窓愛園
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◆18歳以降も支援充実を 養護施設の子ども 退所後の自立に課題
児童養護施設や里親の下で暮らしてきた子どもの自立を支援するため、厚生労働省で議論されてきた児童福祉法の対象年齢を18歳から引き上げる案が3月、最終的に見送られた。
現行の制度では原則18歳で児童養護施設や里親家庭から出なければならず、18歳以降の支援が課題となっているが、成人年齢を引き下げる民法改正論議に配慮した形となった。
だが親に頼れない当時者や関係者からは、18歳以降の自立支援の充実を求める声が根強い。
土浦市殿里の児童養護施設「窓愛園」(上方仁理事長)出身の松野リカさん(18)=仮名=は、約8年間過ごした同園を3月末で退所した。
幼少期に両親が離婚。母と2人で暮らしたが経済的に苦しく、小学5年で同園に入った。
「将来は窓愛園で働き、先生たちに恩返ししたい」。
社会福祉士と保育士の資格を取るため、4月から山口県の大学に通う。
大学には施設出身者の授業料を軽減する仕組みがあり、寮に入る。
松野さんは「卒業後の環境が整っているから安心」と笑顔を見せる一方、「高校を留年したり大学受験や就職に失敗したりしたときには、18歳以降も支えが必要だと思う」と同じ境遇の子どもの思いを代弁する。
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児童養護施設や里親の下にいられる期間は、現行の児童福祉法では原則18歳までとされる。
だが、施設を出た後、経済的な問題や孤独感を募らせ、仕事や学校を辞める子どもも多い。
未成年者は携帯電話やアパートなどの契約ができない場合もあり、自立に失敗すれば、貧困にもつながりかねない。
同園の上方理事長も「周りのサポートがないまま18歳で独り立ちすることは難しい」と話す。
厚労省の調査によると、2013年3月に高校卒業した子どものうち、児童養護施設出身者の大学や短大への進学率は11・4%で、全高校卒業者の53・8%を大きく下回る。
経済的理由で進学を諦めるケースは多い。
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厚労省の専門委員会は3月にまとめた報告書で、児童福祉法の対象年齢引き上げは見送ったものの、施設などで育った子どもを「少なくとも22歳の年度末」まで支援する仕組みづくりを求めた。
これを受け、厚労省は児童養護施設を出た人たちが共同生活を送る「自立援助ホーム」の入所対象を、現行の20歳未満から22歳の年度末まで引き上げることを盛り込んだ法改正案をまとめ、今国会に提出している。
ただ民間が運営する自立援助ホームは県内に4カ所しかなく、各施設の定員は10人に満たない。
県内で同ホームを運営する施設長の一人は「入所期間が延びれば時間をかけて自立に導く支援が可能になる」と歓迎する一方で、「現在も定員に対する入所率は平均8割と満員に近い。どれだけニーズに応えられるかは分からない」と話した。
〔2016年4月19日・貧困ネット、平成28(2016)年4月13日 茨城新聞 朝刊〕