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KHJ全国ひきこもり家族会 への意見

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KHJ全国ひきこもり家族会 への意見

〔2023年12月〕
先日に続く「ひきこもり基本法(案)」への意見で、背景説明に当たる2点です。巨視的な立場と微視的な経験を書きました。
「ひきこもり基本法(案)」について、2つの提案・意見を送ります。
2,3日後に、背景説明になる2つの説明文を送ります。(2023年12月18日)

(1)ひきこもり認定者について―ひきこもり基本法(案) その1
都内のIT関連の会社がひきこもり経験者の雇用を進めているとのTV放映がありました。
連絡をして数日後に関心をもつ当事者5人ほどで同社を見学させてもらいました。
いい企業ができたとの感想が第一ですが、そのとき気づいたことが別に1つありました。
同社はある精神科医に委託して当事者の医学的診断を求めていると案内書に書かれています。
その医師は「ひきこもりを診断するのではなく、精神科的疾患の有無を診断する」旨を記していました。
医師としては率直な表示と思います。
医師にはひきこもりを診断できないのではありませんが、それは当事者(受診者)の生活・行動状態を知ったうえで診断になるでしょうが、その条件を持つ医師が多くはないと思えます。
では誰が判断するのでしょうか(診断ではなく判断とか認定)。
その点を考えて、葛飾区で活動していた当時、区長宛に要請をしたことがあります(処理は区長室室長)。
実際にひきこもり(と思える人)に継続して関わっている人が、判断・認定するのがいい、という主旨です。
それには特に回答はありませんでしたが、福祉部門の数人の人と話し合う席を設けていただきました。
誰が判断・認定するかに左右される実際的なケースがなく、目的が明確でないこともあり、その回答を得ないまま時間がすぎました。
2019年に江戸川区でひきこもりへの大規模な調査が行われました。
厚労省の「ひきこもり認定基準」を示したうえで、調査をした人と受けとった人が「ひきこもり」を判断し、アンケートに回答しました。
調査する人(民生委員など福祉担当者)には一応のレクチャーの機会はあったと思いますが、回答の多くは、送付を受けた世帯の人です。
回答者には特に期間6か月が意識されなかったと思います。結果として「ひきこもり」の範囲は拡大されてカウントされました。
※これは必ずしも長いわけではありません(念のために言っておきます)。
これらの経験は、誰がひきこもりを認定するのかを考える材料になります。
対象者の生活・行動状態を少なくとも半年以上継続的に知る立場にあり、行動面・心理面を知る条件のある人が該当すると思います。
このうち心理面は一般家庭の人に求めるのは難しいと考えます。
しかし問題はさらにあります。家から一歩も出ない、自宅からあまり出ない、同居する家族ともあまり顔を合わせない状態の人もいます。
このなかには、同居する家族が自宅にいないときを見計って外出するタイプもいますからさらに複雑です。
それでも行動面や生活面については、家族が判断することは可能なこともあるでしょう。
こうして誰がひきこもりを認定するのか問題の「解」に近づきます。
ひきこもり等の居場所、相談機関(医療、心理、福祉を含む)の運営者。
継続的に家族の相談を受けている人で、家族の話によってそのひきこもり的家族の様子を知ることになる人。
訪問活動(訪問サポートをくり返す人だけではなく、民生委員、福祉職員、保健師などを含む)により継続的に生活、行動状態を知る人というのが「解」になると思います。
「ひきこもり」を公式に定義し、その研修を終えたこれらの人を、「ひきこもり」認定資格者とするのを私の考えとして提案します。
不登校の認定者は、その生徒が在籍する学校長になっています。こちらはシンプルです。

