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吃音

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[[癒しの音楽院(メンタル相談)]] (東京都杉並区)<br>
 
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ページ名 [[吃音]]  (発達障害のニュース、)<br>
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'''名前が言えずゴミを投げられた。「吃音」の無理解に苦しむ若者たち'''<br>
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小学6年の頃の奥村安莉沙さん。当時吃音は「うつる」と思われ、同級生たちから避けられていたという<br>
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授業参観で音読をした後、一番仲が良かった友達の母親から尋ねられた。<br>
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「ありさちゃん、最近うちの子と話してる?」<br>
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当時小学3年生だった奥村安莉沙(ありさ)さん(29)が「うん」と答えた数日後、その友達から「お母さんに、もう一緒に遊んじゃいけないって言われた」と伝えられた。<br>
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「その病気、うつるのが心配だって」<br>
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それっきり、その子とは遊べなくなった。<br>
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「私の話し方は、周りと違うんだな」。初めて気づいた瞬間だった。<br>
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同じ音を繰り返したり、音が詰まって出てこなかったりする「吃音」。<br>
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幼児期では10人~20人に1人の割合でみられ、成人では100人に1人があるといわれる。<br>
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日本では約120万人が症状を持つとされる。<br>
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生まれ持った体質的要因と環境要因が複数関わって生じるとされ、伝染するものではない。<br>
 +
アメリカ大統領のジョー・バイデンや、プロゴルファーのタイガー・ウッズ、元首相の田中角栄、俳優のマリリン・モンローなどの著名人も、吃音症だと知られている。<br>
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吃音の認知はこの数十年間で広がったが、吃音のある子どもが学校でいじめを受けたり、大人になっても職場で差別的な扱いをされたりするケースは後を絶たない。<br>
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'''のどをカミソリで傷つけ'''た<br>
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奥村さんも、子どもの頃から重い吃音があり、教員や同級生などからの偏見や無理解に苦しんだ経験がある一人だ。<br>
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小学校高学年になると、奥村さんは語音を繰り返す「連発」と、語音が詰まって出ない「難発」の症状が出るようになった。<br>
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朗読中に「どもる」と、クラスメートも先生も、どっと笑った。<br>
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そのうち、音読の順番が奥村さんに回るとクラス中が耳をふさぐようになった。<br>
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「当時、『吃音は伝染病で会話したらうつる、声を聞いたらうつる』と思われていました。<br>
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廊下を歩くと、同級生たちは怖がってサーっとよけていく。家族以外で、誰も私に触ろうとしませんでした」<br>
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中学に上がると、いじめはエスカレートした。<br>
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自己紹介をする時、名前の一文字目の「お」が出てこない。<br>
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口をぱくぱく開けて、10分くらい過ぎてしまう。<br>
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「そんな時間かかるなら飛ばせ飛ばせ」<br>
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後ろの席からゴミを投げられた。<br>
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クラスメートのいじめ以上につらかったのは、教員にわかってもらえないことだった。<br>
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音読で最初の言葉に詰まって声を出せないと、「集中してください」と教師に怒られた。<br>
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真剣に授業を受けているのに、誤解されてしまう。<br>
 +
「声が出なくなればいいと思って、カミソリでのどを傷つけたこともあります。100回くらい、死にたいと思いました」<br>
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'''一次面接で200社落ちた'''<br>
