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世田谷区立桜丘中学校

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'''校則撤廃中学の校長 生徒同士の関係にあえて波風立てる理由'''<br>
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「紅茶飲む人は?」「はーい」。とある放課後。優雅なティータイムが開催されているのは、なんと中学校の校長室。<br>
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応接セットのテーブルには子供たちが用意した温かい紅茶のカップが並び、校長とひとときのティーブレークを楽しんでいた。<br>
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制服の子もいれば、ジーンズ姿の子、華やかなワンピースに茶色く染めた髪をきれいにセットした子もいる。<br>
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思い思いの服装や髪形ではしゃぎ合う笑い声は、廊下まで響き渡っていた──。<br>
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ここは“校則をやめた学校”として注目を集める東京・世田谷区立桜丘中学校。<br>
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始業時間以外はチャイムも鳴らなければ定期テストもない。<br>
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服装や髪形も自由。さらには教室ではなく廊下で勉強してもいいし、校長室にも出入り自由。<br>
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そんな環境にいるのだから、生徒はみな、友達と楽しく学校生活を送っているのだろう。<br>
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しかし、そう単純ではないようだ。<br>
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教室で楽しそうにおしゃべりする友達を尻目に廊下から見つめている子、仲よし3人組の楽しそうなおしゃべりかと思えば、その中でひたすらうなずいているだけの子、遠くから校長室の様子を見つめているのに、絶対に近づいてはこない子。 <br>
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「どんな子であっても、子供同士のいさかいや人間関係のほころびは多少なりとも起こります。<br>
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クラスの雰囲気になじめなくて教室に入りづらい生徒もいれば、普段友達のように接していた私にさえ突然距離を置こうとする生徒もいます。<br>
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時には生徒同士の殴り合いに発展することだってあります。<br>
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だからといって、けんかをなくそうとは思いません。<br>
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むしろ人間関係に波風が立つことが、ソーシャルスキルを身につけるには必要不可欠だと考えています」<br>
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こう話すのは10年かけて自由で多様な学校をつくりあげた同校の校長・西郷孝彦さん(65才)だ。<br>
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しかし今、世間では子供のけんかは減少傾向にある。<br>
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◆「空気を読む」ことが重視される<br>
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別の中学に勤務して6年になる女性教員(30才)が言う。<br>
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「長い教員生活の中で、けんかする生徒を指導したことは、数えるほどしかありません。<br>
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特に、殴り合いなんてまず起こらない。ちょっとしたからかいや悪口はあるけれど、表立って生徒同士が言い争うような口げんかすら、ほとんど見かけません」<br>
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ITジャーナリストで教育評論家の高橋暁子さんは、その背景にはSNSの発達が関連していると分析する。<br>
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「物心ついた頃からネット環境があった10代の若者たちは、ツイッターをはじめとしたSNSで複数のアカウントを持つことが当たり前になっている。<br>
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例えば、同じ学校のクラスメートとつながるため本名で登録した“本アカ”や悪口や愚痴など、正面切って発言すると角が立つことをつぶやく“裏アカ”などを使い分け、その場に応じて “相手が心地よく感じる自分”をうまく演じているのです」<br>
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教室内だけではなく、ネット上でも「空気を読む」ことが重視されるゆえに相手を不快にさせないよう気を使い、その結果、けんかも起こりづらくなるというのだ。<br>
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「一方で、SNSの機能である連絡先を消してしまう『友達削除』や相手からの連絡を遮断する『ブロック』により簡単に人間関係が解消できたり、逆に相手から拒まれたりすることも体感している。<br>