(2)ひきこもり支援策に3つの提案―ひきこもり基本法(案) その2
―東京都江戸川区のひきこもり実態調査に関して
2019年に東京都江戸川区が、行政機関として大規模な実態調査をしました。その調査報告書をみて、翌年4月に私は江戸川区長宛に要請をしました(私は江戸川区の住民です)。
提案した具体策を参考には支援策3つの部分を紹介します。
1つはひきこもり当事者への支援です。もう1つはひきこもりを応援する側への支援です。
(1) 江戸川区への要請のなかでの当事者支援を特徴的に言えば動きの少ないひきこもり当事者が動きやすくすることです。
ひきこもり当事者が援助団体の開催する会合、相談機会等に参加するときは交通費を支給する。
参加しやすい条件づくりにより援助団体等の利用を推進します。
居場所等への当事者の参加はほとんど全部が無料です。
民間ボランティアの取り組みであって、これは行政の無為・無策であるとともに、民間の対応依存型のものです。
ここも見ておかなくてはなりません。 他にも当事者への直接の支援には近親者が死亡したときの葬儀費用なども提案しました。
(2) 支援団体——当事者が医療・保健および心理カウンセリング等を利用するときは、相当額以上を援助する。
このうち心理カウンセリングについて実情を報告しなくてはなりません。多くの心理相談室がコロナ禍を通して閉鎖されています。
それ以前からも事業としてはかなり難しい部分があったのですが、コロナ化で現実化しました。
心理カウンセリング業務を公的な資格制度にする取り組みにより2014年に公認心理師ができました。問題は、開業型心理相談室の経営困難があります。
公認心理師の制度はできましたが、あとは放置されています。それぞれの自助努力に任されました。
民間資格の臨床心理士ができた時は、スクールカウンセラーの導入が積極的に行われましたが、公認心理師ができても何もありません。
支援団体のうち開業型心理相談室を上げましたが、利用者を増やすだけではなく、産業政策としての支援策も必要です。
心理相談に限らず、相談業務は広範になっており、サービス産業として評価していくものだと考えます。
不登校情報センターとして開業型心理相談室の状況とそこからの要望を調査中です。
相談員有資格者の処遇も思わしくはありません。
ある自治体が適応指導教室の職員募集をしているのを見ると、年限1年(実際は11か月)、給与12万5000円ほどでした。
非正規・時限1年・低給与です。
これは例外ではなく多くの自治体が採用する方式の1つです。
(3)もう1つの要請は自治体のひきこもり担当部署を統括的にすることです。
自治体のいろいろなセクションでひきこもりも、就労困難も、貧困もその他のことも受け付けるのをやめるのではありません。
各セクションで集まった事情を1カ所に集めて総合的に検討し対応策をつくる必要性があります。
ひきこもりの関しては特にそうなると考えます。
それがひきこもり対応部門の設立です。

江戸川区のひきこもり対応策には、全戸調査に近い実態調査(2019年)以降、みんなの就労センターの設立(2022年)、毎月の当事者の相談会・意見交換会、居場所・駄菓子屋の設立など特別な動きがあると評価できます。
私の提案が参考になったのではなくて、独自の考え方と計画によるものであり、私には詳しい事情は分かりません。
注目すべき内容になることを期待しています。

ひきこもり当事者が生活でき、動ける条件を支援すること、支援者側が事業者として成り立つように政策立案すること、これが日本経済をコストカット型から再生する道です。
それがひきこもり個人対応型の支援を下支えする厚さのある社会的なひきこもり対応策になります。
支援というと国や自治体の財政支出、すなわちマイナス要因と考える向きがありますが、それはコストカット型の経済政策の考え方です。
当事者も支援者も、国民として生活し消費する人であり、そして物品・サービスの生産者になります。
ここを豊かにしなくては、経済は停滞します。
経済が停滞する中ではひきこもり再発要因の大きな部分は継続しますし、経済が発展しゆたかになるなかで、ひきこもり問題は解決されやすい環境条件になります。
新しく商品開発が進み、各種の相談サービスも生まれましたが、狭い市場のなかでパイを分取るミニ競争にまき込まれています。
日本経済30年の停滞とはそのようなもので、各種の相談サービスもその1つでした。
ひきこもり146万人をマイナス要因ではなく経済的面からの経済回復要因とみなされる方向に転換していく、それこそコストカット経済からの脱出であり、マクロ的視点でのひきこもり対応策になります。
KHJ家族会のひきこもり基本法設立の動きはこれにマッチしていくものと考えます。


(3) 相談業務は成長が期待できるサービス産業の1つ
―ひきこもり基本法(案) その3(背景説明)
私はひきこもり支援策の一環として、官民の相談サービス業務を後押しする公的支援を考えます。財政出動といいたいぐらいです。
その代表例として独立開業型の心理相談室を経済成長政策の一部として発展させる提案をします。
相談業務はサービス産業の1構成部分です。
職種・職名・資格名は複雑で(カウンセラー・セラピスト・心理師・相談員・指導員・コンサルタント・コーディネーター)、これに医師・弁護士・教師・社会福祉士・保健師・精神保健福祉士・民生委員、一般行政職の一部…などが加わります
就業形態は多様で(個人開業・企業就業者・公務員・副業‣嘱託・フリーランサーなど)、
分野はきわめて広く(医療・保健・福祉・介護・子育て・保育・教育・職業・就職・生活・家族・金融・産業・恋愛結婚・住宅不動産・法律・行政など)
、 範囲を決めがたく全容はよく把握されていないと感じます。
これを提案する論拠は4点あります。

第1は、日本の就業人口の割合全体では、第3次産業(サービス産業)の割合は就業者数で6割以上を占めており、さらに増大傾向にあることです。
GDP構成でも6割以上であり、この傾向は先進国に共通します。
経済成長政策の中心を土木建設事業からサービス産業に移す必要があります。その中で相談サービス業務を考えるのです。
第2は、相談サービスには、直面する課題が深刻であり日本的な困難さを持つものがあり、その1つが精神心理相談です。
人々の自己評価の低さ、抑制的な表現になる日本的な困難がよく表われています。社会的病理の表われとなるひきこもりはその典型です。
相談業務は相談室ワークにとどまらず、さまざまな実践的行動を伴うことも少なくありません。先進国共通課題と日本的困難の両方に取り組んでいます。
第3は、ひきこもりには子育て、家族関係、介護、人間関係、社会参加・行動の不安感、孤立・孤独などに近接する領域にあります。
ひきこもりへの対応は、病理的領域と生理的領域の双方に関わる役割をもちます。
そこでの成果を挙げることは近接領域への対応全般に影響するものとみられます。

