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Center:2011年6月ー親と子の会話

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目次

親と子の会話

〔2011年6月5日、REO主催の講演相談会での下書き。〕
           

不登校とのめぐり合い

子どもの不登校に私が初めてかかわったのは、教育書の編集者をしていた時代です。
もう20年以上前のことです。
教育雑誌を編集するために学校現場の先生から意見を聞く中で、登校拒否の子どもが増えていると知ります。
それにかんする単発の原稿を書いていただいたことがスタートだったと思います。
次に雑誌に特集をしてみると、母親からの相談が多くなるのを経験しました。
それまでの教師から学校教育の様子や子どもの様子を聞くだけの世界から様相が一変します。
母親が話してくる子どもの状況は教師から聴く話と比べますとバラバラでまとまりがない。
しかし、具体的で生きいきとしています。
そこに引き付けられるものがありました。
そんなことから不登校に関心を深め、1991年4月に『こみゆんと』という不登校専門の雑誌を発行しました。
「不登校・登校拒否の情報ネットワーク誌」というサブタイトルがついています。
ちょうど20年前になります。
この当時は登校拒否という言葉が主流でしたが、不登校という言葉が広がり始めた時期だと思います。
この『こみゆんと』という不登校を専門にする雑誌の特徴は、不登校を体験した子どもの言い分をできるだけ多くしていくことでした。
中学生や高校生年代の不登校生の体験手記から始まりました。
やがて文通の呼びかけ欄を設け、そこで自己紹介をする形で自分の体験を書いていくとさらに子どもの体験したことが断片的ですがわかります。
子どもの次に重視したのが親です。
特に母親の意見というか、困っていることを質問などの形にして募集していきました。
子どもにしても母親にしても、とにかく当事者の目線で問題を見ていこうとしたわけです。
専門家としての上から目線によるものは子どもが訴えているものを見逃しやすいと感じていたのです。
子どもは自分に生じていることを上手く言い表すことはできないかもしれない、母親も子どもに何が起きているのか皆目わからないかもしれない。
専門家はわかっているつもりが災いして自分の理解している範囲で事態をまとめてしまうかもしれない。
そういう中で何をいちばん中心にすればいいのかは明確ではないでしょうか。
子どもです。
ことばでは上手く表現していないかもしれないけれども、子どものところに真実があります。
これをいかに理解できる道筋に載せていくのか。
それを考え追求し始めました。
実は、このテーマは20年以上の不登校にかかわってきた今でも、私は達成しているとは思いません。
ただ少しは近づいたところはあります。
これからお話しするのはその点です。

不登校情報センターの立ち上げ

1995年に不登校情報センターを立ち上げました。
主に学校・フリースクールや支援団体の情報を提供することが目的です。
同時に、不登校の子どもにとっては何が必要なのかを自分の体験と感覚によってもっと理解をしたいというものがありました。
不登校情報センターは情報提供する目的以外に、自ら支援者として取り組むことにもなりました。
子どもを理解の中心におこうと考えるならばそれは避けられないことでもあります。
不登校情報センターの取り組みを今の時点で大きく分けると5つぐらいになります。

1、 相談活動です。
主に親の相談です。
不登校を経験した子ども自身が相談に来ることはありませんが、高校生年齢の女子がときたま来ます。
また活動を継続してきたなかで元不登校生や引きこもり経験をした20代、30代の人が来るようになりました。
そういう人からの不登校体験は不登校を理解するのを助けてくれました。
2、 学校と支援団体などの情報提供はたとえば今日のような集会などでしています。
これが2番目の取り組みです。
はじめの7、8年は出版物と相談会でしたが、2004年にホームページをつくりはじめ、いまはホームページによる情報提供が中心です。
私にはパソコンの技術はなく、ホームページをつくっているのは不登校・引きこもりの経験者です。
3、 次が親の会です。10年以上続いています。
10年前と最近の親の会の様子はずいぶん違います。
4年ほど前から別のフリースクールなどと共同で不登校の親の会ができました。
自前の親の会は引きこもりの親の会に変わってきました。
4、 その次が不登校・引きこもりと経験した当事者の会です。
この歴史は1996年8月の不登校情報センター設立の11か月後から始まります。
15年の間に大きな変化がありました。
数年前から主にホームページをつくるワークスペースになっています。
5、 最後に、不登校の子どもへの訪問サポート活動があります。
中学生・高校生年齢の子どもを訪問するのは学生です。
このように大きくは5つの取り組み分野があります。
全体の中心になるのは子どもと家族の関係です。
それを「親と子の会話」として話すのです。