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“人間関係はすぐに壊れるもの”という意識も強いのです。<br>
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争うことを避けるあまり、本音を言って受け入れてもらえた経験も少ない世代だということもできる」(高橋さん)<br>
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加えて、「けんかや衝突はよくない」という世の風潮も、以前に増して高まっている。<br>
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インターネットに投稿された《アンパンマンがバイキンマンを拳でやっつけるのは暴力ではないか》というコメントに端を発した「アンパンチ論争」もこの風潮と無関係ではないだろう。<br>
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しかし、作者のやなせたかしさんは生前、こんなふうに反論していた。<br>
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《けんかもせず、摩擦をおそれ、何もしないで成長する子供はいますか? <br>
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自分が子供のころは、よくチャンバラごっこをやったけど、だからって私は殺人はしませんよ。<br>
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大人になっていく過程で、いろいろ思い通りにいかないこともあります。<br>
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子供たちにはアンパンマンのように強く、優しく育ってほしいと願っています》<br>
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確かに、人間同士の摩擦や衝突に慣れていなければ、社会に出てから上司や部下と考えが対立した時、近所のママ友と意見が合わなかった時、初めて壁にぶつかることになる。<br>
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だからこそ、衝突が起きても近くにいる先生が修復の手伝いをしてくれる学校で、それを乗り越え、関係を修復する方法を学んでほしい──西郷さんはそんな思いから、あえて「対立」が生まれるように仕向けることもある。<br>
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「衝突したことがない子供が社会に出て人間関係で壁にぶつかると、自分では修復できずそのまま挫折してしまうか、暴走するかどちらかになってしまう可能性が高い。<br>
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特に、放っておいたらけんかを経験しないようなおとなしい生徒同士の関係であれば、あえてこちらが波風を立ててみるようなこともあります」(西郷さん・以下同)<br>
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つまり、あまりにも平穏すぎる学校生活を送る子供たちの間に一石を投じて波紋を広げるというのだ。<br>
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「例えば、仲よしグループのうち1人だけをあえて褒めてみるのです。<br>
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そうすると、ほかの子はそれをえこひいきだと感じる。<br>
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その瞬間、表面上は仲よしこよしのグループに、初めてすきま風が吹きます」<br>
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その時にどう対応するかは、生徒たちの性格や個性を見極めながら変えていくという。<br>
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「雰囲気が悪くなってけんかに発展するグループもあれば、褒められた子が“あんなことを言われてもうれしくない。<br>
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先生のことは好きじゃないし、本当はイヤ”と私を悪者にすることで、友人との関係を修復しようとするパターンもある。<br>
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みんな悩みながら自分なりの戦略を考えるんです」<br>
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生徒一人ひとりに人間関係のトラブルを回避できるスキルが身につけば、いじめも起こりづらく、不登校も減少する。<br>
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同校では学年が上がり、成長するに従って、いじめは確実に減っていくという。<br>
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〔2019年9/7(土)NEWS ポストセブン※女性セブン2019年9月19日号〕 <br>
  
 
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2019年10月4日 (金) 13:06時点における版

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世田谷区立桜丘中学校

所在地 東京都世田谷区
TEL
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周辺ニュース

ページ名世田谷区立桜丘中学校、()
校則撤廃中学の校長 生徒同士の関係にあえて波風立てる理由