第4は、サービス産業としての心理相談業の後押しは、日本の産業創出の一部を構成します。
現在その規模がどの程度(人数・所得など)になっているのかは、必ずしも明確ではありませんが、日々拡張していること(成長分野)は確かです。
松江英夫『「脱・自前」の日本成長戦略』(新潮新書、2022年)では、日本が経済発展に進む4つのカギを握る産業創出分野の第一に「医療・健康」を挙げています。
他は「環境・エネルギー」・「災害対策」・「教育」であり、いわゆる大規模な土木建設事業が中心ではありません。
この4つの産業創出分野は「内容の継続性と課題の深刻さ」が共通するもので、「継続的な代替需要が生み出され…新たな産業や雇用につながり」「解決策が生み出されれば、そのソリューションを広く海外に輸出が期待できる」(p162)とまで述べています。
ひきこもりとその相談分野は、末端の一社会問題というよりは、社会問題解決の先端部分として取り組む意味があります。
そういう意味で、困難をもつ人への個別支援とともに長期低迷という日本社会の社会的病理を復興させる視点からもとらえられる課題になります。

(4)訪問活動開始にも意志表示の機会をつくる
ひきこもり基本法(案) その4(背景説明)
私は少なくとも50人以上、とらえ方によっては70人ぐらいの人への訪問活動の経験があります。
居場所に通っていた人やある程度外出していた人への訪問もありますが、その多くは自宅から外出しない、外出がきわめて少ない人への訪問活動です。
自室からもほとんど出ない閉じこもりとか立てこもりといわれる人が多いのです。
ひきこもり164万人(2022年調査)としていますが、このなかでこの外出しない人、外出困難という人が、私には特に気にかかる人たちです。
訪問し、顔を合わせ、何かの話をくり返すなかで、外出につながった人がいます。
就業につながった人もいます。それらは訪問活動の基本的目標とその延長の成果です。
しかし、結果が乏しい人もいます。20回以上訪問してついに一度も顔を合わせなかった人、部屋のドアをへだてて一言のやり取りに終わった人もいます。
これらの反省すべき点を考えてみました。 訪問活動をくり返すなかで、私はある時期から手順の定式化を試みました。
訪問する前に本人の意志表示の機会を設けることです。家族と相談しながら、期限を切って(1週間か10日以内に)、本人の意志表示の機会を設けます。
具体的には、部屋の入口ドアかよく使う冷蔵庫に紙に書いて伝えます(口頭では消滅します)。そこにいくつかの選択肢を示します。
たとえば①カウンセリング・相談室(~具体名を書く)に行く。
②ハローワークまたはサポートステーションに行く。
③パソコン教室・会話教室に通う。
④コンビニでのバイトを始める。
⑤訪問相談の人に来てもらう。
⑥自分で考えたこと(   )をする。——というものです。
この項目は家族から様子をきいて、それに沿った内容を4~5項目にできるだけ固有名詞をあげ具体的に例示します。

この例示のなかでいちばん選びやすいのは実は⑤の訪問相談の人に来てもらうことになるのですが、これは結果です。
これ以外の選択⑥で、親戚の家業を手伝う人、親の知り合いの〇〇さんの所に行く、近くにアパートを借りて一人住まいをする…というのもありました。
それでも訪問相談の人に来てもらう⑤が圧倒的に多かったのです。
外出の困難なひきこもりの人には、この選択はごく自然なことではないでしょうか。外出ではなく来てもらうのですから。
ただこれを提示する時期は、本人が「そろそろ何かをしないとまずい」と感じている時期である必要があります。
家族から聞く様子で推察するのですが、全く平穏な状態のなかでいきなりこの提示をされても心が動かないと思えます。
そういう条件を家族と相談しながらつくっていくのです。
こういう形の意志表示は、ひきこもりの受身状態のなかでの意志表示です。
それでも本人が「訪問相談の人に来てもらう」という意志表示をしたことに意味があります。
こういう受身の形ではあっても意志表示の機会がなく、「来てもらえば何とかなる」という漠然とした状態での訪問活動の開始は、成功確率は低くなります。
訪問を繰り返しながら本人と一度も顔を合わせていない、何かのやり取りをした記憶がない人の多くはこの過程が不十分であったのです。
どんな場合でも、どんな形でも本人の意志表示の機会を設けるのが道理に合っています。

ただし、これは私の個人的経験による対応ケースです。
家族ともめったに話さない、顔も合わせない状態などの深いひきこもり状態の人への対応はどうするのか、経験を経た提案にはなりません。
そういうケースも含めて考えなくてはなりませんが、いわゆる「引き出し屋」的な強制的な方法は逆効果であり、それ以前に人権無視のひどい扱いです。
〔2023年12月〕

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