ベッドの上で迎えた成人の日

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20歳のH君は病院のベッドの上に横になっていてほとんど動けません。
訪ねていった直後に看護師か介護師か2人の職員が「体位交換します」と言って病室に入ってきました。
掛け声とともに彼の体を動かした後、会釈をして出て行きました。
その後、ベッドの横の椅子に腰かけて、退屈かな? と声をかけると何か言いたそうです。
「ぼくは社会に入っていけますか?」とつぶやくように聞いているのです。

少し考えて、さっきの看護師さんか介護師さんに「ありがとう」って言えるようになるのが、社会への入り口かな、と答えました。
Hくんはこれが質問への答えかどうかわからなかったのかもしれません。
社会というのは人間からできているの。身近なところにいる人に声をかけ、声をかけられたらできる答えを返していく、自分が社会に入ることはそんなことかな。
こんど看護師さんや検査の人がきたら、自分の体の様子とか、さっきのような体位交換のときに“重たいですか”とか声をかけてみてはどうかな。そうすれば職員さんは何か言ってくれるよ、それだけで社会に触れていることになるから、そういうのを繰り返すと知らないうちに社会にはいっている自分になるね。

明日(14日)は成人の日です。ベッドの上で成人の日を迎えるHくんもまた社会への入り口を探していたのです。ようやく話せる元気が出てきたのでしょう。

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