「紅茶飲む人は?」「はーい」。とある放課後。優雅なティータイムが開催されているのは、なんと中学校の校長室。
応接セットのテーブルには子供たちが用意した温かい紅茶のカップが並び、校長とひとときのティーブレークを楽しんでいた。
制服の子もいれば、ジーンズ姿の子、華やかなワンピースに茶色く染めた髪をきれいにセットした子もいる。
思い思いの服装や髪形ではしゃぎ合う笑い声は、廊下まで響き渡っていた──。
ここは“校則をやめた学校”として注目を集める東京・世田谷区立桜丘中学校。
始業時間以外はチャイムも鳴らなければ定期テストもない。
服装や髪形も自由。さらには教室ではなく廊下で勉強してもいいし、校長室にも出入り自由。
そんな環境にいるのだから、生徒はみな、友達と楽しく学校生活を送っているのだろう。
しかし、そう単純ではないようだ。
教室で楽しそうにおしゃべりする友達を尻目に廊下から見つめている子、仲よし3人組の楽しそうなおしゃべりかと思えば、その中でひたすらうなずいているだけの子、遠くから校長室の様子を見つめているのに、絶対に近づいてはこない子。 
「どんな子であっても、子供同士のいさかいや人間関係のほころびは多少なりとも起こります。
クラスの雰囲気になじめなくて教室に入りづらい生徒もいれば、普段友達のように接していた私にさえ突然距離を置こうとする生徒もいます。
時には生徒同士の殴り合いに発展することだってあります。
だからといって、けんかをなくそうとは思いません。
むしろ人間関係に波風が立つことが、ソーシャルスキルを身につけるには必要不可欠だと考えています」
こう話すのは10年かけて自由で多様な学校をつくりあげた同校の校長・西郷孝彦さん(65才)だ。
しかし今、世間では子供のけんかは減少傾向にある。
◆「空気を読む」ことが重視される
別の中学に勤務して6年になる女性教員(30才)が言う。
「長い教員生活の中で、けんかする生徒を指導したことは、数えるほどしかありません。
特に、殴り合いなんてまず起こらない。ちょっとしたからかいや悪口はあるけれど、表立って生徒同士が言い争うような口げんかすら、ほとんど見かけません」
ITジャーナリストで教育評論家の高橋暁子さんは、その背景にはSNSの発達が関連していると分析する。
「物心ついた頃からネット環境があった10代の若者たちは、ツイッターをはじめとしたSNSで複数のアカウントを持つことが当たり前になっている。
例えば、同じ学校のクラスメートとつながるため本名で登録した“本アカ”や悪口や愚痴など、正面切って発言すると角が立つことをつぶやく“裏アカ”などを使い分け、その場に応じて “相手が心地よく感じる自分”をうまく演じているのです」
教室内だけではなく、ネット上でも「空気を読む」ことが重視されるゆえに相手を不快にさせないよう気を使い、その結果、けんかも起こりづらくなるというのだ。
「一方で、SNSの機能である連絡先を消してしまう『友達削除』や相手からの連絡を遮断する『ブロック』により簡単に人間関係が解消できたり、逆に相手から拒まれたりすることも体感している。
“人間関係はすぐに壊れるもの”という意識も強いのです。
争うことを避けるあまり、本音を言って受け入れてもらえた経験も少ない世代だということもできる」(高橋さん)
加えて、「けんかや衝突はよくない」という世の風潮も、以前に増して高まっている。
インターネットに投稿された《アンパンマンがバイキンマンを拳でやっつけるのは暴力ではないか》というコメントに端を発した「アンパンチ論争」もこの風潮と無関係ではないだろう。
しかし、作者のやなせたかしさんは生前、こんなふうに反論していた。
《けんかもせず、摩擦をおそれ、何もしないで成長する子供はいますか? 
自分が子供のころは、よくチャンバラごっこをやったけど、だからって私は殺人はしませんよ。
大人になっていく過程で、いろいろ思い通りにいかないこともあります。
子供たちにはアンパンマンのように強く、優しく育ってほしいと願っています》
確かに、人間同士の摩擦や衝突に慣れていなければ、社会に出てから上司や部下と考えが対立した時、近所のママ友と意見が合わなかった時、初めて壁にぶつかることになる。
だからこそ、衝突が起きても近くにいる先生が修復の手伝いをしてくれる学校で、それを乗り越え、関係を修復する方法を学んでほしい──西郷さんはそんな思いから、あえて「対立」が生まれるように仕向けることもある。
「衝突したことがない子供が社会に出て人間関係で壁にぶつかると、自分では修復できずそのまま挫折してしまうか、暴走するかどちらかになってしまう可能性が高い。
特に、放っておいたらけんかを経験しないようなおとなしい生徒同士の関係であれば、あえてこちらが波風を立ててみるようなこともあります」(西郷さん・以下同)
つまり、あまりにも平穏すぎる学校生活を送る子供たちの間に一石を投じて波紋を広げるというのだ。
「例えば、仲よしグループのうち1人だけをあえて褒めてみるのです。
そうすると、ほかの子はそれをえこひいきだと感じる。
その瞬間、表面上は仲よしこよしのグループに、初めてすきま風が吹きます」
その時にどう対応するかは、生徒たちの性格や個性を見極めながら変えていくという。
「雰囲気が悪くなってけんかに発展するグループもあれば、褒められた子が“あんなことを言われてもうれしくない。
先生のことは好きじゃないし、本当はイヤ”と私を悪者にすることで、友人との関係を修復しようとするパターンもある。
みんな悩みながら自分なりの戦略を考えるんです」
生徒一人ひとりに人間関係のトラブルを回避できるスキルが身につけば、いじめも起こりづらく、不登校も減少する。
同校では学年が上がり、成長するに従って、いじめは確実に減っていくという。
〔2019年9/7(土)NEWS ポストセブン※女性セブン2019年9月19日号〕

周辺ニュース

ページ名世田谷区立桜丘中学校、()
校則がないからこそ、教師と生徒は対等に話し合うことができる――西郷孝彦校長インタビュー
世田谷区桜丘中学校。私鉄の駅から徒歩10分ほどの住宅街にある。職員室前の廊下には机と椅子がフリースペースとして置かれ、Wi-fiも完備されている。
授業時間だったが、インターネットに接続しながら、話をしたり、自分のペースで勉強をする生徒もいた。
校長室でも、塾の宿題をしている生徒が校長と談笑する姿が見られた。
この学校はチャイムが鳴らない。そして何より、校則がない。
生徒手帳には「礼儀を大切にする」「出会いを大切にする」「自分を大切にする」が「心得」として掲げられ、また、子どもの権利条約の一部が示されている。
なぜ、こうした学校運営が可能なのか。西郷孝彦校長(64)に話を聞いた。
◆◆◆「心得」の3つですべてが指導できます
――生徒手帳には「桜丘中学校の心得」が3つだけ書かれていますが、以前は校則があったのでしょうか?
