靴下騒動…そんなことよりも体性感覚というとらえ方を知る

靴下騒動というのがあります。大げさなものではありません。私が外出するときにはいていく靴下が見つからずにうろうろする事態です。昔から室内に入ると靴下を脱いでいます。会館のような場所で開かれる会合であってもあまり動かないと靴下を脱ぎ素足になります。そのほうが何かいいからです。
外出から戻ると何となく靴下を脱いでしまいます。また外出になると靴下を履くわけですが、さっき脱いだ靴下が見つからない、そしてあちこちを探す。これが靴下騒動です。
中学生の頃まではめったに靴を履くことはありませんでした。野球部にいたのでそのときはスパイクシューズですが、登下校は素足に下駄履きです。冬でもそうでした。靴下を履くのは靴を履くようになった高校時代からです。

もう一つ。私は夏でも長袖シャツを着ています。上腕を直接に出したときに感じる肌触りのざらざらする感じ、寒さを感じて鳥肌的なぴりぴりする感じが苦手です。こちらは私だけの感覚でとどまっており、騒動になるようなことはありません。
足は素足がよく、腕はシャツでカバーされた状態がよい。なんだか相反することであります。上手く説明できませんが、これは皮膚感覚(触覚)に関することで共通しています。
感覚に関して、これまでは五感+アルファとして考えてきました。数年前に自分のアスペルガー気質・体質の一面として、この感覚のわずかな特異性をとらえた説明を探そうとしました。しかし、それらしき説明に接したことはありません。

そういう説明はあきらめました。その一方で感覚に関するより体系的な説明を得ました。
五感+アルファに代わって次のように説明されています。
(1)特殊感覚=視覚、聴覚、味覚、臭覚、平衡感覚=脳神経連絡の諸感覚。
(2)体性感覚=触覚、圧覚、冷覚、痛覚、運動感覚=脊髄連絡の諸感覚。
(3)内臓感覚=臓器感覚、内臓痛覚=内蔵連絡の諸感覚
中村雄二郎『臨床の知とは何か』(岩波新書、1992年、103ページ)

この分類によると、皮膚感覚としてきたことは体性感覚というのがよさそうです。体性感覚は次のように説明されています。
「この知見から言えることは、昔からただ〈触覚〉といわれてきたものは、単に皮膚の接触感覚にとどまらない〈体性感覚〉に属するものであり、それは同じく体性感覚に属する筋肉感覚や運動感覚と結びついて働く、ということである。いいかえれば、狭義の触覚も、体性感覚の一つとしてその基礎の上に、筋肉感覚や運動感覚と結びついて初めて、具体的な触覚として働くのである。
そして、昔から共通感覚とは別に、よく触覚が五感を総合すると言われてきたが、それは狭い意味の触覚ではなく、触覚に代表される体性感覚のことだったのである。さらに、諸感覚が共通感覚によって統合されるとき、実は、体性感覚が統合のベースになっていたのである」(103~104ページ)。
 

松田武己のアスペルガースペクトラムの現われ

松田武己が自身のアスペルガースペクトラムを紹介しているのに関心を寄せる人が少なからずいるようです。たしかに「そういう関心の持ち方ってあるな」と改めて納得しています。
SNS「ザ・インタビューズ」のなかで私がいろいろな質問に答えたなかに、その特色は随所にあると思います。そのために答えてきたようなものです。
先日、この質問への答え500項目をまとめました。数が多いので4つに分類しました。
そのなかの1(松田武己個人1)の「性格と気質」4(社会の関係)の「エッセイ」に分けたところに比較的わかりやすいことが多く書かれていると思います。私の場合はこのような形で現われたようです。典型とは思いませんが1人の実例になるでしょう。

