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自治体のひきこもり就労支援

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自治体のひきこもり就労支援

「ひきこもり就労支援、半数の自治体が断念」当事者や家族から疑問の声
11月27日に産経新聞が報じたひきこもり就労支援、自治体の半数超が断念 「新しい環境に拒否感」という記事に、当事者や家族から疑問の声が上がり、厚労省も困惑している。
これは当初、厚労省が来年度の予算で概算要求している「社会的孤立に対する施策について~ひきこもり施策を中心に~」などの資料に基づき取材した内容と推測した。
正確には、「就労支援」ではなく、生活困窮者自立支援制度に基づいた市町村での「就労準備支援事業」のことだ。
同記事によると、<ひきこもりなどを対象に就労準備を支援する事業>について、福祉事務所を設置している全国の自治体(約900)の半数以上が断念していたことが11月26日、厚労省の調べでわかったという。
事業を断念した理由も、<「利用ニーズ」に問題を挙げる自治体が一番多い。
その中で対象者が「必要性を理解しない」(58・2%)が最多。
次いで、「新しい環境に拒否感がある」(39%)…>だったとして、こう書き加えられていた。
<自立できなければ生活保護に移行し、社会保障費がさらに増大することが懸念されている。>
いったい、「懸念」しているのは、誰のことなのか。
希望していても行けないのに、憶測で書かれている
この1文に対し、さっそく突っ込みを入れたのは、他ならぬ「ひきこもり」当事者たちだ。
<生活保護を受け取れるようになることは、ひきこもりにとって自立の一つのかたちではないのか>
フェイスブック上で、ぼそっと池井多さん(ペンネーム=50代)は、<この記事に異議あり>として、そう反発する。
別の40代当事者も、フェイスブック上で、
<ほとんどのひきこもりの支援が「就労」前提の支援ばかり、行政は上から目線の支援ありき>
<情報も少ないし・ハードルも高い。当事者の意向なんて、ほとんど、無視。言うても、無駄の“空気”もあるから、当事者から、拒否されて当然です>
などと批判した。
一方、「今の(パワハラに遭って以来、戻りたいのに戻れなくなった)立場では、表だって発信できない」と、こっそり筆者にメッセージを送ってくれた30代の当事者は、「社会の偏見が私のような人間の居場所を潰している事を、もっといろんな人にわかって欲しいです」などと脅える。
しかも、記事には、<自治体の中には経済負担を削減するため、約3割が「手当」として対象者に金銭を給付していることも判明>と記されていた。
「判明」という表現は、まるで対象者への手当の給付が問題であるかのようにも受け取れる。
言うまでもなく、地域にひきこもる人が「支援」に辿り着くための唯一の手段は、交通費をかけて支援の場に来てもらうか、当事者たちの気持ちを理解できる支援者が自宅に訪問するしかない。
とくに地方では、片道だけでも千円、2千円と身銭を切らなければならず、支援を受けたくても諦めざるを得ない人たちが数多くいる。
そうした現実をどこまで想像できていたのだろうか。
家族会唯一の全国組織である「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」のスタッフは、「実際は希望していても行けないのに、必要性がないかのように憶測で書かれている。たとえ拒否感があったとしても、まず必要性を理解してもらうことが専門家の仕事。拒絶する人の気持ちも十分に理解したうえで、どう受け入れてもらえる場をつくり出すかのほうが先決ではないか」と憤る。
当事者たちや家族が指摘するように、利用すべき者が利用しなかったのだとしたら、支援事業が当事者の求めるものやそれぞれの実態に寄り添えておらず、支援の入り口ですれ違いを起こしている可能性があることを示唆している。
事業の制度設計や支援の姿勢、方法に、何かしらの課題があるとみるのが、断念の理由から導き出せる結論であり、「生活保護への移行」や「社会保障費の増大」への懸念ではない。
だから、この記事は破たんしているのだ。
自治体の「手当て給付」の対応は評価
厚労省によれば、同省の関連部署にはまったく取材のないまま、記事が書かれていたこともわかった。