(1)子どもが話してくれないとき

ある話し合いのときお母さんから、不登校になった子どもの様子を話しました。
子どもが「ちゃんと言ってくれればわかるのに、ちっとも言わなくて何のことだかわからなくて困ります」といいます。
それを聞いていた20代になっている不登校の経験者の感想です。
「ぼくは怖くて言えないことが多いです。
うちの親はぼくの言うことをまず否定してきます。
自分の言うことが絶対に正しいとは思いませんが、初めからわかろうとしない人、何か不十分さを見つけそこを衝いてくる人には言いません。
“そうだね”といったん引き取ってその上で親の意見を言うものがないと話すのは無駄です」と答えました。
口下手、特に男性は話すよりも動くのが優先する人もいますから、個人差は出ます。
そういう人も含めて、聞く耳を持つ人に対して子ども(実は大人も)は話しかけていくのです。

多くの父親は不登校や引きこもっている子どもとは話ができなくなります。
初めはそれほどとは思わないのでしょうが、父親の顔をみると子どもが自室に逃げるようになると、ようやく事態がそう簡単ではないとわかるようです。
話ができていたころの様子を子どもから聞くと、すぐに「結論は何なのだ」「そんなことでは世の中では暮らせない」のような一方的なことで終わります。
そうすると父親に話してもムダであり、さらには顔を会わせたくないとなります。
父親を例に挙げましたが、本当は誰に対しても同じことです。
「子どもが話してくれない」のは、子どもの話を聞こうとするのではなく、親が話したいことを子どもに聞かせたいと思っていると子どもは知っているからです。
そこで次の話にすすみます。

(2)親のいうことを聞いてくれないとき

「子どもがいうことを聞きません。
どうすれば言うことを聞くようになりますか」。
ときどきこのような質問を受けます。
答えは簡単ですが、「子どもがいうことを聞くようになる」には時間がかかります。
しかしそれが実現してみると、本当はそんなことではなかったのだとわかります。
「親のいうことを聞いてくれない」ようにするには、まず親が子どものいうことをよく聞いていく姿勢を始めることです。
親が子どものいうことをよく聞かないのに、子どもが親の言うことをよく聞くようになると期待するのは、例外はありますが、一般的には無理、無茶なことなのです。
子どもは親のいうことではなく、「すること」を見習います。
特に思春期以降の子どもにはその傾向は大きくなるように思います。
親が子どものいうことを聞く姿勢をとれば、子どもは人のいうことを聞く姿勢を学ぶのです。
子どもにいうことを聞くのを期待するよりも、親が実際に人の話を聞いていけばいいのです。
子どもは聞く姿勢を身につけていきます。

人の話を聞いていくことは、その人のいいなりになるのとは違います。
相手の意見を聞いた上で、自分の考えや意見を持ち判断するのです。
「子どもがいうことを聞かない」というのは、自分の意見に従わないと思っているのかもしれません。
意見を聞くのが相手の意見に従うのでもなく、意見をいうのは相手を従わせることでもありません。
自分にも相手にも考えや意見があるのを前提にしなくてはなりません。
思春期以降の子どもに対しても基本的には同じことです。
ただ子どもは未経験なことわからないことが親よりもはるかに多いので、親が教えることは多くなります。
それでも子どもは子どもの経験があり、感覚があり、感情があります。
それを聞いていくことが大事になるのです。
それとかみ合えば「子どもは親のいうことを聞きます」。
それは親のいいなりになるようにすることとは違います。
実は既に次のテーマで話す内容に入っています。
ここでは人間は耳で聞いたことより、眼で見た事実をより記憶にとどめ、身につけるものとしておきます。

(3)話し合いにならないとき

「親と子の会話ですから、親が子どもに話していくことはあるでしょう。
子どもは経験不足や周囲のことがわからないから何もいえないのです。
親はそこを教えるのが大事だと思います。それはダメですか」。
こういう人もいました。実際にそうしている人は多いと思います。
自己主張のできる子どもはそういうときに自分の感覚による意見を言います。
不登校の子どもはそういうときに黙り込んでしまうことが多いのです。
このような子どもは気質として不登校になりやすいのです。