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『マイ・ビューティフル・スタッター』の一場面。<br>
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吃音の自助団体の合宿で仲間と出会い、子どもたちは吃音のある自分を受け入れ、自信を取り戻していく<br>
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地元から離れた高校に進学すると、絶望していた日常が一変した。<br>
 +
入学試験の面接で、吃音があることを伝えた上で合格した。<br>
 +
症状はさらに重くなっていたが、友人も先生も、吃音をからかう人は一人もいなかった。<br>
 +
「天国みたいでした」<br>
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それでも、就職活動は難航した。書類選考を通っても、一次面接で200社落ち続けた。<br>
 +
唯一、ホームヘルパーの事業所の採用が決まった。事業所の社長も吃音のある人だった。<br>
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ある事故をきっかけに、奥村さんは治療を決断する。<br>
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23歳の頃、訪問先にバイクで移動中、大雨でスリップしてしまった。<br>
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大型トラックの下に体ごと滑り込んだが、吃音で声が出ず「助けて」と言えない。<br>
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偶然通りかかった作業員の足をつかんだことで気づいてもらえ、大惨事を免れた。<br>
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「このままではこの先、事故で死ぬかもしれない」<br>
 +
恐怖を覚えた奥村さんは、交際相手の男性と一緒に転居したオーストラリアで、通院を始めた。<br>
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発話の練習をほぼ毎日、1年ほど続けると、最重度だった症状は日常生活でほとんど支障がないほどまでに良くなった。<br>
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男性と結婚後、日本に帰国。<br>
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「自分のような思いを今の子どもたちにしてほしくない」と、吃音への理解を広める活動に取り組んでいる。<br>
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吃音のある子どもたちの葛藤や成長を描いた海外映画『マイ・ビューティフル・スタッター』の翻訳を担当して日本で公開したほか、吃音当事者の体験談を集めてSNSで発信している。<br>
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'''先生は「みっともない」、職場でからかいも'''<br>
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奥村安莉沙さん。吃音を相談できる医療施設のリストを作るなど、当事者のための活動に取り組んでいる<br>
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奥村さんが吃音の体験談をSNSで募ったところ、1カ月ほどで約160件の声が集まった。<br>
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小中学生や高校生など若い世代からの訴えも多かった。<br>
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「たった一人で秘密を持つという孤独とどもりへの恐怖から、10歳に満たない頃には『自殺』という言葉が毎日頭に浮かんだ」<br>
 +
「授業で吃音が出てしまった時、『その話し方は何?ふざけないで。みっともないから止めなさい』と先生に叱られた」<br>
 +
「中学時代に、吃音症が原因でいじめにあい不登校になりました」<br>
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職場で差別的な扱いをされる人も。<br>
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「社会人になり5年目ですが、会社でもいじってくる上司がいて、つらいです」<br>
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「障害者採用でもまねやからかいは絶えず、苦しい日々を送っています」<br>
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奥村さんは、「吃音を理由にいじめられたり、先生や親から叱られたりする子どもたちがいまだにいます。<br>
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吃音の認知や理解はまだまだ足りていません」と強調する。<br>
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'''「育て方」のせいじゃない'''<br>
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「吃音は、親の愛情不足が原因だ。育て方に問題がある」<br>
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「子どもに吃音を意識させなければ治る」<br>
 +
「左利きを右利きに矯正することで発症する」――。<br>
 +
吃音をめぐり、かつてはこうした言説が広く信じられていた。<br>
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吃音の研究が進み、これらはいずれも間違いであることが分かっている。<br>
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吃音の原因はまだ解明されていないが、生まれ持った体質的要因と環境要因が関わって生じるとされている。<br>