記事の情報源は、6月8日の「社会保障審議会生活困窮者自立支援生活保護部会」の資料18ページに出てくる「就労準備支援事業を利用すべき者が利用しなかった理由」という設問だ。
最も多かった「本人が希望しない」のうち、「必要性を理解しない」「新しい環境に拒否感がある」「参加のための経済的負担ができない」が上位を占めている。
しかし、自治体が実施していない本当の理由は、同資料の17ページにあった。
「就労準備支援事業を実施しない理由」という設問があり、「利用ニーズが不明」が37・9%で最も多かったのを始め、利用ニーズはあるのに「事業化しにくい」「事業化していない」と「事業化したいが予算面で困難」を合わせると、5割以上を占めている。
つまり、本当の理由は、自治体の事業が、当事者のニーズに十分寄り添えていないことが調査で浮き彫りになっていたのだ。
さらに、本来は利用してもらいたいのに、支援に結びついていない人や、支援に結びつけるまでに難しい人もいる。
厚労省では、そういう調査結果が出ていることから、「来年度の予算要求の中で、就労準備支援の加算などで手厚い支給ができるよう、サービスに結び付けていきたい」(社会援護局)と説明する。
なぜ、こうした重要な問題については触れられていなかったのか。そもそも、なぜ6月に公表された資料の中から、どういう経緯で今の時期に、「厚労省の調べでわかった」という書き方になったのか。
「記事にあった<約3割が手当を給付していることも判明>については、自治体に就労準備支援事業の制度外として対応頂いている。そういうニーズがあると思っているし、実際、部会の中でも同様の意見が出た。この自治体の対応は問題と捉えてなく、むしろ評価できると思う」(厚労省社会援護局)
他にも、市町村向けに、第一次相談窓口である「ひきこもり地域支援センター」や、養成、派遣、訪問による支援等を行う「ひきこもりサポーター等養成研修事業」、居場所やプラットホーム構築などの「ひきこもりサポート事業」を補助していくメニューも予算調整中だ。
これらは、いずれも「任意」の施策なのに、とりわけ「就労」だけに特化して、個人に問題があるかのようなトーンにすり替えられているのはなぜなのか。
当事者たちのニーズに耳を傾けるしかない
近年、国の「ひきこもり支援」は、子ども・若者育成支援推進法に基づく「就労」から、生活困窮者自立支援法を根拠にした「福祉」施策へと、大きく転換した。
この事実は、自治体の現場でもメディアでも、きちんと理解している人が少ないように思う。
背景には、ひきこもる子と親の高齢化が進み、親亡き後に残された子が、情報やノウハウのない中で課題を解決できずに生きていけなくなる事例が頻発していることにある。
親子が80代(70代)と50代(40代)を迎え、「親子共倒れ」が懸念される、いわゆる「8050」(はちまるごーまる)問題だ。
厚労省の方針転換も、これからは、個人や世帯の抱える複合的課題などへの包括的な支援などを通じて、1人1人の「生き方」の支援に重点を置こうとしている。
  これまで「ひきこもり支援」の窓口とされ、批判の多かった「就労支援」のサポステ(厚労省の地域若者サポートステーション)の対象からも、ようやく「ひきこもり」が外れた。
地域でつながりがないまま、ひきこもる人たちが、再び社会に出たいと思ったときに、何が壁になっているのか。
まずは、当事者たちから気持ちや意向を聞いて、施策に反映させていくことが急務となっている。
ひきこもり問題に詳しい山本博司参議院議員(公明党)は、「地域共生社会の中で、受け皿を工夫しながら考えていくことが大事なのに、そういう認識やノウハウがなく、事業のことを行政も議員も知らない。何が市町村でできないのか、これから温かく見ていかなければいけない」と指摘する。
過去のトラウマの影響による長期ひきこもり生活を経て、地方で就活を続けている30代の当事者は、こんな感想をメールで寄せた。
<ひきこもり支援は、まずは就職支援からではない。(就労準備支援事業の)断念とは、それが必要な支援にまだ至ってないという深刻な実態を物語っています。何より、当事者たちが何を必要としているのか、よく耳を傾けるしかない。それを踏まえ、支援を変える。または、就職支援に入る前段階の支援を増やしてほしい>
〔池上正樹 2017/12/1(金)〕

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