当事者から生まれる危機感

高年齢引きこもりへの対応(その2)   高年齢引きこもりのばあい、訪問サポートによる対応は重要な方法です。その方法論は高年齢の引きこもりの人に対しては十分に確立していません。実践の中で見当のついたことを書いておきます。

訪問を始める前に、家族と支援者側の打ち合わせが必要です。
長期に引きこもりになるばあいは当事者と家族の間にもいろいろな経過があり、家族内で平穏な話し合いができていることは一つの到達状態です。しかし家族の関係が向上するだけで引きこもり状態を超えるのは珍しい部類です。基本的には家族以外の第三者が関わってはじめて、引きこもり状態から抜け出す条件ができます。
当事者と家族が平穏に話し合える状態がようやくできたのに、そこに第三者が加わることはこれまでの平穏状態を変える可能性があります。家族から社会への橋渡しにはある種の飛躍になるからです。家族はここを躊躇します。それは根拠があると認めなくてはなりません。同時にそれは超えなくてはなりません。
この平穏状態がいつまで続くのか予測すると、両親が健在である時期までです。父母のどちらかがなくなった時点で重大な変化が生まれる可能性はあります。

超えるときの本人の意識は引きこもり状態を抜け出したいという強い動機が生まれるか、突発的な事故により“危機感”に見舞われるときです。
強い動機とは働くことに生きがいを感じるのが人間であるという点に結びつきます。対人関係が途絶える、社会関係がなくなる状態が続いた結果、この働くことに生きがいを感じられなくなるのです。むしろ働くことへの嫌悪感、働いている人の邪悪性が迫って見えてくるのです。
生きた人間や自然との直接の接点が少ないとそうなりやすいのです。訪問サポートによる第三者との接触は人間への信頼感、自分への肯定感を引き出そうとする試みです。人間への信頼感、自分への肯定感が大きくなったときに動き出すエネルギーと動機が出てきます。訪問サポートはこのエネルギーと動機を引き出す取り組みです。訪問サポートに初めから外出や仕事につく結果を求めてもうまく行かないのはこの順序性を無視するからです
当事者の動機やエネルギーが現われるときは、ほとんどが家族や支援者への不満の形です。いわゆる斜に構えた表現になります。表現のしかたにとらわれず、何を言っているのか、何を要求しているのかを受け止めることが大事です。これは別に述べましょう。
一つ複雑になっていると思えるのは、働くことが自己実現としての働くことにならざるをえない時代の変化を迎えていることです。これもまた別に述べなくてはなりません。

もう一つの突発事故にもふれておきます。これまで聞いたことのある実例でいいますと、父母の死亡、家業の倒産、自宅や近所の火事や交通事故などです。このたびの東北大震災という自然災害も突発事故になったと思います。それらは人為的に起こせないか不幸なことです。その結果は当事者が引きこもりから抜けです方向に自動的に進むのではなく、可能性の一つです。

確認できるのは次の点です。自然災害に限らず引きこもりから抜け出るには当事者の危機感が必要なことです。当事者に現状を抜け出たいという強い動機が自分の現実に危機を感じさせるのです。
危機感は持つことが要求されるのではありません。「危機感を持て!」といわれてもストレスになることもあります。危機感を持てるのは自分を維持していける精神的な成長があり、家族の応援が期待できるときです。そういう条件がないときに生まれる危機感は混乱・パニックに陥らせます。ときには家庭内暴力や家族の物理的支配の形になることもあります。

訪問サポートを始めるには、当事者と家族が平穏に話し合える関係がなくてはうまくいきません。できれば当事者が同意していることが望ましいことは確かです。
次に仮に当事者が了解していなくても、家族が第三者である訪問者を受け入れるのに同意していなくては不可能です。家族のスタンスで、ここが揺らぐとうまくはいきません。しかし、これは訪問サポートの方法論の不十分さや経験不足にもよりますから、全てが家族側の事情によるものではありません。当事者が訪問に了解していないなかでの訪問は、難問ではあるけれども高度の対応力により乗り超えて行くテーマです。その試みもこれから紹介していきます。

「引きこもりから抜け出す“きっかけ”」 (2011年8月)に書いた「危機感」をより発展させています。

もやいの集会に数名が参加

6月24日、NPO法人もやいの創立記念集会があり、数名が参加しました。2人は初めて行きました。
参加したときにもらってきたパンフレットなどがあります。実用的なものもあります。
『若者ホームレス白書―当事者の証言から見えてきた問題と解決のための支援方策』2010年12月、NPO法人ビッグイッシュー基金。
『若者ホームレス白書―他者とつながって生きられる社会へ』2,2012年3月、NPO法人ビッグイッシュー基金。
『みんなのための安心住まいハンドブックー借家人の権利を知ろう』2010年6月、住まいの貧困に取り組むネットワーク。
Ncccoオルタナティブ・スペース・ネッコのリーフレット。