西郷 以前の生徒手帳には、校則が20ページほど書かれていました。
例えば、「他のクラスの教室に入ってはいけない」とか、「上級生は下級生と話してはいけない」とか。
下着の色を決めている学校だってありますよね。以前の勤務校では、こうした細々とした校則がありました。
校則のことを考え始めたのは、この桜丘中学校に赴任してから、ここ4、5年のことですね。
当初は、校内がいわゆる「荒れた」状態にありました。
見直すことになったときに、本当はいらなかったのですが、何もないと不安に思う人もいる。
校則は最終的には校長判断ですが、「3つくらいにしよう」と提案したときに、生活指導主任が原案を作ってくれました。
この3つですべてが指導できます。先生方はこれをよりどころに指導します。
この学校では制服も自由です。(身体的な性と、自認する性が違う)トランスジェンダーの生徒もそれで救われると思います。
――生徒手帳に子どもの権利条約が記されていますが、珍しいですね。
西郷 日本は法治国家です。この学校に校則はないですが、日本の法律には縛られています。
例えば、校内でも他人のものを勝手に自分のものにすれば、窃盗罪ですよね。誰かを傷つければ傷害罪です。
よく「学校の中は治外法権だ」とか、「学校だから許される」と言われますが、それはやめようと。社会と同じ規則で学校も回っています。
日本は子どもの権利条約に批准しています。だから、法律と同じ。
そう子どもに教えないといけませんし、先生も守る必要があります。
権利条約に掲げられた権利を知ることで、大切にされていることがわかり、子どもは自己肯定感が得られます。
大人でもさまざまな考えがある
――校則はそのままで、運用面で改善する方法もあったと思いますが、どうして校則をなくす方向になったのでしょうか。
西郷 先生方って、校則があると、話し合いにならないんです。「校則があるからダメ」「守るか、守らないか」になってしまいます。
例えば、「靴下は白」と規定があったから、理由を考えずに「校則にあるから」と、そこで指導は終わってしまいます。
一方、生徒に聞かれた時に「汚れたときにわかりやすいから」と説明すれば、そこから話し合いが始まります。
結果、合理的な話し合いを重ねることで信頼関係ができてきます。
スカート丈についても、ルールがなければ、「短すぎるんじゃないか?」「寒くないか?」などと先生たちが言ってくれます。
いろんな考えがあります。大人でもさまざまな考えがある中で、生徒は自分で選択していきます。
そもそも、校則をがんばってなくそうと思ったのは、不登校の子どもたち、発達障害の子どもたちがいたからです。
厳しく指導すると、学校に来なくなります。でも、そうした子だけに「特例」を許すと、他の生徒が「なんで、あの子だけ?」と不満を言います。
だったら、校則でしばりつけることはやめようと。
その頃、別の問題が起きました。文字が読めず、板書が取れず、教科書が読めない生徒がいたのです。
そのため、タブレットを利用可能にしました。音声読み上げソフトで教科書の内容を聞き、板書は写真で撮りました。
試しに、その生徒がいるクラスだけタブレットを持ち込み自由にしました。
最初は2、3人が持ってきましたが、重いし、管理が大変なので、必要のない子は持ってこなくなりました。このやり方を全体に広げたのです。
校則でしばることが染み付いている
――先生を育てることになりますね。
西郷 そうです。ただ、校則が厳しい他の学校から転勤してきた先生は慣れるのが難しいんです。
うちの学校は私服ですが、そうした先生は、私服の生徒を見て「私、無理です」と、1日中イライラしていました(笑)。
何か注意した時に、うちの生徒が「どうしてですか?」と返すことも、先生によっては「生意気だ」と映ってしまいます。
校則でしばることが染み付いていますからね。
上から目線での威圧感がある先生には、「生徒とは対等に話し合いましょう」「馬鹿にするような話し方はやめてほしい」と伝えています。
