を指名したときや2回目以降は1回の相談料1000円とする。
有料のときは相談料入金を確認のあと回答する。
(10)回答はメールを受け取ったあと、または相談料入金後4日以内に行う。
(11)相談料の支払方法。*現金書留、*郵便為替、*特定の有価証券(図書券、QUOカード)、いずれも不登校情報センター宛。
これは体験者が自分の体験を生かし組織的に取り組む方法です。
しかし上手く行くかどうかは予断できません。Googleの「不登校・ネット相談室」検索では「不登校と進路のネット相談室」は11位に出ていました。
不登校情報センターサイトにわかりやすく掲示すれば、相談者が現われる可能性はありそうです。
これらの〝体験者の体験を生かし役立てる方法〟を、さらに企画し、アピールできるようにします。
いま〝体験者の 体験を生かし役立てる方法〟として出来ているもの・検討しているものは、「体験発表・取材受付」ページ、「親たちと文通します」の呼びかけ、「聴き役をし ます」案です。
ここに「引きこもりネット相談」が加わりました。
これを機会に全体をアピールしていき、それぞれを作動させ、いずれは社会参加の一つの方法にまで持っていきたいと期待しています。

〔おわりに〕

以上が「30代以上の引きこもりへの支援方法」に基づく最近の状況です。
これには半年前から始めたウェブサイト改造計画が作用しています。
ブログの設定やネット相談室づくりが表面に現われ、アフィリエイトもこれらに加わります。
いずれも引きこもり体験者個人の興味関心、得手得意に根ざしたものです。
しかしワークスペースという集団のいる場があって可能になるものです。
個人単位ではなくワークスペースの可能性として考えるのはそのためです。
これらが見るべき成果を得るまでにはさらに工夫を重ね、新たな企画を起こさなくてはならないでしょう。
その間にはアルバイトに就くなどの従来の社会参加の仕方が生きてくることも間違いはありません。
しかし不登校情報センターは〝職場に準じる場〟にわずかですが進んでいます。
なお「30代以上の引きこもりへの支援方法」で提示している他の点については、また機会を得て述べることにします。
〔未完成〕
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