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発話指導などを通して、症状が軽減されたり、言葉を出しやすくなったりすることがある。<br>
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九州大学病院の耳鼻咽喉・頭頸部外科の外来医長、菊池良和さんは、「外来に相談に来る患者の約6割は、小学生の頃に話し方を真似されたり、笑われたりといったいじめを受けた経験があります」と話す。<br>
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菊池さん自身も、幼少期から吃音のある当事者だ。<br>
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「中高生の患者のうち、約3割は不登校が主な訴えです。<br>
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その半分以上が、先生に吃音を理解されないことで学校に通えなくなっています。<br>
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小学校と違って教科ごとに先生が変わると、生徒に吃音があることを知らない先生も出てくる。<br>
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先生が期待するスピードで話せないと、『勉強が足りてない』と誤解されて注意を受けます。<br>
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吃音のある人が抱える困難は、本来の能力を過小評価されてしまうことにあるんです」<br>
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'''障害者手帳を取るケースも'''<br>
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一方で、菊池さんは「保護者側の意識はどんどん変わってきている」とみる。<br>
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'''どういうことか?'''<br>
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「これまで、『吃音は恥ずかしいもの』と考えたり、『子どもに意識させてはいけない』と思い込んだりして、保護者が子どもの吃音を隠すことが多かった。<br>
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ですが最近は、吃音があっても子どもが生きやすいように環境を整えようと、保護者が学校の先生などに吃音のことを積極的に伝えるケースが増えています」<br>
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吃音の診断を受けると、発達障害者支援法に基づいて精神障害者保健福祉手帳を取得できる場合がある。<br>
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菊池さんによると、保護者が子どものために早いうちから手帳を申請する事例が出てきているという。<br>
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「学校側に手帳を提示することで、先生が子どもの悩みを真剣に受け止め、からかう生徒を注意したり、必要な配慮を一緒に考えてくれたりするようになります。<br>
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吃音をオープンにしていくことは、子どもが『話したい』という意欲を持つためにも大事なことです」<br>
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'''必要な配慮とは?'''<br>
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「吃音」とひと口に言っても、症状の幅は人によって様々だ。<br>
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さらに、同じ人でも時期や場面によって症状に波がある。<br>
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具体的には、どのような配慮が必要なのか?
 +
菊池さんが執筆した『吃音の合理的配慮』(学苑社)は、小中学校や高校、企業などに対し、吃音のある人への具体的な配慮の事例を説明するときに活用できる資料を掲載している。<br>
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学苑社のサイトから、資料のPDFをダウンロードできる。<br>
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例えば、中高生が先生にわたすことを想定した資料では、<面接時に「失礼します」「自己紹介」など、流暢に言えない><点呼に「はい」と言えない>など、困難になり得る場面を例示。<br>
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考えられる支援の例として、<寛容な聞き手の姿勢><挙手で確認>などを挙げている。<br>
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企業向けの資料では、「最初の言葉を2人で言うと流暢に言えます」「電話・館内放送が一番難しいです。<br>
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困難に思っている場合は、援助いただけると嬉しいです(例:代わりに電話、メール、FAXなど)」といった配慮の例を載せている。<br>
 +
奥村さんは、SNSで寄せられた体験談を踏まえ、吃音のある子どもたちへの適切な対応をまとめたガイドラインの作成を目指している。<br>
 +
「吃音で特につらい思いをしたことがない人に共通しているのは、『周りの人たちから理解されていた』ことでした。<br>
 +
本人がどんな対応をしてほしいのかを安心して伝えられ、受け止めてくれる人がいることで当事者はずっと生きやすくなります」<br>
 +
國崎万智(Machi Kunizaki)
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〔2021年5/31(月) ハフポスト日本版〕 <br>
  
