6日のブログを書いた背景を少し追加しなくてはならないでしょう。
先日、『医学は科学ではない』(米山公啓、ちくま新書、2005年)を読んだところです。医療の実務現場から「EBM(実証に基づく医療)によって治療や診断が行われているのは、医療行為のうちの半分にも満たない」(まえがき)ことを現場の実際的な状況から具体的にあきらかにしたものです。
この本のなかでも、医学・医療の進歩は臓器再生医療などへの道を開いている状況を紹介しながら、「従来の健康保険の手術と比べると、金のかかり方が違ってきてしまう」「健康保険制度の平等性はすっかり失われるかもしれない」(158・159ページ)と懸念を示しています。
TPPへの参加の有無とは別に国民皆保険制度の存続のための内容を考えなくてはならないと思うからです。
たとえば抗加齢医学は「病気を治す医学とは違う方向へ向かっていくのではないだろうか」(159ページ)というのは提起になるはずです。
ホメオパシー、ハーブ、サプリメント、機能性食品、あるいは健康食品なども想定しながら「代替医療は医学ではなく、文化ととらえたほうがよく、それは科学的な立証を厳しく要求されない文化だ」というロバート・L・パークの意見を紹介しています。この意見はなかなか説得力があります。
これらのいろいろな動きのなかで、クスリ依存の精神科医療からの解放、健康保険制度の存続などを見ていかなくてはならないのです。
なお、医学は科学ではない点に関しては以前に中井久夫さんの論文「医学・精神医学・精神療法は科学か」を紹介したことがあります。