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ポリティカル・コレクトネス

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2020年5月7日 (木) 14:43時点におけるMatsu4585 (トーク | 投稿記録)による版
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ポリティカル・コレクトネス

ポリティカル・コレクトネスから人は離れる
■当事者は語れない
僕は数年前に「ポリティカル・コレクトネス(政治的正当性)」に関する論考を何本か書き、当欄のこの記事(情熱のポリティカルコレクトネス、その弱点)をもって同テーマでの執筆を終了させた。
だが、ポリティカル・コレクトネス=ポリコレ的態度が、数年前よりさらに複雑な様相を今は呈し始めている。
それは、NPOの日常活動とも関連する。
「アドボカシー」という、NPOが支援対象とするマイノリティの「代弁」をめぐる行為をめぐっての出来事との関連だ。
NPOが支援対象とする対象は、いわゆるマイノリティ分野でもある(ひきこもり、不登校、虐待サバイバー等)。
それに関するさまざまな事象に関して、当事者たちは基本的に「語れない」。
それは、当欄でも度々指摘してきた(誰が高校生や若者を「代表」するんだろう?)。
問題の当事者であればあるほど、語れない。
また、自分が「不登校」「ひきこもり」「虐待サバイバー」であることを受け入れることができない。
語るためには、問題の性質を知る必要がある。
が、当事者には強力なトラウマが棲み続けているから、その問題系の言葉たちにふれることでPTSDが発動しかかる。
パニック障害や乖離等には至らないかもしれないが、軽い抑鬱状態には導くそうした言葉たちには、できるだけ接触しないほうがいい。
自己の防衛のためであろう、だから、当事者は語れない。
「サバルタン」は語ることができない。
■「リアルさ」に思いが及ばない
深刻な社会問題に多少かかわるNPOの代表や広報担当は、多少関わるがゆえに、一生懸命発言しようとする。
たとえば、児童虐待の問題であれば、警察と児童相談所の「縦割り行政」を防ぐために、最初から警察と児相の完全な情報共有を求めようとする。
虐待加害者である親は、警察のチェックを恐れる。
また、虐待被害者である子は、一時保護を嫌悪する。無視されたり怒鳴られたり殴られたりする(これが虐待)のもいやだけど、自由な生活を奪われるほうがいやだ。
親もいやだけど、不自由なこと(学校に行けない、携帯もとられる等)だらけの一時保護所はもっといやだ。
もちろん一時保護になると「いのち」の危険性は守ることができる。
だから、児童虐待支援を教科書的に語るとすると、一時保護はなによりも重要な方策であり、出発点だ。
が、親も子もそれは避ける。そこから逃れたい。
NPO代表たちは、こうした「リアルさ」に思いが及ばない。
とにかく、虐待を減らしたいと思う。自分が大学で学んだ児童虐待が、スタッフたちが上げてくるケースの中にいきいきと含まれる。
そして、「理屈」で考えたとき、諸々の問題が起きる前に、児童虐待であれば、とにかく警察と児相が最初から情報を完全共有し、迅速に一時保護できる体制を築きたいと思う。
■その偽善性に無自覚 だが、現実は子どもは自分のスマホを守りたい。
加害者の親は、面倒なことに巻き込まれる前に「引っ越し」たいと思う。
だから、児童虐待の支援の最前線では、熱意をもったワーカーたちが、自分たちが紋切り的に動いては逆に支援の質が下がる(信頼関係を失う、引っ越しする等)ことを怖れ、日々悩む。
ポリティカル・コレクトネス的に、虐待はダメ、だから警察と児相の完全な情報共有をと連呼し、行政や政治に関わったとしても、そのかかわりは「アドボカシー=当事者の代弁」とは言えない。
アドボカシーの本来の意味である「当事者(の悩み)の代弁」にはなっておらず、権力サイド(悪い意味ではなく、文字通り)の利益(保護ほか)に寄り添うものとなる。
皮肉なのは、こうした偽アドボカシーを行なうNPO代表たちが、その偽善性に無自覚なことだ。
そのため、当事者たちの心はさらに離れていく。
田中俊英
一般社団法人officeドーナツトーク代表
〔2019年3/14(木) 田中俊英 一般社団法人officeドーナツトーク代表〕

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