校則がないということは、正解がないということです。
採用も、できるだけ新規教員をお願いしています。そして、若い先生にはどんどん外へ行って、失敗してもいいから勉強してもらいたいです。
最初の10年で勉強しないと、知識もスキルも落ちていくだけです。僕も含めて、能力主義なんです。
3年目で完全に一人前になるように育てています。
――保護者側からは意見があると思うのですが……。
西郷 いっぺんに校則をなくしたわけではありません。
例えば、靴下の色、セーターの色を自由にしていき、夏は半ズボンでもよいということにしていきました。
そして、生徒会がカジュアルデーを設けました。土曜日は私服と決めたのです。
小学校だって、私服じゃないですか。
徐々に慣れていき、「別にかまわない」という感じになっていきました。違和感がなくなったのです。
ですので、私は、逆に制服のある学校へ行くと違和感を抱きます。
同じ制服を着させて、どうやって生徒を区別しているのか。わからないじゃん、と(笑)。
SNSのトラブルは減りました
――携帯電話やスマホ、SNSに関するルールは?
西郷 保護者からは「スマホを禁止して」という声はありません。
「スマホを買ってほしいと言われて困る」という声はありますが(笑)。
以前は、LINEのグループを作ることは禁止になっていました。
それは悪口を書いたり、グループでハブにしたりすることがあったからです。
でも、禁止してもみんなやりますからね。
LINEの人に「出張授業」にきてもらい、SNSの使い方について話してもらいました。
今でも、許可なく写真をアップしたというくらいのトラブルはあります。
しかし、理由はわかりませんが、SNSのトラブルは減りました。
これまでは悪いことをすると学校の先生に叱られるという発想でしたが、今は、社会から叱られるということがわかってきました。
校内の問題ではすまされない。
それで慎重になっているのかもしれません。
――生徒会との関係はどうでしょうか。
西郷 普通、生徒総会は何も面白くない。つまらないじゃないですか。
そこで何を言っても、最終的に先生が決めるのなら、総会で意見が出るはずもありません。
だから、「ここで決まったことは実現するよ」と言ったんです。
最低でも、決まったことを先生が実現する努力を見せる。すると、どんどん意見が出て盛り上がります。
僕の考えと同じことを言う生徒がいると「シメた!」と思うんですよ(笑)。
最近実現したことは、校庭に芝生を植えたこと。
ただ、野球やサッカーもしますし、植えたのは一部にしました。また、定期テストをなくしました。
うちの学校で学力が落ちたら……
――定期テストをなくして、評価はどうやっているのですか?
西郷 9教科100点満点のテスト勉強は、なかなか一度にできません。
でも、「10点満点」のテストならば、前の日に家で勉強すればできます。
中間や期末テストをまとめてやるのではなく、こまめに小テストをやっていくことにしたのです。
生徒の提案に対して、先生たちは反対すると思っていました。
ところが、先生方が、定期テストではない方法を調べてきました。僕以上のことを先生方は考えていたんです。
うちの学校で学力が落ちたら、日本にとってのチャレンジは終わります。
校則をなくしたら学力は落ちる、という結論になってしまう。
だから先生方も、学力向上には力を入れようと思っています。
実際、学力はかなり上がっていますが、成績のいい子は、偏差値の高い進学校よりも、自由な校風の青山高校だったり、やりたい部活動で高校を選んだりすることが多いですね。
だから、親御さんはどう思っているのか……(笑)。
ただ、そうやって自分で考えることが重要ですし、そういう自由な環境からじゃなければ、日本のスティーブ・ジョブズは生まれてこないと思いますよ。
今後、改善したいのは授業の質です
――部活動のあり方はどうでしょうか?