親子関係から社会関係に

高年齢引きこもりへの対応(その1)  長期の引きこもり状態の人への働きかけをどうするのかは私たちの重要なテーマです。それに関していろいろな経験や気づいていることがあります。全体の系統性をまとめる前にいくつかの視点を明らかにしておきます。

いつのころからか不登校情報センターの引きこもり親の会には当事者も参加できることにしました。
数年前は親の会の参加者も多く、また多くの当事者も参加する時期がありました。あるとき自分の親も参加すると知った当事者は「自分の親が来るのなら今日はやめておく」と、その場を抜け出しました。
だれかが講演をするとか、体験発表を聞くというときは、親子が同じ会場にいることはよく見られることです。しかし、自分の親がその席で自分のことを語る、子どもが親を目の前にして親のことを語るのはなかなかできない、やりづらいことです(ただし、例外はあります)。それがこのときの「自分の親が来るのなら今日はやめておく」行動です。
親の会は現在も形を変えて続いていますし、そこに引きこもり経験者も参加しています。
親は自分の子どものことを話しますし、参加している当事者の体験に基づく意見を聞きます。当事者も自分の親のことを話すことができます。その場では両者ともに、他の家族の前で自分の家族について話すことはできます。様子は違っていても特に親には自分の子どもを理解しやすくします。
しかし他の人がいる前で、親子が一緒にいて自分の子どもの引きこもり状態や自分の親のことは話せないし、聞きたくはないのです。

これは何を示しているのでしょうか。
自宅で引きこもっている子どもに何かを話そうとするときと、その子どもが目の前にいないときに他の人の前で話そうとするときの気持ちは違います。これをわずかな違いと思う人もいますし大きな違いと思う人もいます。その個人差はありますが、その違いは「社会の存在」をどこかで意識するからです。
親子の間にはまだ社会は存在しません。それに変わって情動が大きな役割を持ちます。他の家の子ども、他の家の親に対しては情動に代わり社会関係・社会性が心理的に作用します。自覚しないかもしれませんがそれは自然に表われるものです。子どもが思春期以前であれば、このような状態にはなりません。それが逆に裏付けになります。社会性とは思春期とともに芽生え成長するからです。
私たちが引きこもり、特に成人した引きこもり状態の人への支援を考えるときに、親子という家族間で話し合える状態になっていること、それに加えて家族以外の第三者が関わる必要があると考えるのは、この点です。第三者と関わることは社会的な関係をつくるからです。引きこもりは家族内の関係では出口が見つからず、訪問者一人という社会と関わるなかで出口を探すのです。
引きこもり生活が長期になり、家族間でも平穏が続いている。それは親にとっても子どもにとってもそれ以前の不穏な状態に比べれば一つの前進です。しかしその低め安定ともいえる生活状態が長くなっているときの次の課題はこの社会との関係づくりです。特に子ども側にとっての社会との関係づくりです。家族関係から社会関係への飛躍がそこにはあります。親は家族の平穏が崩れることを危惧しますが、当事者が躊躇するのは社会との接点ができることの不安と期待です。不安が前面に表われているところから始まります。

「ひとアレルギー」

「引きこもり事典=通知2」=「引きこもり生活事典」に登録することばを紹介します。

ひとアレルギー:食べ物にアレルギーがあるように人に対してアレルギー症状が出る感じです。食べ物アレルギーの場合は全てのものにアレルギーが出るわけではないように、人に対しても同じです。症状が出る相手と出ない相手がいます。症状が出ない人と関わるなかで徐々に抗体をつくるように取り組んでいるのかもしれません。対人アレルギー、人間アレルギーといってもいいでしょう。

悪どい(あくどい):*普通にしているようで、本人に有利になることがあります。本当は必死で有利にしたいとねらっているのを、うまく隠しているのじゃないかと思える人もいます。私がそんなことをしてもなぜかすぐにばれてしまいます。ばれないように自分の利益を図る人は悪どいのです。

西日(にしび):*夕方、水平線(地平近く)にある太陽。昼夜逆転の生活になり、午後遅くなって目が覚めます。ぐずぐずしていると西日がさしてきます。西日は妙にまぶしく、少しもの悲しいものです。自分の人生が少なくなっていくような気がします。

編集部から〕引きこもりを経験した人の感性・感覚等を辞書にしています。個人差がありますし、一般人にも共通することもあります。引きこもり理解に役立つはずです。ここで紹介する辞書ことば(意味の説明を含む)を募集します。open@futoko.info 「事典用」と書いてお送りください。表記は編集部の責任で行います。

不登校情報センターのサイト案内=「適応指導教室」ページ。教育委員会がつくる不登校生のための官制の“準フリースクール”の情報です。北海道から南に向かって順番に調べて九州の福岡県までたどり着きました。

NPO法人YCS総合相談室!

