上田秀人『奥祐筆秘帳―決戦』(講談社文庫、2013年6月)を読みました。
といってもこの手のことに関心のない人には何のことかはさっぱりわからないでしょう。
時代小説で『奥祐筆秘帳』は12巻になる長編時代小説です。徳川11代将軍・徳川家斉時代をとったフィクションですが、史実と大きな齟齬をしない形で展開する大衆小説として読み応えがあります。それがようやく完結したわけです。
5、6巻出たころに読み始めて最後は新しい巻が出るのを待つ形でした。とはいえ新刊ではなく古本になってから買っていたので、数か月は過ぎてから読むことになりました。
著者の「あとがき」によると宝島社の『この文庫書き下ろし時代小説がすごい!』
で1位になったといいます。確かにそれだけの迫力と精密な構成がありました。
徳川政権の構造、政治と行政の違い、官僚制度などをリアル(フィクションとしてのリアル?)に表します。剣士の物語、青春小説でもあります。戦術と戦略の入り交じったスリルのある展開が、予想を超えていながら、確かにありうる場面を示して納得させます。見事な虚構性を示しています。
関心のある人には第1巻から読むようにお勧めします。