 
===[[:Category:周辺ニュース|周辺ニュース]]===
 
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2021年6月23日 (水) 13:20時点における版

目次

吃音

吃音とは

癒しの音楽院(メンタル相談) (東京都杉並区)

周辺ニュース

ページ名 吃音  (発達障害のニュース、)
名前が言えずゴミを投げられた。「吃音」の無理解に苦しむ若者たち
小学6年の頃の奥村安莉沙さん。当時吃音は「うつる」と思われ、同級生たちから避けられていたという
授業参観で音読をした後、一番仲が良かった友達の母親から尋ねられた。
「ありさちゃん、最近うちの子と話してる?」
当時小学3年生だった奥村安莉沙(ありさ)さん(29)が「うん」と答えた数日後、その友達から「お母さんに、もう一緒に遊んじゃいけないって言われた」と伝えられた。
「その病気、うつるのが心配だって」
それっきり、その子とは遊べなくなった。
「私の話し方は、周りと違うんだな」。初めて気づいた瞬間だった。
同じ音を繰り返したり、音が詰まって出てこなかったりする「吃音」。
幼児期では10人~20人に1人の割合でみられ、成人では100人に1人があるといわれる。
日本では約120万人が症状を持つとされる。
生まれ持った体質的要因と環境要因が複数関わって生じるとされ、伝染するものではない。
アメリカ大統領のジョー・バイデンや、プロゴルファーのタイガー・ウッズ、元首相の田中角栄、俳優のマリリン・モンローなどの著名人も、吃音症だと知られている。
吃音の認知はこの数十年間で広がったが、吃音のある子どもが学校でいじめを受けたり、大人になっても職場で差別的な扱いをされたりするケースは後を絶たない。
のどをカミソリで傷つけ
奥村さんも、子どもの頃から重い吃音があり、教員や同級生などからの偏見や無理解に苦しんだ経験がある一人だ。
小学校高学年になると、奥村さんは語音を繰り返す「連発」と、語音が詰まって出ない「難発」の症状が出るようになった。
朗読中に「どもる」と、クラスメートも先生も、どっと笑った。
そのうち、音読の順番が奥村さんに回るとクラス中が耳をふさぐようになった。
「当時、『吃音は伝染病で会話したらうつる、声を聞いたらうつる』と思われていました。
廊下を歩くと、同級生たちは怖がってサーっとよけていく。家族以外で、誰も私に触ろうとしませんでした」
中学に上がると、いじめはエスカレートした。
自己紹介をする時、名前の一文字目の「お」が出てこない。
口をぱくぱく開けて、10分くらい過ぎてしまう。
「そんな時間かかるなら飛ばせ飛ばせ」
後ろの席からゴミを投げられた。
クラスメートのいじめ以上につらかったのは、教員にわかってもらえないことだった。
音読で最初の言葉に詰まって声を出せないと、「集中してください」と教師に怒られた。
真剣に授業を受けているのに、誤解されてしまう。
「声が出なくなればいいと思って、カミソリでのどを傷つけたこともあります。100回くらい、死にたいと思いました」
一次面接で200社落ちた
『マイ・ビューティフル・スタッター』の一場面。
吃音の自助団体の合宿で仲間と出会い、子どもたちは吃音のある自分を受け入れ、自信を取り戻していく
地元から離れた高校に進学すると、絶望していた日常が一変した。
入学試験の面接で、吃音があることを伝えた上で合格した。
症状はさらに重くなっていたが、友人も先生も、吃音をからかう人は一人もいなかった。
「天国みたいでした」
それでも、就職活動は難航した。書類選考を通っても、一次面接で200社落ち続けた。
唯一、ホームヘルパーの事業所の採用が決まった。事業所の社長も吃音のある人だった。
ある事故をきっかけに、奥村さんは治療を決断する。
23歳の頃、訪問先にバイクで移動中、大雨でスリップしてしまった。
大型トラックの下に体ごと滑り込んだが、吃音で声が出ず「助けて」と言えない。
偶然通りかかった作業員の足をつかんだことで気づいてもらえ、大惨事を免れた。
「このままではこの先、事故で死ぬかもしれない」
恐怖を覚えた奥村さんは、交際相手の男性と一緒に転居したオーストラリアで、通院を始めた。
発話の練習をほぼ毎日、1年ほど続けると、最重度だった症状は日常生活でほとんど支障がないほどまでに良くなった。
男性と結婚後、日本に帰国。
「自分のような思いを今の子どもたちにしてほしくない」と、吃音への理解を広める活動に取り組んでいる。
吃音のある子どもたちの葛藤や成長を描いた海外映画『マイ・ビューティフル・スタッター』の翻訳を担当して日本で公開したほか、吃音当事者の体験談を集めてSNSで発信している。
先生は「みっともない」、職場でからかいも