5月7日から準備をしてきた不登校・引きこもりの総合相談室がかなり具体的になりました。
名称は「特定非営利活動(NPO)法人YCS教育相談室」とします。Y=Youth、C=Child、S=Studentの頭文字です。
事務所は東京都豊島区南池袋、池袋駅の東口から10分のところです。
NPO法人の定款をまとめるために、事業項目を出し合いました。
私からは、2つ提案しました。
「不登校と子どもの成長」月例セミナーが一つ。とくに不登校の親を対象とします。学生や支援者になろうとする人の参加も呼びかけようと思います。子どもの成長過程、親子関係、友達関係、学習のしかた、など毎回テーマを設定してレクチャーをし、その後は自由な意見交流会です。とくに不登校の親を対象とします。
もう一つは「引きこもり体験発表会」です。こちらも毎月1回ペースで、引きこもり経験のある人の体験発表をし、その後で交流会をします。引きこもりの人のいる家族を中心に、支援者や引きこもり経験のある当事者を参加見込みによびかけます。発表するのは「出前サービス」に登録した人たちです。
準備会では、事業目的の全体を示すこと、特に大学生の不登校への支援策を進めるものなども話になりました。事業項目はひき続き話し合いを続けます。
NPO法人を設立し、認可を受けるには6か月の期間が必要ですが、「NPO法人申請中」として、8月から活動計画をつくり、実施します。

就職支援NPOを辞めたRさん

久しぶりにRさんが来ました。引きこもり経験者が就職できるようの働きかけるNPOにいたのですがやめ、いまは失業保険を受けています。辞めたのは、このNPOを訪ねてくる引きこもり経験者、つまり利用者さんがほとんどいないからです。
「失業保険が切れる前に何かする予定は?」ときいたところ、まだこれというのはなさそうです。彼のことですからまたどこかを探していくのでしょう。
「職に就くのと平行して自分でも何かをしてはどうか」と、2つの例を話しました。
1つは引きこもり経験者の「出前サービス」です。情報センターが始めようとしていることです。
もう一つは、パソコンを使って何かをすることです。そのテーマが大事ですが彼の行動に関するものがいいと思いました。それはRさんが考えることです。
小さくても自分で始めなくては、ゼロから出発のくり返しになりかねません。自分の居場所は自分で育てる。それと似ています。

「錯覚」と「隅が落ち着く」

引きこもり事典=通知1」=サイト内の「引きこもり生活事典」に登録することばを紹介します。

錯覚(さっかく):正常な感覚では人のなかに入ることができません。「今日は調子がいい」というようにむりやり特別視できたときにようやく人の前に出られます。私は正常なときではなく、何かを錯覚したときに生きているし、人のなかにいられます。

隅が落ち着く(すみがおちつく):人の集まる場所、食べ物屋に入るとき…などでは隅にいるのがいい。気分的に楽で落ち着きます。
乱反射(らんはんしゃ):*自分が選んできてたどりついた地点は、望んだところでもないし、予想していたところでもありません。いったい自分はどこにいるのかさえわかりません。自分は人生の乱反射の途上にいます。
編集部から〕引きこもりを経験した人の感性・感覚等を辞書にしています。個人差がありますし、一般人にも共通することもあります。引きこもり理解に役立つはずです。ここで紹介する辞書ことば(意味の説明を含む)を募集します。表記は編集部の責任で行います。

◎不登校情報センターのサイト案内「メンタル相談」ページは改造中で不ぞろいです。旧ページHtmlにつながるところ、新ページWikiにつながるところがまばらになっています。全てを移しかえるとすっきりしますし、新情報を載せやすくなります。その準備です。

ムラテック複合機を修理

6月23日、土曜日。午前九時過ぎにムラテックインフォメーションセンターに電話をしたところ、「ただいま電話が大変込んでいます…」とコールのあと、しばらくしてつながりました。土曜日なのに開いていてとてもありがたいです。
昨日の続きのムラテックコピー等の複合機(V-2300)の不具合について問い合わせをしました。
修復手順により回復しても、すぐに元の使えなくなる状態になると伝えると、「紙づまり」の可能性があると指摘されました。
カセットをいったん外さないと紙づまりを確認できないというと、カセットの外し方を教えられました。