悪びれずに「修行中です」のスタンスでいこう

先日、ある進路相談会で相談員として出席する機会がありました。
相談に来た5組の内の1組は、高校生の女子とお母さんでした。
その女子高校生に相談シートを書いてもらいました。ペンの持ち方が変わっています。
その子は欠席日数がすでに3分の1以上になっていましたので、進級は出来ません。それで転校先を探しているのです。通信制高校であれば進級の条件が生まれるところもあります。その話は比較的すぐにわかったのですが、登校できなくなった理由・背景をどうするのかはこれからのテーマになります。とくに友人関係をどうしていくのかです。
いろんな事情を聞くとアスペルガー気質であることがわかります。それはペンの持ち方の時点で予想できたことです。
対人関係から社会関係の力を育てなくてはなりません。独りが好きで独りでいると楽です。それは認めなくてはなりませんが、人とのかかわりなくして対人関係の力は育ちません。その経験では失敗はつきものです。トンチンカンな対応だったり、相手の反応がおかしいと思ったら、“悪びれずに”謝ることです。
このときの反応によっては後々まで響くことがあります。しかし、しつこく謝りすぎるのはよくないです。自分にはこういうことがあり“修行中です”みたいな感じがいいのではないかと思います。
失敗を心配していろんなことに手を出さなくなるのが最悪です。必要なのは失敗を含む経験です。「またやっちゃいました」といいながら「あの人にはあんなところがあるよね」と認めてもらうのがいいように思います。

私の経験では小学生のころ「変わった人」とよばれ「学校給食を食べない人」で通しました。働くようになってからは「カシコイのかバカなのかわからないときがある」とも「日本人じゃないところがある」とも言われました。いまにして思うと、それらは周囲の人の私の理解の仕方であり受けいれ方であったのです。
アスペルガー気質の人の相談を受けると、自分の経験と類似したことはいろいろ浮かんできます。自分の経験を思い出させてくれるものがいっぱいあります。必要なのは“悪びれずに”、そういうところがあるので“修行中です”というスタンスではないでしょうか。私の場合の実感です。

発達障害者の発表会あんない

2月11日に発達障害者の体験発表会をします。アスペルガー症候群などの直面してきた実例を話し合い、交流する場です。深刻なことばかりではなく意外な発見もありそうです。
発表者は30代以上の男女各1名が決まり、さらに発表できる人を募集しています。
この発表者2人に当日のスケジュールなどを送りました。おおよその内容がわかりますので、要点を紹介します。
(1) 参加者の見込みは15名から20名ぐらいになりそうです。
(2) 開始は1時15分。体験発表の2人がそれぞれ約15分話します。
(3) 体験発表の後、質問時間を設けます。質問の回答には発表者のほかに引きこもりの人への訪問活動の責任者(藤原宏美さん)にも答えてもらいます。
(4) 後半は交流会にします。2グループに分かれフリートークとします。終了は3時30分。

日時:2月11日(月曜日・祝日)午後1時15分~3時30分。
会場:葛飾区立新小岩地区センター3階第2会議室、JR総武線「新小岩」南口6分。
参加費:500円(当事者は無料です)。
主催・連絡先:NPO法人不登校情報センター(TEL03-3654-0181、open@futoko.info)。

発達障害の経験発表会

アスペルガー障害など発達障害者の体験発表会を企画しています。

2月11日(月曜日・祝日)、会場は葛飾区新小岩地区センターの第2会議室です。

発表者は女性1名が決まりましたが、男性はまだOKの返事をいただいておりません。松田もアスペルガー気質であろうと思いますので、もし発表者が少なければ発表に加わるつもりです。しかし、程度が軽いのでできればより適当な人に話してもらいたいです。

内容は、特にアスペルガー障害・気質の人がどんな事態を経験したのか、切り抜けるためにどうしてきたか。家族や友達との関係、社会や仕事の中で直面すること、周囲から理解されづらい事情などの実例を話してもらいます。とくに質問を受けて答えてもらうとわかりやすいので交流会的な場をつくる予定です。

参加を見込んでいる人は当事者と親です。

発表してもいい人がいましたら連絡をください。⇒TEL:03-3654-0181、FAX:03-3654-0979、メール:open@futoko.info まで。

『ぼくはアスペルガー症候群』

著者からお送りいただきました『ぼくはアスペルガー症候群』(著者・権田真吾、株式会社彩図社)を読み終えましたので、紹介いたします。

わかりやすいのでお勧めします。アスペルガー症候群といっても個人差がありますので、アスペルガー症候群の全員が権田さんとは同じではないのです。そして権田さんは確かにアスペルー症候群らしい行動・感覚があることが見て取れます。そういう意味で参考にしていただき、アスペルガー症候群への理解を深める参考にしてください。