西郷 水曜日と日曜日の公式練習は禁止しています。そして、週10時間と決めて、平日は2時間、土曜日は3時間にしています。
それ以外に自主練はありますが、強制は禁止しています。そうすることで自主的な意識が芽生えます。
自主練に教師は立ち合いませんが、コーチか保護者が付いているようにします。
部活の顧問をやりたくて教師になった人もいます。そんな人は、土日も部活をやりたい。
しかし、そうでない人からは「ブラック部活」と呼ばれるほどです。いまは教師のなり手がいない時代ですからね。
少しでも働きやすい職場にしなければいけません。
また、教師にも休養が必要です。飲みに行ったり、趣味に時間を費やすことが一人の人間として必要なのです。
――今後の学校運営の課題は?
西郷 改善したいのは授業の質です。一斉に知識を注入する授業は、もういいでしょ? 人間は知識ではAIにかないません。
創造性を教えていかないと、学校だけでなく、日本が潰れてしまいます。だから、受験用の授業と、創造性を育てる授業を分けたいです。
ただ、国が変わらないとなかなかできません。そのため、受験用の授業も必要悪でやっていますが、チャレンジをしていきたいです。
この学校の校長も今年で10年になりましたが、長期間務めたからこそ、できたという部分もあります。
でも、それも今年度で終わりです。その後は、何も考えていません。
2019年6月7日12:50追記:一部表現を修正しました。
〔2019年6/7(金) 渋井 哲也 文春オンライン〕

世田谷の校則ゼロ公立中、授業中に廊下で自習してもOK
桜丘中学校の西郷孝彦校長
いじめが激減、校内暴力も消え、有名校進学数も平均学力も区のトップレベル──。
私立中進学率の高い東京都世田谷区で、「越境してでも行きたい」と人気となっている公立中学校が、世田谷区立桜丘中学校だ。
歴代の校長が「一日でも早く異動したい」と嘆息するほど荒れた同校で、2010年に就任したのが西郷孝彦校長(64才)。
足かけ9年を費やして、自由にして多様な学校をつくり上げた。
窮屈な規則が苦手だという西郷校長は、納得のいかない校則の一つひとつを検証、ついには全廃してしまったという。
◆授業中に教室の外にいてもいい
午前11時、教室では授業の真っ最中。
国語のクラスでは先生の読み上げる百人一首を血眼になって奪取する声が響き、美術のクラスではクラフト模型を組み立てる生徒たちの熱気が廊下まで伝わってくる。
英語の授業時間にバスケットボールの試合や調理実習をすべて英語だけで行うクラスも。
しかし廊下には、そのどれにも属さない生徒の姿が数人。
「教室にいるのが嫌だったり、入りづらかったりした時は、生徒の判断で、廊下で自習して構いません」
職員室前の廊下には机とイスが並び、そこでタブレットを使って動画を見ながら自習したり、英語のテキストを解いたりする生徒たちの姿がある。
その様子を、ヒト型ロボットのペッパーが静かに見守っていた。
校舎1階の理科室では、3Dプリンターを使って両生類の心臓を再現する授業が行われていた。
4人ずつの班に分かれた生徒たちがパソコンのソフトを操って心臓の構造をデザインすると、3Dプリンターがカタカタと音を立て、立方体の模型を作り出す。
テーブルのあちこちから「デザイン通りだ」と歓声があがる。
この授業を担当するのは、理科の長田浩貴先生。2年前、この学校で教師生活をスタートさせたばかりだ。
「大学時代に3Dプリンターの研究をしていて、いつか授業に採り入れたいと考えていたんです。
そう西郷校長に話したら、『やってみなよ、失敗してもいいから』と背中を押してくださったんです。こんなに早く実現するとは思いませんでした」(長田先生)
失敗どころか、新しい試みの成果は上々。
「単に教科書を読むだけではなく、リアルな模型を作ることで、心臓の働きを理解してほしかったんです。
そのうえで、もし心臓模型の構造を改善するとしたらどうすればいいか、自分たちで考えてほしかった。
実際、生徒たちから挙がってきたアイディアは、ぼくの想像以上。発表を聞きながら、鳥肌が立ちました」(長田先生)
なかでも熱心に3Dプリンターを見つめていたのは、2年生のエイジくん(仮名)。このクラスの生徒ではない。
「本当は体育の授業中なんですが、ぼくは集団行動が苦手で、サッカーをするのが怖いんです。