先ほどの作業で、A4版用紙1枚と別の小さな破片がくしゃくしゃの状態で見つかり、取り除きました。
これで大丈夫と思ったのですがもう一山ありました。カセットを取り付けるときにドライバーがやや大きいのか、うまくネジが利きません。強引にするとネジの溝がつぶれて次回はドライバーが利かなくなるのではと心配になり、カセットのネジ止めはやめました。
これで複合機の回復はできたのですが、カセット止めのネジが残りました。なくし易いし、カセットが不安定になるかもしれないという不安があります。
それにしても土曜日にインフォメーションセンターを開いていたムラテックには感謝です。だれに対してこう注文するのは無理かもしれませんが、できればこのようでありたいものです。

当事者の動きが支援方法に成長

5月の「大人の引きこもりを考える」の講演は不登校情報センターの取り組みを発表する機会になりました。その後で参加者の一人がこういいました。「引きこもり経験者たちから情報センターを仕事のできる場にして欲しい」といってきたのが、何かよかったですね、と。
不登校情報センターが引きこもり経験者から言ってきたことを取り入れ、活動の一部にしていることは多くあります。当事者から見ると自分たちで始めたことが形を変えて情報センターの活動に引き継がれ、生かされていることも少なからずあるはずです。
情報センターの取り組みには、プログラムを用意し、こういう方法で支援するという形はありませんでした。経験者が集まり、そこで関心のあること・できそうなことを一人で始める、だれかと一緒に進めて、知り合い関係になる状態が続きました。
そのなかで彼ら彼女らの発意から何かが動き出しました。主催者である私に提案するものもありました。両者は画然と分かれているのではありませんが、そこから活動内容が生まれてきました。そういう体質と歴史があります。ですから「不登校情報センターを仕事のできる場にして欲しい」ということだけではなく、通所している経験者の動きからできたものが多いのです。

学校・支援団体の情報収集と情報提供は、私の以前からの編集者の仕事ですが、それも「手伝わしてください」というところから情報センターの集団的な取り組みになりました。それをサイト制作にするとなると事態は一変しました。当時はパソコンの技術がまったくない私の手からは完全に離れて、パソコンを扱いなれている通所者がサイト制作の作業を始めるしかなかったからです。
彼らの得意分野とするパソコンやサイト制作と私の情報集めが結びついて、現在のサイト上で学校・支援団体の情報提供作業になっています。これは支援団体としては私の知る限り珍しい方式です。同時にどの支援団体でも可能かどうかはわかりません。この方式を普及させるのに躊躇してきた理由でもあります。

しかし、最近は違う考えも出てきました。引きこもり経験者に技術的な手段を教え、就職の形で社会参加を目指す方法はうまく行っているとは思えないからです。東京仕事センターの案内チラシでは「NPO、ボランティア、農業、在宅ワークなど、企業に雇用される以外の多様な働き方」を謳っています。そういうスタンスは引きこもり経験者にじかに接触していれば早期に理解できることです。不登校情報センターのこれまでの取り組みが参考になるのではないかと考えるようになりました。(太字はチラシによる)
この活動に対しては、これまでは公の支援、助成をいただいたことはありません(民間の助成機関からは支援を受けたことがあります)。政府・自治体の支援方法には該当する項目がないのです。誰かが似たようのことをするにしても、さしあたりは公的な支援は期待できません。
政府と自治体が従来の引きこもり支援策を変更、拡充すればそういう支援も受けられるのかもしれませんが、それを待っていては時間だけが過ぎていきます。先ほどの東京しごとセンターは東京都のセクションです。少なくともそこは変わりつつあるのかもしれません。それを認めたからといってうまく行くとは限りません。ですがそこを外していてはうまく行かない気がします。
結局は、経験者の動きや要望を柔軟に受け入れる条件・スタンスがなければ、彼ら彼女らのもつ能力や気持ちは生かされないのではないかと危惧しています。

それは先ほど紹介した東京しごとセンターの謳い文句の中に、少なくとの創作活動や対個人サービル業が出てこないなかに読み取れると思います。もちろん不登校情報センターの方式がとりわけ優れているとは思いません。何かの参考になるものは見つけられると期待しています。

ムラテック複合機HELP !

ムラテックのコピー・ファクス複合機が「点検をお受けください」となり、FAXを受診はするけれどもプリントされて出ない状態になりました。FAX送信もたぶんできないはずなので中止しています。
パソコンのプリンター、普通のコピー機としても使っていますが、これらも使用できません。
メーカーのサービスセンターに連絡をして、いったんは回復したのですが夕方にまたダメになりました。
勘では、用紙の状態を感知するセンサーに問題があるように思うのですが…。
ムラテックの複合機、V-2300 わかる人は土日曜日に連絡をいただけると助かります。
TEL03-3654-0181 
週明けまではサービスセンターにはつながらなさそうです。