定価1000円+税。ISBN978-4-88392-800-2 です。

不登校、引きこもり、発達障害に関連する本のご寄贈をお待ちしています。

 

子どもを発達障害と診断する意味

発達障害、アスペルガースペクトラムというのは性格の問題ではなく、先天的な脳の機能障害である。このような端的な表現に出会うことがあります。ツイッターという短い文の中では特にそうならざるを得ないでしょうが、よく出会う表現です。
たぶん「性格の問題ではない」ところに重みを置いて書いているので、発達障害、アスペルガースペクトラムへの理解をすすめるつもりで書いているのでしょう。
しかし、待ってください。いま少し事態を考えていただきたいです。
人間はすべて未発達な脳の状態を持って生まれてきます。言い方を変えるならば、人間は先天的な脳の機能障害の状態で生まれてきます。その面を見失ってはいけません。
それがかなり早い時期からある子どもは発達障害と診断され、別の未発達の状態の子どもは発達障害とは診断されないのです。
人間の脳の一応の完成を20歳前後としてみたとき、小さな子どものときから発達障害だ、アスペルガースペクトラムだと診断した結果、何か欠けるものはありませんか。
発達障害であるなしに関わらず、子どもを育てる、脳を育てるという取り組み、環境づくりが必要なのです。発達障害やアスペルガースペクトラムと診断されたら、あとは医療や療育の分野の専門的なところにお任せする姿勢になっていませんか。それは子ども誰にも必要な脳を育てるという取り組みを狭めてしまいます。「人は人の中で育てる」ことの重要性です。
とりわけ家族のなかで、自然な子ども同士のかかわりを心がけるなかで出来ていくものです。保育や教育を専門的なものに閉じ込めないでオープンにしていきたいと思うのです。
4、50年以前にも発達障害やアスペルガースペクトラムの子どもはいたのです。それが今日ほどの問題にならなかった一面は、社会状況、子育ての環境が子育てにとって今日よりは優れていたとも言えるわけです。その頃は子育ての知識が遅れていたということだけではありません。
発達障害、アスペルガースペクトラムの診断とその後の対処の有効性を認めるものですが、狭く偏らないことを願うものです。

横浜での不登校相談会に参加

6月5日、日曜日、横浜で不登校の講演会と相談会があり、出かけました。
訪問サポート・トカネットの藤原さんと一緒です。
会場は桜木町の日石横浜ホール、主催は「不登校サポート・いばしょづくり」です。
10校余りの学校が出席し、募集相談をしていました。
一般参加者は50名はいたと思います。
参加した学校のアピールの場としてはかなりよかったはずです。

私は、「不登校生支援のを現場から」として最初の講演「親と子の会話」をしました。
午後からは、藤原さんと並んで一般の参加者の個別相談を受けました。
不登校生の状況は、大きなところでは以前と変わるものではありません。
相談のお母さんからADHDとか、アスペルガー気質、発達障害の言葉が出るのが以前との比較では変化でしょうか。以前にはあまりなかったことです。
子どもの日常の様子をより、そういう言葉で理解する、わかったつもりになるのが気になります。
そういうことも知りながら、目の前の子どもの様子から理解しようとするのがお勧めです。

相談の多くは十代の子どもの例です。そのぶん子どもにも親にもエネルギーが感じられます。
何人かには、訪問サポートを視野に入れ、家族以外の学生などのかかわりづくりを提示しました。
十代の不登校には早期発見・早期対応の面があります。
同時に子どもがあるタイミングで学校を休み始めた意味を無視しないことも大事にしたい思いがあります。
親の相談を受けながらそんなことも話しになりました。

訪問サポーターの学生交流会

3月27日、日曜日、トカネット訪問サポーターの学生交流会。
春休み中で参加者は少ないと予想していましたが10人を超えました。
臨床心理士の金子さん、元学生サポータでいまは大学の講師をしている栗田さんも出席。
アスペルガースペクトラムらしい生徒への対応の話が出てきたので、
私自身の経験と少し似ていたので話したところ、かなりいろいろな経験を話すことになってしまいました。
学生らしいメゲずに熱心に取り組んでいる話を聞き、おもしろくもありおかしくもあり、気持ちのいいものです。