相模原市児童相談所
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相模原市児童相談所
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◆強制介入ためらう児相 相模原中学生自殺 経験不足の指摘も
「家に帰るのが怖い」とおびえていた。
親からの虐待を理由に、相模原市児童相談所に保護を求めた中学2年の男子生徒が自殺を図り、死亡した問題。
何度もSOSが届いたのに、強制介入をためらった児相の対応に疑問の声が上がる。
保護をするかどうか以前に「子どもに寄り添えていたのか」との指摘もある。
分岐点は少なくとも4度あった。
2013年11月、小学6年だった生徒は顔にあざをつくって登校した。
学校は、市の中央こども家庭相談課に通告。生徒は父親の暴力を打ち明け「家に帰るのが怖い」と訴えた。
同課は、一時保護をする権限のある児相に通告した。
関係者によると、相談課は一時保護を含めた対応を提案したが、児相は「そこまでの事案ではない」と主張。
結局、同課主導で様子を見る案に収まった。
生徒が自殺を図る1年前のことだ。
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次は中学1年の5月。
生徒が深夜、虐待を訴えてコンビニに逃れ、警察に保護された。主導が児相に切り替わった。
相模原の児相は、政令市移行に伴い、10年に開所した。市幹部は「経験値」を課題に挙げる。
担当した児童福祉司も児相勤務経験は浅く、当時は1人で90例を担当し、負担は大きかったようだ。
3度目は14年10月7日。児相での通所の親子面接が、親の意向により6回目で打ち切られた。
生徒は「施設で暮らしたい」と訴え、児相が一時保護を提案したが、親は拒否。職権による強制保護もできたがしなかった。
最後は29日。学校が生徒のあざを確認。生徒は「父親に投げ飛ばされ、ベッドに腹をぶつけた」。
学校は担当の児童福祉司に伝えたが、児相幹部には報告されず、SOSは宙に浮いた。
ある幹部は「経験の浅さが出たかもしれない。個人の責任にせず、組織として検証が必要だ」と話した。
生徒は11月15日に自殺を図り、入院した。
今年2月、意識が戻らないまま死亡した。
□ □
厚生労働省が示す一時保護の判断基準は「子ども自身が保護・救済を求めている」を第1項目に掲げている。
相模原児相がためらい続けた背景に何があったのか。
ある政令市の児相のベテラン職員は「強制保護は親との間で訴訟も含めたトラブルに発展する可能性もあり、経験や力量が問われる」と考える。
その上で「子どもの声を第一にするのが原則。『信じてくれない』と疑われると、本音が聞けなくなる」と語る。
保護せず、在宅支援を選ぶなら「その子の生きる力を引き出さなければならない」。
地域に声掛けして逃げられる場所をつくり、「一人じゃないよ」と何度も伝える。
いざというとき、頼りにしてもらえるように。
野球と学校が大好きだったという男子生徒。
最後は、その心の内を児相に告げることなく、命を絶つ道を選んだ。
〔2016年4月8日・貧困ネット、平成28(2016)年3月30日 西日本新聞 夕刊(共同通信)〕
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◆中学生自殺 児相の対応検証へ 相模原市、厚労省も調査方針
両親から虐待を受け、神奈川県の相模原市児童相談所(児相)に通所していた男子中学生が自殺した問題で、同児相の鳥谷明所長が22日に記者会見し、「対応は適切だった」との認識を示した。
「家に帰りたくない」と訴えていた生徒の保護を見送っていたことについては「我々の指導で親子関係は改善していた。職権で(強制的に)保護する要件はなかった」と強調した。
これに対し、市は同児相の対応を検証し、厚生労働省も経緯を調べる方針だ。
鳥谷所長の説明などによると、児相と市は2013年秋、学校からの通報で虐待を把握し、両親への指導を始めたが、殴るなどの虐待は止まらなかった。
「児童養護施設で暮らしたい」などと何度も訴えていた生徒は14年11月中旬、自宅近くの親族宅で自殺を図り、意識が戻らないまま先月28日に死亡した。
児相は14年6~10月、親子を通わせて計6回の面接を行ったが、10月上旬に両親が指導内容に反発し、通所が途切れた。
