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| − | 子ども世界の消失
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| − | 高度経済成長期の家族（家庭）の様子を〈みか〉さんが描いてくれました。家庭がゆたかになったことにより、親がより支配的になったということにしましょう。
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| − | この時代の前後で変わったことのもう１つは、「子ども世界」の消失ではないでしょうか。高度経済成長期以前、たとえば私の子ども時代には子どもが多くいました。私は5人きょうだいでしたが、決して珍しくはなかったのです。最近では一人っ子は多いし、二人の子どもがいると平均以上の子ども数のようです。
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| − | 子どもが多い時代には年長者が、生まれたばかりの乳幼児を背負っている姿はよくありました。そういう姿を最近見ることはほとんどありません。
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| − | 親は忙しいこともあって、子どもから目を離す——というよりも子どもは子ども同士で仲間をつくって遊ぶ集団をつくるのは珍しいことではありませんでした。この子ども集団、親ないし大人の管理あるいは指導の全くない子どもだけの集団、これが「子ども世界」です。
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| − | 他方では〈暗黙知〉かもしれませんが、大人は子ども同士のこと、とくにけんかとか行き違いには、口を出さないことが了解されていたように思います。暴力的なことやいじめという事態になれば違いますが、子どもの内側でのあれこれには、親も周囲の人も子どもに任せる（いつもうまくいったとはいえないにしても）ことが常態であったと思えます。
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| − | こういう「子ども世界」がどのように生まれたのか、その全体実態はどのようなものかはよくわかりません。私の経験の中では、特に男子のばあいは、小学3～4年生のころにはよく「秘密基地」をつくり、また異年齢の、小学校入学前の子から中学生ぐらいまでを含む、ときには十人ぐらいのやや固定的なグループもあったと思います。
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| − | この集団のリーダーは「ガキ大将」とされ、このばあいの「ガキ」とは子どもの代名詞で、その大将格というわけです。幼児は「ミソ」と呼ばれ、弱いままで特別の位置に入れてもらいました。
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| − | 私はその固定的なメンバーではありませんでしたが、あるとき十人ぐらいの集団に加えられ、町の周辺を隊列を組んで行進していた記憶があります。
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| − | 「ガキ大将」格の子どもは、元気があり、ときにはやんちゃな子もいたと思います。そういう子が、年少の子をメンバーの一員として扱う経験は、とても貴重な経験として大人になり、いい父親になったのではないかと思うのです。
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| − | 家庭が貧しくても、着るものが粗末であっても、ここに加わる子どもたちは家庭とは違う別の生活経験をできたのです。ガキ大将のいる固定的な集団でなく●●親をはじめ大人はいません。しかし普段はメンバーから認められ、野山をかけめぐり、集団ゲーム（ビー玉やかくれんぼなど）に参加していました。
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| − | このいろいろなバリエーションをもつ「子ども集団」「子ども世界」が消失したことは、高度経済成長期以降の子どもの成長する環境では、注目していいことだと思います。
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