統合失調症の人とつながる方法から対応を考える

思うところがあって蟻塚亮二『統合失調症とのつきあい方―闘わないことのすすめ』(大月書店、2007年)を読みました。現行の日本の精神科医療の不足部分をどう見るのかという視点です。

統合失調症ということである人が入院しました。
面会の席で『入院はもういやだ、楽しみがない」と言い希死念慮が強いことを示しました。それを聞いた医師から退院は難しいと判断されたようです。面会の後の夜になって椅子を投げました。退院できない、楽しみがない状態の継続がはっきりしたことへの不満を行動で示したのです。そうしたら保護室(閉鎖病棟)に移されました。
この人に関わり始めた私たちは投薬、院内作業療法のほかに対人関係をつくる方法を考え準備していたのですが、実現は遠のきました。家族の面会も制約され、それ以外の人との接触を求めるのはできなくなったのです。
他の病院では、閉鎖病棟入院中でも面会は可能なこともあったのですが、この病院ではできないのです。

この本の著者は統合失調症への治療をはるかにオープンに考えています。それどころか「『長期保護室使用』は『院内における見捨てられ』であり、それが保護室使用の長期化につながる」点を指摘しています(171ページ)。考え方が逆なのです。
どう対応するのか、その前に統合失調症をどう理解するのか、そういうところから平易に実生活に即して書かれています。
これを参考に私たちのできることを、家族と協力しながら進めていく道を探っていきます。近く転医につながる動きをします。同行する予定です。

川上康一先生が亡くなりました

川上康一先生は恵那の教育として知られるすぐれた教育運動の実践者の一人でした。
私が出版社に入ったとき最初に編集の手伝いをしたのが川上康一先生の『子どもの心とからだ―レポート 恵那の教育実践』の出版でした。
1979年8月にあゆみ出版に入り、この本は12月ころの発行でした。編集の手伝いというのは、すでに印刷所に回っていた原稿のゲラの校正などです。
当時は出版の手順や仕組みを何もわからず、印刷所の植字職人や先輩編集者に教えられながら、編集と出版を勉強し始めた時期です。
恵那の教育の一つの特徴は生活つづり方を積極的に取り入れていました。
生活つづり方を取り入れている人には子どものからだとこころの様子をよく見ている教師が多かったと思います。それは恵那地域の教師だけではなく、各地の教師の名前がすぐに思い浮かびます。これは私の関心をひきつける教育活動でした。
それから子どもの登校拒否・不登校、その後の引きこもりに関心が進みました。子どものからだとこころへの関心の延長です。思うに川上康一先生はその道を最初に教えてくれた方といえるわけです。ご冥福をお祈りいたします。