「11月アンケート」は、開始間もなく内容に不十分があると悟り改訂を行いました。改訂の中心は「家事」の項目を追加したことです。それは2つの分野あり、家事労働と家族内ケアです。しかし、対象とするひきこもり経験者には結婚している人が少なく、改訂して得た回答はあまり役に立ちませんでした。私は、家族関係の大きな変化が、ひきこもり発生の重要な背景にある事情という仮説をもっています。こういう視点から改訂に家事労働を持ち込み、そして空振りに終わったわけです。
問題に立ち戻るためいくつかの先行研究を読みました。その先行研究はひきこもりを視野に入れたものではありません。藤田朋子「無償労働のなかの「見えない」家事——夫婦の家事分担調査からの検証」、久保桂子「共働き夫婦の家事・育児分担の実態」(日本労働研究雑誌)の2つへの感想から始めましょう。「感想」となるのは、具体的な内容記述に入る以前のところで、より重要なことに気づいたためです。研究の具体的な内容は夫婦の間での家事分担になるのですが、「家族内ケア」に関する部分はほぼありません。
しかし、「家族内ケア」についてもひきこもり(不登校)になる人(子ども)の家族関係を通しても1つの要件を確認できます。私が不登校情報センターを始めのたのは不登校の子をもつ親の相談からでした。それにつづいて不登校やひきこもりの経験者が集まる居場所の運営です。
初めの親の相談とは何でしょうか? 間違いなく「子育て」の一部、少なくともその延長です。相談に来る9割方は母親です。父親単独は5%未満、夫妻一緒が1割ほど、子どもと母親が一緒という例も少しあります。これが肌感覚での相談者の分類割合です。この相談に来る人が費やす部分は「子育て」の一部になりませんか? 居場所の運営は家族から見れば外部施設の取り組みになります。
先の2つの論文で対象にしている「子育て」は基本的に小学校入学以前の子どもを対象にしています。しかし子育ては、子どものそれ以降の小学校も中学校も、高校時代も入るでしょう。
ここで問題を一区切りすれば、「子育て」とは学齢期以前の子どもの「子育て」に制約されないことです。それは子どものための学校との関わり、参観日や学校行事への参加なども含まれるのです。学校以外にも、保健所や自治体等との関わりも入れて考えるべきものです。時間に着目した言い方では、それに費やす時間も子育て時間なのです。
第二は「子育て」を含む「家族内ケア」という視点が必要です。子育ての延長には病気等への対応が1つ。それ以外に障害者であればそのケアも必要です。夫を含む家族全体へのケアも含まれます。家庭外にある医療・リハビリ機関からの支援があっても家族内ケアの部分は欠かせません。
そして最大の空白は高齢者家族への介護です。これは家族としては別世帯になっていても生まれますし、同世帯(三世代家族)であっては避けられません。この部分を家族内ケアとして含まなくては、問題を縮小してみることになります。介護は昔からあったものですが、人口の高齢化に伴ってその部分が大きくなってきました。家族の存在が人間社会の継続に欠かせないと認める限り、介護を家族内ケアとして認めなくてななりません。介護退職やヤングケアラーが社会問題化しているのはここに関係します。
先に挙げた2つの論文は夫婦間の家事分担の具体的な様子を分析しており、私には1960~70年代の日本の高度経済成長期により変化したことが、子どもの不登校やひきこもりの背景事情にあると仮説にしたものです。2つの論文はその夫と妻、すなわち男女の家事分担(家事労働・家族内ケア分担)の現実の不完全さ・不十分さを明らかにしたものです。この家事分担の途中経過(不十分さ)については別の説明になります。
家事とは家族内ケアを含むもの
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