10月末には学校から「また虐待が起きた」との連絡があったが、家庭訪問などは行わなかった。
鳥谷所長は「(担当職員から)報告がなく、状況把握ができていなかった。もっときちんとした対応ができたかもしれない」と説明した。
ただ、生徒の保護を見送り続けたことに関しては、「両親が面談の度に暴行をやめることを約束したことなどから、急迫した状態ではないと判断した。その都度、適切に対応してきた」と繰り返した。
さらに「私たちの指導で親子関係は以前よりも良くなり、両親の暴力も減っていった」とし、「保護は職権乱用にならないよう慎重に実施していかなくてはいけない」とした。
市は今後、弁護士や医師らで構成する審議会に同児相の一連の対応を報告し、検証する。
職権保護について、ちゅうちょせず運用するよう指針に明示している厚労省も調査する方針だ。
一方、市関係者によると、生徒の母親は息子の死について「私たちが今後、懸命に生きることでしか償えない」と話しているという。
児相の対応については「子育ての苦労が伝わらず、通えば通うほど親子関係が悪くなった」と話しているという。
〔2016年4月1日・貧困ネット、平成28(2016)年3月23日 読売新聞 東京朝刊〕
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◆児相保護せず 中学生自殺 両親から虐待 何度もSOS 相模原
両親から虐待を受けて相模原市児童相談所(児相)に通所していた男子中学生が自殺を図り、今年2月末に死亡していたことが市関係者への取材で分かった。
男子生徒は児相に保護してほしいと繰り返し訴えていたが、相模原市児相は見送っていた。
児相には、親の承諾なしに強制的に子供を引き離して保護する職権が認められており、厚生労働省は指針で、子供の安全を最優先にちゅうちょせず運用するよう求めている。
◇強制的な対応 見送り
市関係者によると、男子生徒の通っていた学校の教諭が2013年秋、生徒の顔のアザを不審に思って市に通報。
相模原市児相が虐待案件と認定した。
両親は児相の呼び出しに応じ、定期的に男子生徒と通所して指導を受けていた。
ただ、暴力や言葉による虐待行為は止まらず、男子生徒は深夜にコンビニ店に駆け込み、警察官に保護されたこともあった。
児相職員には「家に居場所がない」「児童養護施設で暮らしたい」などと、度々SOSを出していたが、児相は「緊急性はない」として保護しなかった。
しかし、14年10月上旬、両親が児相の指導に反発し、男子生徒を通所させることをやめさせた。
児相は男子生徒の学校に「注意して見守ってほしい」と依頼したが、この時点でも保護を見送り、両親や男子生徒と連絡を取り合うことも中断。
同月末には、学校側から「虐待が続き(男子生徒が)児相に助けを求めている」との通報を受けたが、家庭訪問などを行わず、対応を学校に任せていた。
男子生徒は、この半月後の11月中旬に家を飛び出し、近くの親族宅で首をつった。遺書はなかったが、家を出る直前にも親から暴力を受けていた。
男子生徒は意識不明の状態が続き、約1年3か月後の先月28日に死亡した。
学校関係者は「野球が好きで明るい子だった。あれだけ助けを求めていたのに救えなかったのはやり切れない」と語る。
相模原市児相の鳥谷明所長は取材に対し、男子生徒の保護に両親は同意していなかったとしたうえで、「職権で保護するだけの差し迫った状況ではないと判断したが、亡くなった事実を重く受け止め、このようなことが二度と起きないようにしたい」としている。
児童虐待に詳しいNPO法人「チャイルドファーストジャパン」の山田不二子理事長(医師)は今回の児相の対応について、「少なくとも両親が通所を拒絶し、家庭で何が起きているのかを把握できなくなった時点で、ただちに職権保護すべきだった」と指摘する。
◇法整備の進展に 現場追いつかず(解説)
子供を保護者から引き離す一時保護の中でも、職権保護は承諾を得ないで行う強制的な対応だけに、難しい判断を迫られる。
だが、相模原市児相は、自殺した男子生徒のSOSを何度も聞いていた。
その命を守れなかったという結果は重い。
厚生労働省は職権保護について「保護者の反発をおそれて控えるのは誤り」と指針に明示。
今国会でも、親子を引き離す必要がある虐待への対応をしやすくするため、児相内に弁護士の配置を義務付けるなどの法改正を目指している。
