30代後半からの人とつながり方

引きこもり状態のまま30代後半になっている男性の母親からの相談です。
これまで通院していた医師から、統合失調症の診断を受けました。
家にいてパソコンやテレビを見る生活が10年以上続いています。数年前にある自助グループを聞いて一緒に行ったところ、息子は違和感をもったようです。以後そこには参加をしないし、行く気はないようです。聞くところではその自助グループの参加者は統合失調症の人が多く、年齢も息子よりもかなり高い人が多いようでした。
この経験があり外出する行き先が見つかりません。統合失調であるなしにかかわらず、もう少し若い人、30代から40代の人の集まる場所はないでしょうか。
これが相談の主旨です。
この相談からは次の点が考えられます。
(1)引きこもりが長期になり、家族以外の人との接触が極端に少なくなるとき、精神障害になりやすいことです。生活に現実感がうすれ、想像世界が肥大し、バランスが取れなくなる1つの結果ではないかと思います。
(2)家族以外の人と接触する機会を工夫する必要があります。本人が人と接触するためには膨大なエネルギーが必要です。それをカバーする試みが求められます。
対策としては家族が、いろいろな場所にいき、目で見た様子を話すなどの外部情報を入れること。
自宅に出入りする人を多様につくることです。集金の人、宅配の人などが玄関から声をかけられるようなスタンスをとることなども工夫になります(当事者は嫌がるのですが)。
家庭自体が当事者に引きずられて準引きこもり家庭にならないことです。
(3)訪問サポートが典型的ですが、「あらゆる社会資源を生かす」つもりで他の手段も考えましょう。
いろいろな支援団体・公共機関に家族が相談に行くこともすすめます。地域によっては保健所が対応しそうなところもあります。社会福祉相談に出向き職員と親しくなるところから始まることもあります。
不登校情報センターの取り組みとして、引きこもり体験者による「体験発表の出前サービス」を始めました。他の支援団体でも対応しているところがあるのかもしれません。家族が行動する中で見つかることです。
(4)このような人との接点をつくるなかで、人のなかにいられる条件が高まります。結果を急ぐと本人の負担が大きくうまく行かないことが多いです。着実に準備を重ねましょう。

高野山高校で発生した傷害事件

和歌山県の高野山高校で生徒による傷害事件が発生しました。
高野山高校は不登校生・中退生を受け入れる高校として不登校情報センターのサイトでも紹介しています。
このような事件が生じたことはまことに残念です。被害者の回復を祈り、関係者の心労に思いいたすところです。
高野山高校は、全寮制の男女共学の高校で、普通科と宗教科があります。
これまでも関係する進路相談等で紹介したことがありますし、同校の学校案内書は希望者に配布するために保管もしています。
以前に相談されたある人は、精神的な不安定状態を改善するために高野山高校に行きたいともいっていました(いくつかの事情で実現はしませんでしたが)。
事件の詳細は報道以外にはわかりませんが、高野山高校への進学案内は継続する予定です。
なぜならこの事件は、学校の体制やスタンスの問題から生まれたものと判断できないからです。生徒間の事情であり、事件後の学校の対処もおおむね適切であるように思います。
より詳細なことがわかりしだい、情報センターとして可能で必要なことは行いますが、いまの時点ではこのような方向が必要だろうと思います。
十代の高校生を寮制度で受け入れ、生活と教育をすすめるのはそう容易なことではありません。
不登校・中退を経験する生徒のなかには問題を自分のなかに抱え込むタイプの人が少なからずいます。そういう生徒をサポートすることはことさら大事であり、高野山高校はそれを長く実践されてきました。
この事件が生じたからといって、その課題にウェイトをおいて取り組む高校を非難がましく言うことはできません。
むしろこのような課題を避け、“リスク”をとらず楽な道を選ぶ高校よりははるかに優れているのですから。