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Center:2011年7月ー引きこもり支援策

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目次

引きこもり支援策を考える

――杉並区の支援団体意見交換会に出席して
7月4日、杉並区社会教育センターの呼びかけによる「『不登校・ひきこもり』等相談・支援団体意見交換会」に出席しました。

主催の社会教育スポーツ課長のあいさつには不登校・引きこもりの多様な状態への各団体の取り組みに配慮した言葉がありました。

〔Ⅰ〕障害者雇用の報告を聞いて

(1)
今回の意見交換会は、特に引きこもりの社会参加や就業支援に参考となる報告を意図していたようです。
そうであるがために、いま進められている支援方式には引きこもりの中心にいる人への本格的な方策は生まれていないことを、逆に確信させるものでした。
といっても杉並区の取り組みは、今回の交換会に見られるように行政部門とNPOなどの民間部門の協力関係を強める点が色濃く現われており、全国的にみても優れていると認めなくてはなりません。
それとは別の面の評価です。
報告された東京しごとセンターの報告は、支援の呼びかけ対象としては引きこもりを含みますが、成果として現われるのは障害者の社会参加や就業です。
広義の引きこもり支援の成果は、障害者に姿をかえて公表されるしくみになっています。
その意味で報告された支援対象の多くは二種類の特殊な引きこもり状態の人です。
すなわち元もと障害者範囲の引きこもりであるか、比較的元気のいい引きこもりです。
引きこもりの中心層をなす多数はそこにはいません。
その点が現在進行している引きこもり支援策はまだ本格的ではないと判断するのです。
東京しごとセンターの報告は以上の点を確認するものです。
システムの説明であって私には内容は乏しいものでした。
(2)
ワークサポート杉並(杉並区障害者雇用支援事業団)の報告は初めから障害者に範囲を設定している取り組みです。
上に述べた点は同じですが、障害者への対応が引きこもりへの対応の参考になる内容がありました。
報告を聞いた後、私は2点を質問しました。
(A) 一つは障害者と引きこもりの区別、見立ての違いがどうされているかです。
答えは両者に壁はなく障害者扱いになります。その診断に医師が関与します。
とはいうもののこの点は引きこもり対応団体全部に共通する課題なのです。
ワークサポート杉並が特別そうなっているわけではありませんし、障害者対象団体なので問題はないのです。
(B) もう一つの質問は、障害者とはいえ、身体障害、知的障害、精神障害そして今後は発達障害が加わりますから、それぞれを分けて見る必要があります。
引きこもりの視点から見れば、精神障害および発達障害の様子がある程度近いのでそれが参考になります。
ワークサポート杉並からいただいた資料に精神障害者の様子が具体的に見られます。
雇用状況の注意書に「精神障害者の短時間労働者は0.5カウントと計算」とあります。
もう一枚の「ワークサポート杉並とは」にはもう少し具体的で詳しい説明があります。
「5.法定雇用率上の就業時間数など――○身体障害者、知的障害者、精神障害者(週20時間から雇用率のカウントOK)。○精神障害、発達障害のある方の場合、週10時間からのステップアップ雇用制度あり(詳しくはハローワークへ)」。
「6. ワークサポート杉並を利用するには――○就労または就労準備(訓練)ができる状態であること(主治医の確認が必要な場合あり)」。
ここで述べていることは、とくに精神障害者には週5日のフルタイム就業が困難な人がある割合以上いることを物語っています。
障害者支援の現場はそれを認め、カウントの仕方を特に設定しているのです。
実は引きこもり支援においてもこの事情は同じであり、支援や就業の困難さはここに関係するのです。この点は後でまた見ます。
(C)もう一点ありますが、この質問はしませんでした。
いただいた資料の「杉並区障害者雇用支援事業団の就職状況」の表です。
その表のなかに「E.主な仕事内容別状況」があります。
平成22年度でみますと合計62名の就業者のうち、事務35(56%)、清掃13(21%)、バックヤード等7(11%)、食器洗浄3(5%)、接客1(2%)、介護2(3%)、図書1(2%)となっています。
過去においては喫茶、クリーニング、パン製造があります。
このうち事務とは何かを具体的に聞くべきであったと思います。
その内容によっては期待もできるし、みすぼらしくもなるからです。
いずれにしてもこの仕事内容状況は障害者全体のことです。
いちばん参考になりそうな精神障害者の就職先を個別に見て判断しなくてはなりません。

〔Ⅱ〕不登校情報センターの取り組みとの対比

(1)
ここからは私が実感している引きこもりの就業支援の前進には何が必要かの話になります。
引きこもりの人、特に30代の後半以上になると少なくとも80%以上(もしかしたら90%近く)は、週5日のフルタイム就業は困難です。
引きこもり多数者の可能な時間的就業条件は、知るかぎり3パターンあります。
(A)週2~4日のフルタイム就業(4日就業は珍しく2、3日就業が多い)。
(B)1日2~3時間就業の週5日就業。
(C)週5日フルタイム就業を3か月程度行ない、その後数か月の休職の繰り返し。
この時間状態を何らかの事情で超えると、明確な精神障害の世界に入る、対人接触を強く拒む様子の引きこもり生活に戻る実例がきわめて多くなります。
なかには人生に絶望する人もいます。
引きこもりの就業支援はこのあたりを目標にすべきものと考えます。
「そんなことでは生活ができない」という意見がありますが、対応のしかたは別に考えるしかありません。
不登校情報センターのワークスペースは上の範囲の条件設定をしています。
週1日から4日、基本的に午後1時から午後5~7時が作業時間です。
45分の作業と15分の休憩を繰り返しますが、実際には個人差が大きく休み時間は全体としてこれよりも短い人が多いです。
遅刻とか早退は制度としてはありません。
これがベストと考えているわけではありませんが、成り行きからこうなったものです。
(2)