親と子の話し合いを成り立たせるには、親がずっと聴く姿勢でいることです。
そういう親に対して、子どもは徐々に自分の考え方を言葉にまとめられるようになります。
初めのうちは、親からみれば、あいまいな、頼りない、現実性にとぼしいかあまりにも小さな現実話にしか思えないものしか出てこないでしょう。
同級生のAさんが自分を嫌っている、私が大事にしていたことを他の人は無視している、というようなことです。
親は子どもに同調してどうしてAさんは…、どうして他の人は…と慰め言葉を考えます。
それらは人のことであって子どもも親もどうすることもできないものです。
このような話はいつまで続けても改善の見通しはありません。
この先は子どもの成長を待つ、図るということになりますが、そこのテーマは今回は入れません。
このようなことは女子に多いのですが、多くの男子の場合は何も話さないことが多いです。
子どもが話してくれないというテーマは先ほど済ませましたので省略します。

さて他の人の話でいくら話してもどうすることも出かないものに戻します。
それを慰めたり他の人の不作為を嘆きながらも、子どものいうことを聴く姿勢を続けていきます。
親は子どもと一体化しないことです。
慰めるのはいいけれども一体化しないのです。
子どもは自分で出口を探します。
親が代わりに出口を見つけ出そうとしないことです。
子どもがどうするのかは一様ではありません。
他の人の問題から自分の問題に転換していく子どもがいます。
これは一つの成長です。
自分の課題、好きな科目とか趣味に入る人もいます。
これも一つの成長です。
人との関係を嫌がるタイプもいます。
その一つが不登校です。
これもある意味では成長ですが、長く引きこもる人がときどきいます。
この場合でも子どもの調子を親が外から壊すのがいいとはいえません。
これらは子どもの成長の仕方であり、思春期の個性がこのような形で現れるということです。
それを大きく見ていかなくてはなりません。
このような状況では、親には自分の意見を述べる機会はないのかと思えるかもしれません。
私はそう思ってもいいと判断しています。
子どもは成長するのですが、それはある種の壁を越えることです。
子どもは自分の力でその壁を越えるしかないのです。

父親の多くは意外とその必要性を感じています。
ただその程度の判断が社会の一般基準になりやすいのです。
母親には子どもと一緒にその壁を壊そうとする人がいます。
これは子どもが成長することにより壁を越えるのを妨害しています。
必要なのは子どもが成長することです。
壁があるからそれを超えるために成長します。
それを見守り応援するのが親の役割です。
親には、忍耐力が要求されるのです。
なるべく手出しはしないで、見守り、聞く姿勢で応援する。それは教える力ではなくて育てる力です。
その姿勢で子どもと話し合うようにすれば、子どもはとてもよい力を発揮していきます。

(4)わからなくてもわかろうとするのが大事

不登校の相談をし、不登校の子どもを応援するために母親だけではなく父親やきょうだいも含めて一緒に家事をする、勉強を教えあう、などをするのがいいようです。
それらを通して家族全体が本音で話し合い、初めのうちは家族内で厳しいときもあったけれども結局、家族らしくまとまっていくのです。
「今度のことは家族にとってもよかった」と子どもが不登校になったことを振り返ったお母さんがいます。
そのお母さんに「何が一番の要因だったと思いますか」と聞いてみました。
「不登校をしていた子どもの気持ちをみんなでわかろうとしたことですね」といいます。
そのうえで「でも、本当はまだわからないですよ。
それはしようがないです。
わからなくてもいいんです。
気持ちを理解しようとするようになったら、子どもにも家族にも十分だったのです」。
お母さんは子どもの不登校を家族関係の改善の形でよかったといいました。

子どもは、これは数年前に不登校をした体験を振り返っていった言葉です。
「今の自分があるのは不登校の体験があるから」というのです。
不登校の体験を全員がこのように肯定的に考えられるようになるのではありません。
しかしこういった人は自分の内向的で気弱な性格をダメだとは思わないでいいと、不登校の時期に関った人の中で感覚的に体験したのです。
むしろその性格や得意なことが自分らしいと思えるようになったのです。
これらのことは家族にとっても、また直接に支援をした人にもそうそうよくわかるものではありません。
それでもわかろうとしていくことができれば、不登校の子ども、一般に人間には十分に伝わるものがあるのです。
子どもの不登校は、子どもが成長していくときの、対人関係に問題を感じているときの、家族の状態をよくしていくときの合図になるのです。
不登校はチャンス到来と受けとめましょう。

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