子どもが生まれてから成人するまでの過程がすべて親の子育て期間です。子どもの生育・成長とともに、子育てもその程度や内容は少しずつ変わり、子どもは相対的に自立していきます。
生後すぐの時期は〈乳児〉であり、ほぼ完全に親またはその代理者が世話(ケア)をします。だいたい2~3歳ころから〈幼児〉の時期になり、多くは小学校入学前の6歳ぐらいまでが相当します。この乳児から幼児にかけて家庭の外側(社会)にできたのが、保育所や幼児園などの援助施設です。
就学以降は学校(およびそれに準ずる場)が対応施設で、教職員が重要な役割をします。教育は教員中心ですが、中学校、高校に進むにつれて個人差の大きくなり、養護教諭、教育相談員(カウンセラー)などと関わる人も出ます。学校以外の生活場面も広がります。保育の延長としての学童保育は学童保育指導員がいます。個人によっては各種のスポーツ・運動クラブ(コーチ・指導員)、文化活動的な習い事(ピアノ教室、英会話教室、絵画教室など)、それに学習塾は多くの子どもたちが通います。この就学時期(小学校・中学・高校)になっても親(家庭)の子育ての役割は続きます。
かつて中学校卒業時点(15歳)で仕事に就くのか、進学に進むのかの分岐点でした。私は山陰の田舎育ちで1960年ごろの高校進学率は60%程度でした。全国平均的にはもう少し高かったと思います。高度経済成長期(~1970年初めまで)を通してこの分岐点は、高校卒業時まで移動しました。私は1964年に高校卒業とともに就職し、同時に夜間大学に入学しました。2000年以降はこの分岐点の中心が大学卒業時まで移動していると思います。
分岐後は生活の中心が仕事か学業かに分かれます。仕事に就いた人は、親の子育ての半分はなくなります。なお進学し学業を続ける人に対しては基本的には親の生活費負担は続きますが、奨学金(当人にとっては就職後の負債返済)を受けたり、アルバイトによってある程度の収入を得ます。
子育てと子どもの教育期間を通して、親(家庭)は、生活費と家族内ケアを求められ実行します。この家庭内ケアの部分は、家庭外に支出される学費、生活費、文化活動費…などと違って、経済的な評価の対象から外されています。すなわちGDP(国内総生産)に計算されません。家庭の外の活動は基本的には金額により定量的に計算されます。家族内のことは全部金額計算されません。その活動を私は定性的(質や状態)に評価してもいいと思います。金額評価できるかもしれませんが、判断材料は〈時間〉はどうでしょうか。自信はありませんが、家庭内ケア、子育て活動を時間単位で表示できるとすれば……どうなるでしょうか。
家族内ケアの評価は私の知る範囲では同種労働の市場価格を参考にする方法が試みられています(「 家事労働を金額評価する基準作成の動き 」を参照)。また子育て手当などの支援制度もあり、これは定性的評価につながるかもしれません。