しかし、法整備の進展に現場が追いついていない実態がある。
相模原市児相の2014年度の職権保護は、一時保護全体の7%の19件。
市関係者は「保護者と対峙(たいじ)する職員のスキル向上、体制強化がなければ、権限が与えられても行使できない」と語る。
名古屋市児相は12年度、警察官を加えた一時保護専従チームを設置した。
これを機に職権保護が大幅に増え、今年度は1月末時点で404件と全体の67%を占めている。
児相の権限強化を「子供を守る」ことにつなげるためには、職員の育成、そして警察、自治体などとの一層の連携が求められる。
〈児童相談所〉
児童福祉法に基づき、すべての都道府県に設置が義務付けられた児童福祉の専門機関。
全政令市にも置かれており、中核市も設置できる。
18歳未満の子供や家庭について、様々な問題の相談、診断・調査、指導を行うほか、被虐待児童の一時保護、福祉施設への入所などを決定する。
2015年7月から、虐待通報・相談を24時間受け付ける児相の全国共通ダイヤル「189(いちはやく)」の運用が始まった。
〔2016年4月1日・貧困ネット、平成28(2016)年3月22日 読売新聞 東京朝刊〕
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◆中学生自殺 児相「適切に対応」 所長 「指導で親子関係改善」
両親から虐待を受け、神奈川県の相模原市児童相談所(児相)に通所していた男子中学生が自殺した問題で、同児相は22日午前、市役所で緊急記者会見を開いた。
「家に帰りたくない」と再三訴えていた男子生徒の保護を見送っていたことについて、鳥谷明所長は「職権で保護する要件はなかった」と述べて、「その都度、適切に対応してきた」と繰り返した。
一方、梅沢道雄副市長は取材に対し、「職権による保護は適正に運用してもらわなければいけない。今回のケースをしっかりと検証し、対策を考える」と語った。
会見は午前9時30分に始まったものの、事実関係の確認などで混乱し、約2時間でいったん中断した。
男子生徒は2014年11月に自殺を図った後、意識不明の状態が続き、先月28日に死亡した。
鳥谷所長は、「結果として一人のお子さんの尊い命が失われたことを大変深く重く受け止めています」と語った。
児相と市は2013年秋、学校からの通報で虐待を把握し、両親への指導を始めたが、その後も虐待は止まらず、男子生徒は「家に居場所がない」「児童養護施設で暮らしたい」と何度も訴えていた。
鳥谷所長によると、顔を殴られたり、室内で投げ飛ばされたりする暴行を繰り返し受けていた。
子供の生命が脅かされる場合などは、児相は保護者の同意がなくても職権で保護することができる。
鳥谷所長は、保護を見送った理由について、「生命が脅かされる急迫した状態ではなかったと判断した」とし、対応に問題はないと強調した。
「私たちの指導で親子関係は以前より良くなり、両親の暴力も減っていった」とも述べて、両親が指導を受ける度に「暴力を振るわない」と約束したことも保護見送りの理由に挙げた。
また、児相は子供の事故などの重要案件を弁護士や医師ら児童福祉の有識者で構成する審議会に報告することが求められているが、相模原市児相は生徒が自殺を図った時点で報告していなかった。
鳥谷所長はこの点について「(意識不明の)彼が一生懸命生きようとしていたので連絡しなかった」と述べた。
◇昨年 全裸検査問題も
相模原市児童相談所では昨年12月、職員が一時保護の少女を全裸にして所持品検査をしたことが明らかになり、問題を検証した有識者からは職員の実務経験の浅さを指摘されていた。
同児相は昨年8月、子供たちが職員に要望などを伝える「意見箱」の記入用紙が1枚なくなったことから、女性職員2人が少女9人に所持品検査を実施。
問題発覚を受けた市は、職員に聞き取りをしたうえで弁護士らの意見を聞き、今月15日に検証報告書を発表した。
同児相は政令市移行に伴い2010年に開設され、一時保護所は14年に開所したばかり。
報告書は問題の背景として、「職員の実務経験が浅く、専門的指導、助言が十分に受けられる体制ではなかった」と指摘。
さらに「刃物などとは異なり、緊急に所持品検査を行う必要はなかった」と批判した。
◇男子中学生が死亡するまでの経緯
