9月11日の大人の引きこもりを考える教室に即席のテキストを用意しました。内閣府は引きこもりが大幅に減少していると発表しそれを考えたものです。
テキストは全体で3構成ですが、荒筋だけなので、1項目ずつ書き直しました。
引きこもりへの対応策(素案)
内閣府の「若者の生活に関する調査」(9月7日発表)では、引きこもりは2010年の69.6万人から、54.1万人になったそうです。5年間で約15万人の減少です。また現在引きこもりである人の34.7%が「7年以上続いている」状態で、長期化し深刻になっています。数字の精密さはわかりませんが、減少傾向は明らかだと思います。
(1)引きこもりの現状をこのように理解する
引きこもりの減少の示すことは、引きこもりが1960年代の後半から表面化し、2020年、30年代までの、歴史的な一時的な現象であると推測できます。
引きこもりとは若者世代の現行社会への消極的で引っ込み思案な異議申し立ての形であったと理解します。社会は子ども・若者に適応を求めます。しかし、その適応を求める社会はゆがんでいます。それを感覚的に精緻にとらえた人たちが適応を避けてきたのです。
不登校や引きこもりの形で異議申し立てた内容が、社会においてわずかずつ受けとめられつつあるようです。減少の背景はこれです。しかし、それはいずれスパークする時代を迎えるでしょう。引きこもり経験者のある部分がこれに関与する様相を示しています。
この引きこもりが表われた歴史時代は、経済社会の面から見れば、工業社会から情報社会への移行期に当たります。しかしそれはだけではないようです。人の不平等な扱い、個人の特性を尊重しない社会への不信や異議申し立てが、フラットな社会に変えていく時代に移行しつつあると考えられます。
この“引きこもり時代”の最近10年は、引きこもりと他の社会問題が接近してきた時期でもあります。私は「引きこもりを社会に近づけようと取り組んできたのに、社会の方が引きこもりに近づいてきた」と感じています。Uくんは「社会のいろんな人が引きこもりのような社会的弱者の予備軍になってきた」といいました。
放送大学の宮本みち子さんは「引きこもりや失業者、障害者、などの問題が地続きになっている」と表現しました。Sくんは「大震災や貧困問題が生まれるたびに引きこもりの問題はそれらの後に回されてきた」と言いましたが、これも同じ事態の別の表現でしょう。これらの被災者や困難者の抱える社会的な状況は引きこもり当事者の問題と似てくるからです。
言い換えると引きこもり固有の問題は、社会的な周辺の課題と重なるのです。たとえば住宅問題は生活困窮者の住宅問題と重なり、都市の空き家問題の解決策につながると予想できます。当事者が集まる「フューチャーセッション庵」の表題は「ひきこもりが問題にならない社会」ですが、それはこのように裏側から半分は実現しつつあるのです。問題の解決ではなく、引きこもりが問題なのではなく、住宅問題を解決するという社会問題のなかに含まれるのです。
もちろん引きこもり固有の問題もあります。それが「長期化し深刻になっている」引きこもりへの対応に典型的に見られます。それは次の素案テキスト2「引きこもりの特質に関わること」で取り上げます。なお素案テキスト3は「不登校情報センターのサイト制作の新方針」です。