今、この教室の前を通りかかったら、3Dプリンターが見えたので、思わず中に入りました」(エイジくん)
いきなり教室に現れた“珍客”を、ほかの生徒や先生が咎めることはない。
授業が終わりに近づくと、「体育の先生が心配するから、顔だけ出して来いよ」と、長田先生は彼を送り出した。
実はこのエイジくん、文字を書くのが苦手で、タブレットを利用してノートを取りながら授業を受けている。
「機械やコンピューターが好きで、タブレットを使ってもいいと言われてから、学校に来るのが楽しくなりました。
この学校はぼくみたいな子どもも伸ばしてくれるんだなって。
先生との壁? それはない。先生はぼくにとって頼れる存在です」(エイジくん)
彼は自分の居場所を学校で見つけた。
エイジくんに限らず、タブレットやスマホは、どの生徒にも解禁されている。
ところが、読み書きに不自由のない生徒は持ってこなくなった。
不思議と、SNS関連のトラブルも減った。西郷校長が言う。
「生徒は授業がつまらなければ、はっきり“つまらない”と言っていい。
これまで日本の教育では、他人と同じように振る舞えない子どもたちに対して、“みんなと一緒にしなさい”とか“振り返って反省しなさい”という指導ばかりしてきました。
ですがこれからの時代、子どもたちに身につけてほしいのは、誰にも負けない自分の才能の尖った部分、つまり“エッジ”を見つけて磨くこと。
人に取って代わってAIが単純作業を担うようになるであろう今後、他人とは違う“変なやつ”であることこそが、自分自身を輝かせるはずです」
確かに、アップル社の創業者のスティーブ・ジョブズは身なりを気にせず、裸足で資金提供者と交渉したというし、テスラ社のCEO・イーロン・マスクは、会社のいたるところで地べたに寝転がって仮眠するそうだ。
こうした、世間の規範からはみ出した“変わり者”の彼らは、エッジを磨き、世界を驚かせる発明や事業をやってのけた。
2020年には知識や学力のみを問う大学入試センター試験が廃止され、表現力や思考力、判断力が重視される新テストが導入される。
「自分がどの分野に向いているか」を判断し、「自分のやりたいこと」を見つけてその力を活用しようとすることは、まさに新時代を先取りしている。
◆人と違うことに寛容になる
桜丘中は、障害がある生徒や、もともと不登校だった生徒も積極的に受け入れている。
そもそも社会にはいろいろな人がいて、人はそれぞれ違うということが当たり前だとわかれば、自分と違う他人に寛容になれるという考えがあるからだ。
だが、その取り組みも、最初からすんなりスタートできたわけではない。
4年前、インクルーシブ教育(障害のある人とない人が同じ場所で学ぶのみならず、誰もが自由な社会に効果的に参加できる社会の実現をめざす教育)を導入しようとしたところ、「そんなことしたら、勉強ができなくなる」と保護者から猛反対されたことがあった。
ならば、学校全体の成績をあげて納得させようと考えた西郷校長は、わかりやすく実践的な授業を次々、導入していく。
そして冒頭で説明したとおり、今や同校は区でもトップクラスの成績を収めている。
英語教育には特に力をいれ、すべてを英語だけで他の教科の勉強をしたり、作業をするCLIL(Content and Language Integrated Learning、内容言語統合型学習の略。
教科やトピックなどの『内容』と『言語』を融合して学ぶ教育方法。
1つのテーマをさまざまな角度で扱いながら、互いが意見などを交換し合い、言語を身につけていくこと)を導入している。
「英語なんて、実はしゃべれなくても社会ではどうにでもなるよね」と笑いながらも、「でもね」と西郷校長はこう続けた。
「海外から翻訳されて日本で発信される出来事やニュースは、発信する側のバイアスがかかっていることもあれば、すべてでもない。
英語がわかるようになると、本当は世界のあちこちでそのニュースがどう発信されているのか、自分で判断できるようになる。
その意味で英語を身につけてもらいたいのです」
〔2019年2/28(木) NEWS ポストセブン※女性セブン2019年3月14日号より一部抜粋〕

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