奥村安莉沙さん。吃音を相談できる医療施設のリストを作るなど、当事者のための活動に取り組んでいる
奥村さんが吃音の体験談をSNSで募ったところ、1カ月ほどで約160件の声が集まった。
小中学生や高校生など若い世代からの訴えも多かった。
「たった一人で秘密を持つという孤独とどもりへの恐怖から、10歳に満たない頃には『自殺』という言葉が毎日頭に浮かんだ」
「授業で吃音が出てしまった時、『その話し方は何?ふざけないで。みっともないから止めなさい』と先生に叱られた」
「中学時代に、吃音症が原因でいじめにあい不登校になりました」
職場で差別的な扱いをされる人も。
「社会人になり5年目ですが、会社でもいじってくる上司がいて、つらいです」
「障害者採用でもまねやからかいは絶えず、苦しい日々を送っています」
奥村さんは、「吃音を理由にいじめられたり、先生や親から叱られたりする子どもたちがいまだにいます。
吃音の認知や理解はまだまだ足りていません」と強調する。
「育て方」のせいじゃない
「吃音は、親の愛情不足が原因だ。育て方に問題がある」
「子どもに吃音を意識させなければ治る」
「左利きを右利きに矯正することで発症する」――。
吃音をめぐり、かつてはこうした言説が広く信じられていた。
吃音の研究が進み、これらはいずれも間違いであることが分かっている。
吃音の原因はまだ解明されていないが、生まれ持った体質的要因と環境要因が関わって生じるとされている。
発話指導などを通して、症状が軽減されたり、言葉を出しやすくなったりすることがある。
九州大学病院の耳鼻咽喉・頭頸部外科の外来医長、菊池良和さんは、「外来に相談に来る患者の約6割は、小学生の頃に話し方を真似されたり、笑われたりといったいじめを受けた経験があります」と話す。
菊池さん自身も、幼少期から吃音のある当事者だ。
「中高生の患者のうち、約3割は不登校が主な訴えです。
その半分以上が、先生に吃音を理解されないことで学校に通えなくなっています。
小学校と違って教科ごとに先生が変わると、生徒に吃音があることを知らない先生も出てくる。
先生が期待するスピードで話せないと、『勉強が足りてない』と誤解されて注意を受けます。
吃音のある人が抱える困難は、本来の能力を過小評価されてしまうことにあるんです」
障害者手帳を取るケースも
一方で、菊池さんは「保護者側の意識はどんどん変わってきている」とみる。
どういうことか?
「これまで、『吃音は恥ずかしいもの』と考えたり、『子どもに意識させてはいけない』と思い込んだりして、保護者が子どもの吃音を隠すことが多かった。
ですが最近は、吃音があっても子どもが生きやすいように環境を整えようと、保護者が学校の先生などに吃音のことを積極的に伝えるケースが増えています」
吃音の診断を受けると、発達障害者支援法に基づいて精神障害者保健福祉手帳を取得できる場合がある。
菊池さんによると、保護者が子どものために早いうちから手帳を申請する事例が出てきているという。
「学校側に手帳を提示することで、先生が子どもの悩みを真剣に受け止め、からかう生徒を注意したり、必要な配慮を一緒に考えてくれたりするようになります。
吃音をオープンにしていくことは、子どもが『話したい』という意欲を持つためにも大事なことです」
必要な配慮とは?
「吃音」とひと口に言っても、症状の幅は人によって様々だ。
さらに、同じ人でも時期や場面によって症状に波がある。
具体的には、どのような配慮が必要なのか? 菊池さんが執筆した『吃音の合理的配慮』(学苑社)は、小中学校や高校、企業などに対し、吃音のある人への具体的な配慮の事例を説明するときに活用できる資料を掲載している。
学苑社のサイトから、資料のPDFをダウンロードできる。
例えば、中高生が先生にわたすことを想定した資料では、<面接時に「失礼します」「自己紹介」など、流暢に言えない><点呼に「はい」と言えない>など、困難になり得る場面を例示。
考えられる支援の例として、<寛容な聞き手の姿勢><挙手で確認>などを挙げている。
企業向けの資料では、「最初の言葉を2人で言うと流暢に言えます」「電話・館内放送が一番難しいです。
困難に思っている場合は、援助いただけると嬉しいです(例:代わりに電話、メール、FAXなど)」といった配慮の例を載せている。
奥村さんは、SNSで寄せられた体験談を踏まえ、吃音のある子どもたちへの適切な対応をまとめたガイドラインの作成を目指している。
「吃音で特につらい思いをしたことがない人に共通しているのは、『周りの人たちから理解されていた』ことでした。
本人がどんな対応をしてほしいのかを安心して伝えられ、受け止めてくれる人がいることで当事者はずっと生きやすくなります」
國崎万智(Machi Kunizaki) 〔2021年5/31(月) ハフポスト日本版〕 