作業内容はパソコンによるウェブサイト制作をしています。
文書入力、パソコン初心者への指導、それに関連する事務、会計や掃除などが加わります。
ときどき学校案内書のDM発送作業が入ります。
全体としてパソコン作業中心です。
別の取り組みとして手芸品、工芸品、創作活動を推奨していますが、これはまだ定式化するほどのレベルには到達していません。
ワークサポート杉並の仕事内容状況の対比を考えるのはこの点です。
ワークサポート杉並が事務としている部分がよくわかりませんが、引きこもりの場合、単純作業や経験が蓄積されない仕事に向かうだけでは上手くいかないと思います。
単純作業のなかに、日常業務のなかに、分担する作業のなかに、各人が自分なりの視点や好みや目的を取り込める条件がいります。
それが蓄積されるとある種の専門職に育つ内容が含まれる要素がほしいのです。
企画的なもの、職人的なもの、創作的なものがある割合で選択肢にないとダメではないでしょうか。
(3)

不登校情報センターの引きこもり支援の向かう先は現在のウェブサイト制作・運営を収益のあるものにするしかない、という感覚を強くしたのが今回の2つの報告を聞いて思ったことです。
いま不登校情報センターで作業している人を報告された形の就業支援に向かわせることは複数の理由から困難であると感じました。
まず就業の時間条件は精神障害者に見られる「短時間労働者」になります。
仕事内容は未確認部分もありますが概ね肯定的ではありません。
「いまさら就職してもどうせ使い走りか、単純な肉体労働でしょう?」と問う彼らがもつ疑念に答えられないからです。
不登校情報センターの引きこもり支援の向かう先は就職型ではなく、集団的自立型または複合SOHOと考えられます。
その意味で特殊なものです。
他の引きこもり支援団体にそう多く通用するとは思いません。
一つの見本をつくるのが目標になるのかもしれません。

〔Ⅲ〕環境・社会的条件づくりの内容

不登校情報センターのウェブサイト制作・運営を自立的な仕事場にする困難はいろいろあります。
それは内部にもありますが、環境条件・社会的条件をつくることも必要です。
その環境面・社会的条件として必要な内容を見ていきます。
(1)
初めに生活保護の関連です。
引きこもりの相当多数は生活保護を避けようとしています。
生活保護を受けることは「人生のゲームオーバー」と感じる人は多いのです。
無言のうちに(問い詰められれば)選択のなかに自死を考える人も少なくありません。
生活保護の周囲の福祉制度がほしいです。
引きこもりへの支援としては“相談役を兼ねた大家さん”のいる低家賃集合住宅(公営・準公営)が現実的ではないでしょうか。
自立はつながりのなかにあります。
それができる小コミュニティづくりです。
収入が少なくても“清貧な生活”ができる条件ができれば、引きこもり支援になります。
なお“清貧な生活”は押し付けるものではなく、本人が選ぶものです。
また可能な条件で働き収入を得ることができたら、相当割合を自分の収入に当てられる生活保護制度の改善もその一つです。
生活保護から抜け出す道筋を用意したいものです。
(2)
全国引きこもりKHJ親の会は引きこもり支援を障害者福祉に統合しようとしています。
それは引きこもり支援が障害者支援の形で実現している現実に適合させるものです。
一貫性の追求において筋は通っています。
しかし、引きこもりの当事者の感覚はこれと同じではありません。
彼ら彼女らは自分を精神障害の範囲にいると意識しないだけでなく、引きこもりとしての意識のない人も多いのです。
医療機関に行かないだけではなく、相談・支援機関にも行きません。
そういう人がいちばん多いと思います。家族もまたそうです。
家族の様子、当事者の様子は細かく見ると、複雑な内容があります。
医療不信、投薬不信、支援団体不信があります。
「どうせ何もできないはず」という諦めがあります。
自分の性格の問題、個人でどうにかすべきこととする意識もかなりのものがあります。
これらをこえて引きこもり当事者を医師に受診させ、精神障害の有無を判断させようとするのは無理筋の仕組みです。
引きこもりKHJ親の会の方向に反対とはいえませんが、当事者の意識とは離れていて、該当者はかぎられると思います。
(3)
引きこもり支援が障害者支援の形で実現する問題も指摘しなくてはなりません。
これは判断者の問題が関係します。引きこもりは病名ではなく状態像です。
状態像まで医師の守備範囲とするのは範囲を超えています。
たとえば不登校は学校への出欠状況によって学校で把握されます。
引きこもりも実際に対応している現場に判断を任せるべきでしょう。
判断基準を設定したうえで、相談・支援・訪問を続けている保健所、地域若者サポートステーション、教育・心理相談室・NPOなどに任せるのが自然なことです。
このような手順により厚生労働省を含め、引きこもり支援効果を障害者支援としてではなく引きこもり支援として把握できるのです。
少なくとも現状よりも実態に近い状況把握ができます。
それにより一層の効果的な引きこもり支援を策定できるでしょう。
(4)

最後に内部の環境条件にも一言。
当事者の状態を変えた上で肯定するのではなく、もって生まれたものを肯定することです。
心理学を学んだ専門職はそのことをよく承知しているはずですが、就業支援においては「変わること」を求めています。
二重基準です。
ほかにもいろいろな要素がありますが、それに比べるとこの二重基準の要求は、初期設定プログラムがおかしいと感じさせるほど、重みを持ちます。
当事者の実態に近づく支援策でなければ、本格的な支援策は生まれてこないのではないのかと心細く思うところです。

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