2013年秋 生徒の顔のアザを不審に思った学校が市に通報。児相が虐待と認定し、市とともに両親へ指導開始
14年5月末 親から暴行された生徒が深夜にコンビニ店に駆け込み、警察官に保護され、「家に帰りたくない」と訴えた
10月上旬 両親が生徒の児相への通所をやめさせる。児相は両親と生徒との連絡を中断
同月末 学校が「虐待が続き(生徒が)助けを求めている」と児相に通報。児相は対応を学校に任せる
11月中旬 生徒が家を飛び出し、親族宅で自殺を図り、意識不明の重体
16年2月28日 生徒が死亡
〔2016年4月1日・貧困ネット、平成28(2016)年3月22日 読売新聞 東京夕刊〕
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◆児相職員 育成体制に不備 相模原 全裸検査問題で市報告書=神奈川
◇「児童に向き合うより管理」
相模原市児童相談所(児相)の職員が一時保護中の少女たちを全裸にして所持品検査を行った問題で、市は15日、検証報告書と再発防止策を発表した。
実務経験の浅い職員が様々な課題を抱える子供の対応に苦慮し、適切な助言を受けられる体制もなかったことが問題の背景にあるとし、基本動作マニュアルを策定するとともに、他自治体との人事交流、外部の専門家による指導などを通じて職員の育成を図っていくという。
報告書は全裸検査が発覚した昨年12月から今月8日にかけ、児相の一時保護所の職員50人(非常勤を含む)に聞き取り調査し、外部有識者の意見を踏まえてまとめた。
全裸検査は昨年8月、子供たちが職員に要望などを伝える「意見箱」の記入用紙が1枚なくなったことから、女性職員2人が少女9人に対して行った。
報告書によると、職員2人は当初、服のポケットの中を確認して所持品をチェックしようとした。
しかし、以前に保護中の少女が売春に関するメモ書きを下着に隠していたことがあったため、女性上司が「その方法では不十分」と認めなかった。
これを受け、職員2人は、1人が少女の前に立ってタオルを広げ、周囲から見えにくい状況にしたうえで、少女にすべての衣類を脱いでもらい、もう1人が衣類を細かく調べる方法を提案。
上司は「不正抑止になる」と実施を指示した。
報告書はこの点について「性急な対応」とし、「刃物などとは異なり、切迫した危険性があるものではなく、緊急に所持品検査を行う必要がなかった」と結論付けた。
相模原市児相は政令市移行に伴い2010年に開設され、一時保護所は14年に開所したばかりだ。
報告書は「職員の実務経験が浅く、専門的指導、助言が十分に受けられる体制ではなかった」と指摘。
「想定以上の困難に直面し、職員は適切な対応の判断に迷っていた」といい、「児童に向き合うよりも、問題を起こさせてはならないという管理意識が強くなっていったと考えられる」とした。
市は再発防止策として▽横浜、川崎市など他の自治体との人事交流▽所持品検査の具体的な方法などに関するマニュアル策定▽外部の専門家による定期的な専門的指導--などを挙げ、児相内部で人権侵害や虐待が疑われる事案が発生した場合は公表することにした。
記者会見した佐藤暁・こども育成部長は「人権研修を継続的に行い、子供の立場に立った施設運営ができるよう職員を育て、信頼を回復していきたい」と述べた。
〔2016年3月24日・貧困ネット、平成28(2016)年3月16日 読売新聞 東京朝刊〕
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◆相模原市:服脱がし確認廃止 児相が全裸で所持品検査 /神奈川
相模原市児童相談所が昨年8月、一時保護中の7~15歳の少女9人を全裸にして所持品検査をしていた問題で、同市は23日の市議会民生部会で再発防止に向けた対応策を示した。
今後は衣服の着脱を伴う所持品確認を実施しないことを明らかにした。
また、非行グループを一時保護する際に、県内の別の地域の児相に保護を委託して分散化を図る広域的な連携の検討も報告した。
児相に入所する子どもは2歳以上18歳未満と幅があり、一時保護を必要とする背景もさまざま。
非行で保護された子どもが、虐待などで入所する子どもを非行に誘うようなことを防ぐため、他の一時保護施設と運営上の共通課題を検討する会議の新設を提案したいとしている。
〔2016年3月3日・貧困ネット、平成28(2016)年2月24日 毎日新聞 地方版〕