周辺ニュース

ページ名吃音、(事項百科)
どもる苦しさ、知って欲しい 「吃音 伝えられないもどかしさ」を出版した近藤雄生さん
ノンフィクションライターの近藤雄生さん
「遊牧夫婦」など旅を題材にした作品を多く手がけてきたノンフィクションライターの近藤雄生さんが、『吃音 伝えられないもどかしさ』(新潮社)を出版した。
約5年にわたり、吃音のある当事者や家族、友人、どもりにくい話し方を教える言語聴覚士ら80~90人に取材。
「新潮45」での連載を元に、本をまとめた。
吃音とは、「ぼ、ぼ、ぼく」と同じ音を繰り返したり、言葉に詰まったりといった症状のことで、「どもる」ともいう。
吃音のある人はおよそ100人に1人、決して少なくはない。
けれども、どんな場面で何に苦しみ、吃音が人間関係にいかに影響しているのかは、この本を読んで初めて知ることが多いはずだ。
副題にある「もどかしさ」という言葉は、読み進めるほどに重みを増す。
たとえば、近藤さんが何度も会って話を聞いている、高橋さんという男性がいる。
最初に吃音の壁にぶつかったのは、小学校入学の時。
自己紹介でどもるとみなが笑い、「どもるのは恥ずかしいことなのだ」と実感した。
その後もうまく会話ができずに同級生との距離は広がり、不登校気味に。格闘技が好きで始めた柔道も、練習前後のあいさつでの掛け声が難しく、休みがちな学校の友達と会うのも気まずく、続けることができなくなった。
症状はだんだん悪化し、高校に入るころにはほとんど何も話せなくなってしまい、中退。
その後に続く衝撃的な事件が、本書の冒頭で紹介されている。
「みんなが意識もせずにできている会話ができないと、『この人どうしたの』という目で見られます。
社会と自分の間に膜ができ、自分だけ隔離されているような感覚です」
そう語る近藤さん自身も、小学生の頃に兆候が現れ始め、高校生の時から吃音に深刻に悩み出した。
友達と喫茶店に入り注文しようとする時や、駅で切符を買おうとする時、ふいにのどが硬直して声がでなくなった。
言葉に詰まりそうになると、瞬時に頭の中で言いやすい別の言葉を探すため、常に緊張し、消耗していた。
吃音を隠すために、意見があっても言わずにのみ込んだり、その場を立ち去ったりする自分に、さらに落ち込むこともあった。
朝日新聞の記事でそんなエピソードを紹介した後、記者は知人からメールをもらった。
知人は近藤さんと高校の同級生だったといい、「当時は吃音だと全然わからなかった。人しれず悩むものなのですね」と書かれていた。
高橋さんのような場合と比べて比較的症状が軽かったのもあるだろうが、吃音にまつわる本人の苦労が、外からは見えにくいことの現れだと感じた。
吃音のことをよく知らない人が、ふざけているとか、本人の努力不足だと誤解して当事者に接することで、苦悩が深まる場合もある。
過去には、しつけの方法が吃音の原因だとされ、親たちが苦しみもした。
本書に登場する男の子は、小学校に入学後、同級生に話し方をまねされたり、「なんでそういう話し方なの」と聞かれたりして、泣いて家に帰ってくるようになった。
母親は、友達の家を回り、まねたりからかったりしないよう頭を下げ、学校の先生に状況を伝えて気を配ってもらうよう頼んだという。
あるエンジニアの男性は、会社から「吃音を治さなければ正社員から契約社員になってもらう」と迫られ、医師と言語聴覚士のもとで訓練を始めた。
しかし、吃音について理解してもらえなければ、根本的な解決にはならないと判断。
医師に「言語機能の著しい障害がある」という診断を受けて身体障害者手帳を取得しており、「安心して堂々と働きたい」と、別の会社で障害者枠で働くことを選んだ。
なお、この男性の場合は身体障害者手帳だったが、通常、手帳を申請する場合は精神障害者保健福祉手帳が多いという。
このように、就職や仕事の場面で、困難にぶつかることがある。
近藤さんが非常勤で教えている大学でも、講義で吃音の話をすると、必ず何人かから「自分も」という声が届き、就職を前に悩んで相談に来た学生もいるという。
日本は「コミュニケーションの型」がはっきりしている
近藤さん自身の吃音は、29歳の時に突然治った。
東大で工学系の大学院に進学したが、吃音が出やすい電話の対応が非常に重荷なため、普通に就職することは諦めた。
「文章を書いて生活したい」「長い旅をしたい」という温めていた気持ちを頼りに、妻と海外を旅しながらライターとして生きる道を選んだ。
ライターも話すことが欠かせない仕事だが、不安はなかったのだろうか。
「そもそも言葉が通じない国ならば、どもっても、外国人だからうまく話せないと思われて、ごまかせるのではと考えたんです」
実際には、取材の約束を取り付けるために、たびたび苦手な電話をしなくてはならなかった。
苦労しながらも旅を続け、中国に滞在中のある瞬間、どもらずに言葉が出たのを境に、吃音がほぼ消えてしまったという。
夢のような話だが、こんな風に突然吃音が出なくなるのは、きわめてまれなケースだという。
治った原因は、はっきりとは分からない。
ただ、他言語圏にいる気楽さ、異文化の中に身を起いたことで自分自身を縛っていた価値観や緊張感がやわらいだことなどが、関係していそうだと感じるという。
「日本では、お店でのやりとり一つにしてもコミュニケーションの型がはっきりしていて、その通りでないと『え、どうしたの』となります。
そういう型がゆるい中国の環境も、僕にとっては気楽でよかったのかもしれません」
だからといって、環境や精神状態だけで吃音が引き起こされるというものでもない、と強調する。
まだ十分に解明されていないが、発話に関係する脳の各部位の働き方や部位同士の接続が、吃音に影響しているケースがあるという最近の研究もあるそうだ。
原因、治るのかどうかなど、よくわからないことが多いのもまた、周囲が吃音を理解するのを難しくさせているという。
帰国して数年が経ち、吃音と一定の距離をおけるようになってようやく、取材のテーマにすることができた。
しかし、すでに治った自分が、いま悩みの渦中にいる人たちに取材をすることの後ろめたさは、ずっと抱えていたという。
また、苦悩をつぶさに書くほど、今まさに悩んでいる人にとっては「救いがない」と感じられるのではと、出版後も悩み続けている。
「それでも、大変さを伝えることで、結果的に吃音のある人にとって生きやすい社会になれば思いました」 本書に出てくる当事者や言語聴覚士たちの多くは、吃音を治したいと考え、そのための訓練などに取り組んでいる。
一方で、「どもってもいい」という考え方もある。
たとえば1970年代に当事者団体「言友会」の中心メンバーらが採択した「吃音者宣言」は、吃音を治そうとするではなく、いかに受け入れて生きていくかを考えよう、という立場だ。
近藤さんは、「吃音が本人や家族の責任だと差別されていた時代には、宣言に勇気づけられる人もいたと思います。
ただ、自分の経験では、どもってもいいんだよと言われても、なかなか本気でそうは思えない社会の状況がありました」
やはり今年出版された、自らも吃音があり九州大学で吃音外来を開く菊池良和医師の『吃音の世界』(光文社新書)は、治すことより、受け入れながら「人生の選択肢を増やす」ことに重点を置いた内容だ。
実は近藤さんは、この本にもライターとして編集協力している。
治療の歴史や、「小学校一年生」「二十歳」などライフステージに応じてぶつかる壁と対処法が紹介されている。
併せて読むと、吃音と生きる人生の、また違った側面を感じることができるだろう。
〈近藤雄生さんプロフィール〉
ノンフィクションライター。1976年生まれ。
東京大学工学部卒業、同大学院修了。2003年、自身の吃音をきっかけの一つとして、結婚直後に妻とともに日本を発つ。
約5年半の間、旅・定住を繰り返しながら月刊誌や週刊誌にルポルタージュなどを寄稿。
著書に『遊牧夫婦』シリーズ(ミシマ社)、『遊牧夫婦 はじまりの日々』(角川文庫)など。 〔2019年4/17(水) 好書好日(朝日新聞)(文・写真:高重治香)〕

周辺ニュース

ページ名吃音、、(発達障害のニュース)
吃音の苦悩伝える本出版 会話不安、もどかしさとおびえ…伝える前に詰まってしまう
「吃音の当事者と社会の認識のギャップを伝えたかった」と話す近藤さん(京都市右京区)
頭の中に伝えたい言葉があるのに相手に伝える前に詰まってしまう「吃音(きつおん)」に苦悩する人々を追ったノンフィクション「吃音 伝えられないもどかしさ」を、当事者のフリーライター近藤雄生さん(42)=京都市右京区=がこのほど出版した。
不登校や離職、時には自殺にまで追い込まれる当事者約50人を丹念に取材した作品で「深刻さを伝えたい」と話している。
吃音の苦悩伝える本出版 会話不安、もどかしさとおびえ…伝える前に詰まってしまう
出版されたノンフィクション「吃音 伝えられないもどかしさ」
80人以上に5年間かけて取材
<物心がついたころから思うように話すことができなかった。言葉を発しようとすると、なぜだかわからないが喉の辺りが硬直する。そのまま音を出そうとすると、「ご、ご、ごはん……」のようにどうしてもつっかえる>
「吃音 伝えられないもどかしさ」は、ある男性の生い立ちから始まる(作品では実名)。
男性は小学校での自己紹介でどもって笑われ、高学年で不登校に。
中学、高校と進むごとに吃音は悪化し、高校を中退した。
会話ができないことで就職もできず、孤独の中で毎日「死にたい」と考えていった。
作品には、男性のような吃音の当事者が次々と登場する。
近藤さん自身も吃音で苦しんだ。
就職はできないと考え、海外を旅しながら原稿を書く独特のスタイルで「遊牧夫婦」などのノンフィクションを書き、フリーライターを職業とするようになった。
「悩んだ自分だからこそ、吃音は書くべきテーマと考えた」
作品は当事者約50人に家族、言語聴覚士などを加えた計80人以上に5年間かけて取材。
電話に出る、店で注文するといったことにすら「詰まったらどうしよう」とおびえ、コミュニケーションがうまくいかないことがいかに人生に影を落とし、孤独に追い込んでいくかを鮮明にする。
吃音は日本で成人約百万人に症状があると推定されるのにメカニズムが不明な点や、治療の試み、当事者団体、就職面接時や職場での配慮といった近年の社会の変化にも触れている。
近藤さんは「吃音について社会が知るきっかけになり、吃音のある人たちにとって何らかの意味を持つ本になれば」と話している。
四六判、224ページ。新潮社刊。1620円。
〔2019年2/13(水) 京都新聞〕

     

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